ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
英雄派が去って、俺達は目を覚まさない八坂さんの前にいた。
「母上、目を覚まして下され!」
「……」
九重が必死に呼びかけるが、八坂さんはまるで反応を起こさない。
『相棒、今ならあんな事やこんな事出来るんじゃないか』
「ドラゴン。この馬鹿黙らせろ」
『少し黙れこの腐れ外道』
『ひでぶっ!!』
よし、五月蠅い奴が沈んだ。
「さて、どうしたもんかいの。仙術で邪な気を解いてもいいんじゃが、ここではちと時間がかかるのぉ」
「そうなんすか?」
「九尾を縛っとるのは邪な気。それを除いてやれば元には戻るぜぃ。だが、これほどまで気が歪んどるからのぉ」
初代も煙管を吹かしながら思慮しているようだ。
だが何か妙案が浮かんだらしく、顔色が明るくなった。
「そういやお前さんは確か他者の精神世界に入れる魔法を使えるんだってねぇ。どうじゃ、試してくれんか」
「え、でも仙術に精通した爺さんでも難しいんじゃ……」
「なぁに、ワシの方でもサポートするさね」
俺はエンゲージの指輪を取り出すが、中々踏み出せずにいた。
そもそもこの魔法は人間にしか使った事がないからな……妖怪である八坂さんに使っても上手くいくのかな。
『問題はあるまい。アンダーワールドは生きとし生ける者達が持つ心の世界だ。種族が違うだけだから、魔法は発動するはずだ』
「そうか……なら、試してみるか」
《エンゲージ・プリーズ》
八坂さんの手を取り、魔法を発動する。
するとドラゴンの言った通り、アンダーワールドに入るための魔法陣が現れた。
「うし…九重、行くぞ」
「え?」
「何驚いてんだよ?言ったろ?……お母さんを助けたいって」
「……うむ!」
……多分俺がこのまま一人で行ったとしても、八坂さんは目覚めないだろう。
ここは肉親である、九重の力が必要だ。
九重は最初こそ戸惑った声を上げたが、力強く頷いて俺の方に乗ってきた。
それを確認すると、俺は魔法陣の中へと潜り込んだ。
…………アンダーワールド?に来たんだよな。
やけに真っ暗だけど……そう思っていると、俺の背後からドラゴンがやってきた。
『この女の意識が混濁しているからだろう。以前の貴様もこの様な状態になっていた』
「以前って……ロキの時か?」
『あぁ』
「い、イッセー。そ奴は一体……!」
九重はいきなり現れたドラゴンに怯えていた。
まぁ何も無しに現れたし、仕方ないか。
「此奴は俺の中にいるドラゴンだよ」
「赤き龍ではないのか?」
「それとは別のだ……ってドラゴン、俺お前を呼んだか?」
『退屈だったから来てやったまでだ』
退屈って………なんだかんだで此奴も人間臭くなってきたな。
まぁ兎に角、で俺たちは八坂さんのアンダーワールドを歩いていく。
「……母上!」
やがて少しすると、鎖のような物に捕らわれた八坂さんが!
あれは……八坂さんの意識か?
『だろうな。あの鎖はあの猿爺が言っていた邪な気だろう』
「どうしよう……気の扱いは分かんないからなぁ」
かと言って下手に攻撃しようものなら八坂さんにも危害が及びだろう。
どうしようかと考えていると、八坂さんを縛っていた鎖が僅かに薄くなっていくのが見えた!
「これは!?」
『あの猿爺の仙術だろう。意識を縛る枷が緩んでいるのなら、声が届くかもな』
「…母上!起きてください!九重ですぞ!!」
ドラゴンの言葉を受けてか、九重は声を大きくして叫ぶ……が、八坂さんの反応はない。
九重は涙を流しながらその場に跪く。
「お願いですから……目を覚まして下さい……!もう悪戯も、しません…………好き嫌いも、無くしますから……起きてもう一度、九重の名を呼んでください………母上ぇ!!!」
「……九重にはまだ、貴女が必要なんです。貴女は九重の希望なんだ!だから、この子の願いを……もう一度叶えて上げてください!!」
俺も一緒に八坂さんに呼びかける!
すると、八坂さんを縛っていた鎖が完全に消えた!
それと同時に、真っ暗だったアンダーワールドにも色が戻った!
これは………
『母上-!!』
『あらあら、相変わらず元気じゃのう。ホホホ』
……八坂さんのアンダーワールドの景色は、九重と過ごした数々の思い出であった。
「これは……」
『ふっ、住みづらい空間だ……』
ドラゴンはその光景を見て、笑いを滲ませながら消えていった。
「九重…帰ろうか」
そうして、光が当たりを包んでいく――――
「っと」
「…母上、母上!!」
アンダーワールドから帰還すると、九重はいの一番に八坂さんの方へと走り寄る。
「……ん、ここは」
皆が、九重が見守る目の前で、八坂さんが目を覚ました!
「――――母上ぇぇぇぇ!!」
「…九重、どうしたのじゃ。全く何時まで経っても泣き虫じゃのう」
感極まって泣き付く九重!
八坂さんは困惑しつつも、優しく九重を抱きとめた。
…………守れて良かった。
やっぱこの笑顔は、奪わせる訳にはいかないからな。
と思った所で――――体から一気に力が抜けた。
「イッセー!!」
グレイフィアや皆が駆け寄る光景を最後に、俺は意識を手放した。
ーーーー
木場side
英雄派との戦いが終えた後、僕達はアザゼル先生から労いの言葉をもらい、全員が治療を受けていた。
ちなみにイッセー君に関してはまだ何も聞かされていない。
「先生」
「ん?」
「彼らはどうやって逃走したんですか?」
僕はアザゼル先生から英雄派の足取りを聞いた。
先生は頭を掻きながら悔しそうに答えてくれた。
「あいつ等、前もって逃走用のルートを確保してたらしい。お陰で追跡の足取りも分からねぇ」
「随分用意が良いですね……」
「あぁ。次に戦う時も決して油断はするなよ?奴らは自分が負けた時の事も考えてる……これは旧魔王派の連中にはなかったものだ」
「はい」
……僕も帰ったら、もっと鍛えないと。
そう決意する傍ら、アーシアさんがイッセー君の容態を聞いていた。
「アザゼル先生、イッセーさんは大丈夫なんですか?」
「ん、あぁ。一気に魔力を行使した反動で倒れたんだろう。……ただ」
……ただ?
含みを持たせた物言いに首を傾げると、先生は酷く微妙そうな顔で口を開いた。
「アイツ、無茶しすぎたせいで薬で誤魔化してた風邪が悪化しちまって……。今は寝込んでる」
「……大丈夫なんですか?」
「あぁ、一応風邪薬と解熱剤飲ませた。まぁ数日で治るだろ。多分」
……やっぱり風邪は自分の力で治す物だね。
そして、修学旅行最終日。
お土産を選び終え、今は新幹線のホームにいる。
いや、この前の戦闘のダメージが残ってるせいで大変だったよ……。
立神君なんて起床時間ギリギリまで寝ていたそうだし…。
ホームには九重ちゃんと八坂さんが来ていた。
「赤龍帝は大丈夫なのか?」
「…多分大丈夫だと思うよ」
「――――俺がなんだって?」
――――え?!
聞こえてはならぬ声がしたのでそちらを見ると、そこにはイッセー君が立っていた……相変わらずのマスク装備で。
「へっくしょん!!」
「赤龍帝!」
大きなくしゃみを気に留めず、九重ちゃんはイッセー君に駆け寄る。
心なしか顔が赤いけど……まさかね。
「よ、木場達のお見送りサンキューな」
「そ、その……」
「ん?」
「また、京都に来てくれるか……?」
不安そうにイッセー君を見上げる九重ちゃん。
それに対し、イッセー君は――――
「……そう言えば、木場達を観光案内してくれたんだってな。風邪治してまた行く機会があったら、その時は俺にも頼むぜ?」
「う、うむ!約束じゃ!」
優しく笑いながら、九重ちゃんの頭を撫でてそう答えた。
やっぱりイッセー君はこうでなくちゃね。
「おぅ!…九重、何があっても、絶望には負けるな。お前にとっての希望が八坂さんである様に、八坂さんの希望は、お前なんだからな」
「勿論じゃ!」
「おし、良い返事だ!…へっくしゅ!!」
……やっぱり今回、中々締まらないなぁ。
「アザゼル殿、赤龍帝殿、そして悪魔、天使、堕天使の皆々、本当にすまなかった。礼を言う。これから魔王レヴィアタン殿、闘戦勝仏殿と会談するつもりじゃ。良い方向に進めていきたいと思うておる。二度とあのような輩によってこの京都が恐怖に包まれぬよう、協力体制を敷くつもりじゃ」
「ああ、頼むぜ、御大将」
先生も笑顔でそう言って八坂さんと握手を交わした。
うん、これでまた心強い味方が増えたね。
「…イッセー様。そろそろ」
「うん。…じゃーな九重!それにみんな、先に帰ってるぜ」
「また来ておくれやす、赤龍帝殿」
「ありがとう、イッセー!」
笑顔で手を振りながら、イッセー君はグレイフィアさんと共に転移していった。
やっぱり最後にくしゃみを残して。
その後に続くように、僕達も京都を後にした。
ーーーー
イッセー宅
「もうイッセー。風邪の状態で無茶はしちゃだめよ」
「ご、ごめん。体が勝手に動いちゃって」
家に戻った俺達は事の顛末を聞いていたリアスに少し怒られていた。
「…でも、無事で戻って来てくれたのが何よりだわ」
「そうですわね。でも、ちょっとは頼ってほしかったですわ」
「……水臭いです」
ほんと、すいませんでした……。
「しかもイッセーは現地で新しい側室候補作ってたけどな」
「え?誰の事っすか」
「あの九尾の娘だよ」
九尾……あぁ、九重か。
「何言ってんすか。俺年下なんて興味ないっすよ!……って、うぉ!?」
俺は笑って言うと、何故か知らんが小猫ちゃんが殴り掛かってきた!
「何すんの小猫ちゃん!?俺病人なんだけど!」
「…何かムカついたので」
理不尽な!
「まぁまぁ程々にしとけ。取り敢えずイッセー」
「はい?」
「さっさと風邪治せ」
「…じゃぁ、もう一眠りしてきますね……へくしょん!」
俺は階段を上って自分の部屋へと戻るのであった………へっくしょい!!!
『…あ!俺が気絶してる間に終わってる!?』
『今更起きたのか』
そろそろイッセーとグレイフィアの関係を一歩進んだものにしたいんすよ