クリスマス。今年はハーマイオニーも残ることになり、初めて5人で過ごすことになった。そんな中、セレーンはマルフォイに誘われてスリザリン寮に遊びに行っていた。ハリーたち4人は反対していたが、楽しく過ごした上に、マルフォイから希少な本をもらって上機嫌のセレーンはスキップしながらグリフィンドール寮へ向かっていた。すると途中でジニーと出会った。
「あら、ジニー。どうしたの?」
「セレーン、あなたにプレゼントよ。これ、あげるわ」
セレーンはジニーに黒い日記帳を手渡された。随分と古びた日記帳だが、1ページも使われていなかった。
「ありがとう、ジニー。あっ!わたしのプレゼントを着けてくれてるのね!」
セレーンはジニーの手首にある手づくりのブレスレットを指差して微笑んだ。
「渡したわ、プレゼント、渡したわ、日記帳、渡したわ、彼の言うとおり…」
「ジニー?」
「渡したら立ち去る、すぐに立ち去る、彼の言うとおり…」
しかしジニーはセレーンの言葉に一切反応せず、ぶつぶつとつぶやきながら足早に通り過ぎてしまった。ジニーったら、どうしたのかな?セレーンは違和感を覚えた。
グリフィンドールに戻ってすぐハリーたちにジニーのことを相談した。
「ジニーは最近そわそわしたり、ぼーっとしたりしてることが多いってパーシーが言ってた」
「何か悩み事があるんじゃないかしら?」
ロンは兄のパーシーからの情報を教えてくれた。ハーマイオニーは不安げである。
「まずはわたしとハーマイオニーがジニーに話を聞いてみようか」
「そうね。女の子同士のほうがいいわ。ロン、任せてもらえる?」
セレーンの提案にハーマイオニーは賛同した。男子3人も喜んで2人に任せることにした。
さっそくジニーが寮に帰ってきたところに、セレーンとハーマイオニーはさりげなく話しかけて相談に乗ると言った。しかし。
「何でもないわ!私のことはほっといて!お節介だわ!どうせ2人に言ったってわからないもの!」
ジニーの話を聞こうとした結果、セレーンとハーマイオニーは拒絶されてしまった。ハーマイオニーは何か言いかけたが、ジニーは部屋のドアを勢いよく閉めて、そのまま中にこもってしまった。心配でならないセレーンたち5人は別の方法を考えることにしたが、その夜は何の案も出ないままお開きになった。皆が寝静まった頃、セレーンはどうしても眠れなくてマルフォイからもらった本を読むことにした。すると、本の間から黒い日記帳が落ちた。ジニーから日記帳をもらったことをすっかり忘れていたセレーンは、日記帳に何かヒントがあると思った。とりあえず、ページを開いて羽根ペンで文章を書いてみる。
『ジニーのことが心配。どうしたら元気づけられるの?』
書き終わった瞬間、セレーンの文章が消えて新たな文章が浮かんできた。
『君はジニーではない?僕はトム・リドル。この日記帳の持ち主。君は誰?』
セレーンは驚いて浮かんできた文章を指でなぞってみた。何も変わったところはない。ただ意思疎通できる不思議な日記帳だ。でも魔法ならこんな日記帳があってもおかしくない。セレーンはそう考えて日記帳とやり取りすることにした。
『わたしはセレーン・ウォーターフォード。よろしくね、トム』
『君はもしかしてセレナと関係がある?』
『セレナ?』
『人魚の世界の女王セレナ。海を統べる者だよ。僕の同級生』
セレーンは戸惑った。セレナ、つまり祖母はトム・リドルと同級生?もしかしたらいろいろ聞けるかもしれない。
『セレナについて教えて』
『彼女は僕と同じスリザリン生で、優秀な魔法使いだ』
それだけ?セレーンは少しがっかりした。しかしそこで新たに閃いた。トム・リドルは秘密の部屋のことを知っているかもしれない。
『秘密の部屋について知ってる?』
『もちろん、知っている。僕の時代に秘密の部屋は開かれた。説明するよりも実際に見せよう』
え?見せる?疑問に思うより前に日記帳が光り出し、セレーンは日記帳の中に吸い込まれた。
セレーンはホグワーツの廊下に立っていた。目の前で黒髪の美しい青年がまっすぐ階段へ向かっている。セレーンはその青年がトム・リドルであると察した。
「トム」
静かに青年を呼び止める声がした。それはセレーンの背後からだった。
「セレナ、どうした?」
トムは階段の途中で立ち止まり、振り返る。セレーンもそれに合わせて振り向いた。そこには母に似た顔の女性が立っていた。母よりも目元が冷たい印象である。黄金の髪を軽くなびかせてトムに追いついたセレナは素っ気なく言った。
「秘密の部屋はあなたが開けたの?」
「そうだ」
「私をそこへ連れていって。バジリスクを見てみたい」
「本気で言ってるのか?」
「連れて行くか連れて行かないか、はっきりして」
セレーンは信じられない思いで2人のやり取りを見ていた。日記帳の持ち主こそが秘密の部屋を開けた張本人で、祖母に当たるセレナという女性は物怖じせずにスリザリンの継承者と話している。
「連れて行くさ。君の望みなら。僕が断ったことがあるか?」
「連れて行ってくれると思ってたわ」
「そうだよ、セレナ、ぼくは君のことが」
「行きましょう。3階の女子トイレでしょう?入り口はわかってるのよ?」
セレナはつかつかと階段を登っていく。トムはあわててその後を追っていく。一瞬景色が白くなってぐにゃりと歪んだ。そして新たな光景が広がった。
「バジリスクを倒せない!僕らでは無理だ!」
「ダメ!私たちのせいでマートルが犠牲になったのよ!絶対バジリスクを倒してここを消滅させるのよ!」
2人は暗くじめじめした場所に隠れていた。近くをズルズルとバジリスクが通り過ぎていく。通り過ぎた途端にセレナは飛び出してバジリスクに魔法をかけた。無言呪文だったため一体何の呪文かはわからないが、バジリスクの鱗の一部が削り取られた。バジリスクは咆哮を上げてセレナに向かっていく。トムもすかさず魔法をかけた。大量の血が辺りに広がる。バジリスクの咆哮はさらに大きくなった。セレナは素早く避けてバジリスクの背後に回った。
「…ああああぁぁぁ!!!」
急にトムが苦悶の声を上げた。バジリスクの牙が、深々とトムの背中に刺さっていた。背中から大量に血が溢れ出す。2人ともバジリスクの目を見ないように影だけを頼りに戦っていたため、トムはバジリスクとの距離を見誤ってしまったのだ。
「トム!」
バジリスクが一旦トムから牙を抜き、再び襲おうとした。その隙にセレナはトムを呪文で引き寄せた。そしてバジリスクを渾身の魔法で吹き飛ばす。そこでまた景色が白く歪んで、新たな場面に変わった。
「トム、今治すから」
トイレの洗面台の下に血塗れで横たわるトムと必死に背中の傷に手を押し当てるセレナ。セレナの身体は白く光り、見る間にバジリスクから受けた傷は消えていく。セレーンよりも圧倒的に早く傷を癒している。
「トム、ごめんなさい。私が無理を言ったせいだわ」
「大…丈夫だ。…こうして…治してくれた」
セレナが傷を癒したとはいえ、トムの息は荒い。
「私たちには無理だったわ。バジリスクを倒せない。せめてここに閉じ込めましょう」
「そう…そうするしか…ない」
そこでふつっと映像は途切れ、セレーンは現実の世界に戻された。イスに放り出されてしばらく茫然としていると、トムは言った。
『僕らは秘密の部屋を失くすために動いた。だが、それは叶わなかった。結局、1人の女子生徒を犠牲にしてしまった上にバジリスクを倒せなかった。僕らは自分たちの力を過信していたんだ。そこでこれ以上の犠牲を出さないために僕らは秘密の部屋にバジリスクを閉じ込めた。そしてまた秘密の部屋が開かれそうになったら、この日記帳で危険を知らせて部屋を閉じる方法を伝えようと決めた。それが僕らのせめてもの償いなんだ。』
そろそろ佳境に入ってきます。トムはどういうつもりでセレーンに接触したのでしょうか。