東方裁縫録   作:甘夏缶詰

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古代編ー栄華の裏には退廃の影(題に特に意味は無い)ー
第一話:始まりは不幸から


「あー、暑い・・・・エアコン故障とかマジふざけんなよ・・・」

 

俺はそういって電源を入れても低く唸るだけで一向に冷風を送ろうとしないエアコンを恨めし気に睨む。

 

だが、それで状況が変わるはずもなく、仕方なくうちわで懸命に自分を煽ぐという単純作業に戻ることとした。

 

 

俺、雅 時雨にとって、この程度の不幸は当たり前のようについて回るものだ。

新しい携帯を買えば踏み壊す、洗濯機で回す。

電車に乗ろうとすれば切符を線路に落とす。

同人誌を作ろうとすれば原稿を落とすし、まずコミケには受からない。

こんなのまだまだ序の口で、何度か死にかけるような不幸も体験している。

 

 

つまり、俺は不幸人間ってわけだ。自称だがな。

 

 

「駄目だこれ・・・」

 

ただいま冷蔵庫内にスーパーの安売り・・・で買おうとして一人前で安売りが終了して普通の値段で買うことになったアイスが残っていないかと探ってみたが、収穫はなし。

 

そのうえ、暑さでドロドロに溶けたアイスのようなものや腐った食べ物が発見される始末。

 

「鼠にでも齧られたかな・・」

 

少し冷蔵庫を前にずらして裏側を覗き込むと、案の定、冷蔵庫のコンセントは素晴らしいまでに鼠に齧られていた。

 

「どうすんだよ、これ。冷蔵庫とか高くてそんなホイホイ買えないんだよ。」

 

コンセントをどかすと顔を覗かせてきた鼠に八つ当たり気味に叫び、頭を抱えて唸る。ただでさえ不幸体質のせいで普段から出費が激しいのに、冷蔵庫を新調するような金はない。

 

「しまったなあ・・・・・・・・」

 

そう、呟くと同時。

 

俺の身長よりも大きな影が俺を覆った。

 

「え?」

 

気付いた時にはすでに遅し。鼠に浸食されて脆くなっていたであろう床が凹み、そこにめり込む形で冷蔵庫が倒れてくる。

 

ゆっくりと、ゆっくりと。

 

命の危機だというのに俺は何故かそこまで慌てていなかった。

 

「(死ぬとき光景がスローモーションになるって本当なんだな。)」

 

なんてことを考える余裕があったほどだ。

 

時計の針の音が妙に遅く聞こえる。景色が歪む。

 

「(死ぬ時もこんななんて、俺ってどんだけ不幸なんだよ。)」

 

そう自嘲気味に頬を吊り上げた瞬間、俺の意識は暗転した。

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 

俺が目を覚ますと、真っ青な青空が広がっていた。

さっきのは夢だったのか、ああ良かった良かった。

大体オンボロアパートとはいえ、鼠に齧られたくらいで床が浸食するわけないよな!ましてや冷蔵庫が倒れてくるなんてそんな不幸なことあるわけないじゃないか!そんな不幸なこと・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるんじゃボケーっ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

何現実逃避してんだよ俺!死んだよ!確実にあれは死んだよ!!

そしてココはドコー。私は・・・覚えてるが、とにかくどこだよこここん畜生!!

 

ぐるりと辺りを見回すが視界に映るのは一面の森。

何かヒントになりそうな物は無い。

 

「(くっそお、なんで俺って死んでからも不幸なんだよお!!)」

 

俺は涙目になりながらひとまず何かがないか、誰かいないかを探して辺りを歩いてみることに決めた。

 

 

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