セレーンは朝起きてすぐに4人に昨夜の出来事を知らせようとした。机に置いた日記帳を持って行こうとしたところ、なんと日記帳は消えていた。確かに置いたはずなのに。セレーンは首を傾げながら、談話室へ向かった。今年のクリスマス休暇は、バジリスクの事件のせいで学校に残った生徒が圧倒的に少ない。普段よりも広く感じる談話室には既に4人が揃っていた。ハリーとロンはチェス。サムは暖炉の前で読書。ハーマイオニーは机で勉強をしている。
「おはよう、セレーン」
「珍しくお寝坊さんだね」
すぐにセレーンに気づいたハリーとロンが話しかけた。ハーマイオニーも2人の声で振り返った。そして蒼い顔のセレーンを見て驚く。
「セレーン、大丈夫?」
「風邪かい?」
「どうしたの?」
ハリーとロンが騒ぎ、ハーマイオニーは慌てて駆け寄ってきた。
「秘密の部屋の入り口がわかったの。3階の女子トイレ。嘆きのマートルがいるところ」
「どうしてわかったの⁈」
セレーンの言葉にハーマイオニーはさらに驚いた。ハリーたち男子陣も急いでセレーンの元へ集まる。セレーンは4人を見回してから、昨夜の出来事をすべて話した。
「つまりトム・リドルとセレーンのお祖母さんはバジリスクを倒して部屋を失くそうとしたけどできなかった。そして今、再び開かれた部屋を閉じさせるために日記帳で僕らに知らせてきたってこと?」
ハリーは話を何とかまとめた。
「ダンブルドアに相談しよう!」
「そうだわ!それが一番よ!」
ロンとハーマイオニーはさっそく談話室を出ようとした。ハリーもそれに続く。
「皆、待て!トム・リドル…聞いたことがある。トム……」
サムが凄まじい形相で考えを巡らせている。その気迫に飲まれたハリーたち3人は動きを止めた。セレーンは不安げにサムを見守る。
「賢者の石を守ったとき、ダンブルドアはヴォルデモートを『トム』と呼んでいた」
「そうだったわ」
サムの言葉にセレーンは青ざめる。ハーマイオニーは談話室を行ったり来たりし始めた。
「じゃあ、そのトム・リドルって奴はヴォルデモートで嘘を言ってるかもしれないってことだね?」
「どっちにしろダンブルドアに言うのが一番だよ」
ハリーも顔をこわばらせたところにロンが提案する。
「行こう。校長室へ」
ハリーは再び外への扉へ向かった。4人もそれに続く。ヴォルデモートが今回の事件に関わっているかもしれない。妙な確信が5人にはあった。
「ダンブルドア校長に何の用だね、ポッター」
校長室の入り口で5人はばったり会いたくないひとに出会った。スネイプだ。
「スネイプ先生。トム・リドルをご存知ですか?」
ハリーはどうしようかと焦ったところで、サムが先にスネイプに話しかけた。
「…オーウェン、どこでその名をっ⁈」
「セレーンにある物品を通して接触してきました。先生、トム・リドルとは例のあの人ですね?」
4人が固唾を飲んで見守る中、明らかにサムが優勢に立っていた。スネイプは引きつった表情のまま唸る。
「ダンブルドア先生にお会いしたいのです。構いませんね?」
「…ダンブルドア校長は4日前から海外に行かれている。緊急の呼び出しだ。…直ちに寮へ戻れ!絶対に寮から出るな!我輩がダンブルドア校長を呼び戻そう。さあ!戻れ!」
スネイプは初めて見る切羽詰まった様子で5人を寮のある方へと追いやる。サムの話を聞いて非常事態と悟ったようだ。5人は納得できないものの、寮に戻ることにした。ダンブルドアがホグワーツにいないとなると危険な状況である。寮の外にいることは得策ではないと判断したのだ。また、あのいけ好かないスネイプが今回だけは生徒の身を案じて焦っているように見えて信用してみようと5人は考えたのだった。
5人は寮に戻ってすぐ、ジニーを探した。ジニーから日記帳をもらったことと、最近ジニーの様子がおかしかったことがつながったのだ。
「いないわ!部屋にもどこにも!」
「パーシーも見てないって!」
ハーマイオニーとロンはかなり動揺している。
「学校内を探すしかない」
ハリーは外へ飛び出そうとした。それをサムはあわてて引き止める。
「1人で行くな!絶対に誰かと一緒に行動しないと!とりあえず、ハリーとセレーンは寮から出さない!」
「そうだ!ハリー、セレーン、2人はあの人に狙われている。妹は僕だけで探すよ」
「ロン、でも!」
ハリーはロンに反論する。セレーンも不服そうだ。
「2人ともお願いだからここにいて。私たち3人で固まって探すわ。誰も1人では探さない。お願いだから、あの人の思惑に乗らないで」
ハーマイオニーは切々と訴えかけた。ハリーとセレーンは諦めざるを得なくなった。
「どうか無事で。お昼には帰ってきて。5人でご飯を食べよう」
「絶対、約束だ」
セレーンとハリーの悲しげな言葉に3人は笑って談話室から出て行った。誰もいない談話室で2人は顔を見合わせてからそれぞれの部屋へ帰った。セレーンは泣きたくてたまらなかったし、ハリーは不安を隠せそうもなくてセレーンと一緒にはいられないと思ったのだ。
セレーンは部屋に入ってすぐにベッドに突っ伏した。ジニーに何かあったらどうしよう。3人の身に何かあったらどうしよう。自分はなんて役立たずなんだろう。堪えきれない不安と焦り。
「セレーン、泣いてるの?」
突然声が降ってきた。驚いて身を起こすと、なんとジニーが立っていた。にこにこと微笑んでいるジニーはセレーンの頬を優しく撫でて涙を拭き取った。
「ジニー!!どこにいたの?皆、心配してたんだよ!!」
「セレーン、助けて。あなたにしか私を助けられない。お願い。あなただけに伝えたかったの」
「私だけ?…」
セレーンは目の前にいるジニーに違和感を覚えた。その違和感の正体を必死に見つけようとする。
「セレーン、助けてくれるよね?」
「トム・リドル?ジニーじゃないわね。トムなんでしょ」
微笑むジニーの目が笑ってない。冷たくそして一瞬赤く光った。
「僕がわかった?セレーン、さすがだ」
「目的は何、ヴォルデモート?」
「ばれたかぁ。じゃあ、話は早いね。僕は今、この小娘の身体を操っている。つまりこいつが人質だ。返してほしいなら、僕について来い」
見破られたが、一切慌てないヴォルデモートはセレーンに手を差し出した。この手を取れば、ジニーを救えるかもしれない。セレーンは静かにヴォルデモートの手を取った。
いよいよ佳境に入ります。