艦これ~真空鎮守府~ 作:西木野 嵩真
日本の本国から南にかなり行ったところにある「真空鎮守府」。
南方海域奪還の最前線として、活躍するこの鎮守府に、後に語りつがれる伝説が起きようとしていた。
「ふう、空母の建造依頼を出しておいたが、そろそろだな…誰が来るのだろうか。」
提督室の椅子に座っていた提督は、デイリーで秘書艦をしていた電に話しかけた。
「すごく楽しみなのです。これで、南方海域奪還の目標が、さらに前進するのです!」
提督は、嬉しそうに語る電を微笑ましそうに見ながら、提督室の通信機の所に座っている大淀に指示を出した。
「大淀、今すぐみんなを工廠に集めてくれ。着任式だ。」
『提督より連絡前。鎮守府内にいる艦娘たちは至急、工廠に集合せよ。繰り返す…』
「新しい仲間が増えるネー!楽しみデース」
「楽しみっぽい〜」
「そうね、仲間が増えるのは心強いわ」
「私も楽しみです!」
工廠には、鎮守府にいる艦娘が揃っていた。
「今、鎮守府にいるのはこれだけか。
よし、これより新たな仲間の着任式を行う。
これにより、さらに戦力が大きくなる。
よし、それじゃ、開けるぞ・・・・・・」
そう言って、提督は建造室のドアを開けた。
「・・・・・・オゥッ!?」
しかし、そこにいたのは皆の期待を180度覆すものだった。
「あ、あれは…!」
「ヲ級なのです!」
「ヲ?」
怪物のような帽子を頭に乗せ、黒いマントを羽織り、ステッキのようなものを持っている。その姿は、空母ヲ級そのものだった。
「司令官!敵が!」
「提督ゥ!危ないデスから下がってクダサーイ!!」
ヲ級を見つけた彼女たちは、提督を庇う様に前に立つと、一瞬で武装をし、攻撃態勢に入った。
「第一攻撃隊、発艦始め!」
「全砲門ファイヤー!」
「電の本気を見るのです!」
全員の攻撃が、ヲ級めがけて飛んでいく。
「ヲ、ヲ!」
「まて、戦闘中断!」
しかし、ヲ級への攻撃は、届く前に提督によって、止められた。
「…ッ!どうしてよ!?」
「司令官?」
「どうしたデースカー?」
「早く攻撃しないとマズいっぽい~」
攻撃を止められて驚いている彼女たちに、落ち着いた口調で、提督は言った。
「もしかして・・・今回の建造で着任したのは・・・ヲ級なんじゃないか?」
提督の予想もしなかった言葉に、彼女たちは動揺した。
「…な、何を言っているの!
今はそんな冗談を行っている暇はないわ!」
しかし、その動揺もつかの間、彼女たちは、提督の言葉に意見し始めた。
「ありえないっぽい〜」
「そんなことあるんでしょうか?」
提督は、冷静な口調なまま言葉を続けた。
「オレもそう思うが・・・・・
ヲ級がここまで接近したなら間違いなく戒厳令が敷かれるはずだ。
それがないということは、それしかないだろう…」
「『私は攻撃なんてしないよ!』」
そのとき、じっとヲ級を見ていた電が、ぽつりと呟いた。皆の目線が電に向く。
「どうしたの?電ちゃん」
「ヲ級がそう言っているのです」
「電お前、ヲ級の言葉が分かるのか!?」
「何となくですが、分かるのです。」
驚いた様子で問う提督に対して、電は自信無さげに答えた。
「そうか…では電、ヲ級の世話を頼めるか?」
「はいのなのです!」
「宜しく頼む…みんなも、それでいいか?」
一呼吸おいて、提督は、ほかの艦娘にも尋ねた。
「私はテートクがいいならオッケーデース!
「夕立も大丈夫っぽい。吹雪ちゃんは?」
「私も構いません!司令官。」
「よし、ではこれで解…」
「待ってよ!!?」
提督の声は、瑞鶴の声によって遮られた。
「私は認めないわ!
コイツは深海凄艦なのよ!?
敵なのよ!
一緒に生活なんてできる訳ないじゃない!」
瑞鶴は一気にまくし立てる。
「Oh…瑞鶴、落ち着いてくだサーイ」
皆が宥めるも瑞鶴は収まらなかった。
「みんなは忘れたの!?翔鶴姉ぇはコイツらに沈め…」
「ッ瑞鶴!!!」
それまで黙っていた提督はその言葉を聞いて表情を変えた。
「…ッもう知らないわ!!」
そう言って瑞鶴はどこかへ行ってしまった。
「忘れるわけないだろ…!」
工廠には重い空気が漂っていた。