ATMでお金を卸し、なんとか夕飯の食材と雪風がねだってきた雪風のプラモデルを買った帰り道。
俺は重大な事に気付いてしまった。
雪風、人に見られたんじゃね?
プラモデルの箱をたかいたかいしながらはしゃいでる雪風を見ながら、内心も外見も冷や汗だらっだら。
D○Mさんや角○さんの人、もしくは艦これやってる提督さんなどに見られててみろ。
どうせツイ○ターあたりで写メ晒しながら「雪風いたんだけど」とかってツイートしてるに決まってる。
そしてリツイート数が一万二万と増え、それこそ日本中に知れ渡り。
そこら辺歩くだけで「雪風ツイート」が増え。
最終的に攫われてうふーんやあはーんなことに……
まあ見つかってたら、その時点で何かしらアクションあるはずなんだが。
まず考えてみろ。いくら日本人が奥手な性質だからとて、ゲームないしアニメのキャラが現実にいたとする。
んなツ○ッター程度で事が収まるはずがない。
テレビ的、新聞的、それこそ学術的にありえない現象なんだ。
提督なら「深海棲艦くるー?」になって大パニック。学者さんなら「ありえん! ありえん!」とか喚きながら失禁、国どころか世界中をあげての大騒動。
きっと発狂した科学者とかが頭に爆弾埋め込んだりする。するわけねえか。
寧ろ俺が今発狂寸前だわ。お許しください博士。
まあ普通に考えるなら、ゲームのキャラが現実に現れるわけない、という結論に至ってごく自然にスルー決め込む。
それにほら、格好も普通の服だし、早々バレないだろうし。
案外安全じゃねえかな。
きっと良くできたコスプレ、程度にしか思われないって。
そんなこんなで帰宅。壁に備え付けたデジタル時計を見ると午後四時頃だ。
食材は冷蔵庫にいれ、服飾等は空けた収納スペースへ。
日用品もそれぞれを各々の場所に。
これにて雪風共同生活、準備完了。
暫くは一緒に暮らすとして、その間に雪風をどうするのか本気で考えねばなるまい。が、今は置いておこうと思う。
そんなことより艦これだーい。
「……これでボス海域率十割」
雪風と一緒に艦これやってると、ボスまで百パーで辿り着けちゃう不思議。羅針盤逆の意味で壊れてんじゃねーの?
しかも何故か全艦娘が「沈みません」を実行してらっしゃる。お前らいつの間に幸運値上がったし。
敵艦の攻撃は当たらないが、こっちの航空機やら戦艦の巨砲は八割くらいの確率で当たってくれるという、舐めプのヌルゲーすぎて、もう、楽しくないんだが。
今まで資材がかさばって使わなかった大和型入れたらどうなるんだこれ……流石に怖くてやれない。
何が怖いって、海域制覇ラク過ぎて潜水艦の方々もオリョールにクルージング必要ないくらいのこの資材を消費し、それでも減るのが燃料と弾薬だけな状態になるのが、だ。
この幸運は絶対オカシイ。大戦で最初期から雪風いたら戦争勝ててたんじゃないかしら。
まあ、いくら楽しさ半減とはいえ、まだまだ欲しい艦船はたくさんいてだな。その内自分の力だけで手に入れたいから、もう建造しないし。したら絶対出てくるもの。
ドロップの可能性も捨てきれないが、俺の願いが届いてるのか今のところしてない。
まあ信濃とか畝傍とか実装してないもんな。実はこの二つが欲しいから続けてるようなもんだ。
畝傍は行方不明艦だから実装の可能性も微レ存んだがね?
さて、今の秘書艦は金剛なわけだが。ふと雪風がとんでもない事を口走る。
「そういえば、金剛さんって猫かぶってるみたいですよ?」
「えっ、マジで!?」
あまりにも唐突に、あまりにも自然な声色でそんなことを言ってきた。
さすがに驚きを隠せないどころじゃない。そんなこと知りたくなかった。
なんでも、媚売っとけば出撃回数も増え練度も上昇、実力がつけば給金も云々と。
生々しいわ。
他にも「山城の写真を撮ると必ず心霊写真になるレベルの不幸」だとか、「消灯後に第三砲塔を入念に磨きあげ愛でまくる陸奥」だとか、聞きたかったような聞きたくなかったような事実をつらつらと聞かせてくれた。
「あ、しれぇ。もう六時ですよ?」
そんなこんなで時間が流れ、雪風に言われて時計に目を向けると、六時まで一分前といったところ。
「そろそろ飯作るか?」
「作ります! 雪風にお任せを!」
雪風は立ち上がり、颯爽と台所まで走っていく。
俺はその間に風呂掃除をしてしまい、お湯も張ってリビングへ。
そこにはデフォルメされたビーバーがプリントされたエプロンを身に付け、エンジ色の三角巾を頭に巻き、MI作戦BOSS海域最終決戦時に流れるBGMを鼻歌しながら、鍋をかき混ぜる天使がいた。
鍋は既にジャガイモ、人参、玉ねぎ、鶏肉等がダシで薄く透き通った汁の中で踊っており、あとは雪風特製カレールーをぶち込む段階だけらしい。
てっ、天使だ……っ。
無意識にそう思う。
俺のために飯を作る、その愛くるしい姿。胸を打たれる、ってのはこういう事を言うのだろう。
心臓がバクバクと煩く感じる。雪風に聞こえてはいないか、軽く心配にすらなる。
顔が熱い。頬も上気しているかもしれない。赤くなってるかもしれない。発汗もしてくる。
これはーー恋!
そんな一幕もあってカレーは完成し、二人で食卓(ちゃぶ台)に着く。
「いただきます」
「いただきます!」
雪風の元気いっぱいな声を聞いて若干幸せになりながら、スプーンで掬って一口。
ふむ、複数の香辛料が混ぜ込まれた、市販のものでは味わえない新鮮な辛味。具材の味も染み出ていて、鶏肉とも上手く調和が取れている。
美味い。
おふくろの味というには味気が豪華過ぎるが、しかし高級店などで食べる上品な味わいでもない。
そう、例えるなら庶民派な専門店。インド風を学んだ日本人の料理人が仕立てた、カレー本来ともいうべき香辛料と野菜の絶妙な旨味。
そして、ご飯と合わさったとき、ご飯に含まれるデンプンが分解された独特の甘さと野菜が染み出して数倍に膨れあがった香辛料の辛味が絡み合い、脳を直接刺激する強烈なスパイスのような、手が止まらない美味しさ。
美味い。
何度でも言う。何度でも言える。
美味い。
「しれぇ、どうですか?」
無言でハムハムハフハフと口に放り込んでいたせいか、雪風が不安げな面持ちで訪ねてくる。
無意識にカレーに手を伸ばそうとするが、意識してそれを止めて、満点の笑みを持って雪風に伝える。
「美味い!」
その後お代わりもし、カレーを食べ終えて二人で食器を洗った。
その間雪風は終始笑顔だった。
この話からチラシ裏ではなく、通常版にしました。
「非提督なニワカが書いてんじゃねーよ」は出来るだけ止めてほしいなぁ、なんて……。
「ここ変じゃね?」「これなんかオカシイ」はいくらでも欲しいですが。欲しいだけですけどね?