ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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ボガート

セレーンはヒッポグリフの件からマルフォイをいない者として扱っている。去年も似たようなことをしたことがあるので、セレーンのマルフォイスルースキルは磨きがかかっていた。お陰でハリーたち4人はマルフォイの情けない顔を何度も拝むことになり、笑いを堪えすぎてお腹がつりそうになっていた。そんな今朝の重大ニュースは、ホグワーツから遠くない場所でシリウス・ブラックが目撃されたというものであった。この重大ニュースよりも今一番気になっていることがハリーとロンにはある。それは、ハーマイオニーとサムが頻繁にそして唐突に消えたり現れたりしているように感じることだ。しかし2人とも誤魔化すばかりで、何か隠しているに違いないと考えていた。

 

その日の最後の授業は、闇の魔術に対する防衛術であった。授業が始まると、ルーピン先生が微笑みながら入ってきた。

 

「やぁ、みんな。教科書はカバンに戻して。今日は実地練習だ。杖だけあればいい」

 

全生徒が教科書をしまう中、サムとハーマイオニーは怪訝そうだ。

 

「よし、教科書はしまったね。じゃあ、ついておいで」

 

生徒たちはルーピンに従い、進んでいく。職員室にたどり着くと、みんなを中に入れて古い洋箪笥の前に並ぶように指示した。洋箪笥はわなわなと震えている。

 

「この中にはまね妖怪のボガートが入っている。ボガートは暗くて狭いところを好む。それでは最初の問題だ。ボガートとは何でしょう?」

 

この質問に対して手を挙げたのはもちろんセレーン、ハーマイオニー、サムの3人である。ルーピンは3人もの生徒が名乗り出ているのに面食らいながら、ハーマイオニーを当てた。

 

「形態模写妖怪です。私たちが一番怖いと思うものに姿を変えることができます」

「素晴らしい。私でもそんなにうまくは説明できないよ。だから、この洋箪笥にいるボガートはまだ何の姿にもなっていない。そして今私たちはボガートより大変有利な立場にあるんだ。その理由がわかる人は?」

 

再びお馴染みの3人が手を挙げた。今回はサムに答えさせる。

 

「僕たちの数が多すぎて、ボガートは何に変身すればよいか混乱するからです」

「そう、その通り。そしてボガートを退散させるのに必要なのは何かな?」

 

ルーピンはセレーンを当てる。

 

「笑いです。ボガートを呪文で滑稽だと思える姿に変えてしまうことです」

「そうだ!ではみんな、私に続いて言ってみよう。リディクラス!」

「リディクラス」

 

全員一斉に唱えた。そしてルーピンはネビルを指名した。

 

「よーし、ネビル。ゆっくりやっていこうか。君が一番怖いものは?」

 

ネビルはガタガタ震えながら、口をパクパクさせて蚊の鳴くような声で囁いた。

 

「スネイプ先生」

 

ほとんどの生徒が笑い、それにつられてネビルもニヤっとした。

 

「ふーむ。スネイプ先生か。よし、ネビル。耳を貸して」

 

ルーピンはネビルの耳元で何やら囁く。ネビルはくすっとしてから、自信なさげに頷いた。

 

「よし、ネビルやってみよう。洋箪笥のドアを開いたら、叫ぶんだ。リディクラス!ってね」

 

そう言うと、ルーピンはドアを開けた。何が起こるか全員が見守る。洋箪笥の中からスネイプがネビルに向かって進み出てきた。ネビルは真っ青になっている。

 

「さあネビル、今だ!」

「リ、リ、リディクラス!」

 

ネビルの呪文は見事に成功した。そこに立っていたのは、レース縁取りをしたドレスを着たスネイプだった。頭には虫食いのある帽子、手には巨大な真紅のバッグをぶら下げている。どっと笑いが起こり、ボガートは途方に暮れたように立ち止まった。

 

「さぁ、次!」

 

そこから一人一人ボガートの前に進み出て、次々に怖いものを笑えるものに変えていく。少しずつ順番が進み、次にハリーの番だった。ハリーの後ろにはセレーン、サム、ハーマイオニーが待っている。ハリーが前へ出た途端、ルーピンがハリーの前に割って入った。

 

「よーし、そろそろお終いだ。リディクラス!」

 

ボガートは銀白色の玉からゴキブリになったところで、再び洋箪笥に閉じ込められた。

 

「みんな、とってもいいクラスだった。宿題だ。ボガートの章を読んで、まとめを提出してくれ。月曜までだ。今日はこれでお終い!」

 

 

ルーピンの授業後、みんなは興奮しきりだった。そんな中、ハリーは不服だった。ルーピンが意図的にハリーの番を止めたように見えたからだ。

 

「なんでルーピンは僕を遮ったんだろう?」

「そういえば、そう見えたわね」

 

ハリーの疑問にハーマイオニーが賛同する。

 

「あぁ、それはきっとハリーがヴォルデモートの姿を知ってるからだ」

「特に私たち3人、私とサム、ハリーは直接対決してるもんね。恐怖の対象でもおかしくない」

 

サムの考えにセレーンも同調する。ロンも納得したように言った。

 

「そりゃそうだよな。もしハリーたちの誰かがボガートを例のあの人に変えたら、今日からみんな例のあの人が一番怖いものになりそうだもんな」

「僕はヴォルデモートなんか怖くない」

「知ってるわ。でも先生にあなたたちの3人があの人を怖がってないなんてわからないでしょ?」

 

ハリーは反発を覚えたが、ハーマイオニーの言う通りである。去年のセレーンとヴォルデモートの対決を話に聞いて以来、5人でヴォルデモートのことをロリコン扱いしていたが、現実では闇の帝王である。決してハリーが弱いと思われたわけじゃないとわかって、ハリーは安心していた。




私事で申し訳ありませんが、最近忙しくなっており今後は不定期の更新になりそうです。できるだけ1ヶ月に1話は投稿したいと思っていますが…。気長に待っていただければ幸いです。今後もよろしくお願いします。
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