グリザイアの星霜   作:Roterose

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第四話「人の形」

「姉ちゃん……姉ちゃん……」

 

 姉ちゃんが階段から落ちてから3日経過した。桐原によるとまだ意識が戻っていないそうだ。姉ちゃん……姉ちゃんがいないと俺は……

 

「また一姫の事かい?大丈夫だよ雄二、無事でいてくれるさ。」

 

「俺は姉ちゃんの隣で生きてきた……姉ちゃんの言う事は正しかった。両親が死んでから姉ちゃんは絶対だった。俺はどうすれば……」

 

「んー私からさせてもらうと、それは自分の存在を認める人がいない、ということなのかな?」

 

「……」

 

 すぐに否定しようと思ったが言葉が出なかった、桐原の言っていることは正しい……俺は、認めてもらいたいのだ。父親の血で汚れてしまい、母親を見捨てることになってしまった自分を……

 

「それは……」

 

「大丈夫、分かっているよ雄二。君は辛い思いをたくさんしてきた、でもね雄二、それは君の才能が開花するためだんだよ。」

 

「才……能?」

 

 桐原は何を言っているのだろうか。才能が開花?俺には何も取り柄が無いのに……

 

「まあ、気付かないのは無理ないね。簡潔に言うと『人殺しの才能』だ。」

 

「人殺しの才能……俺は殺したくて殺したんじゃないんだ……」

 

「普通の人間には分からない才能だろうね。普通の人間はこのことを才能以前に異常なことだと思ってしまう。だけど私たちは。普通じゃないんだよ雄二。」

 

「普通じゃない……」

 

 桐原の言う通り異常者なのかもしれない。

 

「そう普通じゃない。でもそれは悪い事だけでは無い。力は使いようだ。雄二、君は今ダイヤの原石のようだ。価値があるのは分かっているが磨かれていないから評価されない、勿体ないね雄二。」

 

 桐原の言葉には、どこか一姫と似たような、理屈の通っている言葉のように聞こえてきた。姉ちゃんが俺を認めてくれたように、形は違えど認めてくれているのだ……

 

「この才能は、人を殺すことなんだろ?人を殺すのは悪い事だ……守ることもできない愚かな力だ……」

 

「違うね、雄二。殺せる事で守れる事もあるんだよ。奪われる前に相手を仕留める。正義の鉄槌だ。だから愚かでもない誇れる力なんだよ。」

 

 誇れる力……この俺に?ありえるのか?守れるのか?一姫を……

 

「雄二、君は強くなれる、みんなを守れるくらいにね。私は応援したいんだ。その為にもいい施設を紹介しようと思うんだけど、どうする雄二?」

 

 強くなれる……弱いだけの……認めてもらうだけの俺じゃない……力が欲しい……

 

「行きます。強くなるんだ……」

 

「いいね雄二!手続きはできてるから明日にでも行こうか。」

 

「はい……」

 

 

 翌朝、桐原に連れられて訓練所のような施設に行った。山間部にあり、とても広い施設だ。

 

「おお、オスロさん。今日は見学ですか?」

 

「違うよ、今日はこの子を連れてきたんだ。私のお気に入りでね。」

 

「そうでしたか!どうぞ見ていってください」

 

「そうさせてもらうよ」

 

「オスロ……?」

 

「ああ、雄二には、まだ言ってなかったね。桐原は日本での名前で、海外ではヒース・オスロという名前なんだよ。さあ、こっちだよ雄二」

 

「俺が教官兼ここの管理をしているマイクだ。」

 

 ジョンは身長は190cmはあるほど大きく、サングラスを掛けたごつい男だ。

 

「よろしくお願いします……」

 

「それじゃあジョンよろしくね。仕上がり次第引き取りに来るから。頑張ってね雄二。」

 

「はい」

 

 この施設では、銃の解体や扱い方、体術、暗殺術、様々なことを学んだ。訓練が終わると栄養剤と言われているものを注射器で入れられていたが、それが薬であったことに気付くころには体は毒されていた。

 自分でも自分というものが破滅へと近づいてるようにも感じたが、次第にそれは薄れていき、むしろ今では自分自身が洗練されていくような感じがした。

 

「俺は強くなれる」

 

 強くなっていく自分の中で、誰かを守るために強くなるという目的意識は無くなり、ただ強さを求めるようになっていった……

 

 

 時は流れ、卒業試験の日がやってきた。

 

「それでは今から卒業試験を始めようか。ルールは簡単、相手を殺した方が卒業だ。」

 

 オスロの出した卒業試験の内容は、妥当なものだと思っていた。弱者はいらない強者だけが全てなのだ。

 

「次、雄二、○○○」

 

 俺の番だ。容赦はいらない、ただ相手を殺すだけだ……

 一瞬の出来事だった、ただ相手が倒れているのを見て、殺したことはわかった。

 

「合格だ、雄二」

 

「さすがだよ雄二、君は強くなったんだよ!」

 

 強くなった……弱い俺はもういない……でもなぜ俺はこんなに強さを求めていたのだろか……

 

 オスロの屋敷に帰ることになった前の晩に変な夢を見た。

 

「雄二……いかないで、雄二……」

 

 とても見覚えのあるような少女であったが思い出すことができなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも一カ月ぶりに更新したRoteroseです。サボ…忙しくてなかなか投稿できませんでした(´・ω・`)グリザイアの楽園始まりましたね!タナt…一姫お姉ちゃんの活躍があるといいですね!それでは第五話でまたお会いしましょう~(`・ω・´)

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