ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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グレモリー眷属女子でウィザード挿入歌歌ったらって考えたって良いじゃない

イッセー「良曲多いもんな。確かに聞いてみたい」
ドラゴン『俺はjust the beginningがお勧めだぞ』
ドライグ『テメーの曲じゃねぇか』
ドラゴン『テーマソングすら無いのによく吠えるな』
ドライグ『あんだとぉ!?』


MAGIC106『獅子の過去』

 

後日、俺はリアスと共にリムジンに乗って冥界の大地を走っていた。

走っているのはシトリー領だそうな。

 

広大な自然を窓から眺めていると、リアスが俺に語り始めた。

 

「今回の話は、お母様経由なのよ」

「ヴェネラナ様の?」

 

俺がオウム返しに尋ねると、リアスは頷いた。

 

「サイラオーグの執事が貴方に頼みがあるというのは話したわね」

「うん」

「その話をグレモリー家を経由したのよ。それをお母様が了承したって訳」

「成程」

 

そう言えばヴェネラナ様ってバアル家だったな、その縁でか。

 

「それで今向かっているのは?」

「病院よ。シトリーは医療機関が充実していて、今から行くのは冥界でも名だたる病院の一つよ」

「病院?」

 

誰かが入院してるのか?

 

『主の性病を治してくれとか頼まれそうだな』

 

お前殺されるぞ、ヴェネラナ様とかサイラオーグさんとか。

ドライグの下らないボケに突っ込んでいると、目の前に大きな建物が。

 

 

あれが病院か……そう思っていると、送迎用の玄関にリムジンが止まり、俺達は下りた。

そして俺達を出迎えたのは、執事服を着た初老の男性。

 

「お待ちしておりました」

「案内してもらえるかしら?」

 

リアスがそう言うと執事さんは「どうぞ、こちらに」と歩き出していく。

案内についていき、病院内を進んでいるとリアスが口を開いた。

 

「イッセー、私の母がバアル家の出であることは知っているわよね?」

「あぁ。確かバアル家現当主の姉に当たるって聞いているけど」

「腹違いなのだけれどね。サイラオーグのお父様が本妻の息子、私の母が第二婦人の娘」

「腹違い…」

 

なんて複雑なワードだろうか。

それだけで穏やかじゃなさそうだ。

 

「そして、私のおばさま――――サイラオーグのお母様は元七十二柱であり、上級悪魔の一族、ウァプラ家の出なのよ」

「ウァプラ……獅子を司る名家だったっけ」

「その通りよ」

 

まぁ夏休みの時にあれだけ教えられたら覚えますよ。

獅子って言ったら吼介を思い出すな……案外アイツもウァプラと関係あったりして。

 

そんな会話をしているととある一室の前にたどり着く。

 

「こちらでございます、リアス様」

 

執事さんに言われて、リアスは部屋へと入っていく。

俺も後に続いていくと、個室のベッドにキレイな女性が眠りについていた。

 

「……ごきげんよう、おばさま」

 

リアスは眠る女性に悲哀に満ちた眼差しを向ける。

 

『ウホッ、いい人妻……デュクシッ!!』

『止めんかこのエロトカゲ』

 

良くやったドラゴン。

俺は花束を執事さんに渡すと、執事さんは口を開いた。

 

「この方はミスラ・バアル様。サイラオーグ様の母君でございます」

 

……やっぱりか。

 

サイラオーグさんのお母さんはベッドで静かに眠っていた。

それだけならまだ良いんだけど、呼吸器を付け、傍には物々しい機械が置かれているので、あまり良い状態ではないのだろうと言うのは目に見えていた。

 

 

 

不意に、俺の脳裏には過去の光景が鮮明に蘇った。

 

…………父さんと母さんの時と同じ、だな。

 

『相棒』

 

分かってるよ、今はトラウマに使ってる場合じゃない。

 

「今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。赤龍帝殿………ミスラ様を目覚めさせるためにご助力願えないでしょうか?」

「…その前に一つお尋ねしたい事が」

「私に答えられる事でしたら」

「この依頼、どうしてあなた個人からなんですか?」

 

俺は予てより思っていた疑問を口にすると、執事さんは口を噤んだ。

 

「バアル家の次期当主の母親となれば、この依頼はバアル家が正式に出すはずだと思って…………それが執事さん個人の依頼となれば、何か事情があるのかと」

 

すると、執事さんは拳を握り肩を震わせながら答えた。

 

「……それは、バアル家の者がサイラオーグ様を疎ましく思っているからでございます……。シトリー領の医療機関に移したのもバアル領ではミスラ様のお命を狙う者が現れる可能性が高いためで御座います……!」

「…暗殺?」

 

ちょっと待て、何で同じ家の人がこの人を殺そうとするんだ?

……一体どういう事情だよ、それ?

 

『サイラオーグ・バアルが関わっている事か』

「…えぇ。サイラオーグはこれまでの経緯から疎まれているのよ…特にバアル家の者から」

 

ドライグの言葉を肯定したリアスは、そのまま訥々とサイラオーグさん親子の事情を語った。

 

 

 

ーーーー

 

サイラオーグさんはバアル家現当主のお父さんと獅子を司るウァプラ家のお母さんの間に生まれた。

無事に出産されたとき、次期当主が生まれたと周囲は大変喜んだそうだ。

 

 

 

――――だが、それは束の間のこと。

 

サイラオーグさんは魔力が無いに等しく、バアル家の特色である『消滅』の力を持っていなかった。

バアル家当主は魔力に恵まれ、『消滅』の力を持つことが当然とされてきた……由緒正しき上級悪魔のお家というプライドもあったんだろう。

 

そのため、そのことを知った周囲の者の反応は一転。

魔力と滅びを持たずして生まれてきたサイラオーグさんと、その子を産んだ母親であるミスラさんは蔑まれるようになる。

 

 

…………欠陥品を生んだ、バアル家の面汚しと。

 

当時のグレモリー家もその噂を聞き、ヴェネラナさんが二人をグレモリー領に保護しようとしたが、バアル家がそれを許さなかった。

 

その頃は滅びの力を色濃く受け継いだサーゼクス様が活躍していたこともあり、バアル家としてはグレモリー家が気に入らなかったとの事だ。

 

本家の子が特色を受け継がないで、嫁にいった者の子の方に遺伝した……それに対する僻みも含まれていたんだろう。

 

 

それにバアル家は大王。

 

つまり、世襲でなくなった現魔王を除けば、家柄的にはトップに位置する家――――故にプライドも相当高い。

 

周囲の目も意識してしまう家柄である以上、サイラオーグさんとミスラさんはバアル家にとって厄介者でしかなかった。

 

 

その後、ウァプラ家がサイラオーグさんとミスラさんの帰還を求めたが、バアル家はそれすら許さなかった。

 

家の恥晒しを外へと出す訳にはいかない――――それがバアル家の総意だった。

しかもそれを言ったのが現当主……つまりサイラオーグさんの父親。

 

 

実の親、夫にすら見捨てられたのだ。

 

 

結局ミスラさんはウァプラ家の援助も断り、僅かな従者を伴ってバアル家の辺地へと移り住んだ。

だけど今まで貴族として生きてきたミスラさんにとっては、大変な生活であったことは想像に難くない。

 

そして幼いサイラオーグさんは魔力を殆ど持っていなかったが故に、同世代の悪魔達から苛めを受けていた。

悪魔は魔力を持って当然の生き物、だからこそ魔力を持たないサイラオーグさんは彼らにとっては異端に映ったのだろう。

 

当然子供であるサイラオーグさんは涙を流しながら家に帰る事もあったそうだ。

 

 

だがミスラさんはその度にサイラオーグさんに強く言い聞かせていたそうだ。

 

 

 

――――魔力がなくとも、あなたには立派な体があります。足りないとおもうのなら、代わりとなる何かで補いなさい。

腕力でも、知力でもいい、それを補ってみなさい!たとえ、魔力がなかろうと、滅びの力がなかろうと諦めなければいつか必ず勝てるから。

 

 

 

その言葉は今でもサイラオーグさんの心に残っている大切なものだそうだ。

 

その裏、サイラオーグさんに見られない場所でミスラさんは何度も謝り泣き続けていたという。

何度も謝り自分を責めていたそうだ。

 

 

それを偶然知ってしまったのか、察したのかは定かではない。

獅子は――――その日を境に泣く事を止めた。

 

 

ーーーー

 

「サイラオーグ様は自ら厳しい修行をこなし、ご自身を鍛えられたのです。何度倒れようとも立ち上がり、向かっていくようになりました」

 

自分の運命を呪うことはせず、ただ自分に足りないものに立ち向かっていく……倒れても倒れても立ち上がり続ける。

 

言葉で言うだけなら簡単だ、でもそれを実行すとなれば、相当な覚悟が必要だ。

それに、言葉だけで実現するほど、現実は甘くも単純でもない。

 

「そして、サイラオーグ様は夢を掲げたのです。――――実力があればどのような身の上でも夢を叶えることが出来る冥界を作りたい、と」

 

悪魔の世界は基本的に実力社会……とは言われてはいるけど、上流階級やそれ以外となると話は違ってくる。

どれだけの力があろうと、その出自が小さければ望みを叶える事すら出来ない血統社会でもある。

 

それを変えるため、サイラオーグさんは魔王を志すようになった。

 

 

だけど、ある時に異変は起きた。

それは、サイラオーグさんが中級悪魔と良い勝負が出来るようになった頃だった。

 

「悪魔がかかる病の一つなのよ。その病気にかかると深い眠りに陥り、目を覚まさなくなる。次第に体も衰退していき死に至るの。症例が少ないから原因も治療方法も分かっていないわ。今出来ることは、こうやって人工的に生命を維持することだけ」

 

リアスが寂しげに目元を細目ながら言った。

 

治療方法を求めて冥界の名だたる病院を全て回ったそうだが、それは見つからず。

それでも、サイラオーグさんは突き進んだ。

 

「体を鍛え上げたサイラオーグはバアル家に帰還して、彼の父親とその後妻の間に生まれた弟を下したのよ。そうして、彼は次期当主の座を得た」

『恐らくはその弟は滅びの魔力を持っていたのだろうな』

 

……もしそれが真実なら、今のサイラオーグさんに敗北は許されない。

誰かに負けたと分かれば、バアル家はまたサイラオーグさんに見切りを付けるはず、それに今もこうして安全とは程遠い状態な訳だし。

 

 

波乱って言葉じゃ片付けられないな。

 

「赤龍帝殿。貴方は他者の精神世界には入れる魔法を扱えるとお聞きしました」

「えぇ」

 

俺が頷くと執事さんは深々と頭を下げて言った。

 

「どうか……どうかミスラ様の治療にご助力を…。治療方法が分からない今、僅かな可能性でも、それにかけるしかないのです………」

「イッセー。私からもお願いするわ。おばさまを治すために力を貸してくれないかしら?」

「………分かった。試してみる」

 

俺は懐からエンゲージリングを取り出し、眠っているミスラさんの指に嵌め、腰のドライバーに翳した。

 

《エンゲージ・プリーズ》

 

すると、その場に魔法陣が現れた。

 

「イッセー。私も付いて行ってもいいかしら?」

「あぁ。じゃ、行こう」

 

リアスが頷いたの見て、俺達は魔法陣へと飛び込んだ。

 

 

 

ーーーー

 

 

「っと」

 

無事に着地!

立ち上がった俺の隣で、リアスは物珍しそうにキョロキョロしていた。

 

「ここが……」

「そ。アンダーワールド」

「……不謹慎だけど、何だか新鮮な気分ね」

 

まぁ普通は来ない場所だしな。

……っても、辺り一面真っ白な世界だ。おかしいな、普通は何かの光景が映るはずなんだけど。

 

だがその空間をじわじわと黒い空間が侵食していた。

 

「これは……」

『あれがアンダーワールドを満たせば、この女は死ぬ。景色が白一色なのは、この女の意識が眠っているからだろう』

「マジか。じゃあ早いところ目覚めさせないと」

「…ってイッセー!このドラゴンは!?」

 

俺の隣に現れたドラゴンに警戒の眼差しを送るリアス。

 

「ドラゴン、行き成り予告なしに現れるなよ。リアスが吃驚しちゃうだろ」

『フン、気付かなかったこの女が悪い。それに予告すれば驚かす意味がないだろう』

「ってやっぱ確信犯かよ」

「……まさかこのドラゴンが」

「そ、俺がサバトの儀式で生んだファントムだよ」

『こうして面と向かって会うのは初めてだな、リアス・グレモリーよ』

 

ドラゴンがそう言うと、リアスはまじまじとドラゴンを見つめた。

 

『……ジロジロ見るな。鬱陶しい』

「あ、ごめんなさい。…ファントムとはいっても、現実のドラゴンとそう変わらないのね」

『…それよりこの女を探すのだろう。さっさと動いたらどうだ』

 

それもそうだ。

取り敢えず俺とリアス(とドラゴン)は歩き出す。

 

「でもどうして貴方までここに?」

『ただの暇潰しだ』

「暇潰しって……」

「まぁまぁ。……リアス、あそこ」

 

数分後、俺達は椅子に座っている一人の女性を見つけた。

 

「おばさま……」

「えっと、ミスラさん?」

 

俺達が声をかけるが、ミスラさんはうんとも言わない。

 

「これって、病の影響か?」

『…意識まで完全に眠っているのなら厄介だな。強引に起こせば現実にも影響が出るとも限らん』

「そんな……」

「なぁドラゴン。何か方法はないのか?」

『知らん、そんな事は俺の管轄外だ』

 

と語っていると、突如としてミスラさんの周囲から閃光が迸った!

 

 

「「なっーーーーーー」」

 

 

驚く暇もなく、俺達はアンダーワールドから弾き出された!

倒れこんだと思ったら、目の前の景色が病室に戻っていた。

 

「…リアス、怪我はない?」

「えぇ、大丈夫よ」

 

一体何で……そう思っていると、

 

 

「大丈夫か、二人とも」

「…え?」

 

傍らから声をかけられ、そちらを振りむいた。

そこにいたのは――――

 

 

 

 

「母から弾かれるとは、少し驚いたぞ」

 

 

なんとサイラオーグさんだった。

 

 

 




アザゼル「罰ゲームとしてデンドロとディープストライカー、作らされるとしたらどっちがいい?」
イッセー「どっちも嫌に決まってるだろ」
ドライグ『そこにネオ・ジオングがあるじゃろ?』
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