ハリーとロンが見当たらない。9と4分の3番線に入る前まで一緒だったはずである。
「一体どこに?」
「もしかして外で誰かと会ったとか?」
「席を取って待っていましょう」
セレーンたち3人は混雑するホームできょろきょろと辺りを見回してから汽車に乗った。セレーンたちのコンパートメントにはなぜか寮を問わず複数の男女が挨拶しに来る。しかし肝心のハリーとロンが来ない。
「もうすぐ出発よ!どこにいるのかしら!」
「わたし、見てくる。ハーマイオニーはここで待ってて」
セレーンはコンパートメントから出て混雑している通路を通り、窓から顔を出した。ちょうどジニーと話しているモリーの姿が見えた。
「モリー!モリー‼︎」
「あら、セレーン!どうしたの?」
「ハリーとロンを見かけませんでした?」
「見てないわねぇ。はぐれてしまったの?」
モリーは心配そうに聞いた。セレーンは不安気に頷く。モリーは動きだそうとする汽車からあわてて距離を置いてセレーンを安心させた。
「どこかに必ずいるわ。もしかしたらまだホームの外にいるのかも。私も探しておくわ。大丈夫、新学期には間に合うから!」
「ありがとうございます!さようなら!」
セレーンは再び通路をすり抜けて他のコンパートメントを探すことにした。もしかしたらハリーとロンで席を取ってるかも。すると突然巨大な影に行く手を遮られた。
「ウォーターフォード!」
ゴリラのような2人を連れたマルフォイがいた。セレーンは名前を呼ばれて不思議に思った。
「何?」
「この前は嘘を言ったな。やはりお前はローレライ・ウォーターフォードの娘だな?」
マルフォイがセレーンに母の写真を突きつけた。セレーンは思わずその写真を受け取る。肖像画ではなく、本当の母の姿が残っていた。母はホグワーツの制服姿で分厚い本を片手に笑顔で手を振っている。優しくて懐かしい。そして自分によく似ている。
「ウォーターフォード、改めて僕はドラコ・マルフォイだ。君は友達を選んだほうがいい。ふさわしい友達のつくり方を僕が教えてやろう」
マルフォイはドヤ顔でセレーンと握手するために手を出した。しかしセレーンはひたすら母を見つめていた。笑ってる母。わたしに似てる。本当にわたしの母。
「ウォーターフォード、いや、セレーンと呼んでいいか?」
「…え?あぁ、うん。いいよ。この写真、わたしにくれるの?」
「もちろんだ!セレーン、よろしくなっ…⁈」
セレーンはほぼマルフォイの存在を忘れかけていた。しかし写真をもらえると聞いてにっこり笑い、マルフォイに抱きついた。
「ありがとう、マルフォイ!あなた、いいひとね!」
「あ、え、あの、セ、セレーン?いや、うん、そうだな、あぁ、えっと、ドラコと呼んでくれて、かっ構わないぞ?」
真っ赤になったマルフォイはしどろもどろに言った。セレーンはマルフォイから離れると、スキップしながら通路を抜けていった。その後ろ姿が見えなくなるまでマルフォイは真っ赤なまま立ちつくしていた。一方その頃、セレーンのファンの間ではセレーンがマルフォイに抱きついたことが瞬時に駆け巡っていた。
ハリーとロンはなぜかホームへ向かう壁を通り抜けられなかったらしい。セレーンがモリーに知らせたおかげですぐにモリーがハリーたちを見つけてくれた。彼らはもう少しで空飛ぶ車を運転しようとしていて大目玉を食らったらしいが、その先は問題なく特別にフルーパウダーでホグワーツに到着したそうだ。5人はなぜ通れなかったのかについて真剣に悩んだが、結論は出なかった。だが、それより新たに悩みの種ができた。マルフォイだ。
「セ、セレーン、おはよう。今日は防衛術の授業で一緒だな」
「おはよう、ドラコ。そうね、ロックハート先生の本はとてもおもしろかったわ。いらない情報もたくさん入ってたけど」
柄にもなく顔を赤らめたマルフォイが必要以上にセレーンに話しかけるのだ。ハリーへの嫌みはすっかり言わなくなった。この変化についてセレーン以外の4人の意見は一致した。マルフォイはセレーンのことが好きなのだ。それに加えてサムは考えていた。マルフォイ親子はセレーンがローレライ・ウォーターフォードの娘だと確信したのだ。ドラコ・マルフォイ自身はセレーンを利用しようなんて微塵も感じさせない。しかしルシウス・マルフォイはどうだろう?過去にデス・イーターだったという記録が残っているのだ。
「セレーン、あなたマルフォイに好かれてるわ」
「ドラコとは友達になったの!母の写真をくれたのよ」
セレーンはいい意味で素直な性格である。ハーマイオニーはため息をついた。ハリーとロンはマルフォイを気持ち悪がると同時に無駄な絡みがなくなったことを喜んでいた。
「でも、マルフォイも相手を選べよな?セレーンはホグワーツでも一二を争う人気だぜ?」
「セレーン自身は絶対気づいてないけどね」
ハーマイオニー大絶賛のロックハートの授業。
「やぁ、セレーン」
「こんにちは、ドラコ」
セレーンはハーマイオニーとの談笑に邪魔が入ったが、嫌な顔をせず笑顔で答えた。ハーマイオニーはマルフォイにかすかな同情を持っていた。サムとマルフォイでは雲泥の差。セレーンがマルフォイを好きになる確率はゼロだ。それを知っているのはハーマイオニーとあとはジニーくらいのもので、セレーンファンの生徒たちはホグワーツ特急でセレーンがマルフォイに抱きついたこともあり、やきもきしていた。
「こんにちは、皆さん!ようこそ私の授業へ!私はギルデロイ・ロックハート!何を隠そう、この私はマーリン勲章勲三等、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そしてチャーミングスマイル賞五回連続受賞!まあ、大したことはないがね!」
ロックハートの登場で女生徒が色めき立った。ハーマイオニーは夢中になっている。セレーンはロックハートのウィンクを見て謎の吐き気と戦っていた。もう嫌な予感しかしなかった。
ロックハートの授業は最悪だった。ハーマイオニーは必死でロックハートをかばっているが、なんだろうあのロックハートの胡散臭さは。男子3人にもかなり不評だ。サムはロックハートの本に疑いを持っていた。あの人には何かある。一方、ハリーとロンはマルフォイがセレーンの近くに座り、ずっとセレーンに熱い視線を送っていたことに気づいた。そしてマルフォイの隣に座っていたパグみたいな顔のスリザリン女子はずっとセレーンを睨んでいたのも見た。セレーンも大変そうだな。あんなのに好かれて…。
まさかのマルフォイでした。ありがちな感じですが、初恋が行き交ってます。ぜひ応援してください。