機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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フロンティアⅠ─フレンドリィ─

「隊長、住民の避難完了しました」

 

 フロンティアⅠ内部にはエイナルの隊の姿があった。

 無人の街の上空を飛行しながら副隊長機のGN-XⅢがエイナルが乗るエピオンに通信を入れる。

 

「ああ、すまない。手間をかけたな」

「いえ、私達もあの兵器の使用はどうかと思っておりましたので……」

 

 ある程度、町を飛び回り民間人がいない事を確認すると、エイナルが代表して、副隊長のケビンを労うと、コロニー軍の新兵器にケビンもなにか思うところがあるのか浮かない顔で答える。

 

「侵入してきた地球軍の部隊はアークエンジェルだったな」

「はい、他の隊が戦闘を行いましたが撃破されたそうです……」

 

 フロンティアⅠに地球軍が来た事は知っている。

 大方、自分達の任務を阻止する為だろう。

 

 エイナルが改めて確認をすると、ケビンはセンサーのロストしたシグナルを見ながら残念そうに答える。その脳裏には数時間前の出来事が蘇っていた。

 

 ・・・

 

「こんな兵器など使えるかッ!!」

 

 エイナルがフロンティアⅠで行動をする数時間前。

 ドミニオン内でエイナルが声を荒げていた。

 その怒りの矛先をモニター越しでエイナルに対し露骨な不快感を表しているベロニカだ。

 

「体温と呼気に含まれる二酸化炭素を検知して人間を攻撃する自律型無人兵器……バグ。兵器は飾る為の物じゃないだろう? コロニー内に地球軍がいるって話だ、使うべきだろうに」

「民間人はどうする?! コロニー内部でバグを放てば、無差別に殺戮を起すことになるッ!!」

 

 バグと呼ばれる無人兵器を搭載し増援としてやって来たベロニカにその詳細を知ったエイナルは猛反対する。

 

「バグなど使わせはせん! 地球軍も民間人も私が対処する!」

 

 無差別殺戮などという人道に反した行いをエイナルは許せるわけなかった。

 バグは使わず自分達の隊で任務を終える為、エイナルは出撃するのだった……。

 

 ・・・

 

「……一筋縄ではいかないだろう……。コロニー内で派手な戦闘は避けたい。それに……時間が遅くなれば例の新兵器も投入されるだろう。手早く済ませるぞ」

 

 アークエンジェル隊の噂は聞いている。

 もはや過去に戦った彼らとは比べ物にならないだろう。

 

 エイナルは自身の隊のメンバーに素早く指示を出す。

 余計な犠牲を出さない方法をエイナルは選択しようとしていた。

 

 ・・・

 

「……少佐、本当によろしいのですか?」

「何度も言わせんじゃないよ。兵器は使うもんだ」

 

 グワデンのオペレーターがおずおずと背後の艦長席に座るベロニカに尋ねると、艦長席で頬杖をつきながらフロンティアⅠ内部の部隊から送られる映像を見ながら答える。

 

「しかしブローマン少尉の隊も標的にするなど……」

「アイツがちまちまやってっからアタシ達が来たんじゃないか。野郎の受けが上に悪いことは知ってんだろ。それに地球軍は例の隊だ。あいつ等を仕留める為の囮なら安いもんさ」

 

 それでも気が進まないのか、食い下がろうとはしないオペレーターにベロニカはこれから起こるであろう出来事に期待を膨らませ、くつくつと愉快そうに笑いながら答える。

 

「──それだけで倒せれば良いがな」

「……チッ」

 

 背後から自動ドアが開く音と共にベロニカにとって耳障りな声が聞こえ、わざと聞こえるに舌打ちをする。

 

 そこにはルスランがいた。

 何故ルスランがいるのか。

 それはここ最近、まともな戦果はあげてはいないベロニカへヴァルターからのお目付け役といったところだ。

 

「いざと言う時は私が出る。ラフレシアも状況によっては貴様が使え」

 

 かつてはベロニカに対して反発していたルスランも今ではまるで使えないものを見るような冷たい目で話すと、そのままブリッジを離れる。

 

「依怙贔屓の分際で偉そうに……ッ! 小僧が……ッ!!」

 

 ドンッと強くひじ掛けを叩く。

 彼女にルスランのような自分よりも年下の青年に見下されるのが我慢できなかったのだ。

 

 ・・・

 

「……」

 

 グワデンの格納庫にやって来たルスランはある機体を見上げる。

 

 全体的に細身ではあるが真紅のその機体はまるで血濡れのように見える。

 復讐の道を歩む自分にはピッタリな色だと思えた。

 

 機体名はネメシス。

 ファンネルやヴェスパーを装備した並の機体では収まらなくなったエヴェイユであるルスランの意見を取り入れたルスランの為だけの専用機だ。

 

「……ヴァルター様」

 

 ネメシスを見上げながら、この機体を受領した時の事を思い出す。

 その表情はどこか物悲しかった。

 

 ・・・

 

「アルティメットガンダムは再び宇宙(そら)へ?」

「ああ、そうだ。やはりエヴェイユにはまだ勝てなかったようだ」

 

 数日前、デビルガンダムの回収をタクティックス隊を始めとした小隊に命じ、ヴァルターは自身の私室で背後に控えるルスランにその事を話すと、ヴァルターはアフリカでの戦闘の報告を見ながら呟く。

 

「アルティメットの居場所は分かっているのですか?」

「ああ、リーナとは別のクローンを載せておいた。学習も何もさせてないただの生体ユニットとしてな。その頭には居場所を知らせるチップを埋め込んである。アルティメットガンダムは自分の意志で動く以上、生きていれば十分だ。今回の地球降下はあくまでアルティメットガンダムの自己進化を促す為。エヴェイユとの接触は大きな進化となっただろう。もっともアルティメットガンダム自体はクローンなどよりもエヴェイユを取り込みたかったようだがな」

 

 地球に放ち、自律行動をしたアルティメットガンダムを探し出すなど容易な事ではないはずだ。

 しかしヴァルターはその為の対策は行っていたようだ。

 戦闘の報告に記載されているエヴェイユの光を放ったブレイカー0やウィングのことを見ながら呟く。

 

「私はアレにレーアを載せようと考えていた。生体ユニットは生命を生み出せる女性が適任であり、リーナのような作り物ではなくお前同様、覚醒の兆しは奴にもあるからな。だが、この機体に乗るパイロット……。やはり興味深い」

 

 リーナと同じクローンを乗せていたことはここで初めて知り、目を見開いているとその事を知らず、ヴァルターは話を続け、ルスランやリーナ、そしてリーナと完全な同化をした翔が放つ青白い光を纏ったブレイカー0の映像を見ながら呟く。

 

「……まぁ良い。ルスラン、お前にはこれからお前の専用機の受領と共にベロニカの監視役をしてもらいたい。奴の能力についてお前の目で判断してほしい」

「了解いたしました」

 

 話を切り替え、ヴァルターはルスランに今後の指示を出すと、踵を揃えたルスランはそのままヴァルターの私室を出る。

 

 ・・・

 

「これが……ネメシスか……」

 

 MSハンガーにて自身の専用機を見上げるルスランは自分の意見を多く取り入れられたこの機体を見て、戦意を燃やす。

 これで機体が自分に付いて来れずに戦闘不可能などというお粗末な話にはならないだろう。

 

「──素晴らしいMSだとは思わんかね」

「……!」

 

 ネメシスを見つめていたルスランに声をかける人物がいた。

 それはかつてヴァルターにGNドライヴの受け渡しを強要しようとしたシャミバと、その秘書だった。

 

「私もデータは見せてもらったよ。君の能力を最大限に引き出せるMSとなっているだろう」

「……ありがとうございます」

 

 相変わらず粘っこいような喋り方をするシャミバに不快感を感じるものの顔には出さず、彼の期待の言葉に短く頭を下げる。ルスランのエヴェイユの力はシャミバの耳にも入っていたようだ。

 

「シーナ・ハイゼンベルク技術少尉の事は残念に思うよ。彼女も君のように戦場でその能力を活かせばあのような結果になる事はなかったろうに」

「ッ……! シーナお嬢さんを侮辱することは許さないッ! 彼女は彼女の信念の元に動いていたのだッ!!」

 

 言葉とは裏腹にくつくつと笑っているシャミバにルスランは険しい表情で声を張り上げる。

 何よりシーナに関しての事は機敏だ。

 彼女の侮辱に当たる言葉など聞き流せるはずなかった。

 

「だがそれで世界が変わったかね? 彼女の死はヴァルター・ハイゼンベルクを復讐鬼に変えただけだ。例え個人を変えようが世界は何も変わらないさ。和平や話し合いで解決出来る次元ではないからこそ戦争になっているのだろう? 彼女の思想は最初から間違っていたのだよ」

「貴様ァッ!!」

 

 平和的解決を目指していたシーナが今でも不快なのかシャミバは吐き捨てると、ルスランはその怒りを爆発させシャミバの襟首をつかむ。

 

「……礼儀を弁えたまえ。ただでさえ君はハイゼンベルク准将の秘蔵っ子としてこのように専用機まで貰っている身。君が騒ぎを起こせば、ハイゼンベルク准将の迷惑になるとは思わないのかね?」

 

 ルスランを止めようと割って入ろうとする秘書を手で制し、襟首を掴むルスランの手を掴みながら静かに責め立てるように話す。

 その言葉にルスランは顔を歪める。

 自分がどう思われようが構わないが、ヴァルターの名を傷つけたくはなかった。

 

「まぁ君がその力を戦場で役立てる限り、悪いようにはせんさ。シーナ・ハイゼンベルク技術少尉と違って、な」

「……やはり……貴様が……ッ!」

 

 シャミバは手を振り払うと、そのままルスランの肩を叩きながら横を通り過ぎながら彼の耳元でそう囁くと、その含みのある言葉はかつてのシーナの一件を思い出す。

 

 知ってはいた。

 地球軍に情報をリークした存在がいることは。

 薄々感づいてはいたが、ここで確信に変わったのだ。

 

「怖い怖い。まぁ頑張りたまえ、ハイゼンベルク准将の為にもな」

 

 射殺さんとばかりにシャミバを睨みつけるルスランをどこ吹く風か、まるでそよ風を浴びるような涼し気な表情でシャミバはその場を立ち去る。その場には拳を握り固めたルスランだけが残されていた……。

 

 ・・・

 

(……確かに奴の言う通り、ヴァルター様は変わった。例えクローンであっても命を尊重しないやり方など昔のヴァルター様はしなかった筈……)

 

 そして現在に戻る。

 シャミバの言う事はあながち間違ってはいない。

 実際にシーナの死でヴァルターは変わった。その事については素直にルスランも認めるところだ。

 

(……私は何も変わってはいないと言わんばかりの言い方だな……。私もシャミバ、そしてあのMSのパイロットさえ始末し、ヴァルター様への恩を返せればいいのだ、その為にコロニー軍に入ったのだから)

 

 そこで自己嫌悪に陥る。

 自分もシーナの死で復讐を誓った。

 そんな自分がヴァルターの変化をとやかく言うのもおかしかった。

 

『……今の貴方を見たら、姉さんはなんと言うかしら』

(……まったくだな。今の私を見たら……貴女は何と言うのだろうか)

 

 かつて言われたレーアの一言。

 その言葉が今の自分の心を深く抉る。

 

 自分はシーナの復讐を誓った。

 しかしそんな事は彼女は望まないだろう。

 所詮は自己満足だ。だがその自己満足をせねば自分はシーナの死と向き合う事など出来なかった。

 

 ・・・

 

「……誰もいない?」

 

 フロンティアⅠの宇宙港から侵入したアークエンジェル隊のMSはコロニー軍のMSと戦闘を行いつつもこれを撃破し、市街地の上空を飛行するがまったく人の気配がないことに気づく。

 

「コロニー軍のMSも見当たらないし……」

 

 市街地に着陸し、周囲を見渡している。

 MS隊を撃破しながら来たが、このブロックに入った途端、MSの姿を見なくなったのだ。その事をリンが不思議がる。

 

「──来るッ!」

 

 そこで何かにいち早く感づいたリーナが知らせると同時に彼らの足場にビームが襲い掛かる。

 

 しかしそのビームは当てる気などなく牽制のものだった。

 ビームの発生源を見ると、建物の物陰から囲むように現れたGN-XⅢ達と破壊された橋の上に立つエピオンとその傍らに立つケビン機のGN-XⅢの姿があった。

 

「久しいな」

「貴方……。確かカレヴィの……」

 

 アークエンジェル隊が来ている事は知っている。

 機体や数は増えているが恐らくはかつてカレヴィと共にいたパイロット達であると思い、エイナルが外部スピーカーで話しかけると、レーアがその声から詳しくはないがカレヴィと縁のある人物のことを思い出す。

 

「エイナルだ。まず一つ聞きたい。カレヴィは……本当に死んだのか?」

 

 律儀に自分の名を答える彼には聞きたいことがあった。

 それは地球攻略作戦のブラフとして発動した核降下作戦。

 そこでプロトゼロを撃墜したという報告は彼の耳にも入っていた。

 

 カレヴィの生死、敵対した間からとはいえ、どうしても知りたかった。

 するとショウマの動きがトレースされているゴッドが頭部を逸らす。

 

「そう……か……。馬鹿野郎が……!」

 

 敵対していたとはいえ、彼の事をかけがえのない友人の一人だと思っていた。

 その友人の死にただただエイナルは悲しむ。

 アークエンジェル隊もその反応からエイナル個人が悪い人物ではない事を悟る。

 

「コロニーの住民はどうしたの?」

「……とうに避難させた。君達も武装解除して投降しろ!」

 

 レーアは人気のないこのコロニーに不思議がりその事を尋ねると、アークエンジェル隊が戦闘をしている間に住民の避難をさせていたエイナルはそのまま投降を促す。

 

「……投降はしないッ!!」

「ったりめーだっ!!」

 

 しかし彼らが投降するはずもなかった。

 レーアの強気な言葉と共にゴッドを始めとしたMS達が戦闘態勢を取る。

 

「……残念だよ」

 

 エピオンの腕部を上げ、射撃命令を出そうとする。

 彼らを囲んでいる状況からこちらが優位だ。

 

 戦闘をすぐに終わらせる事が出来るだろう。

 カレヴィの知り合いだと思うと気が引けるが、自分も軍人だ。

 

 射撃命令を出そうとした瞬間……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エピオンが腕部を振り下ろした瞬間、上空からまるで丸鋸を彷彿とさせるような機動兵器がGN-XⅢの機体を切断する。予期せぬ事態にアークエンジェル隊とエイナル達は驚く

 

「まさか新兵器!?」

「コイツ、味方も殺すのかよッ!?」

 

 それはバグだった

 自分達にも襲い掛かるバグにGNソードⅢをライフルモードにして撃ち落し、コロニー軍の新たな新兵器に驚く。

 その無差別殺戮にショウマも唖然としながらもゴッドを動かし、その鋭い回し蹴りで一撃でバグを粉砕する。

 

「ベロニカッ……図ったなァッ!!!」

 

 ベロニカには使うなと言ったが、そもそもあの女が自分達を待つとは思えなかった。

 次々と切断されていくGN-XⅢ達を見て、憎しみと怒りが籠った叫び声をあげる。

 

「──隊長、ご無礼をッ!!」

 

 その間にもバグはGN-XⅢ達を切断し、遂には自分とケビン機のみとなってしまった。

 自分の周辺をグルグル飛び回るバグはエピオンに襲い掛かると、咄嗟にケビンはエイナルにそう叫び、機体をぶつけてエピオンを橋から突き落とし、自分はバグの餌食となってしまう。

 

 橋の下に倒れたエピオンの傍らには機体が破壊された時に落ちたケビン機のGNランスが突き刺さっていた。

 

「しっかりしろ、逃げるぞッ!!」

 

 アークエンジェル隊の必死の応戦によって何とか自分達に襲い掛かるバグは破壊できたが、これで安心はできない。

 エピオンの傍に駆け寄るとゴッドが代表して手を差し伸べる。

 彼をこのまま置いていくなど出来なかったから……。

 

 ・・・

 

「──見つけたぜ、漸くなぁっ……」

 

 アークエンジェル隊がバグに襲われたのと同時刻、フロンティアⅠ周辺地域に一機のMSが現れた。

 そのMSはまるで何かに引かれるようにフロンティアⅠへ向かっていく。

 このMSがこの戦いを更に激しいものとする事を翔もルスランも知らなかった……。




ガンダムブレイカー2のバグは本当に面倒くさい印象しかないです。3にも出てくるのかなぁ…。

因みにネメシスはオリジナルです。パーツ構成も一応、載せておきます。

HEAD サザビー
BODY シナンジュ
ARMS シナンジュ
LEGS V2アサルトバスターガンダム
BACKPACK サザビー
SHIELD シナンジュ

シナンジュカラーという感じです。ルスランも正直、ここまで引っ張る気はなかったのですが、彼の設定を考えると原作のように最初のうちに殺すのも惜しいかなと思い、今に至ります。
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