機動戦士ガンダム Silent Trigger   作:ウルトラゼロNEO

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EX Plus─味わえぬ温もり─

 出撃したアークエンジェル隊を迎え撃つようにレセップスからも次々にMS隊が出撃していく。その勢いは出し惜しみもせずにまさに全戦力を投入しての戦いだ。

 

「ライトニング、先行する」

 

 着々と距離を詰め合う両軍。するとカガミは迫るMS群をロックしながらライトニングFAのスラスターの出力を上げ、飛び出すと二つのハイビームライフルをセンサーとバックパックのビームキャノンと接続させ、最大出力で放つことによって反応が遅れたパッサートのMSを呑み込んでいく。

 

「来たッ!!」

 

 硝煙が前方に広がっていく中、そこから出てきたのはディナイアル、スローネアインT、キュベレイが飛び出し、ディナイアルの姿を確認したシュウジは目を細める。

 

「行け、シュウジッ! ここは俺達が引き受ける!!」

「ヴェル、カガミ、彼を任せるわッ!!」

 

 シュウジが反応を示した事によって、先程の三機以外を引き受けようとするショウマとティア。二人の言葉に頷いたカガミとヴェルはディナイアル達へ向かっていくバーニングゴッドブレイカーの後を追う。

 

「アンタはサクヤなんだろッ!? 何とか言えよッ!」

 

 トライブレイカーズは激しい戦闘を行っている。

 バーニングゴッドブレイカーはディナイアルに迫り、マニビュレーターを突き出すも、ディナイアルは軽く腕で払って回避し、反撃をしようとマニビュレーターを振るい、バーニングゴッドブレイカーがそれを掴んだことで宙で掴み合いになる。

 

「兄さんを惑わすなッ!!」

 

 どれだけ拳同士がぶつかり合ってもサクヤは何一つ答えない。

 苛立ちと不安だけが募る中、掴みあうバーニングゴッドブレイカーとディナイアルの間に粒子ビームが放たれ、バーニングゴッドブレイカーは弾かれるように距離を取る。

 

「チィッ!!」

 

 横やりを入れてきたスローネアインTを忌々しそうに睨みつける。今は誰であろうと邪魔をする者にはシュウジの怒りの矛先が向けられる。

 

 だがそんなシュウジの心を増長させるようにバーニングゴッドブレイカー側から更に出力を高め、荒れ狂う龍のような猛々しい駆動音が響かせる。それは力を振るえ、とばかりにシュウジを膨大な力で飲み込もうとするかのようだ。

 

「邪魔はさせませんッ!!」

 

 ディナイアルの前に立ちふさがり、バーニングゴッドブレイカーへ発砲するスローネアインTにシャインストライクのビームキャノンとドラグーンが襲う。

 咄嗟に回避するスローネアインTではあったが、今度はライトニングFAの狙撃が脚部に直撃する。慌てて変形して攻撃から逃れようとするが、ライトニングFAは己も変形し、その後を追撃しドッグファイトを繰り広げる。

 

「……っ……。やはり強い……ッ!!」

 

 キュベレイもまたディナイアルの援護をしよとするのだが、予測していたシャインストライクはライフルを連結させて出力を増大させた一撃を放たれ、キュベレイは咄嗟に回避するがバーニングゴッドブレイカーとディナイアルには干渉はさせないとばかりに食いついてくる。

 

「俺だよ、シュウジなんだよッ!? 分かんないのか!?」

 

 その間にもバーニングゴッドブレイカーとディナイアルは拳と拳の応酬を繰り広げており、その一撃一撃は残像しか見えず、肉眼で捉える事は難しい。

 しかしバーニングゴッドブレイカーが積極的に攻撃をしないのに対し、ディナイアルは確実にバーニングゴッドブレイカーを破壊しようと容赦なく殺しにかかっている。

 

「……きっと彼が本物なのね」

 

 シャインストライクとの戦闘のさ中、その光景を見ながらノエルは表情を曇らせる。

 先程からシュウジの声は聞こえるが、その必死なさまや言葉は到底嘘とは思えず、彼こそが本物のシュウジなのだろうと察する。

 

「でも……悪魔が取り付いている限りは……サクヤさんには届かないわ」

 

 今のサクヤは己の意志で動いている訳ではない。ディナイアルに搭乗するサクヤはモビルトレースシステムによって激しい動きを行っているもののその表情は能面のように動かず、非常に虚ろなモノであった。それはカイウルが彼に施した調整にあった。

 

 今のサクヤはカイウルが開発したU細胞が投与されている。

 それによってサクヤの意志は剥奪されて、カイウルの望むままの戦闘マシーンと化しているのだ。非力な自分では父の行いを留める事が出来なかった。

 

 そんなサクヤには言葉も拳も届きはしない。それでも必死に呼びかけるバーニングゴッドブレイカーの姿を見て、ノエルは哀れみさえ感じる。

 

 ・・・

 

「……こっちも来たね」

 

 レセップスの周辺で戦闘を繰り広げる中でウィングゼロのみを狙った銃撃が襲いかかる。軽やかに機体を動かして避けたリーナはその発生源を見やれば、そこにはユーディキウムの姿がある。

 

【なンでアなたなノ?】

「……なんでだろうね」

 

 ユーディキウムから感じる問い掛けにリーナは目を閉じて思考する。

 ユーディキウムの問いかけの意味が分かる。だが何故と言われても返答には困ってしまう。

 

「……アナタは私。始まりを辿ればきっと同じなんだよ。そこに違いはない」

 

 ユーディキウムから感じる感覚は自分に酷似したもの。

 そこに意識を集中すればするほど、まるで自分を見ているかのようだ。

 

「……でもね、今の私達は全く違う……。これが運命なら……私は私の願いで戦うだけだよ」

 

 師匠に教わった技を広めていきたいというショウマ、この世界を去った英雄との再会を願うレーア。みんな、願いを胸に今を生きて未来に繋げようとしている。

 

 そしてリーナの願いはそんな気高く生きる愛する仲間達を守り、共に未来を生きる事。その為に今、目の前にいる自分自身を打ち倒さねばならない。

 

 その意志を表すように純白の翼を広げたウイングゼロはエヴェイユの力を解放し、朱色の光を纏う。それに触発されるようにユーディキウムもまた光を纏い、戦場に二本の光が空に伸びる。

 

 ・・・

 

「来た……ッ! ついにこの時がッ!!」

 

 レセップスのブリッジからその光景を見ていたカイウルが突如、興奮したように前に乗り出しながらその光景を見つめる。それは待ちに待った瞬間が訪れたように全てを見逃さんばかりに目を見開いている。

 

「アレは……なんだと言うんだ?」

「エヴェイユだよ。人類から派生した新たな人類……。何も持たぬ人類には脅威にしかならぬ争いの種の一つ……!!」

 

 既にウイングゼロとユーディキウムの戦闘は始まっており、紅の彗星のように流星のような線を描きながら人類には介入することも許さないような戦闘を繰り広げている。

 その圧倒的な光景を見ながら、艦長がカイウルに尋ねるとカイウルは興奮したまま憎々し気に口角を吊り上げながら答える。

 

「そんなものは芽が出る前に潰さねばならない……ッ! 私が生み出したユーディキウムならばそれが出来るんだよ」

「……あの力……同じものように見えるが……そんなものを作れたのか?」

「同じ物だよ。あのユーディキウムのあの力はね」

 

 アイランド・イフィッシュが落ちると言われた日。

 輝きを放ったガンダムブレイカー0が放った虹色の刃を見て、カイウルが感じたのは純粋な恐怖であった。説明も出来ないあのような力が自分達に降りかかったら……。そんな恐怖に苛まれ、ユーディキウムが生み出された。

 

「かつてアルティメットガンダムの生体ユニットに一時的にシーナ・ハイゼンベルグのクローンが使われていた。戦争終結後、裏で回されていたそのクローンを手に入れ、ユーディキウムに組み込んだんだよ」

「組み……込んだ……?」

「あの中には阿頼耶識システムを接続した脳と脊髄周辺の必要な部分しかないんだよ。それ以外は不必要だ」

 

 ディビニダドを隠れ蓑にデビルガンダムを地球に降ろした地球攻略作戦。

 そのせい生体ユニットに組み込まれたシーナ・ハイゼンベルグのクローンは今度はユーディキウムの生体ユニットに使われている。カイウルの言葉に信じられないと言わんばかりの様子の艦長だが、カイウルはそれに気づかず説明を続けた。

 

「化け物には化け物をあてるしかない。あの体にした後、出自は同じであるリーナ・ハイゼンベルグの事を教えたら執着をし始めてね。何かを突き動かす為にはやはり感情は必要なのだよ。今の彼女は自分が手に入れられなかったものを全て手に入れているリーナ・ハイゼンベルグに執着しているんだ」

 

 艦長はカイウルに恐怖を感じる。

 化け物は一体、どっちかと言うのだとばかりに。しかしそんな視線もカイウルには届かない。彼にとって自分が作り出したユーディキウムがエヴェイユを駆逐できるかどうかの方が大事だからだ。

 

 ・・・

 

【あナたがイる場所は私がイラれる場所だッタかもしレナいのに何ガ違ったノ? どウシて? 何故?】

 

 ユーディキウムに宿るクローンは執拗にウイングゼロのみを狙い、幾度もぶつかり合う。

 裏で回されているうちに感情が少しずつ芽生えていたのだろう。その中でリーナの頭を何度も叩きつけるかのような生体ユニットの声が響き、リーナは顔を顰める。

 

「リーナっ!!」

 

 しかしそんなユーディキウムの動きを牽制するかのように無数のソードピットがユーディキウムを制する。見やればレーアのダブルオークアンタがこちらに迫って来ていた。

 

「レーアお姉ちゃん……」

「リーナ……。貴方は一人じゃないのよ。一人で戦う事なんてないわ」

 

 ウイングゼロに寄り添うダブルオークアンタ。レーアはリーナを気遣い、その想いに触れたリーナは微笑む。

 

【……ソの温かサは何なノ? ナんデあなタダだけェッ!?】

 

 その温かなやり取りはその温かみを知らず、冷たい世界しか知らないユーディキウムの逆鱗に触れる。怒りを表す様に武装を一斉に放ち、ウイングゼロとダブルオークアンタは同時に飛び上がって避けるのだった。

 

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