「…………」
目を覚ますと雄二が手を握っていてくれた。
「雄二、体調は大丈夫?」
「うん、それより姉ちゃん俺は……」
雄二が何か言おうとした時、病室に桐原が入ってきた。
「やあ2人とも、事件の事を聞いてね行く宛てが無いんだろ?なら私の屋敷に来るといい。」
「あの……桐原さん私達は……」
「ん?何か不満でもあるのかな?両親を失った君たちには持って来いの話しだと思うけどね。」
確かにそうだ……まだ子どもである私達だけで生活するのは限界がある。桐原は雄二の事を気に入っている……雄二が傷付くこともない。
「姉ちゃん……」
「桐原さんにお世話になりましょう。私達だけで生きていくのは困難だわ……桐原さんよろしくお願いします。」
「それは良かった。雄二、明日には退院できるようだね?また明日迎えにくるよ。」
「はい……」
「それでは、また明日。」
そう言い残して桐原は病室を去って行った。
翌日、私達は、海外にある桐原の屋敷に行った。古風な屋敷で私達2人が増えても問題無い広さだ。
「ここが雄二の部屋、こっちが一姫の部屋だ。」
案内された部屋は、1人で使うには広すぎるくらいだった。
桐原の屋敷での生活は、不自由では無かった。桐原は本が好きなのか多くの日本語の本を持ってきてくれた。また私は桐原のチェスに付き合うこともあった。
「いやあ、さすがに一姫は強いねえ」
「桐原さんこそお強いですよ。」
「はは、一姫にそう言って貰えると嬉しいな。」
桐原……分からない。何か企んでいるのか、それとも私の考え過ぎなのか。でも今はこの平穏な日々を大切にしないと……平穏が雄二の心の傷を癒してくれると信じて。働けるようになったら2人で日本に帰って暮らそう。
私が雄二を支えないと……それが今まで私が巻き込んできたことに対する罪滅ぼしになるのなら……
ある日の晩、私は寝付けなかったので少し屋敷を歩くことにした。桐原には、深夜に部屋から出ることは禁じられているが部屋を出ることにした。
「雄二、いいねえ、君は最高だよ」
桐原の部屋のドアが少し開いており、そこから雄二と呼ぶ桐原の声がしたので覗き込むと驚愕の光景が目に入ってきたのだ。
「やはり、雄二には女の子の服が似合う。それに君の瞳は最高だ。全てを否定し拒絶する。最高だよ雄二ぃ!」
「…………」
「そうそう、その無口な所もいい。まるでお人形さんのようだ。一生可愛がってあげるからね。」
桐原が雄二の事を気に入っていたのは知っていたが、これは異常な事だと分かった。桐原は、雄二の事を愛玩動物としか思っていないのだ。私の判断は間違えだったのだ……もっとすぐに桐原の異常さに気付いていれば……
そっとその場から立ち去ろうとしたときに、桐原に見られてるような気がしたが気のせいだと思った。
その翌朝、昨晩の事もあり眠ることが出来なかった私は、先に朝食が用意されている食堂のある1階へ向かうことにした。
「まさか、あんなことがあったなんて……私はどうしたら……」
そう呟きながら階段を下りているときだった。
ドンッ
誰かに後ろから突き飛ばされた。咄嗟に階段の手すりに手を伸ばそうとしたが、押された勢いが強く掴むことが出来ずに、私は階段を転げ落ちていった。
「大丈夫かい一姫?早く救急車を呼ぶんだ。」
「姉ちゃん!しっかりして、姉ちゃん!」
桐原の起こりうる事を知っていたかのような作った演技の声と私を必死に呼びかけている雄二の声が聞こえてきた。
ああ……意識が遠のいていくのがわかる。私が雄二を支えていくと決めたのに……雄二……
遠ざかる意識の中で私の脳内にはある一つの言葉が浮かんできた。
『死』
今の私には魔法の言葉であるように感じられた。『死』を受け入れさえすれば、もう誰も巻き込むこともない……そう、私がいなければ雄二は不幸になることは無かったのだ。きっと雄二だって心の中では私を恨んでいるのだろう。
日常を壊し……家族を壊し……記憶を無くした私は雄二への愛情すらも自ら壊したのだから……
もう何も壊したくない……失うだけの人生なんて終わった方が……
『まだ、地獄ではない。まだ、生き残る価値のある世界だわ……』
誰だろう……でも私はもう……その生き残る価値がわからないわ……
うう( ;∀;)一日一投稿ががが、Roteroseです。今回は、原作と違いオリジナルな所が多くなっています。鬱小説ですかこれは^p^と友人に言われましたが、そこは私の力量が試されるわけでして……とにかくこれも一姫の一面として心を鬼にして書いていきます(すでに書いてるときに2回ぐらい涙が)感想、指摘どんどんお待ちしております。雄二sideの一話も今日中に上げられそうです。それでは第四話でお会いしましょう( `ー´)ノ