機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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アフリカタワー─ただいま─

 

 

 レーアは驚いていた。

 ガンダムヘッドによって拘束されデビルガンダムへと運ばれていたブレイカーB。

 しかし突如、上空から現れた一筋の閃光が一瞬のうちにガンダムヘッドを破壊し、ブレイカーBの機体も消えていた。

 

「なに……!?」

 

 慌ててブレイカーBを探す。

 するとセンサーに反応があった。

 

 ブレイカーBの反応だ。

 しかしブレイカーBだけじゃない。

 識別コード不明の機体が一緒にいたのだ。

 

「あの……ガンダムは……?」

 

 ブレイカーBへモニターを向ける。

 そこにはブレイカーBを抱え、地面に降り立つ一機のガンダムがいた。

 

 白と黒を基調としたそのカラーリングと背部中央にスタビレーターがあり、その左右にファンネルラック、そこから片方ずつにぶら下がるように設置されているフィンファンネル。

 

 それはまるで翼のようにも見えた。

 突然、現れたそのガンダムにレーアはただ戸惑う。

 

「──みんな……迷惑をかけて悪かった」

「翔なのッ!?」

 

 敵か味方かも分からないそのガンダムから聞こえてきたのは翔の声だ。

 どいうことだろうか、翔はブレイカーBに乗っていた筈だ。

 なのに何故違うガンダムに乗っているのだろう。

 

 ・・・

 

「話は後だ。アイツを何とかしない限り、このままじゃ人類が危ない」

「その通りだッ!」

 

 ブレイカー0の乗る翔はデビルガンダムを見据えながら呟く。

 デビルガンダムへの恐怖感はまだ完全に拭えた訳ではないが、戦わなければ自分達が危ない。

 

 その言葉に同調する声があった。

 翔は驚きつつも確認すると、上空からライジングガンダムとマスターガンダムが舞い降りた。

 

「久しぶりだね、翔、レーア」

「フェズ……!?」

 

 ライジングがブレイカー0の右肩部にマニピュレーターを置き、接触回線によって連絡を取る。

 そもそも翔はパナマの一件も知らなければ別行動しているフェズの事など知らないが久方ぶりに聞くその声に翔は驚く。

 

「翔の言う通り、アレは悪魔のガンダムさ。コロニー軍が開発した、ね。アイツの持つ細胞に感染されたが最後、アイツの支配下に置かれる生きる屍になっちまう」

「……アレを我が軍が……?」

 

 フェズは外部スピーカーによってその場にいる者達にデビルガンダムの事を簡単に説明をすると、ティグレはにわかには信じがたいと言わんばかりにデビルガンダムを見る。

 

「──まさかッ!」

 

 では、あのデスアーミーは一体何が動かしているのか。ティグレはアストレイR改を素早く動かし、デスアーミーの一機を二本の刀を巧みに動かし、四肢を斬りおとすとデスアーミーのコクピットと思わしき場所を斬り込みを入れ、カメラをズームして確認する。

 

「……ッ……」

 

 そこにはもはや人間とは思えない外見をしたまさにゾンビがいた。少なからず衝撃は受けるがそのゾンビ兵が身に着けるコロニー軍のしかも軌道エレベーターを占拠した部隊のドックタグを見て息を呑む。

 

(……支配下に置かれるという話が本当であれば、最近の軌道エレベーターにおける行方不明者はコイツが……? 上は何を知っている……?)

≪……撤退命令だ。現時点をもって軌道エレベーターを撤収する≫

 

 ティグレの中で様々な考えが交錯する。

 しかしその考えを遮るようにコロニー軍のMSに通信が入る。その相手は今回の軌道エレベーター制圧作戦の司令官だ。

 

≪後はそのアルティメットガンダムに任せれば良い。その機体こそ真の地球攻略作戦の切り札なのだ≫

「真の地球攻略作戦……? 核攻撃は違ったのですか?」

 

 アルティメットガンダムことデビルガンダムについてはコロニー軍でも極秘にされ、まさに一部の者しか知らなかった。

 デビルガンダムとコロニー軍が交戦している事を知り、司令官は直々に彼らに通信をする。

 

 するとそこにジェイクが割って入った。

 突然の出来事に彼も戸惑っているのだろう。

 

≪あれはアルティメットガンダムを地球に降ろす為のプラフのようなモノに過ぎない。早く離れるのだ、見ての通り今の奴は我々の制御下ではない。まさかこのタイミングでその場に出てくる事はこちらも……地球攻略作戦の司令官であるハイゼンベルク司令官も予想外のことだ≫

(何の為の機械だ……ッ! 制御できないものなどッ!)

 

 淡々とした司令官の口調と、制御できないものを野に放った上層部にティグレは苛立ちを感じながらも、今は大人しく撤退を始める。

 

 ・・・

 

「コロニー軍の奴らがッ!!」

「──放っておけ! 今はコイツをどうにかすんのが先だッ!!」

 

 ショウマが撤退を始めたコロニー軍のMSを確認すると後方から射撃が矢次に飛んでくる。そちらを見ればDXを始めとした地球軍の本隊がこちらに向かって来ていた。

 

「……これ以上、アイツに好き勝手やらせるわけにはいかない。あのままじゃ軌道エレベーターも危ない」

「そういう事さッ!行くよッ!!」

 

 グランの言葉に同調しながら、今だガンダムヘッドやデスアーミーを出し続けるデビルガンダムに、その背後の軌道エレベーターを気にするとその言葉にフェズが賛同し、彼女の言葉を皮切りにその場のMSが飛び立つ。

 

「……ッ!!」

 

 ガンダムヘッドに執拗に狙われるウィングもMSへ変形し、グルリと反転してバスターライフルを放つと一瞬にして塵に変える。ウィングはそのままブレイカー0と並走する。

 

「……やっぱり狙いは私達みたい」

「……なら引き付けるまでだ」

 

 だが以前、ウィングとブレイカー0は執拗に狙われていた。

 危険な状況ではあるが、自分達が囮になればチャンスが出来るのではないかと考えた翔はリーナの通信に呟くように答えると異論はないのかリーナは何も言わず、MAに再び変形し空を舞う。

 

「フィンファンネルッ!!」

 

 ウィングに続くように空に飛び上がったブレイカー0は六基のフィンファンネルを全て射出する。

 フィンファンネルは縦横無尽に駆け巡りながらガンダムヘッドやデスアーミーを撃破していく。

 

「翔達が引き付けてるッ! 無駄には出来ないわッ!」

「当然ッ! 久しぶりだけど、腕は鈍ってないかしら?」

 

 翔とリーナの意図に気づいたレーアは声を張り上げながらダブルオーライザーを動かし、GNマイクロミサイルを放つと、ティアのXDVがレーアのダブルオーライザーと合流して二機は凄まじい進撃を見せる。

 

「ハィイッ!!!」

「ウォオオッ!!!!」

 

 ドラゴンとゴッドは背中合わせになりながら互いの拳法を駆使し、一機また一機とデスアーミーを破壊していく。その働きはまさに一騎当千で見る者を鼓舞していく。

 

「良いか、無茶はするな、俺から離れるなよッ!!」

「「了解ッ!」」

 

 隊長としてヴェルやカガミのような新兵を率いながら射撃攻撃をデビルガンダムへ浴びせていくグランのDX。

 

 しかしデビルガンダムとて何もしない訳ではない。

 その凄まじい火力は地球軍のMSを次々と破壊していく。

 

「──まずいッ!!」

 

 やはりブレイカー0は狙われ、次々と近づいて来るデスアーミーを破壊するが距離が詰められ逆にデビルガンダムとの距離は離れていく。

 

 近づこうとするのだがデスアーミーを撃破しながら接近しなくてはならないのだが、ここで問題が起きた。

 先程のデビルガンダムの放った広範囲に及ぶ攻撃が軌道エレベーターへと向かっていったのだ。

 このままでは軌道エレベーターに直撃し、その衝撃で軌道エレベーターの外壁がパージされる危険性がある。

 

【──大丈夫、私達だったら止められるよ】

「……ああッ!!」

 

 胸の内に聞こえるシーナの声。

 彼女の声がとても温かく心強く感じる。

 

 その声に頷き、翔は意識を研ぎ澄ませる。

 すると翔の中で二つの光が一つになり、それが全身に広がっていく感覚を覚える。

 それに呼応するようにブレイカー0の腕部装甲とシールドが展開され、その内部に秘められたサイコフレームを露出する。

 

「何が起きてるの……ッ!!?」

 

 すると青い光に包まれたブレイカー0を中心に光のドームが広がり、その場にいるMS以外の全てが静止したような空間となる。人知を超えたこの状況にレーアは狼狽する。

 

「これ……翔がやっているのか……?」

 

 宙に浮きながら、この光を放ったブレイカー0を見て、ショウマは信じられないと言わんばかりに呟く。

 しかし現実に翔……いや翔とシーナがこの光を放っているのだ。

 

「シーナお姉ちゃん……」

 

 それは同じエヴェイユであるリーナが感じていた。

 ブレイカー0から感じるこの温かさはかつてパナマで出会ったモノだ。

 

 実際、翔の身体にも変化が起きている。

 翔の瞳の色はブラウンだ。今も右目はそうである。しかしその左目はリーナのような紫色のオッドアイとなっていた。

 

【常識を壊し──ッ!!】

「──非常識に戦うッ!!」

 

 シーナと翔は互いに言葉を合わせながら腕部のビームトンファーを展開し、肥大化したそのサーベルで目の前のデスアーミーを切り裂きながら、デビルガンダムが放った広範囲攻撃を阻止する為に加速し回り込む。

 

「【それが……ガンダムブレイカーッッ!!!】」

 

 ビームトンファーを解除し、光に包まれているブレイカー0はビームサーベルを持ち、今までの覚醒時のサーベルの大きさ以上に肥大化し、まるで鞭のように変化したそのビームサーベルでそのまま薙ぎ払って広範囲攻撃を打ち消す。

 最後に振り下ろしデビルガンダムに一太刀入れると、そのブレイカー0を包んでいた光は消え去る。

 

「ショウマッ!」

「あれをするぞッ!!」

 

 フェズがショウマの名を叫び、それに続くようにヤマトが構えを取り、その機体を金色に輝かせる。

 ハイパーモードだ。

 ハイパーモードになっただけでもその衝撃が凄まじく地面が陥没し、岩が重力に反して浮く。

 

「ああッ! 覇王不敗流が最終奥義ィッ!!」

 

 それぞれ構えを取り始めたライジングとマスター。

 その雰囲気と動きを見て、あの技を出そうとしているのだと察したショウマは同じく意識を集中させる。

 

 ギアナで感じた明鏡止水の境地だ。

 するとゴッドの機体も同じく金色に輝く。

 

「「「石破ァッ!天ッ驚ォッ拳ンンンッッッ!!!!」」」

 

 三機はデビルガンダムを囲むと同時に石破天驚拳を放ち、三つの光球はデビルガンダムに直撃した瞬間、光がデビルガンダムを包み、大爆発を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──いないッ!!?」

 

 

 

 

 

 ショウマは目を見張る。

 その場にデビルガンダムは消え去っていた。

 

 確かに石破天驚拳は直撃させた。

 なのにデビルガンダムの姿はなかったのだ。

 跡形もなく消し去ったのかと思ったが、それでもあれ程の巨体だ。

 破片か何かある筈だと思ったが、何もなかったのだ。

 

「……直撃の最中に地面に逃げおったか」

 

 デビルガンダムが現れた割れた地面を見ながらヤアトは呟く。

 恐らく割った地面の中に再び戻り、地中深くに逃げ込むことで逃亡を図ったのだろう。

 だがこれで軌道エレベーターでの戦闘は幕を閉じたのだった。

 

 ・・・

 

「……今まで世話になりました」

「辛気臭いこと言うな、俺達もすぐ追うからよ」

 

 宇宙(そら)に上がる為、軌道エレベーターを急いで利用する事となった翔達。

 翔達を始めとした地球軍の人間が先に宇宙(そら)に上がる為、グラン達も順に宇宙(そら)に上がるようだ。束の間であるが翔はグラン達に別れの挨拶をする。

 

「……如月さん……。宇宙(そら)に上がる頃には、もっと腕を上げます」

「ああ」

 

 その中で同じ長距離射撃をするカガミが進み出て、翔に話しかける。

 無口で無表情なカガミだがその瞳は強い意志が見られ翔は微笑を浮かべながら頷く。

 

「……翔、アタシや兄さんは昔から少し他の人達とは違った感性を持ってるっていうのかな……? 兎に角、人とズレてたの。でもだから言える。アナタはアナタよ」

「……うん」

 

 ティア達は翔に親身になっていた理由の一つを明かすティア。

 そのズレのせいで疎外された経験などあるのだろう。

 エヴェイユとして普通の人とズレを持つ翔に助言をする。

 

「ショウマ、アタシ達はデビルガンダムを追うよ。逃げられたのは厄介だ。奴は信じがたいけど進化や再生をする。今回の事は奴の自己進化に繋がる可能性があるからね」

「ああッ! 俺達は宇宙(そら)でコロニーの奴らをなんとかするよ、これ以上、妙なモンは作らせないっ!」

 

 見送りに来ていたフェズとヤマト。二人は逃げたデビルガンダムを追うようだ。

 フェズの言葉にデビルガンダムの危険性を知っている為、自分は宇宙(そら)で出来る事をする。ショウマとフェズは拳を打ち合わせる。

 

「さぁ行きましょう」

 

 レーアの言葉と共に翔達は軌道エレベーターへ乗り込む。

 戦場の舞台は再び宇宙(そら)へ。そして仲間達の待つ場所へ向かうのだった。

 

 ・・・

 

「……何だか緊張するな」

 

 軌道エレベーターで宇宙(そら)に上がった翔達は作戦の為、衛星基地にいるアークエンジェルへと合流して、まず始めに皆が待つであろうブリッジへと続く扉の前に立っていた。

 

「みんな待ってるんだ、早く入れって」

 

 いざ扉の前に立つと言葉通り緊張するのか一向に入ろうとしない翔に苦笑しながらショウマが背中を押すと、そのまま反動で扉が開き、翔は押された形でブリッジに足を踏み入れる。

 

「……あっ……。そのっ……ただいま……」

 

 視線が翔に集中する。

 見ればブリッジにいる全ての者が。翔を出迎える為、立っていたのだ。

 格好悪い入り方にはなってしまい、おずおずと翔が口を開く。

 

「お帰り……。お帰りなさいっ……! 翔君っ!」

 

 暫く静寂が訪れる。

 その静寂を破ったのはルルだった。

 

 真ん中に立っていたルルが涙ぐみながら翔に声をかけ、そのまま翔に飛びつく。

 自分の胸に飛び込んできたルルを見て翔は改めて帰ってきたことを認識するのだった……。

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