ダイアゴン横丁でハーマイオニーとともに新学期の買い物をする日。フルーパウダーでの移動の際、ちょっとした事件でハリーは間違った場所へ行ったが、ハグリッドと出会って無事に戻ってきた。そして5人は再会を果たした。
「ハーマイオニー、会いたかったわ!」
「私もよ。ところでサムとはどうなの?」
不意打ちの質問にセレーンは慌てふためいた。サムに聞かれていないことを確認してから小さな声で言う。
「サムとは何でもないわよ…。あ!見て!ギルデロイ・ロックハートのサイン会だって!」
教科書を買う書店を指差しわざとらしく話を逸らしたが、ハーマイオニーは簡単に興味を移した。
「嘘でしょ⁉︎彼が来てるの⁇」
「あ、もしかしてファンなの?」
ハーマイオニーの意外な反応にセレーンは驚く。店内に入るとかなりの混雑で、女性客の多さにさらに驚くことになった。あんな感じのひとがモテるんだ。サムのほうがよっぽど素敵だと思うな。セレーンは先にいるサムをちらりと見た。
「ああ、彼、素敵だわぁ」
モリーまでこの調子である。ハーマイオニーはかなりそわそわして髪を手ぐしで整え続けている。
「ねぇ、セレーン。私の髪、変じゃない?」
「大丈夫よ。あなた、ロックハートに恋してるの?」
「ち、違うわよ!そんなおこがましい!ただあんなにすごい伝説をたくさん持ってて本もたくさん出してるから!尊敬してるだけよ!」
ハーマイオニーの慌てた様子にセレーンはにやにやした。ハーマイオニーったら可愛いんだから。するとハリーを目ざとく見つけたロックハートは壇上に彼を呼んだ。ハリーはあからさまに迷惑そうだが、そんなことお構いなしで新聞記者に写真を撮らせている。
「ロックハートのやつ、ウザイよな?」
「ハリー、大変そうだ」
ロンは顔をしかめ、サムはハリーに同情した。ハーマイオニーは夢中でロックハートを見つめている。セレーンは早く教科書を買ってハーマイオニーとゆっくりおしゃべりしたいと考えていた。
ロックハートがホグワーツで教師をするという発表を聞いてハーマイオニーはずっと興奮し通しだ。ハリーとロンは終始嫌そうな顔をしている。そしてハリーはロックハートから無料でもらったロックハート著の教科書全部をジニーにあげていた。ハーマイオニーはロックハートのサインをもらいたがったが、あまりの長蛇の列で諦めざるを得なかった。というか、ホグワーツでもらえばいいと言ってセレーンが諦めさせた。
「ポッター、ちょっと本屋で買い物しただけで有名人気取りかい?」
プラチナブロンドの男の子がセレーンたちの行く手を阻んだ。
「あなた、誰?」
セレーンはその意地悪そうな男の子に聞いた。するとサムたち4人は盛大にずっこけた。その男の子もガクッとなっている。
「お前、僕を知らないのか⁇本気で言ってるのか⁇」
「ドラコ・マルフォイだよ。ハリーにいちいち難癖つけるスリザリン生なんだ」
マルフォイは柄にもなく素っ頓狂な声を出した。サムはその横からフォローする。去年、けっこうハリーとマルフォイの絡みがあったのに何故気づかない?全員一致の疑問だった。しかしそこはセレーンだ。仕方がない。
「ドラコ、帰るぞ。…おやおや、ハリー・ポッターではないか」
「ルシウス」
マルフォイの父親と見られる男が小馬鹿にしたような表情で現れた。するとロンの父親のアーサーが威嚇するようにみんなの前に立った。アーサーは普段優しく楽しいひとなので、セレーンはアーサーの様子に不安になる。
「アーサー・ウィーズリー、どうやら職場でも家庭でもあくせく働かねばならないみたいだな。さぞかしご立派なご家庭で…あぁ、そうでもないらしい。これらはすべて中古か」
「妻は倹約家でね。返してもらおうか」
ルシウスはせせら笑いながらジニーの中古の教科書を手に取った。アーサーはそれをしかめ面で取り返す。その一触即発な場面でルシウスはふとセレーンに目を留めた。
「……ローレライ・ウォーターフォードの娘か?ドラコ、聞いていないぞ!どういうことだ!」
ルシウスは突然ドラコに怒鳴る。セレーンは驚いてサムの後ろに隠れた。なぜこの人はわたしの母を知っているの?アーサーは仰天してセレーンをまじまじ見つめた。セレーンはマグル出身では?しかしルシウスが興味を持つとすれば、セレーンはかなりの一族出身ということになる。
「父上、確かにこいつはウォーターフォードという名前ですが、孤児院出身の惨めなマグルですよ?」
「いいや、いいや。ウォーターフォード嬢!君の母はローレライ・ウォーターフォード!そして祖母は女王セレナですな?」
ドラコはルシウスに弁解する。だがルシウスは瞳を輝かせてサムを退けて、セレーンをもっとよく見ようとした。
「いいえ!違います。わたしは孤児です。両親ともにマグルでした。それにマグルの世界でウォーターフォードなんて名前よくあります」
セレーンはサムに手を握られてはっきり嘘を答えた。するとルシウスは興味をなくしたようで、マントをはためかせて行ってしまった。どうしてわたしのことを知ってるの?セレーンはこの一年で頰の丸みが取れたことによって、ますますサムが見つけてくれた母の肖像画に顔が似てきていたのだった。