―――――sied深雪
深雪「北上先輩の魚雷講習?」
青葉「ええっ、本人は嫌がっていたんですけど睦月さん達4人に囲まれて逃げる事もできず、渋々。
いや~でもうちの駆逐隊は総じて学ぶ時は真面目な子が多いですし、北上さんも喜んで教えているみたいですね~」
青葉さんに釣られまたその様子を眺めると、ちょうど北上さんが手につけた5連装酸素魚雷を構えたところだった。その狙う先には、距離も場所もバラバラな的が5つある。
深雪「北上さんならあれぐらい簡単に当てれるだろうな~」
五月雨「そうだね~」
北上「いい、よーく見てなよ…ってい!(シュシュシュ」
私と五月雨がそうつぶやいていると、右腕を振るい、見事なタイミングで魚雷を順次射出させていく。
皆が見守る中、魚雷は気泡も出さず突き進み…
『ドドドーンッ』
深雪「ビンゴッ!さすが北上先輩だぜ!」
五月雨「上手だな~…」
巨大な爆炎をあげて5つの的がそれぞれ吹っ飛んだ。さすが重雷装巡洋艦だぜ!
北上先輩は若葉たちが歓声を上げるのにも気にせず続きの説明を始めている。
深雪「…くー!睦月達には負けてられないぜ!
五月雨!ちょっと艤装持って北上先輩の授業受けてこようぜ!」
五月雨「え?で、でも明日から作戦開始だよ?」
深雪「良いから!こっちはめったに受けれないんだし、このチャンスは逃せないんだからさ!」
よし!決めたらすぐ行動!私は五月雨の手を引くと工廠に向けて走り出した。
青葉「作戦前に無理しすぎないようにしてくださいよー!」
深雪「わかってるってー!!」
五月雨「ちょ、み、深雪ちゃーん?!」
数分後―――――sied北上
北上「はいっ、私から教えれる事は終わり。
後はまぁ、練習頑張れば何とかなるんじゃないかな?」
睦月「ありがとうございます!!」
如月「早速今習ったこと復習してみましょ~」
文月「さんせい~」
若葉「文月は今から私と遠征だぞ…?」
それぞれに話しながら陸にあがっていく駆逐を見送りつつ、私は小さくため息つく。
勉強を真面目に聞くあたりこっちも教えがいはあるけどさ…
北上「くぁ…さて、私もそろそろ…えっと、何かな~…?」
五月雨「その…深雪ちゃんが、北上さんに練習して欲しいって…」
深雪「お願いするぜ北上先輩!(にこっ」
電「え、えっと…よろしくお願いしますのです!」(途中で深雪に捕まり
北上「………はぁ、しかたないな~」
もう休もうと思ってたんだけどな…これだから駆逐は…
北上「…良いよ。その代わりちゃんと聞かないとすぐ止めるから。
特にそこの特1型(ビシッ」
深雪「な、何で私だけ名指しなんだよ!?
い、電笑うなよっ!」
北上「………」
早速うるさい…とにかく、面倒だけどはじめますか…
―――――――――
北上「はいっ、それじゃあ最初に三人ともあの的を目標だとさ思って同時に撃ってみて。
それを見てアドハイスするから」
私はパンパンと手を叩いて三人の視線をこちらに向けると、少し遠めにある予備の目標を指差してそう伝える。
深雪「目標って…撃ち方とかは特にないんですか?」
北上「駆逐艦だの魚雷設置場所って艦種によってちがうでしょ?
それに人によって撃ち方にも違いが出てくるから…正直、まともな撃ち方さえできるなら教えることは無いんだよ。
…何より、3人とも実践を経験してるからその辺りは問題ないし…まぁ、とにかく撃ってみてよ」
深雪「…了解!」
深雪の声に合わせて、五月雨と電もそれぞれ構えを取る。
そして、全く同じタイミングでそれぞれの目標に向かって進みだした。
深雪「いっけーっ!!」
五月雨「たぁーっ!」
電「なのです!」
三人は思い思いの構えを取ると、それぞれの掛け声と共に酸素魚雷を放つ。そして、僅かな時間差とともに各々の目標に見事当てていった。
そうだな…悪くないというか、三人ともすごくいいんだけど…
深雪「よーし!百発百中だぜ!」
電「…ふぅ…」
五月雨「…よしっ…あ、北上さん!どうでしたか?」
北上「そうだねぇ…皆よくできてるとは思うよ。
ただ、少し気になるのが…まず深雪」
深雪「は、はいっ!」
北上「前のめりなのは良いけど、それすぎるのはダメ。時と場合によっては躊躇うのも大切だよ」
深雪「えっ…」
私が言ったことが予想外だったのか少し驚いてるようだ…まぁ、くわしくは三人揃って話した方が早いからあとにするとして。
北上「次、電は少し躊躇いすぎ。あれじゃあいざという時に敵に回避される。
五月雨は何度も言ったから概ね問題ないけど、メリハリつけるのは忘れちゃだめだよ」
電「躊躇いすぎなのですか…」
五月雨「わかりました!」
深雪「ちょ、北上先輩!
電は躊躇いすぎて私が前のめりって…ほとんど電と攻撃間隔は一緒だったはずだぜ?」
北上「あぁ、ちょっと持って。ちゃんと説明するから…」
これだから駆逐艦は…まじめなだけ良いんだけどさ。
北上「良い、先ずは深雪の問題だけど、正直あの程度なら問題は無いって言っていいんだよ」
深雪「えっ?」
北上「ただ、実戦ってなるとどんな状況で戦闘になるかわからない。その時、深雪の前のめりの発射が敵を仕留めるかもしれないし…ほんの少し早かったせいで、敵と味方を誤認して誤射をするかもしれない」
深雪「っ!?」
誤射という言葉にからだをふるわせて深雪は黙ってしまう…そう、私が言いたいのはこのこと。
魚雷という一撃必殺の武器の危険性。一度発射されれば、ただ突き進むだけの槍である魚雷は最大級の注意が必要だから、私は少しでも違和感があればそれに注意するように伝えてる。
深雪はわずかだけと三人の中で射出が早かったからこう注意したのだ。
北上「次、電は逆に躊躇いすぎ。それじゃあフラグシップクラスの敵にだとギリギリ回避されるかもしれない。
深雪と電はそれぞれ抜きん出てるところがあるんだから。お互いの良さを見て、戦場で使い分けれるように頑張ってみ」
深雪「ためらう事と…」
電「前のめりになること…」
まぁ、こんな注意したはいいけど、実戦でもほとんどありえない事だ。ただ、2人にはそれだけ視野を持てるほどの練度がある。だからこうやって注意したのだ。
北上「すぐには無理だろうけど、繰り返し意識しながら実戦をこなせばわかるはずさ。
それじゃあ、私はもう休むから~」
深雪「えっ!?もう!?他に何か教えてくれることないのかの!?」
北上「ないよ~基礎的な事は百点満点だし。
あぁ、練習するならしていいけど、後2、3回でやめときなよ?明日から南方海域に出撃なんだから~」
私はそれだけ伝えると、工廠に向かってゆっくりと移動を開始した。
後ろを振り返ると、深雪はまだ不満そうにしているが、すぐに気持ちを切り替えたのか五月雨と電と一緒に何かを話し始めていた。まぁ、あれなら心配ないでしょ。
北上「さて、艤装をなおしたら何するかな~」
私はひと安心すると、この後の行動を考えつつゆっくりと海の上を滑った。