今回は、清く正しいあややさんの登場です。
水の流れる音と、木々によって作られた影が心地よい。この辺りは手付かずの自然がとても多い....幻想郷。いいところだ。
────場所は川。時刻は午前6時くらい。俺は今『マイン・オール』で出した...サーフパンツ?を履いて川に大の字になって浮かんでいる。
小学生の頃、水泳の授業の時『ずっとこうして浮かんでいたい』なんて思っていたが、まさか今になってそれが叶うとは....。やはり幻想郷。いいところだ。
◇
太陽が昇り、雲の間から光が差し始めた頃、一人の少女が森の近くの空を飛んでいた。彼女の名は
『羽ばたいて』空を飛んでいるところから判る通り、彼女は人間ではない。
幻想郷に存在する、日本で最も有名な妖怪の一角である天狗。彼女はその内の鴉天狗という種族の一人だ。
「なにか良いネタはありませんかね~。その辺に転がっていればいいんですけど.....」
鴉天狗は、天狗という種族の中でも新聞執筆を生業としている者が多く、彼女もその例外ではない。
彼女が出版する『文々。新聞』は、他の鴉天狗の出版する新聞の中では人気が高く、彼女も新聞を書くことが好きである。
しかし、人気と言っても、そもそも鴉天狗の出版する新聞は内輪受けを狙ったものが多く、事実と内容が大きく違ったものがほとんどである。
彼女の新聞はその中『では』考察がしっかりとされているというだけで、外の新聞の内容とは....比べるまでもない。
そんな彼女の目に、一人の人間が映る。その人間は、なんと上半身裸で川に浮かんでいるではないか。
「あの人、見られるとか考えてないんですかね?...まあ、とにかく────」
....写真を撮りまくりながら。
◇
「初めまして!私、清く正しい射命丸文と申します」
「....んぁ...?」
彼女は空から現れた。
俺は彼女を見て『やべえ、超カッコいい』と思った。まあ、とても綺麗な人だとも思ったが、そっちの感情の方が圧倒的に強かった。ジャイアント馬場並みに強かったのだ。
そう、肩ほどで切られた綺麗な黒髪!大きな目に紅く染まった瞳!肌は雪のように白く透き通っていて...何より、超カッコいい。全体的な...そう、体に纏うその空気!オーラとも言うべきか...?ともかくカッコいい。
先日妖怪に襲われたばかりにも関わらず、俺はそう思ってしまった。
「貴女は...妖怪ですか?」
「そうですよ、私は幻想ブン屋であり幻想郷最速の鴉天狗、射命丸文です」
得意げな顔で胸を張る彼女は、この幻想郷で一番早い妖怪らしい。幻想郷はどこからが『速い』となるのかは知らないが、最速というのだから、とにかく速いのだろう。
「で、その幻想郷の新聞屋さんが俺に何の用です?なにかまずいことでもしましたかね?」
「いえいえ、別に悪い事はしてませんよ。ただ、こんなところで貴女みたいなキュートでラブリーな女性が上半身裸でいてもいいんですか?やっぱり男って.....」
そこまで言って、彼女の動きが止まった。目線は....なぜか俺の胸元に集中している。
「失礼しました...でも、まあ!女は胸だけじゃないですよ!ほら、もっと他にもたくさん....!」
「...わかってて言ってるでしょう」
そう言うと、彼女は拗ねたような顔をして後ろを向く。
「もう、ノリが悪いですね。もうちょっと遊んでくれてもいいじゃないですか」
どうやら、俺に冗談を言って欲しかったようだ。...なら、
「エッチ!」
「ぶふっ!」
結果:盛大に吹き出した
◇
「いやー、まさか羽で飛ぶ人間がいるとは....外の世界もあなどれませんね〜」
「まあ、俺だけですけどね」
俺はあの後川から上がって文さんの取材に応じ、今は森の上を飛んで人里に向かっている。一層の事、誰にも見つからない様にひっそりと暮らそうかとも思ったが、折角第二の人生を得たのだ。少しは変化があってもいい。
「さっき言ってた能力ですか?」
「はい。『金属操作』と『原点越え』です」
「.......」
そう答えると、彼女は黙ってしまった。更に、訝しむ様な目でこちらを見つめている。
「どうしました?」
「何か、隠してますね」
あまりにも直球すぎる問いに、俺は緊張してしまった。まさか、神や転生の事を言っているのだろうか?
「....何の事ですか?」
「とぼけないでください。貴方の本性は、もっと冷酷で、残酷で、その気になれば、命の計算だって出来る。そんな人間のはずです」
「.....はい?」
なんだろう。なんか、すごく酷い人間に見られてる。命を計算?なにそれ、寿命マスター?
「....喋り方なら、まあ初対面ですし変えてますけど.....そんな酷い人間ではないと思うんですけどね」
「.......」
彼女はまだこちらを疑っているようだ。真剣な表情はカッコいいけど目が超絶怖い。ビーム出そう。『真の妖怪は目で殺す』とか言いそうで怖い。
...........どうしよう
吐きそうです。次回、色々します。