魔法科高校の劣等生―先祖返りの祖龍―   作:正親町三条

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こんなに早く達成出来るとは思いませんでした、これもひとえに閲覧者の皆様のおかげです。
これからも稚拙ながらも書き上げて参りますのでどうか宜しくお願い致します!


入学編Ⅱ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

自宅のベッドに腰掛けると、私は少し長いため息をついた。

 

 

そのまま寝てしまおうか、との考えが頭を(よぎ)ったが、着替えもせず湯浴みもせずでははしたないだろう。

 

 

少し視線を空へと移すと同時に着信を知らせるベルが鳴り響いた。

 

こんな微妙な時間に誰だろうか、と思って発信先を見るやいなや私は電話を受けた。

 

 

「こんにちは、陽華さん。学校が始まりましたがどうですか」

 

 

「こんにちは。概ね順調です、母上。」

 

 

声の主は四葉真夜、十師族の中でも最強の呼び声高い四葉家の当主にして私の育ての親(・・・・)である。

 

 

私の一族は代々四葉を始めとする名だたる名家との交流が深かった。その影響で、私も幼い頃から数々の魔法界の重鎮と会席している。

例えば今画面の向こうに居る四葉真夜、クリムゾン・プリンスと名高い金沢三高の一条将輝の父親である一条剛毅、現魔法界最強とも称される老師こと九島烈、日本が世界に誇る戦略級魔法師である五輪澪など枚挙に暇がないとはまさにこの事であろう。

 

 

「学校生活に必要な物があったらなんでも言ってくださいね、貴女は私の娘のような存在なのですから」

 

 

「恐れ入ります」

 

 

近くに置かれたサイドテーブルには、手許を(ほの)かに照らす灯りと2つの伏せられた写真立てが僅かながらに真夜の顔が映った液晶の光を反射していた。

 

 

「まだ、その写真を直視は出来ませんか」

 

 

真夜の言葉に背筋が凍る思いをする。この写真立てには家族での写真が1枚と司波兄妹と撮った写真が収められている。

 

 

「過去を捨てる、そう心に誓いましたので」

 

 

私は自分が発したこの台詞に嫌気を覚えながらも、育ての親を心配させる訳にはいかないと思い笑顔で応えた。

 

 

そう、あれは3年前。私とあの兄妹がちょうど小学校を卒業して中学校に進学しようとしていた春休みの出来事であった。

そう、(司波達也)が軍に入り、彼女(司波深雪)が兄を敬い始めてから半年が経った初春の事だった―

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、今日の夜ご飯なにー?」

 

 

私は兄と呼び親しんでいた達也が作るご飯が好きだった。

 

 

明日から用事―当時は達也が軍所属の人間になった事は知らなかった―で数日間家を空けるとの達也の言葉に少し悲しみを覚えながらも、私は達也が帰ってきたらお姉ちゃん(深雪)とささやかながらパーティーをしようと画策していた。

 

 

「今日は陽華の好きな肉じゃがだ」

 

 

とは言っても半分以上作っているのは深雪だったのだが。

 

 

いつもと変わらない夕食を摂り、シャワーを浴びて寝ようとした時、

 

「深雪、陽華。少し話がある」

 

達也は私と深雪を呼んだ。

 

 

 

 

「明日…ですか?」

 

「ああ、明日だ。明日は1日家にいてくれ、決して外には出ないこと」

 

 

後に真夜に聞いたところ、その日は家の周辺を含む大規模範囲でのテロ組織アジトの一掃計画の実行日であったらしい。

 

 

しかし、私は達也のお願いを反故にした。

別に次の日でも良かったのに、わざわざパーティーの買い物に行ったのだ。それも、深雪にも内緒で、一人で。

 

 

その結果、私は達也とは別の隊が追跡していたテロ組織に運悪く鉢合わせしたのだった。

 

 

追い詰められた犯罪者が取る手など限られている。

魔法小隊に追い詰められた彼らは、私を人質に取る事で逃げ果せようとしたのだった。

 

 

私は自分のCADを触ることすら出来なかった。

 

 

あまりにも突然の事にただただ呆然としていた。

 

 

無論、達也がいたら私は助かったのだろう。

しかし私の救援に来た―まあ正確には私を人質にしたテロ組織を追っていたのだが―魔法小隊には運悪くCAD無しで魔法を素早く発動出来る魔法師は一人もいなかった。

 

 

結論から言おう。

私は、三途の川を見た。

 

 

魔法小隊とテロ組織との交渉は決裂、魔法を撃ち始めると同時に、私は胸を撃ち貫かれた。

 

 

ここからは私は当然知らなかった話だが、私はすぐに病院に担ぎ込まれた。

 

既に失血著しく、生死の境をさまよっていたようだ。

 

達也が私の病室に着いた時には撃たれてから4時間と少しが経過しており、私はほぼ虫の息だった。

 

 

しかし、達也は何も躊躇わずにCADを抜き、

 

 

私を、撃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が起きた時、達也と深雪が隣で眠っていた。

 

 

打たれた点滴、病状を示すメモ、部屋に掛けられた時計、そして自分の患者服を見て、私は全てを察した。

 

 

達也が、お兄ちゃんが、私に再生魔法を使ってくれた事を。

 

 

そして、それの代償として達也が受けたであろう想像を絶する、この世の地獄とも言える苦しみを。

 

 

 

 

もう達也に顔を合わせられない。深雪には恨まれるだろう。

 

これから先、私はどう達也と接すれば良いのだろう。

 

私に出せた結論は一つだけ。

 

もう二度と達也に、自分が原因で辛い、苦しい思いをさせない事だけ。

 

こんな私は、もう必要ない。

 

 

そして、私は自分にしか使えないCADを握り締める。

 

 

父と母に物心ついた時から教えられ、決して独断で使ってはならないと何度も念を押された、東の血をひく者にしか使えない魔法。

 

 

―父さん、母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。ごめんなさい―

 

 

一言心の中で呟いて、私はその魔法を発動させる。

 

 

まるでネックレスとペンダントのように見えるが、ペンダントに指紋を認証させる事で発動する。

 

まさに、彼女のためだけに存在するCAD。

 

 

そして、たった一つしか登録されていない魔法式を呼び起こす。

 

 

あの四葉深夜ですら成しえる事のなかった、あの精神構造干渉を超える魔法。

 

 

さようなら…

 

 

呟きか、心の声か。

 

 

それを知る者は誰一人としていなかった。

 

 

記憶干渉魔法―レテ川の氾濫(flood・of・Lethe)

 

 

 

 

 

後に彼女は、忘却の川の支配者(レテ・ミストレス)と呼ばれた司波真夜に勝る者として、記憶を完璧に消去する事の出来る唯一の人間としてこう呼ばれる事となる。

 

 

忘却の女神((レテ・)ムネシュモネ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

「そう…」

 

 

司波真夜は沈痛な面持ちで私に向かった。

 

彼女はあの事件の全てを知る数少ない人間だ。

 

その後、彼女は自分の権力を最大限行使してあの事件をなかった事にしてくれた。

 

二度と達也と深雪に、あの時の記憶が蘇らないように。

 

本心はきっと、彼ら(兄妹)に伝えたいのだろう。

 

それでも、私なんかの願いを聞き入れてくれた。

 

 

「最後に一つだけ、聞かせてもらえるかしら」

 

真夜は慎重に言葉を紡いでいる。

それは私にも見て取れた。

 

「あの子達にまた会えて、嬉しかったかしら?」

 

 

その質問に、私は答える事が出来なかった。

 

私が出来た事は胸からこみ上げてきたものによる嗚咽と泣き声を真夜に聞かせる事だけであった。

 




陽華の、というか東一族の固有魔法ですが、能力に半日、名前に1日掛かりました(汗
人の名字とか名前はすぐに思い浮かぶのにどうしてこういうのは思い浮かばないんだ…
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