―――――side深雪
体が揺れる…視界が霞む…海水が私を濡らす…掴もうと伸ばした手に感触がない…
私はそれに構わず手を伸ばすが、無理な体勢のせいか、着弾の衝撃のせいか、そのまま前のめりこけてしまう。
深雪「ぶふぁ――い、電!?いなず……ま?」
すぐに起き上がり周りを見る…すると、さっき伸ばした手に何かが当たる。
海水と、真っ赤な水で濡れた手…いつも見てきて、何度も触ったことがある…電の手…
深雪「い、電ッ!?」
電「………み……みゆきちゃ……」
手を思いっきり握り何とか立たせようとする。
けど、力が入らないのか電は、目をうっすらと開けてうわごとのように私の名前を呟く。
背中の艤装は昨日見た荒潮の艤装よりえぐれ壊れ、その機能のほとんどを失っている。
深雪「電!しっかりしろよッ!」
最上「深雪ちゃん!前!早くっ!」
深雪「ッ!?」
再度、私達を砲弾の雨が襲う。
偶然か直撃こそしなかったが、大口径の砲弾は二人を吹き飛ばすには十分だった。
深雪「クソっ!くるなよッ!」
南方棲戦姫「……フフフ」
こちらに砲門をむけつつニヤリと笑みを浮かべる南方棲戦。
こっちも10cm砲を向けるが、そんな豆鉄砲じゃ止まってくれない…
比叡「させないッ!」
南方棲戦姫「ッ!?」
直後、割り込むように入ってきた比叡先輩が砲撃をしつつこちらに向く。
比叡「深雪ちゃん!通信!司令の指示に従って!」
深雪「え…あ!」
そこでやっと私は気づくと、なんで今まで気付かなかったのだろうと思いつつ通信機を触る。
どうやら衝撃でスイッチが切れていたようだ。
私は電の肩を支えつつ通信機のスイッチを入れると、司令官の悲痛な声が聞こえてきた。
みすちー『深雪!聞こえてるわね!今すぐ最上に続いて戦線を離脱!
最上にはすでに指示を終えてるわ!比叡には殿をお願いしてる!早く!』
深雪「りょ、了解ッ!
電!少し我慢してくれ…!」
電「…………」
最上「こっちだよッ!はやく!」
私は砲撃で牽制している最上先輩に接近すると、自分も反転し二人で南方棲戦姫に向けて砲撃する。
比叡「―――――ッ!」
その隙に比叡先輩が南方棲戦姫から離れると、私達がいる場所に接近してから再度砲撃を放ち、一気に全員で離脱した。
―――――sideみすちー
みすちー「…………ッ」
大淀「提督……」
通信機から聞こえてくる無数の声、それを私は胸が痛くなるのを感じつつ聞く。
深雪の泣きそうな声、電の弱々しい吐息、必死に皆を守ってくれてる比叡の声…そんな中、戦闘音が聞こえなくなった事に気づくと、私はすぐに6人に連絡を取った。
みすちー「詳しい状況、すぐに教えて…」
深雪『司令官……』
比叡『……最上さんが主砲の一部に損傷、電ちゃんが…艤装の機能は浮上機能を残して、残りの機能は全て停止。怪我もひどいです…』
深雪『し、司令官!あれ!金剛先輩が使ってた「応急処理要因」!あれを――――』
金剛『ゆっきー…ダメなのネー…
あの装備は一度しか使えないネ……』
深雪『そんな……』
みすちー「…電の様子は…」
比叡『今、深雪ちゃんに曳航されています…まだ意識は…』
電『……うっ……』
みすちー「ッ!電ッ!大丈夫!?」
深雪『電ッ!』
―――――side深雪
私達の声に電は小さく声を上げると、うっすらと目を開きこちらを見た。
電「……あれ……私……ッ……」
深雪「無理するな電…すごい怪我してるんだぞ……」
私は出来るだけ電が痛くないように体を支えると、電を休ませるために皆に目配せし、一度停止した。
電「……司令…目標は……どうなったのですか……?」
みすちー『目標って…今は―――』
電「教えて……くださいっ!」
みすちー『ッ!?……比叡、敵艦隊の被害は……』
比叡「え…
…南方棲戦姫は小破、タ級が中破、ハ級は一隻が撃破。
そして、もう一隻のハ級と…目標のワ級が大破です」
利根「目標は、まだ健在じゃな…」
電「……それなら、皆さんで夜戦をかけてください……」
その言葉に、私だけでなく皆が驚く。
そんな中、真っ先に反論したのは―――
みすちー『何言ってるの!?第1艦隊はすぐに撤退ッ!
これ以上の戦闘は認めないわ!』
電「私なら…大丈夫なのです…」
みすちー『どこが大丈夫なのよ!』
電「なら……私だけ待機するのです…5人で…攻撃を…」
みすちー『一人だけ残してなんて尚更許可できないわよッ!!』
電と司令官の言い争いが余計に激しくなりだす…
本当なら、電の身を案じて撤退したいけど…電の気持ちだってわかる…
私達が二人の言い争いの中、思案していると…
金剛「……提督、それなら私と電ちゃん、二人で残るのネー」
みすちー『金剛!?何言って…』
金剛「損傷を受けてるけど、私はそこまで酷くないのネー…
私が電ちゃんと護衛するので、比叡達が目標に攻撃を仕掛ける。それが現状では最善ね…」
みすちー『でも…ッ!』
電「お願いです…司令官…」
みすちー『……なによ…ッ!
…沈んだら、何があっても探し出して殴るからね…』
電「司令官さん…ありがとう…なのです…」
みすちー『…比叡、敵艦隊の様子は?』
比叡「え?……電探に反応はあります、けど動く様子はありません。
おそらく、夜に紛れて逃げるつもりかと…」
みすちー『……わかったわ、夜を待って金剛と電は二人で近場の小島で待機。
比叡は他3人を連れて夜戦を仕掛けて…
通信は切らないでね』
司令官はそう締めくくると、話はお開きになった。
すでに日は傾き出し、空は紅く染まりだしている…
最終話書き終えました。
はい、なので残りの話は明日の夜に一回投稿
そして、日曜日の朝に一気に残りの話を全て投稿したいと思います。