俺と親父がアルフとフェイトを旅館に連れてくると、アリサがアルフを指差して叫んだ。そういえば、さっきアルフと一悶着あったんだっけ?
親父の後ろから俺がフェイトを連れて中に入ると、なのはは目を見開いて驚きを表す。
「士郎さん、席を二つ追加だっ」
親父がなのはの父、士郎さんに声をかけると、彼は苦笑しながらそれを了承した。士郎さんも親父の拉致癖には慣れている。
「それで、今回はどうしたんですか?」
どうしたとは、この二人を連れてくるまでの経緯だ。士郎さんはどれだけ慣れても、これだけは聞いてくる。
「ジュエルシードって危険物が事故でバラまかれて、そこのユーノがなのはちゃんを魔法使いにして、それを集めてたら、 こっちの二人も同じのを集めてて、それでさっき稔とこっちの嬢ちゃんが喧嘩してたんで、連れてきた」
親父が説明すると、士郎さんは顔に手を当て、口を開いた。
「……済みませんが、もっと詳しく聞かせて頂けないでしょうか」
多分、この説明で理解出来るのは親父だけであろう。
「……詳しくは俺から説明します」
このままだと埒が明かないので、俺がこの場で説明する事にした。
説明を聞いたみんなの反応はそれぞれだ。秘密にしていたことがバレてしまい、居心地の悪そうななのは。この街と、何よりなのはを巻き込んでしまった事に改めて落ち込むユーノ。こんな話を疑いもなく信じてくれて、心配そうな顔をするアリサにすずか。何を考えているのか読めない母。そして、親父と俺の言葉だから嘘だとは思っていないだろうが、信じられないと言った様子のその他全員。
親父は蕎麦を茹でてくるから話を始めとけと言い、部屋から出て行った。なんとも無責任な話である。
「……フェイトちゃんはどうしてジュエルシードを集めてるの?話しあいじゃ解決出来ないの?」
最初に口を開いたのはなのはだった。
「私はジュエルシードを集めないといけない。そして、あなたも同じ目的なら、私達はジュエルシードをかけて戦う敵同士」
なのはの問いに対するフェイトの答えはNO。
「だから、そういう事を簡単に決めつけない為に、話し合いって必要なんだと思うっ」
「話しあうだけじゃ、言葉だけじゃきっと何も変わらない」
お互いの言葉を否定しあうなのはとフェイト。
「だからって……」
なのはが反論しようとした所で、ジュエルシードがこの付近で発動したのを感じた。
「アルフッ」
「ああ」
フェイトがアルフに声を掛け、外へ飛び出す。
アルフもフェイトに続いた。
「待ってっ」
ユーノがなのはの肩に乗ると、なのははフェイトの後を追うように、ジュエルシードの元へ向かう。
俺も続こうとした、その時。
「おい、稔。蕎麦が出来たがら、お前も運ぶの手伝ってくれ」
蕎麦を持つ親父が戻ってきた。
「ごめん。ジュエルシードでなのはとフェイトが出て行ったから、行ってくる」
俺は親父に殴られるのを覚悟で、走り出そうとする。相手が親父なので、最低限の説明で済ませる。
「待て」
親父が俺を呼び止め、こちらに麺棒を投げてきた。
俺が唖然とすると、親父が口を開く。
「喧嘩は両成敗だが、男にはやらなきゃならねぇ時がある。今回は特別に手加減してやる」
拳骨のジェスチャーをしながら、そう言った。
そんな親父に、俺は笑って返す。
「そこは目を瞑ってよ」
そう言い残し、二人の元へと駆け出した。
おまけ ~その後の親父~
「行かせたんですね」
稔の走って行った方を見つめる親父に、稔の母が声を掛ける。
「ああ。いけなかったか?」
「いえ。むしろ、あなたが引き止めるようなら、私が行かせました」
二人は穏やかな表情で話している。
「稔の嫁候補達だからな」
「ええ」
この二人にも、真に稔が見ている者を見抜く事が出来ないでいた。
真面目な話かとお思いきや、最後にちゃんとオチが入りました(笑)