私立聖祥大学付属小学校。俺はそこで二度目のスクールライフを送っている。
今年、俺となのはは三年生。つまり、無印突入の年である。
ここで重要になるのがヴィヴィオのもう一人の母親、フェイトだ。
「……ちょっとっ、稔っ、聞いてるの!?」
思考の泉に浸っていた俺を、アリサ・バニングスの声が現実に引き戻した。
顔を声のした方へ向けると、金髪ロングヘアーに、まるで彼女の意志の強さを表しているかの様な瞳をした同級生の少女が不機嫌そうに目尻を若干上げて、こちらを睨んでいる。
「悪い、聞いて無かった。で、何の話?」
「将来の夢、だよ。稔君は何かしたい事ある?」
俺の問いに答えたのは目尻が若干低い蒼眼に、腰まで伸ばしたウェーブ状の青紫髪(せいしはつ)をカチューシャで止めている少女、月村すずかである。
「将来の夢、か……。仕事にするかどうかは別にして、杖(じょう)を教えたいな」
そんな俺の答えに、なのはが反応を示す。
「そっか。稔くん、毎日頑張ってるもんね」
なのはの言う通り、俺は一日も欠かすことなく杖を振っている。お陰で、転生して綺麗になった俺の手が、元に戻りつつあった。
杖との付き合いは転生前に遡る。小学校に上がった時、杖を振るう祖父の姿に憧れ、俺も杖を手に取った。故に、俺は小学生三年生にして杖歴二十年のキャリアを持っている。
「目標があるからな」
目標とは勿論、祖父の事。逝く直前まで俺や弟子たちの師であり続けた。俺の生涯かけての目標である。
「……目標、かぁ……」
なのはが考え込むように呟く。
「なのはだって見つかるさ。実現させたい目標が。どんな些細な事でも良いんだ。そして、その目標に向かって突き進む。アリサも、すずかも、俺も……」
そう言いながら、俺は掌(てのひら)を空に翳した。
「そして、いつかなのはも」
顔をなのはに向けると、彼女はぼーっと俺の顔を眺めていた。
「ま、俺達はまだ小学生だ。焦ることはないさ」
そう言って、なのはの頭にポンと翳していた手を乗せる。
そんな俺達を、すずかとアリサは微笑ましそうに眺めていたのを、俺は知らなかった。
『助けてっ……』
帰り道、公園を歩いていると、誰かの声が頭に直接、響いた。恐らく、ユーノだろう。昼休みに屋上でした会話も合わせて推測するに、今日が無印開始の日らしい。
俺にも念話が聞こえたという事は、少なからず俺にも魔力があるという事だ。その事に、俺は内心ガッツポーズをとる。これで、ミッドチルダへ行く理由が出来たのだ。
「なのは?稔?」
立ち止まったなのはと俺に、アリサが振りかえって尋ねた。
「今、何か聞こえなかった?」
「ああ。助けて、って……」
なのはの問いに、俺は肯定で答える。
「別に……」
「聞こえなかったかな?」
アリサとすずかはお互いで確認する様に視線を合わせ、それぞれなのはに否定の回答をした。
四人は辺りを見渡す。
『……助けてっ』
再び、脳に直接、声が届いた時、なのはは駆けだした。歩道から外れ、林の中へ走るなのはを俺が追いかけると、後の二人も俺の後に続いた。
暫く走ると、なのはが立ち止まる。その足元にはフェレットが一匹。
こうして、俺は原作介入を開始した。