セレーンは目覚めて仰天した。テーブルの上に大量のプレゼントが積んであったからだ。よく見るとテーブルの下にも積みきれなかったプレゼントが置いてある。
「セレーン、こんにちは」
ダンブルドアが微笑みを浮かべて仕切りのカーテンの中へ入ってきた。セレーンは周囲を見回して医務室にいることを思い出す。
「そなたたちは仲が良いの。ハリーとサムも同じくたった今、目を覚ましたところじゃ」
「ハーマイオニーとロンは?」
「少ーし時間がズレとるよ。そなたたちは3日間眠っておった。それほど若い魔法使いにしては多くの魔力と体力を使ったのじゃ」
ダンブルドアは仕切りのカーテンを開けた。そこからサムとハリーが嬉しそうに入ってきた。
「セレーン、よかった」
「2人とも」
ハリーとサムは再会を喜び、魔法でダンブルドアが出したイスに腰掛ける。セレーンは気になることをダンブルドアに聞いてみた。
「クィレルは捕まりましたか?ハリーの取り出した石はどうなりましたか?」
「クィレルは捕まり、アズカバンに送られた。君のおかげじゃ」
茶目っ気たっぷりにウインクされてセレーンは戸惑った。ハリーはその様子にくすくす笑う。
「石は破壊されたのですか?」
「いかにも、サム。そうじゃ。こうするのが一番いいということになったんじゃ」
「でも、先生のお友達のニコラス・フラメルは?」
「おお、よく調べた。ハリー、ニコラス夫妻にとって死は終わりではないのじゃ。君たち若い者にはまだわからんことじゃが」
「わたしはヴォルデモートに死の呪いをかけられました。確実に命中したんです。だけど生きています。どうして?」
ハリーとサムが最も興味のあったことで、2人は固唾をのんでダンブルドアの言葉を待った。
「君の不思議な力は母上から受け継いだものじゃ。誰にもその原理は説明できぬ。しかしその力は人を癒し、救うことができる。さらに奇跡の護りの名の通り君に害を与える魔法から自身を守れるのじゃ」
「ヴォルデモートはわたしの母は死んだと言いました」
ダンブルドアは優しい表情を曇らせてセレーンを見つめた。ハリーたちもセレーンを心配そうに見守る。
「君の母上は自ら姿を消したのじゃ。誰も君の母上の死を見ておらん。姿を隠しているだけかもしれぬ。誰にもわからぬことじゃ。ただ一つ言えるのは、君の母上は君を深く愛し守ろうとしたことじゃ」
セレーンはなんとも言えない温かい気持ちになった。サムはそっとセレーンの手の上に自分の手を重ねた。
「先生、僕はどうやって石を取り出せたんでしょう?」
「うむ、いい質問じゃ。わしの中でも飛び切りのアイデアでの、石を見つけたい者だけが手に入れられるんじゃ。使いたい者には決して渡らぬ。すごいじゃろ?」
ダンブルドアのドヤ顔に3人は笑い出した。セレーンはダンブルドアが前よりもさらに大好きになっていた。
ダンブルドアが帰った後、3人が目覚めたと聞きつけたロンとハーマイオニーがお見舞いにやってきた。マダム・ポンプリーに必死に頼んだ3人は面会時間5分を手に入れられた。ハーマイオニーはセレーンをきつく抱きしめてそのまましばらく放さなかった。
「学校中で噂になってる。本当は何があったんだい?」
ロンがせっつき、ハリーが話し始めた。ところどころでセレーンとサムが付け足しを話した。ロンとハーマイオニーは聞き上手ですべてを話した後に様々の感想を述べた。ハーマイオニーは特にセレーンに関して気になっていた。
「あなた、すごい能力を持っているのね!ハリーだけが死の呪いを生き抜いたとばかり…。わたしの読んだどの本にも書いてなかったんだもの」
「わたし、わたしのことを知らなきゃ。ローレライがどんな人だったのか。ただおとなしく狙われてるわけにはいかないわ」
セレーンの強い決意に4人は感動した。そしてできることは協力すると約束した。セレーンは自分の力を気持ち悪がらずに受け入れてくれた4人に言葉にはできないくらい感謝していた。とても心強い仲間ができたことはセレーンにとってかけがえのないことであった。そんな中でサムは自分の生い立ちの謎をハリーもセレーンも2人に出さずにいてくれたことに感謝していた。
学年末のパーティーに向かった3人は、大広間に入った途端に注目を集めた。広間は7年連続で寮対抗杯を勝ち取ったスリザリンのグリーンとシルバーで飾られていた。3人は生徒たちの注目を無視してロンとハーマイオニーの横に座った。ダンブルドアは3人の登場を見計らっていたかのようにすぐに現れる。
「それでは寮対抗杯の表彰じゃ。点数は以下の通り。4位 グリフィンドール 212点、3位 ハッフルパフ 352点、 レイブンクロー 426点、そしてスリザリン 472点」
スリザリンのテーブルが割れんばかりの歓声を上げた。残りの寮生は嫌な顔をしている。ハリーたちも胸の悪くなる思いだった。
「さて、最近の出来事も勘定にいれなくてはなるまい。…まずはロナルド・ウィーズリー君、最高のチェスゲームに50点。次に…ハーマイオニー・グレンジャー嬢、冷静な論理に50点。そして…サミュエル・オーウェン君、聡明な推理に50点。さらに…セレーン・ウォーターフォード嬢、友を守る勇気に50点…ハリー・ポッター君、その完璧な精神力に60点」
スリザリンと同点。嬉しいような悔しいような複雑なグリフィンドール。そして同率に並んだグリフィンドールに苛立つスリザリン。ダンブルドアは手を上げて広間を静まらせて続けた。
「勇気にもいろいろある。友に立ち向かう。これこそ最も困難な勇気じゃ。よってネビル・ロングボトム君に10点を与えよう」
つんざく歓声はスリザリン以外のすべての寮で起こった。ダンブルドアは手を叩いて広間を赤とゴールドに変えた。マクゴナガルは嬉しそうにしている。スネイプの引きつった顔をハリーはロンと共ににやにやしながら眺めた。今までで一番素晴らしい夜だった。
試験結果の発表で、サムが首席を取った。次席にハーマイオニー。続いてセレーンだった。ハリーとロンは思ったより良い成績だった。それはもちろん、セレーンたち優等生3人が家庭教師してくれたおかげである。みんなはあっという間に帰る準備をしてしまった。ハリー、セレーン、サムは帰りたくない気持ちが強かった。帰りのホグワーツ特急での時間は必要以上に早くて気づけばロンドンに到着していた。
「夏休み、連絡ちょうだいね」
「4人とも僕の家に遊びにおいでよ。ママも大歓迎だからさ」
「もちろん」
「ありがとう。絶対に行くわ」
「またね」
名残惜しく挨拶を交わしながらマグルの世界へ出た。そこでハリーは迎えに来た叔父たちに連れて行かれ、ハーマイオニーはさっそく両親と車へ向かっていた。ロンは家族と合流しており、セレーンとサムは取り残された。
「サム、あの……ほんとはクリスマスに渡したかったの。これ受け取って」
「ノート?」
「うん。こんなのでごめんね。あなた、いつも考えてることを羊皮紙の端に殴り書きしてるでしょ?それでその羊皮紙を無くすことが多いから、メモとして使って」
サムはセレーンに微笑んだ。サムのもらったプレゼントの中で一番気が利いていた。
「セレーン、僕からもこれ。僕もクリスマスに渡すつもりだったんだ」
「鍵?」
銀色の繊細な細工が施された小さな鍵だった。それは銀の鎖に吊るされ、首からかけられるようになっている。
「お守りだ。これがあれば、無事に自分のいたい場所に戻れるっていう」
「ありがとう。大切にするわ」
「僕も大事に使う」
とうとう2人にも迎えが来た。2人は互いに目を離したくないと思い、できる限り相手を見つめ続けた。セレーンはサムに対する正体不明の気持ちと母についてはっきりさせようと決めた。セレーンはもう、これから戻る孤児院が怖くなかった。サムの鍵さえあれば、この夏を乗り切れそうだと鍵を固く握り締めて思っていた。
賢者の石、完結しました。次回の秘密の部屋もよろしくお願いします。