ヴィヴィオ一途なのに……   作:碧河 蒼空

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14話 般若

 祭り当日。俺は一人で海鳴海浜公園を歩いていた。

 例年はなのはが俺を誘ってきたのだが、今年は祭りの話すら彼女の口から出てこなかった。

 そんななのはを誘うのもなんなので、今年は自由気ままに一人歩きをしている。

 クラスメイトと何度か会い、その度に挨拶を交わし、立ち話をしてはまた一人に戻っていた。

 フランクフルトをかじりながら真っ直ぐ道なりに進む。向かう先は笹が展示されている広場である。

 広場に出ると、夜には下からいくつもの照明に照らされる、短冊の他にも様々な飾りを身に纏った沢山の大きな笹が並んでいた。

 一般的な笹と違い、この笹は大人の身長の倍以上あると目測する。上の方にある短冊を見るのは、俺達子供には困難だろう。

「……何やってんだよ」

 俺は笹の上部に向けられた双眼鏡を覗いている少女に俺は話しかける。

「うぅっ……」

 双眼鏡で笹を見ている少女、なのはは気まずそうに振り返った。

「えっと……今年は早いんだね」

 なのはに誘われる時はいつも夜の待ち合わせなので、たまには昼間に来ようと思ったのだ。

「そうだな。で、本当(ほんと)なにやってんの?」

「今年はどんな願い事があるのかなぁって。うん、ただそれだけなの」

 視線を反らしてなのはは答える。

「それだけにしちゃ準備良すぎないか?」

 それだけの為に双眼鏡まで用意するだろうか。まるで誰かの短冊を探しているかのような……。

 俺はジト目でなのはを見つめた。彼女がうっすら変な汗をかいてるのは気のせいじゃないはず。

「それくらい普通よ」

 聞き慣れた声に視線を向ける。

「やっぱりアリサも一緒だ……」

 お前も一緒だったかと言おうとした俺は言葉を失う。視界に映ったのは間違いなくアリサだった。問題なのは彼女の格好である。まるで映画に出てくる暗視ゴーグルのような物を装着して、右手にはアリサの身長を優に超える棒が握られていた。棒は笹を掻き分けるための物だろう。

「お前だけは絶対、普通じゃねぇよ!!」

 俺は思わずツッコミを入れる。

「仕方ないじゃない。双眼鏡だと手が塞がるのよ」

 アリサはあっけらかんと言った。

「おい、なのは。ちょっとこっちに来い」

 あいつの関係者だと思われたくない。俺は少し離れた所でなのはから事情を聞く事にした。

「俺があれを見た今でも同じことを言うつもりか?」

 あれとは勿論、アリサの事である。なのはの言う“それだけ”の為にあんな装備を用意したりするはずが無い。

「うー……」

 なのはは唸りながらも、ついに観念して白状した。

 曰く、俺の願い事が気になったとか。そんな彼女にため息一つ吐く。

「そんな大した願いじゃないぞ」

 しゅんと俯くなのはの頭を髪が乱れないようポンポン撫でる。ナデポナデポ。

 そんな時、なのはの携帯電話が震えた。

「あっ」

 電話を取ってメールを確認したなのはは感嘆詞を口にした後、上目遣いで伺うようにこちらを見る。

「どうした?」

「すずかちゃんから見つけたってメールが来たの」

 なのははこの状況で行くに行けないのだろう。俺は苦笑する。

「行くぞ。場所は?」

 なのはからずずかの場所を聞いて歩き出すと、なのはが後ろから着いて来た。

 広場はそんなに広くない為、すぐにすずかと合流できた。

「あ、稔君」

 俺を見たすずかは不意を突かれた表情をする。

「よう。俺の短冊見つかったんだって?」

「あはは……」

 すずかは乾いた笑いを浮かべ、視線を逸した。

「で、こいつの短冊はどれよ?」

 俺たちより少しだけ早く合流していたアリサがすずかに問う。

「あれなんだけど……」

 そう言って笹の真ん中辺りを指差したすずかは釈然としない様子である。

「あっ、あった。……え?」

 俺の短冊を見つけたなのはは何故か疑問符を浮かべた。

「ちょっと、どういうことよ?」

 アリサは俺に詰め寄る。

「いや、何がだよ?」

「あんた、誰かと結婚したいって書いたんじゃないの?」

 ああ、そういう事ね。それをなのはが見て、相手を確かめようとした訳か。

「ああ、お前等と別れた後、やっぱ願い事変えたんだよ」

 俺の願い事は“フェイトの問題が無事に終えますように”である。まあ、裁判が上手くいくことは分かっているんだけどね。

「あぁ!!すっごく釈然としないわね。稔、誰と結婚したいって書いたのか言いなさいよっ」

 ……何でだよ。あ、面白いことを思い付いた。

「……分かったよ。折角の機会だ。俺も覚悟を決めるよ」

 俺はアリサの姿をヴィヴィオに脳内変換して深呼吸する。

「俺は最初、アリサと結婚できますようにって書いたんだ」

 俺は真剣な眼差しでアリサを見つめていった。

「……は?」

 呆けるアリサだが、俺の言葉を理解して急に慌て出す。

「ちょっと、何言ってんの!?冗談はよしなさいよっ!」

「冗談でこんな事言う訳無いだろ。アリサの事が好きだって気付いてから毎日アリサの事を考えてる。一度、考え出すと止まらないんだ」

 俺が畳み掛けると、アリサはしおらしくなる。

「アリサちゃん……」

 アリサに話し掛けるなのはの目からは今にも涙が溢れそうになっていた。

「なのは!?違うのっ」

 アリサは慌ててなのはに寄り添って宥める。しまった!?なのはに飛び火してしまった。

「……稔、本気なの?」

 アリサは不安そうにこちらを見る。

「まあ、冗談だけどな」

「……は?」

 再び呆けるアリサだが、直ぐに顔を真っ赤にさせた。

「あーんーたーねーーっ!!」

 拳を振り上げ、俺に駆け寄ろうとする。

「ま、まってアリサちゃんっ!!」

 今度はなのはがアリサを宥めようとしている。

「なのはっ放しなさい。あいつを殴るわっ」

 わ、悪ふざけが過ぎただろうか?俺はどうやってこの場をやり過ごすか思考を巡させていると、俺の目の前にすずかがすっと現れた。

「稔君、謝って」

「……え」

 すずか、だよな?今、目の前にいるのはいつも女神の様なすずかだよな?彼女の放つプレッシャーに俺は震えが止まらなくなる様な感覚に襲われる。

「謝って。言って良い冗談と悪い冗談があるんだよ」

「済みませんでしたーっ!!」

 俺は即この場で土下座した。

 ――この日、俺は思い知った。この世には絶対、やってはいけない事があると。過ぎた悪ふざけの代償を。すずかを怒らせてはいけないと。

 この後、しばらくアリサは口を利いてくれなかったのは言うまでもない




 なんとか7月7日に更新することができました。

 4行しか書けてないのに、18時半頃に今日が七夕だと気付きましたが、とりあえず大人買いした進撃の巨人を5巻まで読んで、慌てて書き始めるも、更新されたネット小説を読み始めてしまう。
 そして、JAM Projectのアルバムが5日前に発売していたことに気付き、アニメイトへ買い物に出かけました。帰っって飯食って食休みして、執筆再開しようとしたら水曜どうでしょうの再放送が始まってしまった。
 再開後も弟がフルブを始めるもんだから、それをチラチラ見てたら、気が付くとこの時間(汗) 
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