ケッコンカッコカリ   作:割烹着みすちー

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31話

―――――side過去話、雷視点

 

 

 

 

雷「っ……」

 

みすちー「……っ…」

 

岩礁の一つに潜り込んで数十分…敵の捜索は未だに止みそうにない。

奇跡を信じて一気に外に出て進むって手もあるけど、敵だってバカじゃないはず。きっと基地側の方の包囲網を重点させてるわよね…

 

雷「…ねえ、司令官。

少しはマシになった…?」

 

みすちー「っ…ごめんなさい…正直…飛べそうにないわ…」

 

雷「そう……」

 

ダメ…このままじゃいつか見つかって2人ともやられちゃう…やっぱり一か八かにかけて一気に…っ?

 

雷「通信機に…雑音?」

 

みすちー「…もしかして…深雪…?」

 

雷「わからないわ…けど、誰かと通信が繋がってるの」

 

もしかして敵の通信を受信しちゃったとか?

それなら下手に出たらこっちの存在が…

 

みすちー「……深雪なら…帰れって言っても帰ってないと思う…

たぶん…まだ方位の外か…もしかしたら隙をみて中に入ってるかも…」

 

雷「この通信が深雪ちゃんのものだっていうの?」

 

みすちー「…(こくっ…)ただ、今声を出したら敵にもバレるかもしれない…だから、無作為に電波だけ出してるのかも…敵が警戒しないように…」

 

雷「そんな無茶な…けど、深雪ちゃんならそれぐらいしそうよね…」

 

敵の通信なら何かしら声がでるはず。深雪ちゃんかはわからないけど、艦娘である私の通信機が受信したんだ…たぶん、これは味方…!

 

雷「…まだ通信の電波が弱いわ…できる限り場所と位置が把握できたら一気に出るけど、それで良い?」

 

みすちー「っ…えぇ…お願いするわ…

ごめんね…迎えに行くって言って…守られちゃって…」

 

雷「もうっ、何言ってるのよ!

いざって時はお互い様でしょ!何としても一緒に生きて帰るんだから!」

 

みすちー「…そうね…ありがとう…

…タイミングは雷に任せるわ…」

 

雷「了解っ!」

 

私は元気な声で返事を返すと、司令官は安心したようになって目を閉じた。たぶん、疲れでほとんど意識が無いんだろう…私が何とかしないと。

私は通信機から聞こえてくる音と、その発信源を探り始める。

岩肌のくぼみに隠れたおかげで敵には見つかりにくいが、同時に通信機の受信機も効果が弱くなっている。

集中して……一番近いタイミングで…

 

 

ーーーーーー今だ!

 

 

私の主機が一気に唸り声をあげると、司令官を背負ったまま岩礁の一つからとびたす。

飛び出した直後に一つの違和感を感じつつ、岩礁を飛び出した私達の目に入ったのは空にポツポツと点在する敵の艦載機と岩礁の合間合間にいる深海凄艦…そして!

 

深雪「雷!司令官もっ!」

 

雷「深雪ちゃん!」

 

すでに何度か戦闘をしていたのだろう。魚雷を打ち切って煤をかぶった深雪ちゃんがすぐ目の前に現れた。私は移動する深雪ちゃんの横につけると、司令官の様子に気づいて驚いた様子で話しかけてきた。

 

深雪「ど、どうしたんだよ司令官!?

もしかしてやられたのか!?」

 

雷「ううんっ!一発も被弾はしてないけど、急に倒れて…たぶんスタミナ切れ!」

 

深雪「な、何だよただ疲れただけか…ってうお!?」

 

雷「司令官をお願い!私が空を迎撃するから!」

 

私は深雪ちゃんに司令官を背負わせると、深雪ちゃんが手に持っていた12cm連装砲を代わりにと奪い取り、空にいる偵察機に向けて放ち始める。

すでにこちらに気づいているのか、私達を逃さないように敵艦載機たちは追いかけ始めていた。

 

深雪「げっ!?くそっ…ここまでうまく隠れて合流もできたのに…!」

 

雷「振り向かないで!

後ろは私に任せてくれて良いから!」

 

深雪「何言ってんだよ!武装もうないくせに!」

 

雷「それは深雪ちゃんもでしょ!

魚雷発射管が無い分こっちが身軽なんだから!」

 

深雪ちゃんとは反対を向きつつ、きっちりと追随する。

そんな姿を見て納得してくれたのか、深雪ちゃんもしっかりと前を見据えると敵の合間を縫うように進みだした。

 

 

 

 

……よかった…これなら、大丈夫かな…

 

 

 

 

―――――side過去話、深雪視点

 

 

 

 

深雪「っ…雷!着いてきてるか!」

 

雷「…もちろんよ!深雪こそ、司令官を落としたりしないでよ!」

 

深雪「わかってるよ!!」

 

すでに武装は機銃ぐらいしかないけど、スピードに乗った私たち3人は華麗に敵の隙間をぬって進んでいる。

この調子なら、敵を巻くのだってよゆーだぜ!

 

みすちー「っ…み…ゆき…?」

 

深雪「あ、起きたか司令官!

たくもう、勝手に飛び出して疲れて倒れるなんて…後は私たちが何とかするから、任せておいてくれよっ!」

 

背中に背負った司令官の声に、私は半分呆れつつも笑顔を浮かべて話しかける。たく、こんなバカじゃ、電か雷が支えてないととてもやってけないな。

 

みすちー「っ……いか…づち…は…?」

 

深雪「え?雷ならすぐそこにーーー」

 

……いない?

 

深雪「えっ、おい!雷…!?」

 

とっさに周りを見渡すあたし。

すぐに雷がどこにいるのかは気付けた。

 

 

 

……遥か後方で、主機から煙を出し敵に囲まれた雷の姿に。

 

 

 

 

深雪「まさか主機も…くっ!」

 

みすちー「急いで…何とか、援護……する…から…!」

 

司令官が必死に手を上げようとしているけど、その声は何時もと違って弱々しい。

こうなったらあたしが――『来ないでっ!』っ!?

 

雷「ここは大丈夫だから!深雪ちゃんは司令官を――っ!」

 

深雪「何言ってんだよ!まってろ、今すぐ――っ!?」

 

何とか雷に近づこうとするが、砲撃と敵が立ちはだかってどうしても前に進めない…!

徐々に雷の姿も見えなくなってくる…

 

深雪「くっ…!雷!待ってろ!すぐ戻るから!!」

 

雷「っ…だ……じょ……!」

 

ゆっくりとだが離されていく私達と雷。

もう声もほとんど聞こえないないなか、司令官が力を振り絞って声を出す。

 

みすちー「…いか…づち…っ!」

 

もう声も届かないほど離れた中、かすかに見えた雷の顔が、潤んだ目でじっとこちらを見つめ呟いた。

それは、声が聞こえる距離じゃないのに私と司令官には何て言ってるのか不思議とわかった。

 

 

雷『……待ってるから♪』

 

 

 

 

 

―――――side過去話、みすちー視点

 

 

 

 

その後、基地に帰還した私達は遅れて帰投した電達の艦隊と再度強硬出撃したけど、雷が最後にいた場所には何も残っていなかった。

…最後に深雪から奪い取っていた、12センチ連装砲の残骸以外は。

私が倒れた原因は、幻想郷と違い外の世界では妖怪はフルに力を使えないというのに、無理に使ったせいである。

雷はそのまま轟沈と決められ、AL作戦は駆逐艦1隻の損失をもって総合的には成功、……私達にとっては失敗で幕を閉じた。

……雷の遺品は一つたりとも見つかっていない。

それは、彼女が沈んだところを見ていない私達にとって唯一残った希望だった。

そして、今その希望である【特Ⅲ型のバッジ】が現実となって表れたのだ…レ級という名の、悪夢と共に。

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