「はいこれ」
ほむらは買ってきたばかりの服一式を少女に渡す。
「…ありがとう」
「礼ならあの男に言うのね」
今は部屋の外にいる剣崎の事を思い浮かべて、少女は顔を赤くする。
「うっ…」
「どうしたの?」
「ブラ…胸き…きゃん!」
少し理不尽はほむらの一撃は少女の頭に落ちた。
「俺の名前は剣崎一真。よろしくな、二人とも」
「…暁美ほむら、よ」
「あの…『佐久間かえで』、です」
3人はとりあえず自己紹介をする。
「まさか本当にいるとは思わなかったわ。仮面ライダー…確か『ブレイド』だったかしら?」
剣崎は驚いた顔をしてほむらを見る。
「あら、2000万部の大ベストセラー『仮面ライダーという名の仮面』は私も読んだわよ」
「あ、わ、私もです」
「あぁ、虎太郎の本か…」
剣崎が顔を少し陰らせる。
「そうか…あいつスゴイな」
ほむらはその顔を見て、本の一文を思い出す。
-彼はとってもお人好しで、バカみたいにまっすぐな…正真正銘のヒーローだった-
(ヒーロー…か…?)
「で、君達は?」
「あ、あの…私と、その子も多分…『魔法少女』…です」
それを聞いて剣崎の目が点になる。
「まほう…しょうじょ…?」
「そうよ」
ほむらが口を開く。
「私達は『キュゥべえ』と契約して、どんな願いでも一つ叶える代わりに、呪いから生まれた絶望を撒き散らす『魔女』と戦う代償を追ったモノ…それが『魔法少女』よ」
「魔女?」
「…さっきまでの私です」
それを聞いた剣崎は目を開く。
「どういうことなんだ?なんで魔法少女の君が戦うっていう魔女に?」
かえでは口を紡ぐ。
「…説明するわ。多分、その子より私の方が説明できる…」
ほむらの話す真実はおぞましいものだった。
キュゥべえの本当の名は『インキュベーター』という地球外生命体で、本当の目的は魔女を倒す為ではなく、宇宙の寿命を延ばすために、感情をエネルギーに変え、熱力学第二法則に縛られないエネルギーを採取する事。
そのエネルギーは、魔法少女となった少女が絶望し魔女となる際に発生する。
そして…『魔女』とは『魔法少女』のソウルジェムに穢れがたまった、魔法少女のなれの果てとほむらはいった。
「キュゥちゃん…最初から私を騙してたんだ」
かえでは顔を沈める。
「どうすれば…どうすれば魔女になるのを止める事が出来るんだ」
「魔女の殺して手に入る魔女の卵『グリフシード』で浄化しても…いずれは魔女になる。それに、心が堕ちれば急速に穢れは溜まるわ。結局…遅いか速いかよ」
「わたし…」
かえでは沈んだ声で…
「わたし…やっぱり人間には戻れないんだ」
「何を言うんだ!?君は人間に戻ったじゃないか!」
「いいえ、正確には彼女はまだ人間じゃないわ」
ほむらの声が剣崎を否定し、少女の持っている宝石…ソウルジェムをさす。
「魔法少女となった時、彼女の魂はそのソウルジェム化している。それがある限り、彼女は『死ねない』けど…それと同時にソウルジェムがないと生きられない」
ほむらは気づいているだろうか…自分の声が…
「絶対に…逃げられない…」
泣き声に近い事を…
「ごめんなさい…」
泣きながら、かえでが剣崎に言う。
「せっかく…助けて…くれ…たのに…ごめん…なさい」
「どうして…こんな…」
剣崎は絶望する。
(救えないのか…!)
目の前の少女を…
(約束したのに!?)
《フォゥ!僕の力を使う~、ブレイド?》
「…!」
剣崎の心に突如、一人の男の声が聞こえた。
剣崎は1枚のカードを取り出した。
淡く光るカード…ほむらとかえでは身をすくめる。
そのカードから…今まで感じた事のない、信じられないくらいの『力』を感じるからだ。
《僕の力を使えば…出来るよ?でも、その時、君が『化け物』だって知られちゃうね~?》
カードは嗤う…
《どうする?正義の…》
《そうか…お前を使えばいいのか》
その瞬間、カードから、呪いのような怒気を感じる。
《…チッ、揺るげよクソが…!つまんねぇだろうが!》
剣崎はかえでに優しい笑顔を向ける。
「かえでちゃん…君はもう人間だ。これからもずっと…だ」
「無理…だよ…だって…願い叶えちゃったから…お母さんの病気…治しちゃったから…」
かえでは願いを叶えた時の事をいう。
かえでは母親の病気を治すために魔法少女になった、と。
しかし、母親の病気は治ったが、今まで蓄積された病魔の後遺症は治っておらず、魔法少女になってしばらくしてから死んでしまったこと…
掌を返したように冷たくなった周りの人達…
『母親の病気を直すのが君の願いだっただろう?命までは知らないね』
と最後の信じていたものまで信じられなくなり、魔女になってしまったこと…
「わたし…わたしは、ただ…おかあさんといっしょに…くらしたかっただけ…なのに…」
剣崎はそっとかえでを抱きしめる。
「大丈夫…これから少しずつ幸せになればいい。君みたいな優しい子は…シアワセになれるんだ」
「気休めの言葉なら…やめなさい!」
ほむらが剣崎の言葉に激高する。
「いったでしょ!もう後戻りできないのよ!人間に…人間じゃ、奇跡は起こせないの!」
「大丈夫…」
剣崎は立ち上がる。
「人間が奇跡を起こせないなら…俺が起こす!」
『!?』
剣崎の腰部に先ほどとは違うベルト…ジョーカーラウザーが現れる。
「君を…」
そしてその中心にカードを通す。
「助ける」
《ABSORB》
剣崎は眼を開く。
何もない空間…そこには、三人の人間がいた。
しかし、その発する気配は人間ではない…恐ろしいほどに禍々しい力を感じる。
「まったく… 言うんじゃなかった!大失態!」
『矢沢』が悪態を付く。
「まったく…バカをやってくれたものだ。しかし、神聖なるこの地に手を出すモノがいるのは気に食わない」
『高原』がサングラスを直す。
「『
「そうだね」
『キング』はつまらなそうに、
「次のバトルファイトの時にちょっかい出されたら面白くないや…そうだ、僕がやろうか?君のカラダを乗っ取って…ジョーダンだよジョーダン。まあ、がんばりなよ」
「ちっ!まあ、次こそは…フォゥ!」
「そう、次こそ…」
「次こそ僕が面白くするよ」
『世界を支配する。その邪魔をするモノは…』
「な、なに…!?」
「あ、あぁ…剣崎さんが…」
そう今の剣崎の姿は…化け物だった。
白と黒に別れた体、骸骨のような顔の両側に山羊の骸骨が付いている。
山羊の化け物はかえでのソウルジェムを取り上げる。
「ふぅぅぅ!」
「きゃっ…!」
次に怯えるかえでの体を抱き寄せる。
「はっ!」
かえでの体とソウルジェムが光り出す。
(
「きゃっ…あ、あれ?」
ソウルジェムはゆっくりとかえでの体の中に入っていく。
(これを…正しい場所へ…)
「そ、ソウルジェムが…」
「うそ…」
「これでもう大丈夫だ」
山羊の化け物から元の剣崎の姿に戻っていく。
「ソウルジェムを魂に戻して、君に『吸収』させた。これで君はもう大丈夫だ」
かえでは何が起きたか分からないのか…しかし、さっきまでとは違う、自分の魂を自分の体の中から感じ、泣きながら自分のカラダを抱きしめる。
「おかえりなさい…わたし…」
その言葉に剣崎は優しく微笑む。
「あなた…何者なの?」
ほむらは剣崎に問う。
「俺は…ただの『
「!?」
キュゥべえは凄まじい力を感じ、その方角を見る。
「今のは…まさかね」
知っている力の波動を感じたと思ったが、間違いだとキュゥべえは判断した。
「この星が『聖地』な訳がない。だってこの星には…」
キュゥべえが感情のない声で…
「大量の個別生命体が存在するんだから」