機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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アイランド・イフィッシュ
アイランド・イフィッシュ─未来への想い─


 

「大昔に廃棄されたコロニーであるアイランド・イフィッシュが軌道を外れ、地球に近づいていることが確認されました」

 

 アークエンジェルのプリーフィングルームにはパイロット達を始め、ルルやマドックが円を囲むように立ち、ルルから地球へ向かっているであろうコロニー……アイランド・イフィッシュの映像を映しながら。ルルが話を続ける。

 

「現在、かつてコロニー軍が所持し私達が破壊した兵器であるメメント・モリを修復し、グランさんのガンダムDXのツインサテライトキャノンとの連携しての破壊処置が立案されていますが、降下するアイランド・イフィッシュの防衛網は厚い為、私達は本隊と合流し、これを撃破することが任務です。本来ならば地球軍総出ででもこのコロニー落下を阻止しなくてはいけないのですが、コロニー軍の新兵器であるバグはフロンティアⅠ以外でも投入が確認され、他の部隊も足止めされているような状況です」

「バグやラフレシアもこのコロニー落としの隠れ蓑だったのだろう」

 

 ルルの映像を交えた説明を聞きながら、フロンティアⅠ以降、行動を共にしているエイナルが口を開く。現に今、別行動をしていたグラン達も遅れているとのことだ。

 

「どこまで愚かなのあの人は……ッ!!」

 

 忌々しそうにレーアは映像に映るコロニーを見ながら吐き捨てるに言い放つ。

 その様子から純粋にヴァルターへの怒りを感じているのが見て取れる。

 

「レーア……。君はレーア・ハイゼンベルグだな。そしてリーナも」

「……私は家を出た身。ハイゼンベルグではないわ」

 

 レーアの様子を見て、かつてコロニー軍に身を置いていたエイナルがレーア達に声をかけると、いくらか落ち着きを取り戻したのかレーアが静かに答え、リーナはただ頷く。

 

「君達はこの作戦の最高責任者であるヴァルター・ハイゼンベルグ准将の親戚か何かか?」

「……娘よ」

 

 家を出たとはいえ、親族なのではとエイナルが問いかけるとレーアは認めることすら、忌々しそうにして、リーナは視線を俯かせる。

 彼女にとって娘として父の期待に応えようとした結果、あのようなことになった。

 レーアやリーナがこの作戦の最高責任者の娘であるということはその場にいる翔を除いた面々に衝撃を与える。

 

「だったらなんで地球側で戦ってるんだ?」

「ちょっとバカショウマ!」

 

 純粋に疑問に感じたのか今度はショウマがレーアに問いかけると、簡単には触れてはいけない問題だと察していたリンが肘が軽く突く。無神経だと感じたのだろう。

 

「暮らしてたフロンティアⅣが襲われてそれっきりかしら?」

「……ああ、あの時か。そうか、港でカレヴィと一緒にいた……」

「そういえば貴方が攻撃部隊を指揮していたわね」

 

 しかしレーアは特に気にした様子もなく答えると、かつてのことを思い出しているのか呟くエイナルにレーアも同じく思い出していたのかエイナルを見て答える。

 

「……分からないな。君がレーア・ハイゼンベルグならあの時、我々で保護できたはずだ」

「それは……」

 

 だが疑問に感じることが一つ増えた。

 言葉通りあの時、申し出ればレーアはエイナル達が保護した筈だ。

 そのことをエイナルに指摘され言葉を詰まらせてしまう。

 

「……シーナ・ハイゼンベルグの死となにか関係あるのか?」

「──ッ!!」

 

 エイナルから言われた一言にレーアはカッと目を見開き、言葉を詰まらせる。

 それは明らかに動揺だった。

 

「シーナ・ハイゼンベルグ……?」

「──興味本位で聞かれたくはないわねッ!!」

 

 エイナルや、その言葉の中にあった名前を口にするショウマをキッと睨み付けたレーアはそのままプリーフィングルームを飛び出す。それを追いかけるようにリーナがショウマ達を一瞥すると部屋を出る。

 

「……失敗したな」

「おっさん、シーナ・ハイゼンベルグって……?」

 

 レーアが出て行った扉を一瞥し、自分でも浅はかさを実感しているのか目を瞑っているエイナルにショウマがシーナについて問いかける。

 

「……三年程前だったかな」

 

 話すことを躊躇ったが、静かに特殊能力を持つシーナがヴァルター主導の実験によってその命を散らせたことを説明する。

 

 勿論それは事実ではない、

 だが事実を知らない一般兵にはこう噂されているのだ。

 

 これはシャミバによって流された嘘。

 それを聞いたショウマ達は怒りを感じつつもレーアやシーナに同情を禁じえなかった。

 

 ただ一人、翔を除いては。

 

 ・・・

 

【──私がお父様が行った人体実験によって死んだ……。ある意味、間違ってはいないけどそう言われてたんだね】

(よくあの場で出てこなかったな)

【それじゃあ翔の迷惑になっちゃうもの】

 

 あの後、エイナルの話をもって解散となり翔は一人休憩所から強化ガラス越しに見える宇宙を眺めていた。その心中ではシーナとの対話が行われていた。

 

「──翔」

 

 シーナの気遣いに感謝していると、不意に声をかけられる。

 視線を向けてみれば、そこにはこちらにやって来るレーアの姿があった。

 

「聞いたんでしょう、姉さんのこと」

「……」

「別に怒ってはいないわ。思い出さないようにしていただけ……。姉さんは別に手を使わずに物を動かしたり空が飛べるとかは出来なかった。普通の人だったのよ?ただ人の気持ちを汲み取るのがとても上手だった。人の内面を感じるというのかしら。私が鳴いている時はいつも傍にいて笑顔にしてくれる。そんな人だった」

 

 落ち着いてはいるのか、あの後、姉のことを語られたのだと考えていたレーアはそう翔に声をかけると、彼の無言が肯定であると捉え、クスリと笑って翔の隣に立ち、レーアの知るシーナの人柄を口にする。

 

「……姉さんの死もあって私は家を出た。まさか移り住んだコロニーが戦場になるとは思いもしなかったけど……それで結局ズルズルと戦争を続けている。……父への敵意だけで……。こんな私を見たら姉さんはなんと言うかしら……?」

【……】

 

 視線を俯かせ、自分が地球側で戦っている理由を話すレーアに、翔はシーナの意識がどこか揺らいでいるのを感じる。なにか言おうとしたいのだろう。

 

「皆を見てるとね、私だけが違うと感じてしまうの……。みんな変わっていくのに私だけなにも変わらない。この戦争が終わったらその後どうしたいのか。未来に何も願いを持っていない……こんな私をあなたはなんて言うのかしら……」

「……」

 

 視線を上げ、延々と続く宇宙を一瞥し、レーアは翔に向き直る。

 その真っすぐながらも何かを縋るようなものを求めるその瞳に翔は何と言っていいか分からなかった。

 

「……やっぱり何も答えない。でも……その無口さに今は救われる。もうすぐ作戦開始よ、それじゃあ」

 

 翔はなにも答えない。

 その事に自嘲気味に笑ったレーアは翔に背を向け、その場から去っていく。ここには翔が一人、取り残されていた。

 

 ・・・

 

「……私はまもなくアイランド・イフィッシュに移動する」

「……本当にヴァルター様自らが出撃なさるのですか?」

「これが最後となるからな」

 

 ここはコロニー軍の所有するコロニー落とし作戦の旗艦であるレウルーラだ。

 その司令室が設けられたこの部屋で椅子から立ち上がったヴァルターは対面しているルスランの言葉に確信をもって答える。

 

「……ヴァルター様はこれが本当にシーナお嬢様が望んだ事だとお思いですか? 私達の自己満足によってシーナお嬢様を苦しめている……。私達の自己満足にシーナお嬢様を巻き込んでいると、そうは思えませんか?」

「……今更なんだ?」

 

 かつてフロンティアⅠでシーナと遭遇し、そこで沸き上がった想い、そのことをルスランが口にするとヴァルターは立ち止まり、ルスランをその鷹のような鋭い眼光を突きつける。例えこれが自己満足でもその道を進むことはルスランも知っている筈だ。

 

「……私はフロンティアⅠでシーナお嬢様の意識に触れたのです。彼女は……貴方を止めたがっている」

「……エヴェイユだから、か」

 

 ルスランの言葉に少なからずとも驚きはするが、かつてのリーナと同じくエヴェイユであるルスランが出来た為、これはエヴェイユ同士だからこそ出来るものだと思い、そうでない自分を忌々しく感じる。

 

「では今更、コロニー落しを中断しろと? 出来るものか……私が終わらせる。全てを」

「……ッ……。それがシーナお嬢様を苦しめているのです! 彼女の望んだ世界はそうではなかった! 私達は……間違っていたのです……!」

 

 その瞳に憎悪を宿らせ、シーナを奪った世界へ復讐をしようとするヴァルターに自分達が間違っていたことを訴えかける。

 シーナの意識に触れたことで彼にも変化が起きたのだろう。

 

 するとヴァルターは机の端末を操作し……。

 

「……残念だよ、ルスラン」

「──なっ!?」

 

 司令室の扉が開いた瞬間、ルスランにそう告げられる。

 扉に入ってきた軍人二名がルスランを取り押さえ、驚きもつかの間、ルスランは机に顔を押し付けられてしまう。

 

「お前ならば今の私を少なからず理解してくれていると思っていたが……。このような形で私に盾突くとは」

「私はただッ!!」

「もうシーナの意思云々の話ではないのだよ。言ったはずだ、私が終わらせると」

 

 取り押さえられたルスランに近づきながら落胆の様子を見せるヴァルターに、ヴァルターを想ってこそ行動に出たルスランは叫ぼうとするが、それを遮り、冷たく言い放つ。

 

「まだそれを持っていたか……。だが、好都合だ」

「なに……?!」

「お前にも役目はあるのでな」

 

 取り押さえられた衝撃で首からかつてシーナに与えられたアリスタが見える。それを見たヴァルターはほくそ笑み、端末を操作して、部下にある指示を出すのだった。

 

 ・・・

 

「お前ら、間もなく地球軍が来る。絶対にコロニーを死守しろ。虐殺行為だが、それが手っ取り早く戦争を終わらせる方法なんだ、軍人として戦え、良いな?!」

「……了解」

 

 レウルーラの格納庫ではMS隊が出撃の準備を今か今かと待ち望んでいた。

 その中でジェイクが自分の隊の面々に声をかけていた。その中にはかつてのタクティックス隊のマヒロの姿もあった。

 

「ウェイド隊、出るぞ!」

「デスティニー、行きます!!」

 

 ジェイクの通信と共に出撃するジェイクの隊のメンバー。

 ダブルバレット装備のAGE-2と副隊長機のレンが乗ったデスティニーガンダムが順に出撃し、インパルスガンダム達も出撃を開始する。

 

「……兄さん、僕は自分の出来ることをする……。アストレイ(アマツ)行きます」

 

 かつて言われた兄の言葉。

 その言葉を胸にかつて兄が乗っていたものと同型の改造機を駆ってマヒロは出撃するのだった。

 

 ・・・

 

「……皆はこの戦争が終わったらどうするの?」

 

 本隊と合流したアークエンジェルはコロニー群の出撃を受け、戦闘準備が行われていた。

 パイロット達はそれぞれの機体内で待機しており、レーアがふと皆に問いかける。

 

「どうした、藪から棒に?」

「なんとなく聞いてみたかっただけ」

 

 突然の質問にショウマが首を傾げていると、先程の翔との話に思うことがあったのかレーアが苦笑しながら答える。

 

「戦争が終わったら……か……俺は先生から教わった技を広めていきたい! 今はまだ修行中でもいつか弟子とってさ!」

「アタシは少林寺があるから、ショウマと同じ修行中でもいつかその少林寺を背負って立つ時に恥じないようにしないと」

「私はどこか平和な場所で商売でもしようと思う。だが、その前に部下を弔ってやらんとな。ついでにあのバカの墓も建ててやるさ」

 

 突然の質問ではあったが、以前、翔に体術を教えたことが切っ掛けとなり技を広めることを夢にしたのかショウマが答えると、それに続いてリンが気合を込め、そしてエイナルがエピオンが持つツインバスターライフルを確認しながら微笑を浮かべて答える。

 これはアークエンジェルに予備として置かれていた物をエイナルが頼み込んでエピオンに装備させた物だ。

 

「ルルがこの先どうするの?」

「私はアークエンジェルがありますから、この先も(ふね)を守っていかないと」

 

 この際、艦長であるルルにも問いかけてみると、すっかり艦長職が板についたルルが答える。

 

「艦長、またそのような事を……。お父上が何というか」

「何と言われようが、この(ふね)は返しません。それに今のお父さんなら理解してくれます。それより副長には何かないんですか?」

 

 どこか気苦労を感じさせるようなマドックの言葉にメメント・モリ攻略戦で理解を深めた父を思い出しながら、マドックにも問いかける。

 

「定年まで軍人ですかな」

「なにかやりたい事はないんですか」

 

 ルルの問いかけに今更、軍人を辞めるつもりもないマドックに第二の人生などという言葉がある以上、他になにかないのかと問いかける。

 

「ふむ……。わがままを言わせて頂けるならば、孫娘のような上官の成長をこの先も見ていきたいと」

「し……仕方ないですね、許可します」

 

 マドックの細やかな願いを聞いたルルは恥ずかしがりながらも許可をする。

 今までのルルの成長の裏にはマドックからの助言も多くあったからだ。

 

「レーアは? 戦争が終わったらどうするんだ?」

「私は……分からない。だから聞いてみたかった」

 

 言いだしっぺであるレーア自身はなにを考えているのかを知りたかったショウマの問いかけにいざ質問されると、言葉を詰まらせなる。

 

 翔との会話の時もそうだった。

 自分は未来に何も見いだせてはいないのだ。

 

「したいことないなら弟子になるか?」

「少林寺なんてどう?」

「私の商売に手を貸すと良い」

「だったらアークエンジェルに残りませんか?」

 

 すると一斉にレーアに自分と共に来ないかと誘われる。

 彼らなりにレーアに手を伸ばしているのだ。

 

「でも、それはみんなの望みであって私のではない……」

「難しく考えすぎではないかね。こういうものはいつか自然に思い至るものだ。そうは思わんかね?」

 

 彼らの気遣いは嬉しくは思うが、自分は自分の目指す未来が欲しかった。

 そのことを察したマドックが年長者としての助言をすると、レーアは何か考えるように俯く。

 

「……レーアお姉ちゃんがどんな道を行こうと、一緒に行くよ。お姉ちゃんと広い世界を見るって決めたから」

「ありがとう、リーナ……。翔はどうなの?」

 

 悩み続けるレーアは、どの道を行こうがレーアと共にあると決めたリーナの言葉に微笑み、まだなにも答えていない翔に最後に問いかける。

 

「……俺はすべてを終わらせて必ず帰らなきゃいけない場所がある。約束したからな……。それに戻らないと俺は俺の本来の道を進むことができない」

 

 今まで黙って話を聞いていた翔が静かに答える。

 あやことの約束、シーナとの約束があるからだ。

 

 それにこの世界は自分の本来の世界ではない。

 もっともレーア達のとってはよく意味の分からない話ではあったが。

 

「──敵戦艦からMS隊が出撃しました。本隊からの出撃命令が出ています。皆さん……無事に帰ってきてください!」

 

 しかしいつまでもこんな話を続けているわけにはいかない。

 それを現すように敵機出現を知らせると、出撃命令を出しながらも今までにない激戦を予感して、ルルが彼らの無事を祈る。

 

 

 

「ゴッドガンダム、ショウマ行くぜ!!」

 

 

 

 そう無事に帰る。

 

 

 

朱 鈴花(シュ リンファ)出るわよ!」

 

 

 

 自分達の未来の為に

 

 

 

「エイナル・ブローマン、エピオン出るッ!」

 

 

 

 自分達の願いの為に

 

 

 

「……ウィング、発進します」

 

 

 

 その為に戦うんだ。

 

 

 

「ダブルオーライザー、行くわッ!」

 

 

 

 例えまだ分からなくても見つけ出すんだ、自分達の可能性を

 

 

 

「……ガンダムブレイカー0、如月翔行きます」

 

 

 

 そして探していく。

 この無限の宇宙(そら)の果てまで

 




ついに迎えた最終決戦。原作とは破壊の仕方が違いますが、進めていきます。
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