ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
お題:恋のABC
イッセー「古いなお題が!」
ヴァーリ「A……餡掛け焼きそばか?」
木場「いやどうしてさ」
ヴァーリ「餡の様に二人の仲も熱々になればと思って」
アーサー「上手いですね」
美猴「二重の意味でな」
曹操「いや、もしかしたらア〇ルs」
カイト「もう喋るな」
「っ、一体どうしたんだよ!――――吼介ぇ!!!」
突然暴走を始めた吼介。
ウィザードWSの制止も聞かず、尚も荒々しく攻撃を繰り出してくる吼介を見て、ガルムは静かに呟いた。
『………ウァプラの忌み子、か』
ウァプラ――――その名に反応したのは、リアスであった。
「っ、立神君がウァプラ?どう言う意味よ!?」
『…魔力喰い』
「!?」
『……知っているようだな』
魔力喰い、その言葉にリアスは顔を強張らせる。
そうこうしている内に、吼介は次なる狙いをガルムに定め、襲い掛かった。
「ガァアアアアアアアッ!!」
『…ッ!』
手を野獣の爪に見立てて攻撃を仕掛ける吼介。
ガルムはそれを捌きつつ蹴りで吼介を宙へと浮かせるが、吼介は空中で回転しながら体制を整えると、そのままガルムの肩口に歯を立て、噛み千切った。
『ッ!!』
「ヴゥゥウウウ………ッ!!!」
肩を抑えるガルムの眼前、噛み千切った部位を飲み込む吼介。
飲み込んだと同時に、吼介の肉体に魔力の蒸気が立ち上った。
「ガルムの魔力を、喰ってるのか……?」
「ヴぉアァァァァアアアアッ!!!!」
まだ足りない、そう言わんばかりに吼え立てる吼介。
とは言え子このままではゲートである中本を守る事も叶わない。
「…吼介」
「ガアアアアア!!!」
次なる標的をウィザードWSに定めた吼介は方向と共に飛び掛かる。
《バインド・プリーズ》
すかさずウィザードWSが発動した水の鎖により捕らえられるも、所詮は水。
破られるのも時間の問題だが、ウィザードWSにとっては一瞬でも時間が稼げれば充分であった。
《スリープ・プリーズ》
「………っ」
水の鎖が破られるよりも早くに次なる魔法を発動、その効果により吼介は眠ってしまった。
崩れ落ちる吼介を受け止めるウィザードWS。
「っと………ファントムは逃げたか」
周りを見れば、既にガルムもスプリガンもいなくなっていた。
どうやら逃げたらしい。
「吼介の事は一先ず置いといて、中本さんでしたっけ?事情を聞かせてもらえますか?」
「あ、あぁ」
ーーーー
考古学者、中本から事の顛末を聞いたイッセー達。
「ファントムから中本さんを守るのも大切だけど……先ずは吼介のドライバーだな」
「ええl。早く取り返さないと、彼の命が危ないわ」
「い、命?どういう事だね?」
命という単語が引っ掛かったのか、中本はイッセーに尋ねてくる。
「アイツが持っていたドライバーには、キマイラっていう化け物が潜んでいるんです。吼介はキマイラに魔力…要はエネルギーを与えないと………」
「死ぬと言うのか……?」
中本の問いに、イッセーは頷く。
それを聞いて、中本はイッセーから目を逸らした。
その反応に疑問を覚えたのか、中本に質問しようとするイッセー。
「……待て、イッセー」
「吼介……大丈夫か」
「おう、何とかな……それと、お前が言おうとした事は、俺が確かめる」
すると、隣の部屋から吼介がやって来た。
眠りから覚めたのだが、足取りも覚束なく、顔色も悪い。
「……中本さん。ひょっとして、俺のドライバー盗んだのはアンタか?」
『!?』
壁に手をつきながら、吼介はここで衝撃的な質問を投げかけた。
その質問は、先程イッセーが言おうとした内容と全くの一緒だった。
「……何の事だい?」
一瞬間をおいて出たのは、それだった。
きな臭いものを感じていたのか、イッセーは吼介に続いた。
「中本さん、ハッキリと答えてください。このままじゃ吼介は……」
「違う違う違う!……もういい、私を疑うような奴らに守って欲しくなどない!出て行け!ほら、出て行け!」
「ちょっ……!!」
息つく暇もなく、イッセー達は研究室を追い出された。
「ありゃ完全に黒だぞ」
「どうしたものかしら……」
研究所の外で、これからの事を模索するイッセー。
そのイッセーを尻目に、リアスはとある疑問を吼介にぶつけた。
「立神君」
「んあ?」
「貴方は――――追放されたウァプラ家の者ね?」
リアスの質問に、吼介は答えなかった。
だがその沈黙は、肯定しているようなものであった。
「ガルムが言っていた、忌み子……だっけ?」
「えぇ。以前お父様から聞かされたの。ウァプラには――――突然変異の異能持ちがいた事を」
魔力喰い――――それはウァプラ出身の悪魔と、人間の女との間に授かった子が持っていた異能であった。
他者の魔力を自分の意志に関係なく喰らい、それが尽きれば命をも喰らう。
まだ幼かったその子は、力を制御出来ず、ある日――――ウァプラの領土にいた悪魔の魔力を残さず喰いつくし、命を喰らってしまった。
まだ力を制御出来ない子供とはいえ、それにより命を奪われた者達の数は、両手では数えきれないほど存在した。
ウァプラの当主は、その子に能力抑制の呪いを課し、単独行動を一切禁止、父の監視の下で過ごすと言う処分を下した。
だがそれに異を唱えたのは、他ならぬ父親であった。
『この子の自由を一生許さないと言うのは、体の良い飼い殺しも同然ではないか。それは遠回しに死ねと言っているような物だ』
そう言って、彼は息子を連れてウァプラを出走し、妻が住んでいた人間界へとやって来た。
「じゃあ、その子が……」
イッセーが静かに呟いたその言葉に、リアスは頷いた。
「……だから何だよ」
すると、今まで黙っていた吼介が口を開いた。
「例え俺にその力があったとしても、今立ち止まる理由にはなんねーよ。早いとこドライバーを見つけないと……」
「これ以上戦えば、貴方はまたさっきのように!」
「…っ!」
それ以上は聞かないとばかりに、吼介は速足でその場を飛び出した。
「立神君!」
「リアス」
吼介を止めようとするリアスを、イッセーが制止する。
「吼介は俺に任せてくれ。リアス達には頼みたい事があるんだ」
「え……」
ーーーー
研究所から走って数分程度で着く河川敷。
その土手で、吼介は大の字になって寝そべっていた。
「…なーにしょぼくれてんだよ」
「イッセー……」
そこに、吼介の魔力を探知して追いかけてきたイッセーがやって来た。
イッセーは吼介の隣に座り込むと、口を開いた。
「…お前さ、ホントは怖いんだろ?」
「……そんな訳あるかよ」
「ほんっと、嘘付くの下手だな」
吼介の嘘をあっさりと見破るイッセー。
暫くの沈黙の後、吼介はぶっきらぼうに吐き捨てた。
「…別にキマイラの事じゃねーぞ」
起き上がった吼介は、河原を眺めながら口を開いた。
「喰われるのはまぁおっかねぇけどよ、俺はビーストになれてワクワクしてたんだぜ?未知への探求心っての?………」
「……」
「お前の言う通りなとこも、まぁあるけどよ……恐いんだよ……。また、魔力を求めて暴走しちまったらって思うと」
吼介は胸の内を吐露する。
それをイッセーは静かに聞いていたが、静かに笑いながら、言葉を紡いだ。
「そんなに深く考える事か?お前ただでさえバカなのによ」
「なっ!」
「お前が初めてビーストになった時のそのワクワク、まだ覚えてるうちは大丈夫だろ。少なくとも、自分を見失ってないって事だからな。けど……」
イッセーは立ち上がって、吼介を見る。
「自分が信じられないなら、俺を信じろ。暴走しても俺がお前を止める……そうすりゃ、お前も何時か自分を信じれる様になる」
「イッセー…」
「俺もそう教えられたからな。さて……戻るぞ」
「は?」
「お前のドライバー奪還作戦、決行の時間だ」
そう言うとイッセーは不敵に笑った。
ーーーー
「リアス、どうだった?」
「えぇ、バッチリ見つかったわ」
中本の研究所へ戻ってきたイッセーと吼介は、リアス達と合流する。
そしてリアスの手には、ビーストドライバーが握られていた。
「おぉ、やったぜ!!」
はしゃぐ吼介の様子を、物陰から見つめる者がいた。
「馬鹿な…いつの間に!?」
正体は中本だった。
中本は大慌てで研究室の本棚の裏に隠したビーストドライバーなどを確認したのだが…
「あれ?」
そこにはビーストドライバーがちゃんと置かれていた。
首を傾げる中本の背後から、
「やっぱりアンタだったんだな」
「!?」
その行動を見ていた吼介達が立っていた。
驚愕の眼差しで、中本はリアスが持つドライバーを見つめ、口を開く。
「そ、そのベルトは……」
「偽物ですよ。優秀な職員に造ってもらいました」
このドライバーは、イッセーの使い魔であるバイオレットゴーレムが造り出した精巧な偽物である。
ゴーレムの器用さを偶然知ったイッセーは、リアス達にゴーレムに造ってもらうように依頼し、本物の所在を把握しようとしたのだ。
「どうしてこんな事を……」
「……わ、私だって、認めてもらいたかったんだ!!」
詰め寄ったイッセーに、中本は叫ぶように胸の内を吐露する。
以前自分が発掘した出土品を、自分の手柄を研究所の所長に奪われ、本来なら自分が得ていた称賛を得られなかった事を………。
「あの時の無念を晴らしたかった…。今回の発見が、最後のチャンスだと思った。どんな事をしても成果を上げたかったんだ!」
「ですが、だからと言ってやって良い事と悪い事が…!」
「良いんです部長さん……ッ!」
そんな中本を庇う吼介だが、その場で力なく蹲る。
「吼介!!」
「…参ったな。キマイラの奴、思った以上に腹空かせてやがる」
「こうなったら、貴方の中のキマイラをイッセーが……」
「皆まで言うな!!」
吼介を慮って進言したリアスの言葉を、吼介は強い語気で撥ね退けた。
「……確かに、遺跡でキマイラに取り憑かれた時、ヤバいと思ったよ。でも俺、同時にワクワクしたんだ。この得体のしれないバケモノは何だ?この不思議なベルトと指輪は何だ?これから何が起こる?どんな事をしても知りたいと思った。それが例え……自分の命を懸けなきゃならねぇってなっても……!」
「立神君……」
「今の中本さんと同じなんすよ…キマイラは俺にとっちゃでっかいチャンスで、俺が考古学者になる為の第一歩なんだ!!」
そう言い切ると、吼介は中本を見上げる。
「アンタなら分かる筈だ……考古学者の先輩なんだからよ」
「………そう、だな」
その答えに中本は静かに、だが力強く頷いた。
『良い雰囲気の所すみませんねぇ!!』
だがそこに掛かる無粋な声。
と同時に中本へ向けて魔力弾が放たれるが、リアスが寸での所で防いだ。
「…ファントム!」
「悪いな、心の支えは消させやしない」
イッセーはリアスから受け取った偽のビーストドライバーをスプリガンへとチラつかせる。
それを見たスプリガンは意気揚々と襲い掛かる。
『そいつを壊せば任務完了って訳か!』
「壊させるかって言ったろ!」
スプリガンの剣を受け止めたイッセーは吼介へと振り返る。
「吼介!此奴は俺が下拵えしておく……だから絶対食いに来い!!」
『ゴチャゴチャうるせーよ!』
「お前もな!……変身!」
《フレイム・プリーズ!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》
組み付いたスプリガンを魔方陣で弾き飛ばし、イッセーはウィザードFSに変身。
弾かれたスプリガンに息つく間も与えず、
《フォール・プリーズ》
「下へ参りまーす!」
『は、のぉおおおおお!!?』
穴を広げる魔法を発動し、自分諸共スプリガンを下へと誘導した。
「…へっ、言ってくれるじゃねーか」
それを聞いた吼介は、本棚に置かれていたビーストドライバーだけを掴む。
「此奴だけは返してもらうぜ。…すみませんけど、中本さん頼みます」
「――――待ってくれ!」
ファントムの元へと駆け出そうとする吼介を、中本が呼び止めた。
振り返った吼介の目の前には、中本が自ら発掘したものが。
「中本さん……でも、これは」
「君は、夢のために自分の命を賭けている。でも、私はかつての無念を晴らそうとしているだけだ。あの時、自分がされたように誰かを犠牲にして!」
「……」
「本当に……すまなかった!」
そう言って頭を下げる中本。
それを受けた吼介は、朗らかに笑った。
「そんな事、もう気にしてないっすよ!俺のピンチは、俺自身でチャンスに変えるんで!」
「立神君………。だからこそ、これを受け取ってほしい。これは、君が持つに相応しい」
吼介は改めて差し出されたそれを見つめ、確りと受け取った。
「今度また、一緒に遺跡調査連れてってくださいね…約束っすよ!」
「…あぁ!」
快く快諾した中本の返答に笑うと、吼介は今度こそ駆け出した。
「おらっ!」
『はぁっ!』
一方の外では、ウィザードFSとスプリガンの戦いが続いていた。
スプリガンの刺突攻撃を弾き、返す刃でウィザーソードガンの切っ先を突き立てる。
『ちぃっ、鬱陶しい……!』
「さぁて、先ずは弱火で軽く焙るか……うぉっ!?」
指輪を嵌めようとしたウィザードFSに、火炎弾の雨が降り注いだ。
「予定変更だ!」
《エクステンド・プリーズ》
ウィザーソードガンのハンドオーサーに指輪を読み込ませると、刀身が鞭のようにしなり、火炎弾を全て打ち消した。
「……まーたお前かよ」
『………』
ウィザードFSの眼前に立っていたのは、またしてもガルムだった。
心底嫌そうな声を漏らすウィザードFSに構わず、ガルムは襲い掛かる。
「はっ、おりゃ!」
『……ッ』
「っ!?」
互いの攻撃を往なし続ける両者だったが、ここで突然ガルムの姿が消え失せた。
自分の攻撃が空振りに終わった事に一瞬動揺するウィザードFSだったが、そこへスプリガンの攻撃が迫ってきた。
「っ!……ぐぁ!!」
それを迎え撃とうとしたウィザードFSだったが、自分の足元の影から爪撃が襲い掛かり、結果両者の攻撃をまともに食らってしまう。
弾かれるようにして地面を転がるウィザードFSから、ビーストドライバーが転がり落ちた。
『ハッハッハ!此奴を壊せば……ジ・エンドだ!!』
スプリガンが振り下ろした一刀により、ビーストドライバーは奇麗に破壊されてしまう。
ゲートの心の支えを壊したことに喜ぶスプリガンだったが、影より這い出たガルムだけは静かにウィザードFSを睨んでいた。
『ウィザード……アーキタイプのドライバーを破壊したと言うのに、何故慌てん?』
「……その答えは」
「――――待たせたな、イッセー!!!」
ウィザードFSの答え――――吼介が漸く駆け付けた。
その手には先程スプリガンが破壊したはずのビーストドライバーが。
『な、さっき俺が壊したはずだろ!!』
「偽もんだよ。ノせられちゃった?」
『小賢しい真似を……』
「本物は食い意地がもっと張ってんだよ……早速だけど、食わせてもらうぜ!」
《ドライバーオン!》
腰にビーストドライバーを巻き付け、吼介は指輪をベルトの側頭部へと嵌め込み、半回転させる。
「変、身っ!!」
《セット!オープン!L・I・O・N!ライオーン!》
『…行け』
変身したビーストに対し、ガルムは魔石を投げる。
忽ち魔石はグールへと変わり、ビーストへと群がる。
「…くっそ、やっぱり力が出ねぇ……!」
何時もなら余裕ではあるのだが、今のビーストは魔力が枯渇した状態。
グールにすら苦戦してしまうほどに疲弊していたのだ。
「……ヴッ」
すると、ビーストの体を再び衝動が襲う。
何とか堪えようとするも、その本能はいとも容易くビーストの理性を飲み込んでいく。
「ウガアアアアア!!!」
理性が朦朧となりながら、ビーストは組み付いてくるグールを一気に薙ぎ払い、その魔力を吸収。
そしてそのまま、今度はガルムへと襲い掛かる。
『理性のない状態で、この私を二度も喰らえると思うな……』
「っ、吼介!!」
暴走するビーストの腰に組み付き、ウィザードFSは何とか止めようとする。
「ドライグ、譲渡だ!」
《Transfer!!》
ここでウィザードFSは自身の魔力を譲渡、それによりビーストは僅かだが理性を取り戻す。
「……ッ、イッセー」
「…言ったろ。暴走したら、俺が止めてやるって」
『…その様では、また暴走するのが関の山だッ!』
そんな二人に、ガルムは容赦なく火炎弾を浴びせる。
何とかそれを躱すと、ビーストは右手に中本から貰った指輪を嵌める。
「おいキマイラ……腹減ってんだろ?ここで飢え死になりたくねーんなら……根性出しやがれ!!」
ドライバーのスロットに宛がうと、ビースト、吼介の意識は暗闇の中に。
「ここは……」
『いよいよお前の命も消えそうだな』
辺りを見渡す吼介の目の前に現れたのは、様々な動物の顔を体の各所に刻む獣――――ビーストキマイラだ。
「キマイラ!」
『ようやく見つけた下僕だが、別れの時か』
「馬鹿な事言ってねーで教えろ!こいつは一体何に使うんだよ!?今使えるのか使えねえのか、どっちだ!?」
吼介が差し出した石の塊を、キマイラは静かに見つめる。
『ほぅ、それを見つけ出したか……。それを使えば、我の力を現実世界で使うことができる。しかし、今のお前が耐えられるかどうか…』
「使えるんだな」
吼介を揺さぶるかのような発言を口にしたキマイラだったが、吼介はただ使えるという言葉に嬉しそうに微笑む。
その様子を見たキマイラは、声を荒げる。
『聞いていたのか!?己の魔力すら枯渇した今のお前では……』
「皆まで言うな!俺はな、危険な賭けには乗る主義なんだよ」
『魔力を求めて、再び暴走するとしてもか……?』
「――――俺が暴走したら、俺のダチが止めてくれる。俺は、ただ目の前の食事と謎に食らいつくだけだ!」
その答えを聞いたキマイラは――――哄笑を上げた。
『……フハハハハハ!!己ではなく他者を信じるというのか!』
「俺自身もその内信じる!…それにな、ピンチはチャンスなんだよ。だからお前も付き合え、キマイラッ!!!」
『ふっ…いいだろう!口を開けて待っているぞ!』
そう言うと、ビーストキマイラは吠え立てながら吼介の体内へと潜り込む。
「さぁ―――――食事の時間だっ!!!」
《ハイパー・ゴー!ハイッ・ハイッ・ハイッ・ハイパー!》
『……!』
『何だぁ!?』
突如、ビーストの体から半透明の獣が飛び立った。
スプリガンとガルムが目を見張る中、獣はビーストの体へと纏わりつき、蒼い閃光が迸る。
閃光が晴れると、そこに立っていたビーストは大きく姿を変えていた。
黒のスーツは鮮やかなコバルトブルーに染まり、胸部のアーマーは獣の顔を模した物へと変化、腕にも紐状のパーツが追加された。
そして、手にしていた発掘品の石部分が破裂し、中からは獣のレリーフが刻まれた拳銃が。
同時に指輪の石も取り払われ、キマイラの顔の指輪となった。
ビーストは手にした拳銃――――ミラージュマグナムをクルクルと回し、スプリガンとガルムに突き付けた。
「さぁーて…………一気に喰い尽くすぜッ!!!」
ビースト改め――――ビーストハイパーは勇ましく吠えると、ファントム二人へと飛び掛かった。
『ただ色が変わっただけで粋がるんじゃねぇ!!』
スプリガンは大して気にも留めずに、ビーストハイパーを迎え撃とうとする。
ビーストハイパーはスプリガンの剣を弾くと、腕についた紐――――フリンジスリンガーを振り回した。
『なっ、ぐぁ!!』
それは簡単にスプリガンの剣を弾き、スプリガン自身の肉体にダメージを与えた。
煙を上げるスプリガンの肉体。それを見ていたガルムは、低く唸った。
『貴様、まさか……』
「ハッ!!」
ビーストハイパーはミラージュマグナムから魔力弾を撃ち放つ。
何の変哲もない一撃、だがその弾丸はスプリガンを大きく仰け反らせた。
『ぬおぉおおおおおおっ!!!』
「効くだろ?何せ、お前の魔力をさっき削らせてもらったからな」
『やはりか……貴様、魔力喰いの力を………!』
制御した、と言う言葉は続かなかった。
何故なら、ビーストハイパーの一撃がガルムへ命中したからだ。
「お前らファントムは基本魔力で出来た肉体なんだろ?そして、今の俺の攻撃は、魔力を削って、喰う!」
「つまり……」
『ファントム本体に、常にクリティカルを叩き出せると言う事か』
ウィザードFSは思わず口笛を吹いた。
まるで叶わない、といった風に。
「わりーがもう暴走はしねぇ…………何てったって、俺は絶望を”喰う”魔法使いだからな!俺自身の絶望だって、喰らってみせる!!」
『……ッ!!』
駆け出したビーストハイパーの動きを止めるべく、ガルムはメデューサの石化能力を発動させるが、ガルムが視認するよりも早くに、ビーストハイパーの一撃がガルムに突き刺さった。
『……ヌゥ!!』
「はっ、おりゃ!!!」
ガルムを蹴り飛ばすビーストハイパー。
大きく肩で息をするガルムたちに向けて、ミラージュマグナムを構える。
「さぁ、そろそろメインディッシュだ!」
そう言ってミラージュマグナムのスロットに指輪を嵌めようとするが、何故だか指輪が上手く嵌らない。
「おいおい、これどうやって発動すんだよ!?」
『ッカァ!!』
「おわっ!!」
まごついている間に、ガルムの火炎弾を食らうビーストハイパー。
「何だよ、キマイラ!協力しろよ!”口開けて待ってる”って言った……あれ?もしや…」
キマイラに文句を垂れていたが、ここで指輪の形状に違和感を覚えた。
上へ引っ張ってみると、指輪がスライドして”口が開いた”のだ。
「おおー、こういう事かぁ!んじゃ、もう一度ッ!」
口の開いたリングをミラージュマグナム背面のスロットにセットすとと、
《ハイパー・マグナムストライク!》
テンションの高い音声が鳴り響き、マグナム背面の鏡に浮かんだキマイラを模した魔力が背後からビーストと一体化、再度銃口に集束されビーストキマイラの姿を模した強力な魔力弾を放つ。
『ッ!!』
『ッ、ギャアアアアアア!!!!』
ガルムは咄嗟に影に潜り込み難を逃れたが、スプリガンだけは避け切れずに食らってしまい、大爆発を起こす。
倒したスプリガンの魔力は、ビーストドライバーへと吸い寄せられていく。
「ふぅ……ごっつぁん!!」
「ハハ…凄ぇな」
ーーーー
後日。
「へぇ。じゃあ中本さん、また海外に行ったんだ」
「おう。また発掘調査をやり直すんだと」
はんぐり~にて、中本の事を報告する吼介。
あれから中本は再び海外へと旅立っていった。
『私は、また発掘調査からやり直すよ。思い出したんだ。私の夢は、世間に認められる事じゃない。未知の遺跡の謎を解き明かす事だったと。君を見て、改めて思い出せたよ。本当に、有難う』
空港にて、見送りに来た吼介に、中本はそう晴れやかに言った。
「また新しい出発か」
「そういうこったな。中本さんなら、またスゲーもん見つけれるだろうしな!」
ドーナツを食べ終えると、吼介は去って行った。
「夢の為に頑張るのは素敵だけど、生き延びる方法も真面目に模索しなきゃね」
「そうだな」
それを見送ったイッセーは、リアスと共に帰路に就く。
帰り道、ふとリアスは気になった事をイッセーに尋ねた。
「そう言えば……イッセーの夢ってどんな夢なの?」
「……今は、ファントムを倒す事、かな」
「…………今は?」
今、と言う言葉が引っ掛かったのか、リアスは追求しようとするが、イッセーは若干強引に話を逸らした。
「さ、早く帰ろうぜ。サイラオーグさんとの試合も近し」
「…そうね」
原作ビーストより盛りすぎな気がせんでもない