―――――side涼風
涼風「……あれって」
夕立「…なんで、よりによってあんなのがいるっぽい…!?」
島の周辺に点々とある岩陰からのぞき見たさき、そこにいたのは…
北方棲姫「……」
夕立「あんなの相手になるわけないっぽい…」
涼風「いや、今なら地上じゃないから狙えないことはないけど…」
AL海域の実質的支配者にして、陸上型深海凄艦の一人である北方棲姫。
ただ、今日に至ってはその特徴的な装備はつけておらず、ヲ級の頭の上にちょこんと座っている状態だ。
それでも、随伴艦のヲ級二隻にハ級二隻はflagship。とても相手にはできない。
涼風「……なんで、北方の要がこんな南方まで…」
夕立「やっぱり、あのワ級に何か大切なものがあるっぽい?」
夕立はやはりワ級が気になるのか、首をかしげつつ北方棲姫達の様子を眺めている。私もだんだん興味が惹かれているが、どちらにしても北方棲姫達を襲撃する気はない。
あたい達はある程度北方棲姫を監視すると、合流するために朝潮達が待っている場所まで移動を開始した。
荒潮「あらぁ~随分な大物がいたのね~」
卯月「運が良いのか悪いのかわからないぴょん……」
あまりに予想外すぎる発表に、いつもはお調子者の卯月もわずかながらげっそりとした顔になる。
ただ、好戦的な荒潮に関してだけはその報告も対した抑えにはならなかったようだ。
弥生「……それで、これからどうするの…?」
涼風「そうだなぁ……」
あたいは若干顔をしかめつつ考える。現状、戦力は減ったとは言え敵は姫・鬼クラスを含む艦隊だ。
とてもじゃないが勝つ事はできない…
ただ、それだけの艦隊が出張る理由…それを確認して悪いことはない。
いや、それだけでなくとも…水雷戦隊お得意の一撃離脱戦法…これで、敵が守っているワ級を強襲することもできるのではないか…
あたいは徐々に思考の渦に入り込んでいく…ただ、事態はあたい達を待ってくれなかった。
卯月「……敵艦隊、動き出したぴょん。
方角は南……南方海域の奥地に向かう気ぴょん」
荒潮「どうするのぉ~。撤退する?それとも~」
涼風「………全員、第一警戒で単縦陣でついてきて。
……追跡するよ」
あたいが小さく呟いた一言に、戦闘大好きな2人は目に見えて笑顔になる。ただ、ここであたいの考えを勘違いされては困るため、きっちり5人に向けて伝える。
涼風「目標はあくまで敵艦隊の追跡、目的地の補足。
攻撃は禁止。いいね!」
荒潮「あらぁ……ま、旗艦さんの言う事じゃ仕方ないわねぇ~」
弥生「……わかった……」
それぞれが頷き返すと、最初と変わらない順番で単縦陣を取り、私達は追撃を開始した。
――――――――――
……追跡を初めて数十分、偶然かあたい達は未だに敵にも補足されず敵艦隊の追跡を続けていた。
一度あたいと夕立が敵艦隊に接近し目視で補足したが、敵の最後の一隻は南方海域の要、南方棲戦姫だ。
となると、さらにあの艦隊…特にワ級の存在が際立つ。
涼風「……卯月、敵の進行方向は?」
卯月「ん~……サブ島沖海域…おそらくこの進行方向なら間違いないぴょん。と・な・れ・ば~」
朝潮「奴らの行き先は、おそらくその先の海域…サーモン海域ですね」
サーモン海域。多数の艦隊が何度も攻略を進めているが、未だに攻略の糸口すら掴めていない深海凄艦の南方最大の海域。なるほど、南方棲戦姫が護衛をしてまで運ぶ場所としてはふさわしい?のかもしれない。
少なくとも、あそこに入られては連合艦隊でも容易には攻略できないはずだ。
涼風「……よし、撤退するよ。これ以上追跡する理由はないわ!」
夕立「結局敵に全然気づかれなかったぽい~」
弥生「お腹すいた…司令にも報告しないと…」
また弛緩しだす私達の緊張。ただ、あれだけの護衛部隊の行き先を調べ上げたのはラッキだー
今なら南西諸島のどこかの泊地に頼めばサーモン海域に入る前に追撃もできるはずだ。
南西諸島なら、たしかみすちー提督さんがパラオ泊地にいたはず―――
卯月「……ちょっと、待つぴょん」
弥生「……卯月?」
涼風「どうしたんだ?」
突如、卯月の真面目な声にあたい達は動きを止め彼女に視界を向ける。
卯月「……南方棲戦姫だけ動きを止めて停止……これって…」
卯月の言葉に私達の中で冷や汗が流れ出す……護衛であるはずの南方棲戦姫の停止……それが意味する事は―――――
荒潮・夕立「「ッ!!砲撃!!」」
涼風「全員散開だッ!!」
あたいが叫んだ直後、大型砲の弾頭があたい達に降り注ぎ、あたりに水しぶきの壁を作った。