機動戦士ガンダム Silent Trigger 作:ウルトラゼロNEO
「シャトルに動きが……ッ!」
アークエンジェルから出撃した三機のMS隊はダブルオーライザーを先頭にブレイカー0が搭載されていると思われる大型シャトルを発見する。
更に加速してシャトルへ向かう中、シャトルの搬入口が開かれる。ヴェルが知らせをようとした瞬間……。
「きゃぁあっ!?」
「ヴェルッ!? ……ッ……この距離で射撃が出来るなんて……ッ!!」
シャトルの搬入口の奥がキラリと光る。
次の瞬間、ビームがPジムKの胴体部を撃ち抜く。
一瞬の出来事だった。
悲鳴を上げるヴェルに先行していたレーアが振り返りながら彼女の名を叫ぶ。
確認すればどうやら無事のようだ。
安堵しながらもレーアは再び意識をシャトルへ向ける。
自分たちとあのシャトルまでは並のスナイパーでも狙撃出来ないほど距離があった筈だ。
しかし相手のスナイパーは簡単に行った。
レーアの脳裏にはやはり翔の姿が過る。
「ッ!?」
するとシャトルの搬入口から六基のフィンファンネルが放たれる。
間違いない。
ガンダムブレイカー0のものだ。
レーアの表情は更に険しくなっていく。
そんなレーアを煽るようにこちらに縦横無尽に向かってくるフィンファンネルは攻撃を始める。
「……ッ……。レーアさん、先行してください。援護します」
ライフルを向けフィンファンネルを撃ち落とそうとするライトニングだが、フィンファンネルの動きを捉えられず、無駄撃ちをすることを止めPジムKを守るように傍に寄るとカガミはレーアに静かに指示を出し、コクリと頷いたレーアはトランザムを発動させ一気にシャトルへと向かっていく。
「貴方は本当に翔なの……ッ!?」
シャトルへ近づく間にもフィンファンネルと狙撃がトランザムライザーを襲うが、悉くそれを避けて更にシャトルとの距離を縮める。
あと少しだ。
ずっとこちらを狙って攻撃してくるスナイパーが自分の知る青年なのか声を上げながらトランザムライザーはGNソードⅢをライフルモードに射撃をする。
「……ッ」
シャトルへ迫るビームは搬入口から飛び出した一機のMSによって防がれる。
黒と白を基調としたそのガンダムの姿を見て、レーアは息を飲む。
ガンダムブレイカー0
かつて如月翔がアフリカタワーにおいてその姿を見せた機体だ。
この世界にとって英雄が乗った機体も今は悪魔の機体となり、こちらに銃口を向ける姿は悍ましくも感じる。
「……邪魔をしないでもらおうか、レーア・ハイゼンベルク」
六基のフィンファンネルは全てブレイカー0へと戻るとオープン回線で初めてブレイカー0からパイロットが声を発する。
その声を聞いて、レーアとヴェルは目を見開き、カガミはジッとブレイカー0を見つめている。
「翔……? やはり……貴方なの……?」
「……だったらなんだ?」
否定したかった。
翔がテロリストであることなど。
しかしレーアの問いかけにも答えるブレイカー0のパイロットの声は紛れもなく如月翔の物だ。
「翔さん、なんで貴方がパッサートなんかにッ!?」
「……誰だ、お前は?」
三機のMSに対峙するブレイカー0に、ヴェルは翔が何故、パッサートの一員となりブレイクピラー事件などを起こしたのか問い詰めるが、返ってきたのはどこまでも冷たい声だった。
「……ッ……。ヴェル・メリオですっ! 貴方と共に戦ったこともありますッ! ここにいるカガミさんも貴方から狙撃を教わりました!!」
「知るか、一々そんな事まで」
翔と思わしき人物の言葉に衝撃を受け、目を見開く。
しかしすぐに自分の事やカガミの事を話すも、ブレイカー0から返ってきたのは煩わしそうな声だった。
「……ああ、だが安心しろ。お前は知ってるぞ、レーア。お前だけじゃない。ショウマ、エイナル、リン、リーナ……。どれも俺の邪魔になりそうな奴らばかりだ」
「貴方の目的は何ッ!?」
気怠そうにレーア、そしてショウマ達の名を口にする。
その声をブレイカー0を通して聞きながらレーアは怒りを滲ませながらGNソードⅢの銃口をブレイカー0へ向ける。
「……復讐だよ、お前達やこの世界に対してな……ッ!」
一転、今まで気怠そうだった声は怒りのものとなり、ブレイカー0は再びフィンファンネルを射出しながらダブルオーライザー達へ襲いかかる。迫りくるフィンファンネルの攻撃と鋭い狙撃を避けながらダブルオーライザーへと向かっていく。
「貴方を捕まえるわ……ッ!!」
「……やってみろよ」
GNソードⅢを展開してブレイカー0へ斬りかかるダブルオーライザー。
間一髪、ライフルを捨てビームサーベルで受け止めるブレイカー0は腰部のレールガンを放つ。
直撃して、爆発したもののダブルオーライザーの装甲のお陰で何とか撃墜を免れる事はできたが、目の前のブレイカー0は紫色に発光し、ビームトンファーを展開して襲い掛かってくる。
「……弱いな」
「……ッ」
GNソードⅢを持つ右腕部ごとビームトンファーによって斬り落とされ、レールガンを交えて嵐のようにダブルオーライザーへ猛攻を浴びせる。
脚部、バインダー、頭部。
瞬く間にダブルオーライザーに損傷を与え、やがては切り裂いていく。
ブレイカー0から聞こえるため息交じりの言葉にレーアは愕然としながらも、歯を食いしばる。
あっという間だった。
近接戦ならばと思っていたのに、それを嘲笑うかのようにブレイカー0は自分を達磨のようにした。
「……アンタが一人目だ。安心しろ、すぐに他の奴らも送ってやる」
こちらにビームトンファーを向けるブレイカー0のメインカメラが不気味の輝く。
抵抗が出来ないこの状況でレーアは死を覚悟する。
だがしかし、レーアは死ぬことはなかった。
カガミの狙撃だ。
翔に負けず劣らずのその狙撃はブレイカー0の動きを牽制する。
フィンファンネルをヴェルに任せ、レーアを助けに来たのだ。
カガミの瞳からは何も読み取ることはできない。しかしブレイカー0だけをジッと見つめていた。
彼女はレーアやヴェルと違い、何も喋らなかった。
そして捕まえようとしたレーアと違い、確実に殺しにかかっていた。
カガミのその動きに焦りを感じさせながらダブルオーライザーからブレイカー0は離れていく。
その卓越した操縦技術と狙撃能力は脅威だった。
続いてブレイカー0を標的にミサイルランチャーを発射する。
無数に迫るミサイルをレールガンとバルカンで破壊するが、硝煙がブレイカー0の前を覆う。
それが狙い目だ。
硝煙を飛び出しライトニングがビームサーベルで斬りかかる……が、すぐさまビームトンファーによって受け止められてしまう。
「……随分やるじゃないか」
「……翔さんの戦い方は知っているわ」
自分を褒めてくる相手にカガミはここで初めて口を開く。
彼女は翔から射撃を教わった。
翔がこの世界からいなくなった後も可能な限りの翔の戦闘データを閲覧して来た。
その戦闘データを元にシミュレーターを組んだりもした。
毎日毎日、それを繰り返した結果、カガミは翔の戦い方を誰よりも理解していた。
「……だがもう付き合いきれないな」
「……ッ」
ライトニングとブレイカー0は何度もぶつかり合い、その度に剣戟を繰り返す。
周囲にスパークを起こす中、ブレイカー0は大気圏に突入するシャトルをチラリと見ると牽制の為にレールガンを放ち、ライトニングがそれを避けたのを見計らって、大気圏を突入するためにシャトルの方へ向かう。
「レーアさん……ッ!?」
フィンファンネルもブレイカー0へ戻った。ライトニングとPジムKが追撃する中、ブレイカー0は損傷したダブルオーライザーを掴んで、そのまま大気圏へ投げ飛ばす。
ここでカガミとヴェルに動揺が走る。
いくらダブルオーライザーといえど、損傷した状態で大気圏に突入するなど死を意味するからだ
「くっ……!?」
「きゃぁっ!?」
その動揺が仇となった。
ブレイカー0は放棄したライフルを拾いライトニングとPジムKを狙撃すると、それぞれ直撃する。PジムKの損傷はライトニングよりも大きく、このままでは危険だった。
それを表すようにブレイカー0はPジムKに狙いを定める。
しかしその狙撃が撃たれる事はなかった。
後方から極太のビームがシャトルを撃ち抜いて爆発させ、近くにいたブレイカー0はその爆風で弾き飛ばされる。
「天……使……?」
急いでヴェルが後方を確認すれば、そこにほぼ白青のツートンカラーの機体色に純白の四枚の翼を持ち、天使を髣髴とさせるガンダム……ウィングガンダムゼロがそこにいたのだ。
その手には天使のような見た目とは対照的な兵器のような無骨さを持つツインバスターライフルが握られていた。
「……このまま大気圏へ突入する」
「リーナちゃん……!?」
ツインバスターライフルをそれぞれ翼に収納し、羽ばたかせながらヴェル達に通信を入れるのはリーナ・ハイゼンベルクだ。
彼女は言葉短めに伝えると、自ら躊躇いなく大気圏へ突入して、ダブルオーライザーへ向かう。
≪ヴェルさん、カガミさん、一度戻ってきてください! アークエンジェルもこのまま大気圏に突入します!≫
「「……了解!」」
そこにルルからライトニングとPジムKに通信が入る。
彼女達も今の自分達では何もできないと察して帰還し、アークエンジェルもウィングゼロを追うように大気圏への突入を開始する。
・・・
「……レーアお姉ちゃん」
主翼を前にダブルオーライザーと自機を包みながら大気圏を突入する。
レーアの名を口にしながらチラリと確認すれば、離れた場所でブレイカー0もシールドを前面に突き出し大気圏を突入している。
今は互いに何も出来なかった。
シャトルを破壊しただけでも儲けものだろう。
「……次は容赦しない」
ブレイカー0へどす黒いまでの殺意が籠った声で呟く。
あれが翔なのかそうではないのか短い接触では分かりかねるが、なんであれあの機体を使い、世界を敵に回し、何よりも最愛の姉を傷つけた存在を許す気にはなれない。
レーアはシーナと同じで自分に手を伸ばしてくれた存在だ。
そんな存在を何よりも如月翔のあの機体で傷つけた罪は重い。
いかなる手段を用いても排除する。
そんな事を考えながらリーナは大気圏突入に意識を向けるのだった。
このまま舞台は地球へ、そして次は今回のEX編の主人公が登場します。