久々に書いたので少々文章が怪しいですが、モチベーションアップの為にも投稿します。
―白銀side―
6月30日
-???戦略研究会会議室-
「こうして面と向かって会うのは初めてだな。本土防衛軍所属沙霧尚哉、階級は中尉だ。君のような剛の者が仲間に加わってくれて私も嬉しい」
研究会入りした俺をまず歓迎してくれたのは、この間剣を交えた沙霧中尉だった。
「この間の模擬戦以来ですね。あの時は練度の高さに驚きました」
「君の武御雷の動きも凄いの一言だ。あの模擬戦の後に我等の部隊にもXM3が導入されたが、扱ってみて中尉の技量の高さを思い知ったよ。白銀中尉の様に使いこなすには、まだ暫く掛かりそうだ」
「XM3は俺の思い描いた動きを再現するために作って貰いましたからね。そう簡単に他人に技量を抜かれてしまっては、発案者としての立場が無くなってしまいますよ。それに沙霧中尉ほどの技量があれば、1ヶ月もしないうちXM3を自分のものとして扱えるようになっていると思います」
会話の内容自体はそこまで親密とはいえないようなものであったが、一人で浮いているよりか大分マシだ。諜報員として友人も何人か作らなければならないだろうが、入った直後(しかも、けっして歓迎ムードではない状況)から動き回るのも怪しまれる。
沙霧中尉のように向こうから話しかけられるのが一番なんだが、周りの連中は俺のことを遠巻きに眺めるだけで話しかけてきそうにないな。
仕方ない。夕呼先生が確保しているスパイを売って、そこから手柄を立ててこいつ等の信用を稼ぐか。クーデターの時に信用がないままじゃ、そこまで被害を与えられないからな。
しかし、国連軍に出向してる内は中々こちらに来る事は難しそうだ。クーデターに関しては斯衛に戻ってからが本番か。
7月5日
-国連軍横浜基地正門-
「お久しぶりです月詠中尉。横浜基地にいる斯衛の先任として歓迎しますよ」
「あぁ、白銀中尉も歓迎ご苦労だったな」
俺が正式に横浜基地へ出向してから約2ヶ月が経ち、以前約束したとおりに月詠中尉の部隊が横浜基地へと出向してきた。
「お前が歓迎してくれるのはいいが、ここの基地の者達からはあまり歓迎されていないようだな」
「俺達が来た時も似たようなものでしたよ。それに先日の事件から日も経っていないですし」
「いくら国連軍少佐横領事件なんてものが起きたばかりとはいえ、これほどの警戒は幾分し過ぎな気がするがな。ここの連中は私のことを帝国から送られた監査役とでも勘違いしているんじゃないか?」
相変わらず国連軍兵士に対しては厳しい目をする。確かに冥夜を任せるに値するかを確認する為に横浜へ来た月詠中尉からすれば、今の横浜基地の状況はあまり良いものには映らないだろう。
冥夜の件が上層部で既に決定されたとはいえ、月詠さんほどの人が反対を示せば流れてしまう可能性もある。現状は書面を用意したとは言え、一大将が勝手に約束したモノでしかないのだから。
冥夜についても、ちょうど都合のいい人質として冥夜の名前が上がっているだけで、別に何が何でも冥夜でなくてはならないという理由など斯衛にはないからな。
しかし、こちらとしては「シロガネタケル」が来た場合に備え、何としても横浜基地の環境を認めさせ、冥夜を訓練兵として横浜に連れてこなければならないわけだが…月詠中尉が初っ端からこの様子ではなんとも厳しい戦いになりそうだ。
7月6日
-夕呼執務室-
そうして始まった月詠中尉による横浜基地監査初日。どうやら昨日の時点で自由に動ける範囲内を調べ回っていた様で、初っ端から横浜基地が抱える問題点を幾つも挙げられ、俺は大いに頭を悩ませていた。神宮寺軍曹という存在がなければ、現時点で詰んでいただろう。
「う~む、大抵は綱紀粛正を確り行えば済むが…兵士の質についてばっかりは解決策が思い浮かばん」
月詠中尉に挙げられた問題点の大半は、年内に行われるであろう大掃除が済めば解決するモノだったが、如何せん人員の緊張感や練度などといった根本的な部分については、上層部がどうこうしたところで即座に変化が現れるものではない。以前のように基地内にBETAを放せばここの人達も緊張感を持つだろうが、そんなことしたら冥夜どころか207B分隊の話そのものが無かったことなるだろうし…
「いっそのこと問題のある奴ら全員他の基地に飛ばすか?」
「そんなことしたら
俺の零した思いつきに夕呼先生がツッコミを入れる。
「そんな人員減ります?意識付けのための見せしめとして、全体の2割程度を飛ばせば済むと予想しているんですけど」
「アタシからしてみればここで問題なく使える奴なんて社とA-01の連中にピアティフと基地司令位なものよ?」
「夕呼先生、流石に月詠中尉、というか斯衛の上層部もそのレベルは望んでないと思います」
「あら、そう?」
これについては聞いた相手が悪かったな。
記憶を得た夕呼先生にも苦手な分野はある。コネが幅を利かせる人員補充などが特にそうだ。
これは夕呼先生が常人の何倍もデキル人物なので、求める人材のハードルが通常より非常に高くなっているというのもあるが、国連軍内部の大多数が未だAL5に組みしているというのが大きい。
そのような状況下でAL5に属していない人材を、AL5側の妨害が行われている中で探すとなると、いくら未来の情報を持った夕呼先生でも一筋縄ではいかない。しかも、今回の要求される人数は基地の半数以上にも及ぶ。
上層部の人員については、以前より予定していたことなので、ある程度のアテは見つけているが、基地全体に及ぶ人員となると相応の時間が必要になってくる。
こうなると、下士官については時間をかけて人員の入れ替えを行うよりも、今現在横浜基地に所属している者達の意識改革を図ったほうがマシだろう。
「つかぬ事お聞きしますが、夕呼先生が国連軍内部で力の及ぶ範囲ってどんなもんです?特に人事権に関してなんですが」
「横浜基地に関することなら佐官以上でなければ幾らでも自由にできるけど?でも無能を追い出したところで、有能な奴を持ってくる力はないわよ?」
「いえ、上位の者は綱紀粛正でどうにかなると思うのですが、それのあまり意味のない末端の兵達は意識改革を図ろうかと思いまして」
「どうするって言うのよ?」
「クーデターの現場として横浜基地を使うんですよ。戦場を間近に感じることが出来れば、少しは意識も変わると思うんです」
この基地の人達が低く見られているのは平和ボケしているというのが大きい。実際、基地の中でBETAを放したトライアル事件が起きた後の横浜基地は、BETAに攻め込まれた時の対応もBETAが戦術を用いたことから後手に回ったものの、決して今言われているほど無能でもなかった。
今回も人員そのものは変わらないとなれば、トライアルの時のような危機感があれば同じように意識も変わる可能性が高い。
夕呼先生に横浜の人事権があるならば、多少クーデターの被害で人員が減ろうとも、そこまで問題にはならないだろう。
「トライアルの時のBETA代わりに、クーデターを持ってくるわけね。それにしても直ぐに効果が現れるわけじゃないわよ?」
「ここでの俺の立場はただの出向部隊です。そんな立場じゃ基地の細かい部分までは面倒見切れないですし、こういった意識改革は常日頃からの心掛けの方が重要ですから」
というより、斯衛に認めてもらうには基地全体に常在戦場の意識がないと駄目だ。それには一部の人間が口煩く言って聞かすより、自分から意識を改めるような環境を作るほうが重要だろう。
「神宮寺教官のおかげで月詠中尉に関しては認可を貰えそうですし、帝国の厄介事まで請け負うことになれば、斯衛の上層部も此方の要求を断りにくくなると思いますよ?」
「となると、大掃除の時期も早める必要が出てくるわね。ちょうど大掃除ってことで12月を予定していたのだけれど、それじゃ来年の入隊には間に合いそうもないわ」
「俺の意見受け入れてくれるんですか?」
「いざという時は強権使って無理やり入れようかと思っていたけど、ここまで来れば真面目に取り合ったほうが後のことも考えると得だし、基地運営に遅れが出るのはいただけないけど、御剣達がこっちに来ないんじゃ計画も始まらないし実行してあげるわよ」
「ありがとうございます。ついでと言っちゃなんですけど、俺もクーデターの際の対米部隊に加わってもいいっすか?」
「アンタ自分の命の価値分かって言ってるの?アンタに万が一にも死なれると、計画にかなりの障害が出るんだけど?」
やっぱり否定されるか。でもこれも必要なことだし、後になればなるほど大きくなってくる問題だ。
「対外派遣部隊としての実績を作っておきたいんです。今のままじゃ佐渡攻略後の国外への派兵は斯衛軍にいる限り無理そうなので、ここらで一部隊を動かせるだけの功績を残したいんですよ」
「なら斯衛なんて辞めて
んな事したら俺が苦心して築いた帝国とのパイプが無くなるだろ?夕呼先生にしてみれば帝国内部のことなんてどうでもいいんだろうけど、ここでの働きで対外派遣部隊が認められれば、斯衛部隊でも1個中隊くらいならなんとか国外に持ち出せるかもしれない。地球上で最もBETAがいるH1に挑むのに、戦力は多いに越したことはない。例え戦力的に見て使えない者がいようと、いざという時には囮に自爆特攻と、道を開く位には使えるはずだ。
「そこをなんとかお願いします。今のヴァルキリーズでも充分対応出来るとは思いますけど、備えあれば憂いなしとも言いますし」
「何パーセントよ?」
「へ?」
「白銀が戦場に出た場合に死ぬ確率よ」
「予定としてる遊撃支援であれば、俺が死傷する確率は20%も無いです」
「0%とは言わないのね?」
「戦場に出る以上絶対はありえませんから」
「でも0%って言わなかったせいで、アタシが出さないかもしれないのよ?」
「この程度の戦場を無事に帰れないようであれば、夕呼先生の目指す場所には足でまといにしかなりません。それを試す意味でもこの出撃、許して貰えないっすか?」
「アンタはそう簡単にチップに出来るほど安い存在じゃないんだけど、ここまで食い下がるってことは言ったところで無駄なんでしょう?」
「ハイ!」
よっしゃ!これで斯衛側にもある程度無理を通すだけの発言力を持てるだろう。
勿論、この出撃一回で発言力が上がるわけではないが、来年以降になれば国内での戦闘も増える。この出撃で働きを上層部に示すことが出来れば、俺達も便利な遊撃部隊として前線に行く機会が生まれるだろう。
国外で武功を上げたとしても、斯衛という性質を考えれば立場の変化は微妙なものだろうが、国内で結果を出したならばそう軽んじられることもない。
クーデターの結果で認められるのは帝国民として思うところもあるが、
「仕方ないわね。アンタの所属が横浜で、アタシの権限が及ぶなら行かせなかったけど、今の所属は斯衛だしそっちから要求されちゃ、アタシとしてもアンタ達を出さざる得ないわ。アタシがここで許可しないでそういった手段に出られても厄介だし、条件付きで許可してあげるわ」
「ありがとうございます!」
成程、思いの外あっさり引いた理由はそれだったか。
確かに今は横浜にいるが、もう少ししたら出向期限も終わって斯衛に帰ることになる。そこで俺が出撃を希望したら、今度は夕呼先生が手を挟めなくなるからな。それならば、まだある程度コントロールが利くように、夕呼先生からの希望という形で戦場へ出したほうがマシというわけか。
「アンタの言ってることも必要なことではあるしね。でもその前にアンタが抱えてる仕事はキッチリ完遂しなさい。クーデターについてはアンタの働き次第で色々変わってくるんだから、中途半端な仕事したら許さないわよ?」
「はっ!了解です」
7月8日
-横浜基地正門-
「では今度行われる大掃除とやらが済んでから、もう一度確認に来れば良いのか?」
「そこまで時間をいただければ、帝国軍以上の練度ある基地をお見せできるかと」
「今回は神宮寺軍曹に救われたな。中尉」
今日は月詠中尉が斯衛に帰還する日。なんとか認められはしたものの、月詠中尉の言うとおり神宮寺軍曹がいなければどうなっていたことやら。勿論、軍曹の存在を前提として考えてはいたが、想像以上に横浜基地の練度が低く、万が一という可能性も否定できなかった。
「本当にそう思います。次は基地全体として認められるよう動いておきます」
「そうしておけ。反対派の上層部連中は私と違ってただ足を引っ張りたいだけの、冥夜様のことなど考えていないような糞共だ。あのような素晴らしい教官と巡り会える機会、そんな奴等に潰されるんじゃないぞ」
「はっ!」
神宮寺軍曹ほどの教官ともなると、斯衛のみならず帝国まで見渡したところでもいないだろう。
『そのような教官に指導されるのであれば』と、月詠中尉も折れてくれた。これも冥夜を思っているからこその考えだろう。
月詠さんが変わってなくて助かった。
「伝えたいことも伝えたので、これにて部外者は失礼するとしよう。未だに私の存在はこの基地の多くの者にとって目障りのようだからな」
「次回はもう少し歓迎されるよう頑張ります」
「楽しみに待っていよう」
月詠中尉の乗り込んだ車が去って行く姿を眺めながら、俺は先ほどの会話を思い返して黄昏た。
「最後…できればお手柔らかにって言いたかったな…」
社名が変更されたり、部署が色々統合されたりと、仕事が忙しく今後も暫くは投稿できないと思います。
待っていただいてる方には本当に申し訳ないですが、作品の方は気長に待っていただけるとありがたいです。
言い訳)「会社が今までの方針を転換するとは、投稿開始時には予想してなかった。」などと言っており(ry