Muv_Luv 白銀の未来     作:ケガ率18%

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※これまで戦術機の描写にて直刀と長刀を混合して使用していたため該当箇所の訂正をしました。


24話

―白銀side―

 

6月11日

 -国連軍横浜基地B17夕呼執務室-

 

「あ~そこそこ」

 

昨日の模擬戦を含めたその後の詳細報告のために執務室へ入ると、同じく昨日の会談でここ最近の問題を片付け終わり、久方ぶりの休息でだらけていた夕呼先生の暇潰しに付き合わされてしまった。

具体的に言うと、

 

「夕呼先生相変わらず肩凝ってますね。長い時間揉んでも全然解れる気配がしないっすよ」

「そりゃアタシの肩には人類の未来が圧し掛かっているんだから、これくらい肩凝るのは当たり前でしょう。いい?決して歳のせいじゃないからね?」

「うっす」

 

このように30分以上も肩を揉ませられたり、

 

「白銀~まだ部屋片付かないの?もう1時間も経っているわよ~」

「あんだけ汚い部屋1時間そこらで片付くはずないでしょ!」

 

書類が彼方此方で山のように積み上がっていて、一見すると足の踏み場も無いような部屋の片付けをしたり、

 

「そうそう、鑑のこと00ユニットに組み込んだわ」

「マジっすか!?」

「って嘘吐いてきた」

「…まぁそんな嘘を吐く予定でも無ければ、態々純夏の入ったシリンダーを隠し部屋に当てて、他のシリンダーを純夏の入っていたシリンダーに見せかけるなんて偽装しませんか」

「そういうこと。分かってきたじゃない」

 

純夏関連のことで連絡ついでにからかわれたりと、肉体的にも精神的にも色々と疲れる内容であった。

 

「それと、白銀にはクーデター軍に入ってもらうことになったから」

「上との話し合いでクーデターを起こすこと認めて貰えたんすね。クーデターに関しては薄々こうなると分かっていたんで構わないです。じゃなかったら態々素人の俺にスパイの真似事なんてさせるはずないですもんね」

「分かっているならいいわ。それとアンタがスパイしてる間、斯衛側でアタシの駒として役に立ちそうな奴誰か知らない?」

 

夕呼先生の無茶振りに対応出来る人か………

 

 

 

すまん篁。人類の未来の為、ここは犠牲になってくれ。

 

「そういうことでしたら副官の篁を推薦しておきます。頭は固いですけど能力は高いですし、家柄も立派で派閥の上からの信頼もありますから、斯衛軍の中でもある程度の無理は利くと思いますよ」

「ならそれでいいわよ。ただ頭固いってどれくらいなの?」

「まぁ絵に描いたような軍人って感じですかね。さらに生まれ持った生真面目さもありますから、夕呼先生とは反り合わないと思いますよ」

 

篁を付けた効果で上手いこと夕呼先生の奔放な性格も緩和してくれると、部下の俺としては今後の活動的な意味で助かるんだがな~無理だろうな~

それより篁が夕呼先生に変に毒さる可能性のほうがあるよな~夕呼先生みたいのがこれ以上増えるとか勘弁して欲しいな~

 

「有能でもそんな性格の奴は勘弁願いたいわね。白銀がクーデター側に行くまでにどうにか頭の緩い感じに矯正できないの?榊相手に上手いことやっていたアンタなら、どんな堅物相手でも6ヶ月近くあるんだしイケルでしょ?」

「あ~アレは無理っす。矯正しようとしたら寧ろこっちが矯正されますね。勘ですけど、篁の矯正なら俺より紅蓮大将の横に置いておいた方が効果あると思いますよ?」

「紅蓮大将とかアタシが一番苦手な部類じゃない。あんなのが控えていたら仕事が進まなくなるわ。アンタ人類滅ぼしたいの?」

「そこまで言い切りますか…色々言われてる紅蓮大将ですけど、遠くで見てる分には面白い方なんですよ」

「「遠くで見てる分には」でしょ?あんなのが一日中傍に居るのを想像してみなさいよ。それだけで仕事なんて出来なくなるわ」

 

俺達の大将なんだが酷い言われ様だな。あんなでも慣れちまえば人の見た目したナニカ程度には落ち着くんだが…

 

「じゃあ諦めて下さい。篁の頭の固さはモース硬度15以上ありますから」

 

ちなみに委員長の固さはモース硬度15ぴったりだ。彩峰が関わった場合はモース硬度15以上になるが、普段から融通が利かないわけではないからな。

 

「榊以上の固さって頭で突撃級の甲殻に穴開けられるレベルじゃない。そんな人間いたのね~」

「戦略兵器レベルですよ篁のアレ(説教)は」

 

昨日も模擬戦の後大変だったからな~篁にはもう少し事の裏側を見せて世界に対する柔軟性ってのを教えたほうがいいのかもしれないな。

 

「何?アンタ上官だってのに説教なんかされるの?」

「篁って怠けているようなら相手が上官でも平気で怒ってきますから。さっき言ったじゃないですか生真面目だって」

「ますます嫌になってきたわ」

 

普段先生から被っている被害を考えたらこれくらいは我慢して欲しい。篁が仕事が出来るというのは本当のことだし、性格面にさえ慣れさえすれば間違いなく優秀な人材なんだから。つかこれを機に、夕呼先生の怠けグセ治ってくれないかな?

 

「本当にそいつしかいないの?アンタ五摂家の当主にも顔が利くってのに、こういった人材には恵まれてないのね」

「頼めばかなりの数動かせるようにはなりましたけど、夕呼先生が満足するレベルの人はそうそういませんよ」

 

だって夕呼先生の直接の部下(AL計画が選び抜いたスパイ)として送られてくる程超優秀なピアティフ中尉ですら、現状だと基地の運営やその他の色々な雑事(夕呼先生のお世話)で色々とギリギリな状態なんだ。そんな激務に対応出来るような人間そうは居ない。つか、居るならばピアティフ中尉がここまで酷使されることも無かった筈だ。

 

「仕方ないわね~気は進まないけどその篁ってので我慢するわよ」

「ありがとうございます。ついでなんですけど、篁に裏の世界ことについて教えてくれませんかね?」

「はぁ?何でアタシがそんなことしなくちゃいけないのよ」

 

ここで俺が教えるのは面倒だからなんて正直に言ったら、前みたいに辞書が飛んでくるんだろうな~

 

「昨日のトライアルで案の定妨害を受けたんですけど、その妨害を発見した途端、篁が試合を無効にしようとして一悶着ありまして…俺の部隊に所属していることですし、少しは裏の事も教えておかないと拙いかなと思いまして…」

 

あの時は本部にいた紅蓮大将が機転を利かせてその場だけの注意という形で収まったから良かったけど、報告した時に大将がいなかったらかなりの厄介事になっていただろう。

 

「それで?どうして教師役がこのアタシなわけ?アンタの部下なんだからアンタが教えるのが筋でしょうに」

「俺だと一体どこまで教えていいのかの線引きが分からないんですよ!!」

「そういえばアンタは全部知っているのよね…乗り気はしないけど仕方ない。その篁ってのがアタシの駒になる前に少し仕込んでおきましょうか。勿論これは貸しよ?」

「それくらい百も承知ですよ。助けが必要な時は遠慮なく俺のこと使ってください。一個中隊程度なら用意してみせますから」

「覚えておくわ」

 

よし!これで余計な厄介は回避出来るうえ、裏まで知っている優秀な部下が手に入るというわけだ。

夕呼先生への貸しなんて今に始まったことじゃないし、どうせ貸しを作らなくても無茶振り強要されるんだ。このくらいの旨みは許してほしい。

 

「次ここへ顔出すときにでも篁を連れてきます。じゃ失礼しました」

 

 

 

―唯依side―

 

6月14日

 -夕呼執務室-

 

 

一体今度は何が起きたというのか。

 

今朝隊長と顔を合わせた途端、詳しい説明も無しに地下の機密エリアに連れて来られたと思ったら、そこで待っていたのは横浜基地の副司令。私を連れて来た隊長は私を副司令に紹介し終えると、何も言わずにさっさと自分の業務へ向かっていった。隊長なら部下をこんな場に一人残して帰らないで下さい。

そもそもなんで私は連れてこられたのだろう?私のような者が副司令ほどの方と話すことなど何もない筈なのだが…

 

「へ~貴女が白銀が言っていた篁少尉ね」

「失礼しましたっ!斯衛軍対外派遣部隊所属、篁唯依少尉であります!」

 

どうやら原因は隊長殿のようだ。隊長の名前が出てきた途端私の抱いていた緊張感は消えたが、代わりに不安が私の頭の中を埋め尽くした。あの人は今度は一体何をしたというのですか!?

 

「あ~そんな畏まらなくていいわ。アタシ堅苦しいの苦手だから、もっと軽い感じでお願い」

「いえ、香月副司令殿は本来私のような者は会話することも叶わぬ立場の御方。そのような方に礼を欠いた言葉など私は口に出来ません」

「……本当に白銀から聞いた通りの性格ね。まぁ最初から上手くいくとはアタシも思っていなかったけど…」

「呼び出された理由を伺ってもよろしいでしょうか?」

「別にアンタ達が何か問題を起こしたってわけじゃないから落ち着きなさい。コーヒーでも飲む?」

「いただきます」

 

私としてはごく普通に質問したつもりだったのだが、どうやら副司令からは大分焦っている様に見られたらしい。

あっ!このコーヒー本物だ。基地の副司令ともなると支給される飲料もXPに置いてあるモドキシリーズじゃないのか。

 

「落ち着いたみたいだし、貴女を連れてこさせた理由を話しましょうか」

「お願いします」

「今後白銀の部隊にやってもらう予定の仕事の中に、機密レベルの高い情報を必要としているものがあってね。白銀も情報は知っているけど、それを部下に教える権限を持っていないから、この基地の中でその情報を教えることができるアタシのところに話が来たわけ」

「それはこの間の工作を見逃したことと関係があるのですか?」

「これからの仕事の中には世界の裏側と関係するものも多いからね。あんな子供染みた嫌がらせを一々構う暇なんてないし、逆に泳がせて致命的な情報を漏らすのを待っていた方がお得なの」

「はぁ」

 

理屈は分からなくもないが、そのような悪事を黙って見過ごすというのは些か心労が貯まるな。だがこれも任務。ならば私は従おう。

 

「でもいきなりそんな理由で黙ってろと言ったところで、裏の情勢を把握していなければ判断も出来ないでしょう?派遣部隊ということで色々な所に顔を出すであろう篁には、そういった点でも裏の事情を知っておいて欲しいの」

「分かりました。そういt「なら、早速今貴女のいる場所から話していきましょうか」っえ?」

「何惚けているのよ?アタシが教えているんだからメモ取るなりしなさいよ。アタシの時間は貴重なんだから、そう何度も同じこと言ったりしないわよ」

「はっ、はいっ!失礼しました!」

 

いきなり言われて準備など出来るわけないが、これくらいの理不尽さなど日々の訓練で鍛えられた私にとって些細なことだ。

 

 

 

数時間後―

 

「へぇ、流石に白銀が薦めるだけあって中々飲み込みいいじゃない。この調子ならそう時間は掛からないでしょう。次からはこっちで時間指定するから、さっき渡したパス使って来なさい」

 

初日ということで分かりやすいよう今この帝国が置かれている状況の説明から始まった授業は、香月副司令が私の飲み込みの良さに感動したらしく、始める前とは打って変わり嬉々として詰め込んだ結果、一日の終わる頃になってようやく終了となった。

 

「本日はありがとうございました」

「…ねぇ、そのお堅い口調本当にどうにもならないの?」

「無理です」

 

貴女も学者畑出身とはいえ副司令なのだからいい加減言葉使いには慣れるべきだ。というのが今日一日副司令と過ごして抱いた私の感想だ。

 

 

 

―白銀side―

 

6月30日

 -???戦略研究会会議室-

 

帝国軍では有志が集まって作られる研究会がいくつも存在しており、一年の半分が終わる本日も一つの研究会が開かれていた。

 

「我々の新たな同士となってくれた斯衛軍派遣部隊所属の白銀剣中尉だ」

「斯衛軍派遣部隊所属、第一中隊中隊長の白銀剣中尉であります。この度は憂国の烈士の一員として加えて頂きありがとうございます」

 

今日の会議を取り仕切っていた陸軍中佐に紹介され立ち上がると、さして広くもない部屋をさらに狭くしている者達に向かい挨拶した。集まった者の内、何人かから敵意の篭った視線を貰うが、その程度でたじろぐほど軟ではない。暫く黙って受け入れていれば、俺に刺さっていた視線も落ち着いた。

 

「この場にいる者達の中には、XM3のことで白銀中尉を気に食わないというものもいるだろう。だが、XM3に関しては白銀中尉も本心ではない。その証拠として当初XM3を開発しようとした際は帝国内部のみで行おうとした記録もある」

「ならば何故国連軍などに情報が流れたのだ!」

「それについても説明する。当初は国内だけで開発しようとしていたのだが、国内の技術だけではXM3が完成することは叶わず、それを受けて斯衛の上層部と横浜の間で取引が行われたのだ!国連軍で製作したことに白銀中尉の意思はない!」

「そういうことならば、受け入れしなくもないが…」

「やけに言いづらそうだな。ならばもう一度話し合おうではないか。その間申し訳ないが白銀中尉には暫く待っていてもらおう」

「はっ!了解しました!」

「なに、心配しなくとも結論は変わらんさ」

 

その後、一旦俺を除いた者達で1時間近い話し合いが行われた末(一部の者達は未だ納得していないようだったが)、俺の戦略研究会入りが決定した。それは俺の諜報員としての仕事が決まったことでもある。

 

決まったな。

これからは人を殺めることも増えるだろう。他人を態と見捨てるような事態も起こるだろう。

でもな、あの悠陽がこの国を背負って立つって決意したんだ。なら俺はその決意を叶えるため、立ち塞ぐものを切り倒す剣となろう。降りかかる悪意から身を護る盾になろう。この国の未来の為ならこの身を闇に染めることに迷いはない。

 

 

 

だからさ、悪いけどこのクーデター利用させてもらうよ。

 




私事ですみませんが、次の休みに親知らずを抜くことが決まり、もしかしたら術後の痛みで暫く投稿できないかもしれないです。

真横に生えてきたから切るしかないって言われて…今まで成長しないから先生も見逃していたのに、成長してきた途端にこの仕打ちだよ。何よりもこれで有給が消えるというのが悔しい。
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