セレーンとハリーは互いに追い出された理由を話した。ハリーは意地悪な叔母を膨らませて空へ飛ばしてしまったらしい。もちろん故意ではなくセレーンと同じく過失である。そしてこれからどうするか2人で話し合った。とりあえずダイアゴン横丁に行くことだけは決まった。さらに2人でこれからの計画を考えているうちに、あっという間にダイアゴン横丁に到着した。小さくてみすぼらしい漏れ鍋というパブの前だった。ダイアゴン横丁への入り口がある場所だ。
「ありがとう、車掌さん」
「どうも」
2人ともスタンにお礼を言い、荷物を降ろすのを手伝ってもらう。荷物を取り出すのに夢中になっていると、背後から声がした。
「2人とも!やっと見つけた」
2人が振り返る間もなく、肩に手が置かれた。スタンは驚きの声を上げる。
「こりゃ、おったまげた!大臣!」
2人の顔から血の気が引いていく。コーネリウス・ファッジ、魔法大臣がすぐ後ろにいる。2人は互いに視線を交わしながら、ゆっくりと振り向く。でっぷりとした小柄な男性がくたびれた様子で立っていた。
「この2人は何をしたんで?」
スタンは興味津々である。大臣が直々に出向いているのだから興味を持っても仕方ない。
「あぁ、ちょっとね。いや、この2人をナイト・バスが拾ってくれてよかった。だが、私たちはもう漏れ鍋に入らねば…」
スタンの質問に煩し気に答えながら、2人を否応なしにパブへ引っ張った。中へ入るとすぐに店主のトムが笑顔で声をかけてきた。
「大臣、いましたかね!何かお飲み物は?」
「紅茶をポットで頼む。それと、個室を2部屋用意してくれ」
トムは頷いてカウンターへ戻っていった。2人は大臣に促されて大臣と向かい合わせに腰掛ける。これから大臣に何を言われるか心配でならない。
「私はコーネリウス・ファッジ、魔法大臣だ」
答えようとしたが、あいにく2人とも緊張で喉が渇いてしまっており返事を声に出せず頷くだけになった。ファッジは構わず続ける。
「さて、2人とも。遠慮なく言うが、いやぁ大騒ぎだった。ハリー、君がおじさんとおばさんの家を飛び出したと知って肝を冷やしたよ。すると次はセレーンが孤児院を飛び出したと来た!私はもしものことがと…まぁ、結果としてはだ、2人とも無事でよかったよ。ハリー、セレーン、安心したまえ。魔法事故巻き戻し局をプリベット通りと孤児院に派遣した。事故の記憶は誰も覚えていない。一件落着、実害なしだ」
ファッジは穏やかに2人に笑いかける。2人とも戸惑いを隠しきれず、また互いに目で会話した。『どうなってるの?』『さあ?僕にもさっぱり!』
「あぁ、それぞれ大人たちの反応が気になるのだろう?ハリー、君のおじさん、おばさんはご立腹で来年の夏ならば迎える用意があるそうだ。そしてセレーン、先生方も大変怒っていた。来年の夏まで顔を見たくないそうだ」
ここでやっとハリーは声を出すことに成功した。
「僕、プリベット通りに二度と戻りたくありません!」
「わ、私も絶対孤児院に戻りたくないです!」
セレーンもハリーにつられて主張した。ファッジは困ったように言う。
「まあまあ、落ち着きなさい。今すぐとは言っていない。…あー、ひとまず残る問題は夏休みの残りを君たちはどこで過ごすか、だ。私は漏れ鍋に部屋を取るとよいと思うが、そして」
「待ってください!僕の、僕たちの処罰はどうなりますか?」
ファッジは不思議そうにハリーを見る。セレーンは不安でそわそわし始めた。
「処罰?いやいや、君たちは何もしていない!何を言っているのかね。それはさて置き、2人とも、11号室と12号室が空いている。快適に過ごせると思うよ。ただ一つだけ約束してほしい。ロンドンへは出て行かないように。いいかい?ダイアゴン横丁だけにしてくれ」
「どうしてですか、大臣?」
セレーンはすかさず聞いた。ファッジは大きく咳を一つして答える。
「また行方不明になられては困る。君たちは未成年だからね。さて、もう行かんと。やることが沢山あるんでね」
「ブラックはどうですか?よい知らせはまだないのですか?」
ハリーが質問した途端、ファッジはあからさまにうろたえた。
「何のことだね?あぁ、聞いたのか。残念ながら、まだない。それではお別れしよう」
ファッジはにっこり笑い、帰って行った。2人は同時にほっとして喜び合った。てっきり魔法力を爆発させたことで処罰されると考えていた。最悪の場合、退学だ。ナイト・バスで2人でそう結論付けて不安に駆られていたのだ。ハグしあって嬉しさを噛み締めた。