ジクソー(更新停止、凍結)   作:待兼山

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「この書があれば、これを解読してやれば...全ては好転するんだな」

そう声に歓喜を滲ませる男は、いかにも書類の束のような世界の崩壊によってごちゃごちゃになった紙束を大事に抱え込む。

「左様でございます。ザ・ワンが遺し、あらゆる方々が解こうと為さいました書の欠片でございます。」

まだ、日も明るいにも関わらず、暗がりの中に居るかの様にもう一人の性別不明な人物が答える。

「おいっ!欠片ってどういうことだ!?全部じゃないのか?!」

歓喜から一転して怒りを露わにし、性別不明な人物に掴みかかる。

「お止めくださいませ。最初に私は申し上げました。憂いを取り除くに値する、その欠片を胸に抱きたくはございませんか?と」

事実であったのだろう、男は手を放し苛立ちをそのままに睨みつける。

「おい、卑怯だぞ。そういうのはな、詐欺と一緒だぞ。いや詐欺だな」

性別不明の人物は声に出さずとも小馬鹿にしたような笑いを顔に浮かべて、男から放された服の皺を伸ばす。

「それは法が敷かれ、力も脳も道徳もありましょう世の中の事ではありませんか。この世界には何もございません、それを変えたいから貴方様は立ち上がられるのでございましょう。」

建て前でしか過ぎない大名義分をこうもはっきりと他人の口から簡潔に述べられた男は、微かに歯の隙間から悔しさを出した。

「そうだ、これからは安穏をこの俺が作り出していくんだ。欠片でもいい、全て回収出来なくともどうとでもなるだろう。はははっ!今まで俺を虐げていた全部を後悔させてやる。女も子どもも、全て思いのままにな」

男が思い描く未来に浸る中、性別不明の人物は表情筋を一切動かさずに嘲笑う雰囲気を出した。男はそれに気が付く事もなくイメージに夢中になっていた。

 

 

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祐巳の両親は崩壊した世界で途方にくれていた所に、仕事の付き合いがあった人間に誘われるまま集団生活をしている。

規則正しく日々を送れる毎日の代償は、己の得意な事を最大限以上に差し出さなければならなかった。男は確実に力仕事を強制されたし、女は衣食に関連する事全てをこなしていかなければ罵られた。祐巳は、いつも足手纏いのように扱われた。まだまだ要領も器用にもいかない家事全般。その器量が発揮されたのは平和だからこそのもので、俯いて罵声を噛み締めるか涙の代わりに笑うしか出来なかった。

眠るように身体を働かせ、頭ではお姉さまや瞳子を想い、心はいつか皆に再会が出来ると信じて疑わなかった。

祐巳は毎日を必死に踏みしめ、心が、リリアンで育った自分が死なないようにするのに神経を使った。親は既に、集団に狂気に飲まれている。弟の祐麒は建て前に、飲まれた振りをして祐巳を庇うようにしてくれている。飲まれようが、それでも祐巳には大切な家族だった。

そんな日々も空しく、祐巳は足手纏いからは這い上がれずに大切な想いを抱えて過ごすしかなかった。

 

ある日、歓喜を顔に張り付かせた集団の長が戻って来た。

祐巳は色々、巡らせながらも夕方までに終わらせないといけない洗い作業を再開させることにした。関係があるわけなかったから。

 

集団の長が歓喜して戻って来た日から一週間ほど経ったある日、祐巳はいつも通り汚れ仕事をしていた。

一人きりではどう頑張っても夜になる。でも、夕方前には本来終わってなければならない。それを夕方には終わらせている。器用になったのだろうか、そう手を動かしながらも考えていると陰が出来た。誰か背後に居るのだろう。手を止めずに振り向く事は不可能だから、粗相のないように迅速に動かしキリの良いところで止めて振り返った。

「あの...何か、御用でしょうか?」

立って居たのは、集団の長の実姉だった。

冷えた、どうもうすら寒い視線の合わせ続けるのが難しい瞳をしている。

「お前は、リリアン女学園だったって?」

疑問符にしていながらも、何もかも知っているぞ。そう伝えてくる言い方に祐巳は身を竦ませるしかなかった。

「は、はい。」

消え入るような声を発するのが精いっぱいだった。ここでの生活では声帯を使う事が余りなかった。

「そうか、来い。」

簡潔に、命令を下す集団の長の姉。何か悪い事をしただろうか、悪い考えばかりが祐巳の頭を駆け巡る。どうか、どうか両親や弟にまで矛先が行きませんように、と後ろを歩きながら俯き考える。

 

連れて来られたのは、祐巳が聞き知っていた『仮眠室』と呼ばれる、懲罰を行われるところではなく集団の長の姉の部屋だった。

「座れ。ずっとしゃがんでの作業か屈んだり運んだりで腰が痛いだろう。いまいちの心地だが、マシだろう。」

さっぱりとした口調は体育会系のようだが、優しさは多大に含まれていると思ったが祐巳にはそれが怖かった。

「は、はい。失礼します。」

良くある廉価版のソファに行儀よく座った祐巳は、これから何が待っているのか分からない気持ちで居心地の悪さを抱えていた。初めて『薔薇の館』に赴いた時とは違う、何も見えない先の無い道を延々と歩く幼子の気持ちがあった。

「お前に、リリアン女学園での話を私に聞かせて欲しい。そうだな、それがこれから新たに与えられた作業だ。今までの作業はいつも夕方までに、一人で終わらせているんだろう?私の部屋に来れば、色々と無理難題を与えられるよりマシだろう。」

薄ら笑いを浮かべて話す集団の長の姉は祐巳に労りの体を見せながらも、不安だけを増大させる空気を纏っていた。

無意識に祐巳はお姉さまや瞳子を思い浮かべ、そこに自身を置き、あの幸せだったリリアンでの生活へと逃避させたかった。だが、それは叶えられずに集団の長の姉と共に夕食を摂り、最初の話をさせられた。

 

 

祐巳が集団の長の姉にリリアン女学園の話をしだしてから幾日も経ったある日、祐巳は関係を強要された。

性的な意味での関係で、祐巳はそんな事よりもその関係とリリアン女学園でおける姉妹制度を穢された気がした。確かに、今の世界になる前にそう誤認識する人間がいる事を級友が不満をまき散らしていたり、瞳子と下校して駅で別れる際に耳を掠めたりもした。だけど、こうも突きつけられお姉さまや妹ともしていたのだろうと誤解され言われ、強いられる事に我慢出来なかった。

「違います...!そんな関係、ではありません。」

振り絞るように、ここで生活するようになってから初めて声を荒げた。それにさえ集団の長の姉は背筋が寒くなる視線のまま、口元を薄く笑うようにして祐巳に言い放った。

「だとしてもだ。お姉さまにそうしなさい、と言われたらお前はせざる得ないだろう?それと一緒だ。そう考えて、しなさい。」

有無を言わせない言葉に従うしかなかった。ここに話をしに来るだけで、祐巳の待遇も両親や弟の待遇もかなり良くなった。拒否すればそれは壊れ、悪化だけでなく追放さえもされ兼ねない。

無になろう、そう決めて従った。

ここにいる間の祐巳は、夢だと思って。

 

 




どう表現しようかと考えてひねり出すのに時間がかかって、やっと投稿出来ました。
こちらは完全な自己満足で執筆してますが、投げ出したくなくて...
気長に投稿します。
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