ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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動き出した怪物

騒ぎを聞きつけた先生たちがセレーンの後ろからやってきた。どうやらハリーたちが第一発見者らしい。フィルチはハリーたちが犯人と決めつけて大騒ぎをしているが、ダンブルドア校長がミセス・ノリスは石になっているだけと言ったのを聞いてセレーンは安心した。ハリーたちのところへ行こうとしたとき、4人は先生たちに連れられて行ってしまった。

 

「君、寮に戻ったほうがいい」

 

突然話しかけられたセレーンはぼんやりしていたことに気づいた。

 

「大丈夫?」

「はい、大丈夫です。どうも」

 

ハッフルパフの生徒ということがネクタイの色から見て取れた。どこかで見たことがある、セレーンは考えていた。

 

「送ろうか?」

「大丈夫です、本当に。戻ります」

 

心配そうなハッフルパフ生を後にして急いで寮へ向かった。ハリーたちが帰ってくるまで談話室で待つしかなさそうである。

 

 

「つまりハリーにしか声の聞こえない何物かがミセス・ノリスを石にしたの?」

 

ハリーたちから事情を詳しく聞いたセレーンは話をまとめてみた。話によると、セレーンとマルフォイの様子が気になって探している途中にハリーが恐ろしい声を聞いた。その声を4人で追った先に石にされたミセス・ノリスと血文字があったのだ。

 

「僕にしか聞こえなかった声については先生たちに言わなくて正解だよね?」

「そうね。他の人には聞こえない声では、正気ではないと判断されるかもしれないわ」

「ハリー、気にするなよ。君はおかしくないさ」

 

ハリーの不安をハーマイオニーとロンが慰める。

 

「ハリーは正気だ。つまりその声が現実に存在したということだ」

「そうだ!ハリー、あなたにしかない特別な力があるのよ。例えば何かの言語、特定の音域とか、そういったものを聞き取る力としたら?」

 

セレーンはサムの発言で思いついた。セレーンにとって特別な能力は身近なものである。さまざまの能力が存在してもおかしくない。それに対してハーマイオニーは目を輝かせた。

 

「そうだわ!ミセス・ノリスは何かに石に変えられた。その何かは生き物のはずよ。だって移動してたんだもの。ハリー、あなた動物と話せる?」

「え?動物?蛇となら話せるよ。でもそんなの誰でもできるよね?」

 

ハリーを除いた4人は一瞬黙りこんだ。ハリーはその沈黙にそわそわする。

 

「君、パーセルマウスなんだね」

 

ロンは驚きと畏怖の入り混じった目をハリーに向けた。

 

「でもたくさんいるだろ?」

「いいえ、ハリー。パーセルマウスが使えた人物は歴史上に2人だけよ。サラザール・スリザリンと例のあの人」

 

ハリーはハーマイオニーの答えに黙った。パーセルマウスは希少で、いいイメージのものではないと初めて知ったのだ。

 

「蛇、石にする、秘密の部屋、このキーワードで調べてみよう。正体を突き止めるんだ」

 

サムは意気込む。サムのおかげで場の雰囲気が変わった。

 

「そういえば、マルフォイが言ってたよな。『次はお前たちだ!純血ではない哀れな奴らめ!』って」

ロンはふと思い出した。マルフォイにしては例の差別用語を使わなかった。それだけセレーンのことが好きなんだろう。セレーンは茫然としていたためあいにく聞き逃していたが。

 

「マルフォイは何か知ってるんだ。奴から聞き出すのが手っ取り早い」

「でもどうやって?」

 

ロンの提案にハリーは疑問を投げた。ロンは言葉を詰まらせる。簡単に聞き出せる相手ではない。

 

「わたしが聞く。マルフォイと仲直りする。そうしたら話してくれるでしょ?友達だもの」

「そんなことしなくていいわ!無理に仲直りなんて!」

 

セレーンのアイデアにハーマイオニーは反対した。しかしどう考えても一番確実な方法である。セレーンは一歩も譲る気はなかった。

 

「ぐずぐすしてられないわ。また被害が出たらいけないから、なるべく早く聞き出さないと」

 

セレーンの決意が固いとわかった4人は見守ることにした。ハーマイオニーは不本意だが、マルフォイのセレーンに対する好意を最大限に利用することにした。こうしてセレーンの色仕掛け大作戦(当の本人には自覚なし)が開始された。

 

 

翌日の空き時間。セレーンはマルフォイを見つけて呼び止めた。

 

「ねぇ、マルフォイ。…ドラコ、話があるの」

「セ、セ、セレーン?」

 

緊張するマルフォイにセレーンは笑顔でついてくるように言った。マルフォイは素直にセレーンについて来て2人きりになれる教室に入った。実はその教室にはハリーたち4人が潜んでいるのだが、マルフォイは知るよしもない。セレーンはマルフォイが教室の扉を閉めたことを確認してから自然な流れで切り出した。

 

「昨日言ったこと、考えてくれた?」

「あ、あぁ。君の言う通り、グレンジャーに謝るつもりだ」

「よかった。じゃあ、仲直りね」

 

セレーンに握手を求められ、マルフォイは舞い上がった。今日のセレーンはいつにも増して魅力的だった。それもそのはずハーマイオニーが朝から気合を入れてセレーンにメイクを施していたのだ。ナチュラルに仕上げたが、セレーンの魅力を倍増させるだけの出来栄えである。セレーン本人はなぜメイクされるのかわかっていなかったが、ハーマイオニーが楽しそうであったし自分もメイクに興味があったのでされるがままであった。

 

「でも、どうして急に?昨日は僕がグレンジャーに謝るまで口は聞かないって言ったのに?」

「昨日あの後怖いことがあったでしょ?ミセス・ノリスが石にされて…。もしかしたら次は自分が石にされるかもって考えたら、あなたと絶交したことを後悔したくないと思って」

 

セレーンが若干棒読みで答えた。マルフォイに疑われないように前もって想定される質問の答えをハリーたちが用意しておいたのだ。セレーン以外の4人はマルフォイがセレーンにべた惚れと知っていたので、そこを突いた答えをセレーンに暗記してもらっている。ハリーとロンは笑うのを必死で堪えていた。

 

「そうかぁ。怖かったんだな。でもセレーン、君は狙われない。君は純血だ。僕と同じで」

「秘密の部屋って一体何なの?」

「ホグワーツの創始者、サラザール・スリザリンが残したと言われている部屋だ。彼の意志を継ぎ、その部屋を空けホグワーツを粛清する者こそが『スリザリンの継承者』であるとされているんだ」

「部屋は開かれたって血文字で壁に書いてあったよね?誰が開けたのかな?」

「さぁ?僕には見当もつかないよ。スリザリン生の人間が開けたなら僕が把握しているはずだ」

 

マルフォイは嘘をついていない。セレーンは確信した。

 

「以前にも部屋は開かれたんだ。僕の父上はご存知だが、教えてくださらない。もっとも、父上よりも前の時代だけどな」

「そうなの?」

「無理をいってようやく教えていただいたことは、前回開かれた時にマグル生まれが一人、死んだということ。それだけだ」

 

恐ろしいことがホグワーツで起きようとしている。セレーンと隠れている4人は事の重大さを知った。




ポリジュース薬の出番はなくなりました。ハーマイオニーは規則を破らなくて済みました。前回はマルフォイの出番がなかったので、ここからどんどんマルフォイにも登場してもらおうと思います。
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