二人が戦っている現場にたどり着くと、フェイトがなのはに一撃を決め、空から地へと叩き落とした所だった。
俺はなのはに距離を詰めるフェイトの前に立ちはだかる。
「……そこを退いて」
フェイトは俺を見据えて言った。
「それは出来ない。俺は止めに来たんだから」
俺はフェイトの申し入れを拒否する。
「魔導師でないあなたじゃ、私を止めることは出来ないよ」
確かにそうかもしれない。だけど、そんな事は百も承知だ。
「まあ、踏ん張ってみるさ。争わなくても良いかもしれない相手と傷つけ合うなんて、そんなの悲しいじゃない」
俺は右手に持つ麺棒で常の構えをとる。(※)
「この前は何も出来なかったけど、今回はちょっくら出しゃばらせてもらうよ」
そして、フェイトにそう宣言した。
「……そうですか。なら……」
フェイトがデバイスを構えた次の瞬間、一瞬で俺の後ろに回り込み、鎌状にしたバルディッシュを右に凪ぐ。
何とか目で追う事が叶った俺は、右足を軸に旋回し、柄の部分を麺棒で受け止める。
魔力で身体能力を強化しているのだろう。今の一撃で感じた手の痺れは、とてもじゃないが女の子の出す一撃とは思えないものだった。
それでも、その一撃を防ぎきった俺を目にしたフェイトの表情は驚きに染まる。が、それも一瞬の事。今ので彼女の油断が消えたのか、真剣な顔に戻った。
「良い目だね。真っ直な、そして強い信念を感じる」
俺の言葉に対し、何も答えないフェイト。しかし、次の言葉で彼女が揺らぐ。
「そんな君が偶に見せる憂いは一体、何なんだろうね」
そう言い、俺は一旦引いて、再び常の構えをとった。そして、言葉と続ける。
「俺達には必ずしもジュエルシードを集めなくちゃいけない理由が無いんだ。ユーノは発掘した者の責任感から、なのははユーノの手伝いと町の安全の為に集めているだけだから」
俺は麺棒を握っていない左手を少し離れたフェイトに差し出した。
「多分、力になれると思うよ」
本当は分かっている。彼女は母親、プレシアの命令でジュエルシードを集めている事。プレシアにジュエルシードを渡す訳にはいかない事を。
しかし、今はフェイトに俺が味方であると思わせる事が重要なのだ。なぜなら、相手に取り入るのには、弱っている所に歩み寄るのが一番なのである。フェイトの場合は無印、つまり、今を除いて他には無いのだ。
「……ごめんね」
フェイトはポツリと言い、空に飛ぶ。
まあ、そうだろうな。今の彼女はブレシアの目的を知らないのだから。
空のフェイトは電気を帯びた黄色の魔力弾を複数個、彼女の周囲に生成した。
さて、フェイトが空にいる限り、俺は出だしする事が出来ない。別に、彼女を倒しに来た訳じゃないのだから構わない。麺棒一本で魔導士の前に出てきた時点で、一方的に凹られる覚悟は出来ている。だけど……。
「……手加減してくれると嬉しいな、なんて……」
展開された魔力弾が一斉に放たれる。回避は不能。
無駄な抵抗と知りつつも、麺棒を前に出すが、魔力弾とぶつかった瞬間にそれはへし折れ、魔力弾が俺に命中した。
身体(からだ)に電流がれ、俺は一瞬で意識を手放す。
一瞬で楽になれたのはフェイトの優しさだと信じたい。
※常の構え
杖道における基本の構えで、どのような攻防の変化も出来るようにと考えられた構えである。自然体で杖の中央を握り、右体側に軽くつけ、杖先へその高さにする。
(『全日本剣道連盟 杖道』米野 光太郎・廣井 常次 共著)より引用。
あれ、稔君はこんなに腹黒く書くつもりはなかったんですけどねぇ(笑)