ハリー・ポッターと滅びゆく一族の末裔   作:水湖 玲

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みぞの鏡

クリスマスの朝。セレーンはわくわくしながらクリスマスプレゼントの元へ走った。ハーマイオニーがプレゼントをくれる予定なのだ。セレーンは思ったよりもたくさんあるプレゼントにびっくりした。

 

「メリークリスマス、セレーン」

「サム!メリークリスマス」

 

同じくプレゼントを見ようと降りてきたサムは首を傾げた。

 

「僕のプレゼントが多すぎる気がする。間違ってないかな?」

「わたしもなの。どうしてかな?」

 

二人は仲良しの友達以外に思いつく限りプレゼントをくれそうな人を考えた。そこにロンとハリーがやってきた。

 

「メリークリスマス」

「やぁ、メリークリスマス」

「プレゼント、開けないのかい?」

 

ロンの質問にサムが答えた。

 

「プレゼントが多すぎるんだ。こんなにたくさんプレゼントをくれるような知り合いはいないよ。セレーンも多すぎるって」

「そうなの。間違いだったら困るから開けてないの」

 

セレーンも重ねて言った。ロンは呆れた顔で二人を見つめた。

 

「心配しなくてもこれ全部君たちのだ」

「うーん?わかった。開けてみる」

 

セレーンは納得できないまま一つ手に取って開けてみた。ハーマイオニーからクッキーと『絶滅危惧の魔法生物とその生態』という本をもらった。セレーンはにっこりしながら次のプレゼントを開けた。ハグリッドからは可愛い木彫りのふくろうとロックケーキ。そして次は綺麗なブルーのセーターとホームメイドファッジが入っていた。

 

「誰からだろう?」

「僕にもあった」

「僕もだ」

 

セレーンのつぶやきにサムとハリーも不思議そうにセーターをそれぞれ手に持っていた。サムはルビー、ハリーはエメラルドグリーンだった。

 

「それ、僕のママからだよ。君たちの話をママにしたんだ」

 

ロンのママからということがわかってセレーンたちはさらに嬉しく思った。口々に礼を述べてから再びプレゼントに取りかかった。

 

セレーンとサムは誰からかわからないプレゼントと見たことのない名前から来た手紙で困る結末を迎えた。二人は首をひねるばかりだったが、ハリーとロンは呆れてものが言えなかった。セレーンはどう見ても美少女だった。さらさらで長い黒髪、不思議な安心感を与える優しい蒼の瞳…。結構大っぴらなファンクラブがあるが、セレーンが気づくわけがない。そしてサムも同じくそこらじゅうにファンがいる。周囲の女子が彼の一挙一動にクスクスきゃあきゃあしているのだ。しかしサムもセレーンと似たような感じで気づいていない。

 

「まあ、あれだよ。君たちが孤児だからみんなが代わりに渡そうってことなんじゃない?」

 

ハリーは適当にフォローしてみた。しかしサムはハリーがもらった不思議なマントに興味津々である。セレーンはセレーンでハーマイオニーからの本を読み始めている。ロンはため息をついて二人の報われないファンたちに同情した。

 

ハリーはプレゼントでもらった着るだけで透明になれる透明マントを使って、昨夜散歩をした際に面白いものを見つけたそうだ。今晩に四人で行くことになっている。夜までの時間にチェスで遊んでいた。セレーンとサムはチェスなどしたこともなくて観るだけにした。ロンはとても強くてハリーは完敗していた。セレーンは途中で見飽きて昨日からポケットに潜ませていたサムへのプレゼントを弄った。なかなか渡せない理由は、サムがもらっていたたくさんのプレゼントの前では情けなかったからだ。サムはおかしに本、珍しい文具、誰が見ても高級とわかる魔法道具をもらっていた。セレーンはちらと見えた女の子からの自撮りブロマイドにモヤモヤしていた。サムはブロマイドが入っていた封筒を捨てずにほかの手紙の山と共に部屋へ持ち帰っていた。一瞬しか見えなかったはずのブロマイドの中の少女を思い出してセレーンは悩んだ。サムはあんな感じの大人っぽい美人が好きなのかな?正体不明の胸の痛みに不安になりながらハーマイオニーに直接相談できないことを残念に思っていた。セレーンは結局、チェスのルールを覚えるのに夢中のサムをちらちら見ながら勇気を出せずにとうとう夜を迎えてしまった。

 

みぞの鏡。それは映った人の心の奥底にある強い望みを映し出すものだ。セレーンには自分の能力を気持ち悪がらずに受け入れてくれたみんなに囲まれていた。この望みは誰にも言えるものではなかったので適当に嘘をついた。ハリーには亡くなった両親が見えているらしく、セレーンが本で読んだ通りハリーはあの鏡の虜になっていた。

 

 

「あの鏡、おかしいよ!もうやめなよ、ハリー」

 

ロンはハリーの目の下の隈を心配した。ここ2日間ずっと暇さえあれば鏡の前で過ごしていることをセレーンたちは深刻に思っていた。しかしロンの声も虚しくハリーはすっかり心を鏡に奪われていた。

 

「僕が僕の家族と会える唯一の機会なんだぞ?邪魔するな!君には温かい家族がいる!僕の気持ちがわかるもんか!」

 

するとセレーンがハリーの肩に手を置いた。そのセレーンは優しいが、怖い顔だったのでサムとロンの背中に悪寒が走った。

 

「わたしには家族がいないわ。あなたのように覚えてもいない」

「そうだ!僕は覚えてるんだ!少しだけだけど…」

「聞いて、ハリー。私はね、捨てられたの。あなたのように少しの間でも愛してもらえなかったの。あなたのご両親の愛はあなたの中にあるのよ?鏡の中じゃない。あんなまやかしじゃない。あなたの中に確かにあるの。覚えてるんでしょ?」

 

ハリーは驚いてセレーンを見つめた。温かく優しくそして怒っている蒼い瞳にぶつかる。ハリーはしばらく抗うように頭を振った。しかし顔を上げると何かが抜けたように落ち着いていた。

 

「ごめん、セレーン。ありがとう。そうだね。僕は…僕は君にひどいことを言った。ごめん」

「もういいよ、ハリー。もう鏡のとこには行かないでしょ?」

「もちろんだよ。次にセレーンを怒らせたらビンタを食らうだろうからね」

 

ハリーは笑うと、サムとロンも笑い始めた。セレーンは頑張って怒ったふりをしたが、とうとう笑い出した。楽しいクリスマス休暇はまだ始まったばかりだった。




原作にないセレーンとサムの登場によっていろいろな人の役割が変化しています。今回からちょこちょこセレーンの恋心も描いていきたいと考えています。本人はまだ恋だと気づいていませんが…。温かく見守ってください。
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