Muv_Luv 白銀の未来     作:ケガ率18%

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叔父馬鹿炸裂!
4月25日誤字修正


17話

―白銀side―

 

4月18日

 -帝都城派遣部隊執務室-

 

「いや~もしかしてお邪魔だったかな?唯依ちゃんはお堅いから、最初からガツガツしたら駄目だよ」

「いえ別に俺と篁はそういう関係ではないので」

「そうなのかい?」

「はい、違います」

「でも最近の唯依ちゃん、家に帰っても物憂げな表情をしていたと思ったら、急に明るい顔になって声まで軽やかになっているんだよ!?これは恋だと思うんだがね~あっ!?もしかしてもう恋人になったということかい?それならそうと言ってくれないと~私も一応後見人としてだね「上司と部下っつー普通の仕事仲間です!というか!同じ部隊なんだから一緒の部屋にいるのは当たり前でしょうが!」え~ホントに何もないの?」

「ですから、篁との間には何もありませんっ!」

 

篁から電話(厄介事)を受け取り受話器を耳に持っていくと、初っ端から叔父馬鹿全開のトークに圧倒されてしまった。

 

「はははっ、ごめんごめん。白銀君と話すってなると、ついからかいたくなっちゃってね」

「全く、用件は何です?篁がこっちを滅茶苦茶睨んでいるので、俺としては早く受話器を置きたいんですが…」

 

この電話を受けた時から篁の目に殺気が灯っており、その瞳で睨まれているもんだから背中が冷や汗でやばいことになっている。

剛田も同じ気分なのか、縮こまって出来る限り篁の視線に入らないようにしている。他者が今この部屋の関係を見るならば、誰がどう見ても篁が上司だと答えるだろう。

 

「それは済まなかった。早速本題に入るよ」

 

巌谷中佐も受話器越しで篁の怒気を感じたのか、即座に真面目なトーンに戻り会話が再開される。

 

 

 

「―――というわけなんだ。どうか協力してくれるかい?」

「分かりました。俺のほうから取り次いでおきます」

「ああ、助かる。勿論白銀中尉にも期待している。XM3を発案したその発想力、存分に発揮してくれ」

「はっ、了解です」

 

ガチャン―

 

ふぅ…要件はえらく真面目だったな…

 

「中尉、叔父様のお相手お疲れ様です。その、なんというかスミマセン」

「まぁ篁が謝ることじゃないし…それより、また横浜に行くことになった」

 

中佐からの頼まれ事を達成するには、俺が出向いた方が都合がいいだろう。

 

「おいおい、俺としてはいい加減置いてけぼりは勘弁願いたいんだが、今度も隊長一人だけなのか?」

「いや、今回はある程度の期間向こうに居ることになるから、仕事などの予定を考えて部隊ごと出向するつもりだ」

「許可は大丈夫なのですか?中尉の立場からすると、そう簡単に帝都城から離れられないのでは?」

「そのことなら大丈夫だ。元よりあった予定が少し早まっただけだし、向こうでも仕事は届くからな」

 

斯衛での目的も多方片付けたし、そろそろ注文した品も予定では届いてる頃だ。受け取りに行かないと夕呼さんに怒られる。

 

「仕事があるからって剛田もそう不満そうな顔をすんじゃねぇ。仕事の中には横浜の精鋭部隊との演習も入っているんだぞ」

「本当か!?」

「嘘ついてどうする。精鋭部隊は全機不知火編成の中隊だ。斯衛じゃ滅多に相手できないぞ」

「ヒャッホウ!!最高だぜ隊長!」

「篁も斯衛以外の軍ってのを知ることのできるいい機会だ。別に反対意見は無いだろ?」

「はい」

 

ならば早速申請だ。俺は仕事を篁に任せ、部隊の直属の上司である紅蓮大将に連絡を付けた。

 

 

 

 -紅蓮執務室-

 

「では横浜への出向については許可しよう。じゃが、一体何時まで向こうに居続けるつもりじゃ?期間次第では儂でも抑えきれんぞ」

「今回は内容が内容ですから、少なくとも2ヶ月程は見ていただきたいのですが、難しいでしょうか?」

「う~む、流石にそこまでは難しいの。お主の言った2ヶ月というのも仕事内容を考えれば、寧ろ足りない位じゃと理解はしているのじゃが…」

「ですが行っては帰還してまた直ぐに出向して、を繰り返すわけにも行きませんし、出来るならば1回の出向で終わらしたいのですが」

 

流石に大将といえども今の俺をそうそう簡単に扱うことは無理か。XM3で俺個人の価値が上がったのはいいが、今の立ち位置のままでは活かしきれないな。早いうちに解決策を用意しないと拙いぞ。

今回のことだって巌谷中佐が態々俺を通して頼んだという経緯を考えると、この任務は今後において重要になってくるものなのだろう。上手い解決策はどこかに無いものだろうか…

 

「妥協案ってわけじゃないっすけど、俺だけちょくちょくこっち(帝都)に帰ってくるってのはどうですか?」

「無理じゃ。文句をつけてくる連中は、白銀を斯衛軍から出すこと自体を嫌っているんじゃよ。それほどまでにXM3の機動概念というのは貴重なのじゃ。実際儂も出来るならば、白銀には帝都にいてもらいたいと思っておるしの」

「駄目か…」

 

仕方ない。怪しまれるかもしれないけど、未来情報一つ切るしかないか。

 

「では、来年冥夜様が横浜へ向かわれる際の、足場固めとしてならいかがでしょう?」

「お主どこでそれを知った?あの方の予定について知る者など、儂を含め数人しかおらんはずじゃが…」

「魔女からの助言です。先日話した際に教えていただきました。来年来るであろう高貴なお方と、その腰巾着の為に動くつもりはないかとも」

「確かにそれならばお主を行かせる理由としては十分じゃが、未だに御剣の嫡子を向かわせることに反対してる者達がおる。そやつらが収まりさえすれば、問題なく行かせることが出来るぞ」

 

つまり、「横浜に行かせてやるから、こっちの問題も解いていけ」ってことか。

また面倒な事を押し付けてくるな、このおっさん。こんな厄介事、俺みたいなペーペーに任せるような仕事じゃないだろ。

 

「つかぬことお聞きしますが、反対されている方とは誰なのでしょうか?」

「この話を知っている者の中で、表立って反対を表明しているのは月詠だけだが、月詠家は斯衛の中でも赤筆頭なだけあって発言力が強いからの。それなりに苦労しとるのじゃよ」

 

月詠さんか~行きたくね~な~

しかも今回は冥夜の事だからな~話し合いだけで済めばいいが…

 

「分かりました。月詠家の説得、俺がやってみます」

「おぉ、助かるぞ。弟子である冥夜様を国連軍に人質として送り出すのは、AL4に対する警告という面も在るゆえ仕方のないことなのだが、如何せん儂自身納得しきれない部分があっての。あまり月詠を責められないのだ」

「期待はしないでください。俺としても、あの月詠をすんなり説得できるとは思ってもないんで」

「分かっておる。話し合いの場は明日にでも用意出来るだろう。頼んだぞ」

「了解です」

 

 

4月19日

 -紅蓮家応接間-

 

昨日の話し合いの後、紅蓮大将が月詠の家に連絡を取り話し合いの場が用意された。

話の内容が守秘義務に抵触するので、場所は帝都城ではなく紅蓮大将の家の応接間での話し合いとなった。これには正直助かった。何か起きたとしても個人の家ならば、あまり大事にはならんだろう。

 

そして予定していた時刻の15分前に月詠家の代表者が紅蓮宅に現れた。

 

「それで、今回話し合うのはそこにいる子供か」

 

よりにもよって代表者は月詠真那さんだった。本人が警護役になるからなのだろう。

目の前に現れたときから、あふれ出る怒りを微塵も隠そうとしてない本気(マジ)モードの真那さんが相手って、話し合いになるのか?

 

「お久しぶりです月詠真那さん。白銀家当主、白銀剣です。昨年の煌武院派の年始の挨拶で会って以来ですね」

「久しぶりだな。悠陽様とも仲睦まじかった貴様が、冥夜様の国連軍への人質に賛同するとはな」

 

今回ばかりは立場が悪すぎる。

煌武院派に属している俺が、非公式とは言え煌武院本家の者を人質に出すのに賛成してるって事だからな。

 

「しかし、貴様が国連軍にいるというならば、冥夜様も少しは安心していただけるか」

「えっと…話が見えないのですが、何故会ったこともない俺が国連軍にいることが、冥夜様の安心に繋がるのでしょうか?」

「なんだ、白銀にはまだ話が届いていないのか?」

「いえ、その話というのもまったく分からないのですが…何かあったのですか?」

「いやな、悠陽殿下に仕えていた従兄弟から話を聞いたのだが、貴様と冥夜様との間で婚約を結ぶとか、既に婚約を結んだとか聞いたのだが、違うのか?」

「まったく俺の預かり知らぬ話です!誰です?そんな話を考えたのは!?」

「なんでも発案者は悠陽殿下だと聞いたのだが」

 

悠陽さーん!?ちょっとあなたハチャメチャすぎんでしょ!

この間会った時には一言も冥夜とのことなんて話てませんでしたよね?あれか?俺と会ったあとで決めたのか?そうだとすると一月過ぎた程度でこの浸透力!?外堀埋めんの上手すぎるだろ!!!この調子でいくと、来年の今頃には「俺たち結婚しましたー」なんてことになってるぞ、おい。マジで笑えねー冗談だろ。

 

「白銀の様子を見るに、どうやらこの話は悠陽殿下の流したデマのようだな」

「はい、事実無根であります!」

「まぁ、悠陽殿下が命じれば嘘も本当になるのだがな」

「ぐぅ」

 

思わずグゥと言ってしまったが、本当に婚約とか冗談抜きで拙いんだよ。純夏が目覚めたときを考えてみろ…

 

 

 

 

~~~~~

 

《やぁ純夏、ようやく起きたか。気分はどうだ?》

《あっ武ちゃんだ~調子は悪いけど、武ちゃんの元気な顔を見たから気分良くなったよ~》

《そうか、気分悪くなったら言えよ?お前3年以上寝続けたんだからな》

《嘘だ~ってあれ?武ちゃんなんかおっきくなってる。ということは本当なの?》

《嘘ついてどうすんだよ》

《うわー本当なんだーあっ私もおっきくなってる》

《純夏さんや、自分の胸を見てそういう発言をするのはどうかと思いますよ?》

《だって~そこが一番分かりやすかったんだもん。そういえば3年以上眠ってたって言ってたけど、私って何歳になったの?》

《18歳になってるぞ》

《えっじゃあもう私結婚できる年じゃん!》

《俺はもう結婚してるけどな》

《えっ……》

《いやだから結婚してるって…っておい!純夏?お~い純夏さん~?ねぇってば~もしも~し?えっこれ拙くね?純夏!おい返事をしろ!純夏ぁぁぁ~~!!!》

 

~~~~~

 

 

 

 

 

ってな具合になって一気に感情爆発して00ユニットがショートするわ!

そもそもな話、起きたら3年以上経っていて、寝ている間に勝手に体を改造させられて、しかも思い人が結婚してた。って中々に酷いストーリーだな。考えようによっては、この世界に無理やり連れて来られたシロガネタケルより悲惨だぞ。

 

だが、純夏のことを話すことは出来ない…

クソッ、何でこんなときに限って夕呼先生がいないんだ!こういった場所こそあの人の得意分野だろうに…

 

「お前はどうして冥夜様を国連軍へ行かせたいのだ?」

「それは、今はただ必要なことだからとしか言えません」

「では、お前は冥夜様に犠牲を強いるというのか!?国の為でなくただ人質としてそこにいるだけという、そのような生き方を冥夜様に強いるのか!?」

「国連軍なら!斯衛でなく国連軍ならば、冥夜様も衛士になれます。衛士になられれば共に戦場で駆けることが出来ます!それでは駄目なのでしょうか?」

「斯衛でなくとも斯衛の本分は変わらないというわけか。だがたとえ国連軍へ行こうとも、冥夜様が衛士にならせると思うのか?」

「なります。無理でも俺がならせます!」

「ほぅ、今の言葉に嘘はないな?」

 

これは自信を持って言える。なんてったて冥夜は、唯一あ号を戦術機で切り結んだ人類なんだ。あれ程の決意を持つ奴が、衛士になれないはずがないだろ。上との繋がりでなれなかった記憶とは違って、今回は俺がパイプ役なんだし、冥夜の気持ちを摘むようなことはさせねぇ。絶対衛士にさせてみせるさ。

 

「はっ!我が名と剣に賭けて」

「ならばその言葉に見合うだけの働きを見せてみろ。期間は冥夜様の行方の決まる今夏までだ。それが出来ぬのなら私の首を差し出してでも、冥夜様の国連軍行きは止めさせてもらう」

「はっ!」

 

俺が返事をすると、月詠さんはこれで用は済んだと、それ以上居座ることなく紅蓮邸を出て行った。

 

「良くやった。これでお主を横浜へ送ることが出来るわい」

「大将、居るなら見ているだけじゃなくて、俺に助け舟くらい出してくださいよ」

「かっかっかっ、別に送らんでもこうして無事に説得出来たじゃろうが」

「それでもっすよ!今回は偶々冥夜様にご理解のある方が来たからよかったものの、もしこれが斯衛の誇りやら面目しか考えてないような人だった場合、俺じゃ対処のしようがなかったですからね!」

「まあまあ、済んだことをあれこれ言うもんでもなかろうて」

 

その通りなんだが、紅蓮大将の笑顔を見るとなんか頷きたくない何かがあるんだよな~

 

「では白銀剣中尉、来週付けでお主の部隊に国連軍横浜基地への出向を命じる」

「はっ!その任務謹んでお受けいたします」

 

まぁいい、これでまた横浜に戻れる。すべてはそれからだ。

 

 

 




もしかしたら次回の投稿が、けっこう遅れるかもしれません。

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