ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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サマエル登場回ですが、ここでイッセー君の変化が見れますよ(良い意味かは兎も角)


MAGIC136『龍を喰らう者』

 

「ほぉ、ここで招かれざる客が来ようとはね。ヴァーリ」

「お前の主催したパーティがあまりにもつまらなかったんでね。ゲームで言えばクソゲーだ」

 

曹操の苦笑いに対し、ヴァーリはいけしゃあしゃあと言ってのける。

どうなってるんだと思っていたら、ルフェイちゃんが説明してくれた。

 

「フェンリルちゃんとの入れ替わりによる転移法で、ヴァーリ様をここに呼び寄せました」

「キャスリング、と同じ方式さ。フェンリルには俺の代わりに向こうで暴れてもらっている。お前がこちらに赴くのは予想済みだったんでな。保険は付けておいた。――――さて、お前との決着を付けようか。とはいえ、ゲオルクと二人だけとは豪胆な真似を」

 

相変わらず目ざといこって……『王』になるなら上位ランカーに普通に食い込めるんじゃね。

 

「いいや、豪胆なもんか。俺とゲオルクだけで十分と踏んだだけさ、ヴァーリ」

「強気なものだ。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』とやらを有してる事の所作、と取っていいのか?英雄派が作り出した、龍殺しに特化した神器所有者か、新たな神滅具所有者と言うオチだろう?」

 

ヴァーリの言葉に、しかし曹操は首を横に振るだけだ。

 

「違うんだよ、ヴァーリ。そんな分かり切ったオチを用意しても、観客と言う名の読者には受けが宜しくない。寧ろ座布団を持っていかれかねない」

「何で笑点基準なんだよ」

「『龍喰者(ドラゴン・イーター)』は俺達が便宜上付けた、コードネームのようなものさ。新たに生み出した訳じゃない、と言うよりは、既に生み出されていた。――――『聖書に記された神』が、あれをね」

 

それを聞いたローブの眼鏡――――ゲオルクが言葉を発した。

 

「曹操、良いのか?」

「あぁ、そろそろ頃合いだ。ヴァーリ、オーフィス、赤龍帝と言う豪華なメンツが揃っている。これ以上ない役者だ。――――予防。地獄の釜の蓋を開ける時だ」

「了解。――――無限を食う時が来たか」

 

口の端を釣り上げたゲオルクが後方、広いロビー全体に巨大な魔方陣を出現させた。

何を呼び出す気だ、と構えていると――――

 

 

ズォォォォォオオオオオ…………

 

 

ホテル全体を激しい揺れが襲った!

余りにもどす黒い、そして禍々しいオーラが魔方陣から発生していく!

 

『…何だ、このプレッシャーは。ドラゴンを、いや、ドラゴンにだけ向けられた圧倒的な悪意………!!…………まさかっ!!?』

 

ドライグは何かを感じ取ったのか、震えながら吐き捨てた。

あのドライグが、怯えている…?

 

仰々しい魔方陣からは、巨大な何かが姿を露にしていく。

 

 

頭部、胴体…黒い羽………十字架?

 

現れた奴は十字架に磔にされていた。その体には幾重もの拘束具が巻き付けられている。

雁字搦めのそれには、不気味な文字の羅列が浮かんでいた。

 

拘束具に覆われた目の部分からは、血涙が溢れている。

 

「…ドラゴン?」

 

思わず呟いたその様相は、東洋のドラゴンに似た姿をしていた。

だけど俺が知る普通のドラゴンとは異なり、上半身には堕天使の翼を生やしており、その翼にもぶっとい杭が刺さっていた。

 

『…まるで罪人の様だな。裁きを受けた者を体現したかのようだ』

 

ドラゴンの言う通り、そのドラゴンは傍目から見ても痛々しい状態だった。

 

『オオオオォォォォオオオオオオ………』

 

磔のドラゴンの口からは、不気味な唸り声が発せられていた。

唯一むき出しだった口からは血と唾液が吐き出されていった。

 

苦しみ、妬み、痛み、恨み――――ありとあらゆる、この世の負の感情を吐き出すような、そんな声音だ。

そして俺は、この感情を何処かで経験した覚えがある。

 

 

そう、これはあの時の――――

 

「サバトの儀式、かな?」

 

俺の心の内を呼んだのか、曹操は今俺が思った事を口に出してくれやがった。

そうだ、此奴は……発してる波動こそ違うけど、絶望の具現体――――ファントムに似ていた。

 

「だが残念。此奴はファントムじゃない。それよりもっと質の悪い存在さ」

「…何だってんだよ」

 

それを見ていた先生は、目元を引く付かせ、憤怒の形相となっていた。

 

「此奴は……なんてものを……ッ。コキュートスの封印を解いたってのか…ッ!!」

 

曹操は一歩前に出て、詩を詠むかのように口遊みだした。

 

「――――曰く、『神の毒』。――――曰く、『神の悪意』。エデンにいた者に知恵の身を食わせた禁忌の存在。今は亡き聖書の神の呪いが渦巻く原初の罪――――。『龍喰者(ドラゴン・イーター)』・サマエル。蛇とドラゴンを嫌った神の呪いを一身に受けた天使であり、ドラゴンでもある。そう……ある天使(・・)同様、存在を抹消されたドラゴンだよ」

『――――ッ!?』

 

サマエル……確か、アダムとイヴに知恵の身を食わせるように唆した蛇、だったっけ?

 

『…あぁ。そしてそれは神の怒りに触れた。故に神は極度の蛇――――そしてドラゴン嫌いになった。協会に書かれている書物に登場するドラゴンの大多数が悪として描かれるようになった由縁だ。奴は言わばドラゴンを憎悪した神の悪意、毒、呪いをその身で全て受けた存在だ』

「…神聖である神の悪意は本来あり得ない、だがそれだけの猛毒でもある。ドラゴン以外にも影響が出るうえ、地上のドラゴンを絶滅しかねない理由で、コキュートスの深淵に封じられていた。……アイツにかけられた神の呪いは言わば究極の龍殺し。存在自体が凶悪な龍殺しなんだよ……!!」

 

ドライグと先生の説明を聞いて、馬鹿な俺でもその存在の意味を悟った。

俺にとっちゃ、毒も毒って訳だ……!

 

「冥界の下層――――冥府の神ハーデスは何を考えていやがる………ま、まさか!!」

 

先生が得た答えに同意するように、曹操は笑った。

 

「ビンゴ。ハーデス殿と交渉してね。何重もの制限を設けた上で彼の償還を許可してもらったんだよ。とは言え、制限を設けた上でこのプレッシャーとは、少しばかり驚いているけど」

「…んの野郎!!ゼウスが各勢力との協力体制に入ったのがそんなに気に食わなかったってか!!!」

 

…つまり、本来なら敵対する筈のテロリストに手を貸したって事か!

余計な事してくれやがって!!

 

曹操は聖槍をクルクルと回して矛先を俺達に向ける。

 

「というわけで、アザゼル殿、ヴァーリ、赤龍帝。サマエル持つ呪いはドラゴンを喰らい殺す。サマエルはドラゴンだけは確実に殺せるからだ。龍殺しの聖剣など比ではない。比べるに値しないほどだ。兵藤一誠。君のアスカロンなど、サマエルに比べたら爪楊枝だよ」

「マジかよ。刺した時スゲー痛かったんだけど」

「えっ何それ。何で生きてんの。二重の意味で君には致命傷なのに」

 

当たり所が良かったとしか言えねぇ。

って言うかこんな神聖な爪楊枝があってたまるか!

 

「それを使って何を仕出かす気だ!?ドラゴンを絶滅させる気か!?……いや、お前ら、…オーフィスを……!?」

「――――喰らえ」

 

先生の問いには答えず、曹操は指を鳴らした。

すると、空気を切り裂く音と共に何かが通り抜け――――バグンッ!という奇妙な音が聞こえてきた。

 

振り返って確認すると、オーフィスが立っていたであろう場所に、黒い塊が生まれていた!

その発生源を目で追うと、サマエルの口元から伸びていた!

 

 

――――舌かっ!!

 

「おいオーフィス!!返事しろっ!!」

 

眉のような塊に話しかけるが、返事は返ってこない。

 

「祐斗、切って!」

 

リアスの指示を受けた木場が、聖魔剣を創り出して塊を斬り付けるが――――塊は聖魔剣を飲み込み、刃先を消滅させた!

 

「…ならばっ!」

 

もう一本創り出した木場は、今度は舌を斬る!

が、結果は先程と同じだった。

 

『Half Dimension!』

 

ヴァーリが神器を発動、奴の周囲が歪んでいき、あらゆる物が半分になっていく。

 

「おまけだ」

《Dvide Field!!!》

 

それと同時に空間まで半減していくが、全く効果が見られなかった。

 

「ちっ…空間の半減すら意味をなさないとはな…」

「ならば、これで!」

 

リアスが消滅の魔力を放つが、それをも意に返さなかった。

攻撃を跳ね除けるのか、恐ろしく頑丈なのかが分かんねぇ!

 

その間にも何かを飲み込むようにサマエルの口元にその何かが向かっていく。

 

「このままでは埒が明かないな」

「んじゃ、あの時と同じように行きますか」

 

俺達二人は瞬時に鎧を身に纏う!

 

「相手はサマエル、そして上位神滅具所有者が二人。不足はない」

「この状況でよくそんな事言えるよなお前」

 

俺達の後に続くように、全員が戦闘態勢に入る!

 

「レイヴェル、下がってろ」

 

俺の頼みに、レイヴェルは後方へと下がる。

あれだけの呪詛の塊だ、例え不死身のフェニックスといえど影響が出るかもしれないし、何よりレイヴェルは大事な客分で、俺のマネージャーだ。危ない目には合わせられない。

 

それを見てか、曹操は狂喜の笑みを浮かべた。

 

「このメンツだと流石に俺も本腰を入れないと不味いねぇ。何せハーデスからはサマエルの召還を一度しか許されていないからね。ここで決めないと俺達は即刻ゲームオーバー、だからな。ゲオルク!サマエルの制御を頼む。俺は彼らを相手取る」

「随分大胆な事を言ってのける。一人で相手が務まるのか、曹操」

「やってみせるさ。出なければこの槍を持つに値しないし、この先一生童貞と言う可能性だってあるからね」

 

曹操の決意に応えるように、聖槍から眩い光が放たれる!

 

「――――禁手化(バランス・ブレイク)

 

力のある言葉と共に、曹操の体に変化が現れた。

 

神々しく輝く輪後光が奴の背後に現れ、曹操を囲むようにボウリング球ほどの大きさの7つの球体が宙に浮かんで出現した!

 

……随分シンプルだな。

 

「これが俺の、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手、『極夜なる(ポーラーナイト・)天輪聖王の輝廻槍(ロンギヌス・チャクラ・ヴァルティン)』――――とはいえ、まだ未完成だけどね」

「―――ちっ、よりにもよって亜種か!普通であれば『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手は『真実白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)』の筈だからな!名称からすると、自分は転輪聖王とでも言いたいのか!?」

「俺の場合は転輪聖王の『転』をあえて『天』として発言させた。そっちの方がカッコいいからね」

「童貞聖王で良いんじゃねーか?」

『カッコ悪すぎる!!』

 

おおう、全員からの総ツッコミ!

すいません、シリアスブレイクしちゃって!

 

「気を付けろ。あの禁手は『七宝』と呼ばれる力を有している。神器としての能力が7つある。あの球体一つ一つに能力が付加されている訳だ」

「7つ…あらゆる局面に対応する為とはいえ盛りすぎじゃねーか」

「だが俺が知ってるのは3つだけ。後の4つは全くの未知数だ。だからこそ、最強の神滅具と称される。紛れもなく、奴は純粋な人間の中で一番強い男だ……そう、人間の中で」

 

…前回の戦いはあくまで向こうの知らない手札で奇襲同然の戦いだった。

けど魔龍進化は無効には既に知らされている。

 

さて、どう出るか……。

 

 

動かない俺を前に、曹操は空いている手を前に突き出す。――――球体の一つが、それに呼応して曹操の前方に出ていく。

 

「七宝が一つ。――――『輪宝(チャツカラタナ)』」

 

そう呟いた後、フッとその球体が消えうせた。

かと思えば――――ガシャンッ!!!何かが派手に破壊された音が木霊した。

 

音のした方を振り返ると、ゼノヴィアが握っていたエクス・デュランダルが破壊されていた。

 

「…ッッ!!」

 

ゼノヴィアも突然の出来事に成す術がなかった様だった。

 

……今、何が起きた!?

 

「まずは一つ。輪宝の能力は武器破壊。これに逆らえるのは相当な手練れのみだ」

「…ゴフッ!!」

 

曹操がそう言い切った途端、ゼノヴィアは血を吐いて倒れた!

見れば腹部に大穴が穿たれており、一目で致命傷と分かる傷だった!

 

「そして、槍状に形態変化させて貫いた。今のが見えなかったとしたら、君では俺には勝てないな、デュランダル使い」

「…ゼノヴィアの回復急いで!アーシア!!」

 

リアスが間髪入れずに指示を飛ばすも、アーシアは暫し上の空だった。

が、直ぐにハッとしてゼノヴィアに駆け寄った!

 

「ゼノヴィアさんッ!!いやぁぁぁぁっ!!」

「曹操、テメェ……ッ!!」

 

冷静でいなきゃいけないのは分かっている……だけど、仲間に致命傷を負わされて無関心でいられる訳、ねぇだろっ!!

 

「許さないよっ!!」

消滅の龍波動(デリート・ドラゴンショット)ッ!!」

 

木場の攻撃を往なした曹操に向けて放つが、それも危なげなく捌かれる。

そして再び球体の一つを手元に寄せた!

 

「――――『女宝(イッティラタナ)』」

 

そう呼称された球体は俺達の横を駆け抜け、リアスと朱乃さんの元へと飛んで行った!

 

「くっ!」

「こんなもので――――」

「弾けろっ!!」

 

対応しようとした二人よりも早く、球体の光は二人を包み込んだ!

それでも攻撃しようとするが――――何も起きない!

 

怪訝そうな二人はもう一度手を翳すも、やはり何も起きない。

まさか、今のは!?

 

「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れでなければ無効化できない。――――これで3人だ」

 

リアスと朱乃さんがこうなら、他の女性陣も不味いって事か!

 

曹操は高笑いをする。

 

「ハハハ!この限られた空間で君達全員を倒す。派手な攻撃はサマエルの繊細な捜査に悪影響を及ぼしかねないからね。出来るだけ最小限の動きで、サマエルとゲオルクを死守しながら一人で戦う――――うん、これ以上ない最高の難易度だ。だが――――」

 

曹操の視界の端では、黒歌とルフェイが手元に魔力、魔法の光を発しながら、そのゲオルクとサマエルの方に突き出していた。

だがそれを見越していたかのように、曹操の球がまた向かう!

 

「ちょこざいにゃん!」

馬宝(アッサラタナ)。その効果は任意の相手を転移させる」

 

迎撃しようとした黒歌とルフェイの姿が消えうせた!

――――そっちか!

 

俺の予想通りの場所――――アーシアの目先に現れた黒歌とルフェイに、魔法を発動させる!

 

「悪く思うな、二人とも!!」

《バインド・プリーズ》

「にゃん!?」

「ひゃわ!?」

 

体に痕が付かない程度の強さで縛り、攻撃を中断させる!

 

「ほぉ、目敏い観察眼だ」

「ヴァーリ、イッセーッ!!俺に合わせろッ!!」

「俺としては単独でやりたいところだが…ッ!!」

 

金色の龍の鎧を纏った先生とヴァーリが、高速移動で瞬時に曹操に肉薄!

二人の光の槍と魔力が籠められた拳を寸でで避けていく曹操。

 

魔龍進化(ウィザード・プロモーション)!!!」

《Wizard Promotion!!Water Dragon!!!!!》

 

二人が曹操から離れた瞬間に、全砲門から魔力を放つ!

 

「堕天使総督と二天龍の競演かっ!!これを御せれば更なる高みを目指せるなッ!!」

 

曹操は全方位に光の結界を張り、俺の砲撃を全て防ぎ切った!

 

《Wizard Promotion!!Land Dragon!!!!!》

「オオオオッ!!!」

「――――ぬ、ぅっ!!!」

 

結界が解けた頃を見計らって、俺は肥大化された拳を叩きこむ!

曹操はそれを槍の柄で防ぎつつ後退するが、然したるダメージには至っていない。

 

「相変わらず凄まじいパワーだ。腕が痺れちゃったよ、っと!!」

 

その間に殴り込んできた先生とヴァーリの攻撃を避け続ける曹操だったが、その右目が金色に輝くのが見えた!

 

「邪眼と言うのはご存知かな!?そう、目に宿る異能の力!」

「急に中二病でも発症したのか!?」

「いいや、そうじゃない。これは君にやられた補強のついでに仕込んだ、正真正銘本物の眼だ!」

 

一息吐いた曹操は空かさず視線を下に向けた!

すると、先生の足元が石化していく!

 

あれは――――

 

「ッ、メデューサの眼か!!」

 

どこかで見覚えがあると思ったぜ!!

 

先生が足元から魔力を噴出させて、石化した個所を開放しようとするが、その前に先生の腹部に聖槍が突き刺さった!

 

「…ガハッ!!」

 

鎧の霧散と共に血を吐く先生。

それを見たヴァーリはかつてない程激昂した!

 

「おのれ、曹操ォォォォッ!!!!」

「ハハハ!随分ご立腹じゃないか!!」

 

ヴァーリが撃ち出した魔力の一撃に向かって、またもや光の球が飛来する!

 

「―――――殊宝(マニラタナ)。攻撃を他者へと受け流す。ヴァーリ、君の一撃は強大だ。当たれば即死は免れないし、防御も難しい。だが、受け流す術ならある」

 

ヴァーリの一撃が前方に生まれた黒い渦に吸い込まれていった!

やがて渦は消滅し――――小猫ちゃんの前に新たな渦が生まれた!

 

受け流す……そう言う事かよっ!?

 

俺が動こうとするより早く、渦から先程のヴァーリの一撃が放たれた!

が、直撃する寸前、何者かが小猫ちゃんの前に躍り出て――――

 

 

ゴバァァァァァァアンッ!!!

 

 

けたたましい轟音が響き、小猫ちゃんの前に躍り出た人物――――黒歌が倒れた!

 

「ね、姉様ッ!!!」

「…ほんっと、世話が、かかるわ、ね………」

 

倒れた黒歌を抱抱き留めた小猫ちゃんの前で、黒歌はそう消え入りそうな声で呟いた。

 

「曹操…………俺の手で俺の仲間をやってくれたな………ッ!!」

 

ヴァーリから迸る怒りのボルテージが更に上がっていく!

だがそれは…俺も同じだ!

 

「ヴァーリ、兵藤一誠、君達は仲間を思いすぎる。だがこの場においては君達の致命的な弱点だ。あぁ、そう言えばこれで七宝の全てを把握したのは君だけだな。やったねヴァーくん!」

「貴様…!その呼び方をして良いのは彼女だけだ!!――――我、目覚めるは、覇の理に全てを奪われし二天龍なり!!」

「おいおい…俺を差し置いて盛り上がってんじゃねぇよ!!行くぞ、ドライグ!!」

『致し方あるまいッ!!』

「『我ら、目覚めるは!覇の理を超越せし赤龍帝なり!!!!』」

 

フィールドを白と白銀の光が覆い始める!

それを見た曹操は、ゲオルクに叫んだ。

 

「ゲオルクッ!!ヴァーリの覇龍と兵藤一誠の例の力はフィールドを破壊しかねないっ!!」

「分かっている!サマエルよっ!!」

 

ゲオルクが手を突き出して魔方陣を展開させると、それに反応してサマエルの右手の拘束具が解除された!

 

『オオオオオオオオオォォォォォォォンッ』

 

不気味な鳴き声と共にサマエルの右手が俺達に向けられた!

 

ブゥゥゥンッ!!

 

空気を震撼させる音と共に俺達は黒い何かに包み込まれた!

中から打撃を加えようとするが、ドライグに止められる!

 

『止せ相棒!サマエルの力をドラゴンであるお前が触れれば無事では済まんぞ!!』

「だからってこのまま棒立ち状態でいれってか?!」

『オオオオオォォォォオオオォォォォッ』

 

外からサマエルの吠える声が聞こえると、塊が勢いよく弾けた!

視界が元の空間に戻ると、俺はガクリと膝を付いた!

 

そして隣にいたヴァーリは鎧を霧散させ、体のあちこちから血が飛び散っていった!

 

「…ガッ!!」

 

ロビーの床に倒れ伏すヴァーリ!

そのヴァーリを見下ろしながら、曹操は息を吐いた。

 

「どうだいヴァーリ。神の毒のお味は?ドラゴンの君には堪らない味だろう?出来れば原稿用紙二枚分でその感想を書いてもらいたいが、そこまで俺は鬼じゃない。覇龍になって暴れられたら、サマエルの制御に支障を来すからねぇ。こうでもしなければ君には対処出来ないんだ。何せ俺は弱っちい人間なので」

「曹、操……ッ!!」

 

曹操を憎々しげに見上げるヴァーリ。

 

「さて、これでヴァーリは無力化出来た。後は……ッ!?」

 

此方を振り返った曹操は、驚愕した面持ちで俺を凝視していた。

そしてそれは、他の皆も同様であった。

 

同じ天龍のヴァーリは倒れてるのに、俺は殆どダメージなしだからだろう。

いや、俺にも訳が分かんねーんだけど!

 

「兵藤一誠……何故立っている?」

「は?…って言うか、何かしたのか?スゲー体力奪われたんだけどよ……!」

 

大きく肩で息をする俺に対し、曹操は有り得ないとかぶりを振った。

 

「同じ天龍であるヴァーリですらこの有様だと言うのだぞ?なのに…体力を奪っただけ?!――――ゲオルク!サマエルの力に異常は!?」

「…いや、全く淀みなく放たれた筈だ。だと言うのに、立っているだと?!」

 

ゲオルクですら、驚愕した面持ちだった。

 

『…相棒、理由は分からんが今の内だ!サマエルを!!』

「…おぅ!!」

《Wizard Promotion!!Water Dragon!!!!!》

 

残る体力を振り絞って魔龍進化を敢行、狙いをサマエルに絞る!

 

「食らいやがれ化け物!!消滅の龍撃砲(デリート・フルブラスト)オッ!!!!」

「っ、しまった!!ゲオルク、防御を――――」

《Dvide Field!!!》

「「ッ!?」」

 

咄嗟に防御の指示を出した曹操と、魔方陣を発動しようとしたゲオルクの動きが固まった!

――――サンキュー、ヴァーリ!

 

「ヴァーリッ!!」

『――――オォォォオオッ………!!』

 

全弾サマエルに命中し、サマエルからは苦悶の声が漏れ出る!

 

「――――!……ゲオルク、サマエルは!?」

「無防備な状態で受けてしまったからな……これ以上はサマエルを繋ぎ止められないぞ!」

「例のものはどれだけ取れた?」

「四分の三ほど、だな」

「…十分か。良くやってくれた」

 

指を鳴らすと、サマエルは魔方陣の中へと消え去っていく。

それと同時に、オーフィスを包んでいた黒い塊も消えていった。

 

塊から解放されたオーフィスに、特に変化は見られなかった。

オーフィスは曹操に視線を向けた。

 

「我の力、奪われた。これが曹操の目的?」

 

オーフィスの問いに、曹操は愉快そうに笑った。

 

「イグザクトリー。オーフィス、俺達の目的は貴女を支配下に置き、その力を利用したかった。だけど、貴女を俺達の思い通りにするのは至難の業だ。ならばどうするか?――――貴女の力を奪い、新しい『ウロボロス』を創り出せばいい」

 

…オーフィスを、生み出すってのか!?

 

「俺達は自分にとって都合の良いウロボロスを欲したのさ。俺達にとって、オーフィスの目的であるグレートレッドはそこまで重要な存在でもないからね。それを餌にご機嫌取りと言うのもうんざりしてたんだよ。だからこの計画を始動したって訳。そして、『夢幻の存在は倒し得るのか?』と言う英雄派の超常の存在に挑む理念も試す事が出来た」

「……なぁ曹操」

 

俺は一つ確信を得た。此奴は――――

 

「何だい、兵藤一誠」

「前々から薄々思ってたけどよ……お前ら、馬鹿だろ」

「――――何?」

 

曹操は訝しげに俺を睨む。

 

「超常の存在に挑む?そんなもん、引き篭もってゲームの中でやっとけば良いじゃねぇか。なのにここまで被害を巻き込んで、剰え死人まで出してる。お前らの馬鹿みたいな計画の為にな………」

 

俺の籠手から、銀色の輝きが溢れ出る。

それは俺の怒りに呼応するかのように、激しさを増していく。

 

「『平和に過ごしてる人達の希望を奪ってんじゃねぇよッ!!!』」

《Infinity Hope Dragon Evolution Drive!!!!!!!!!!》

 

俺の声にドライグの声が重なり、辺りを白銀の光が包み込んだ!

無限女王を眼前にし、曹操は好戦的な笑みを浮かべる。

 

「ほぉ、まだ戦えると言うんだね。それは何よりだ!――――だが」

 

曹操は笑みを消すと、静かに背を向けた。

それと同時に、禁手も解除された。

 

「この場では止めておこう。俺の禁手もまだ完全ではないからね。この戦闘を利用して、長所と短所を確認する意図もあったんだよ」

「『随分舐めてくれるな…ッ!』」

「今は此方の方を優先したいからね。そして、君にサマエルが効かなかった原因も急ぎ解明したい。ゲオルク、死神の一行さまをお呼びしてくれ。ハーデスは絞りかすのオーフィスの方をご所望だからな。それと、前に考案した例の入れ替え転移、あれを試してみてくれ。俺とジークフリートを入れ替えで転移できるか?あとはジークに任せる」

「一度見てみただけだから、精度に不安は残るが…試してみよう。」

「流石は悪魔メフィストと契約したゲオルク博士の子孫だな」

「……先祖が偉大過ぎて、この名前には些かプレッシャーを感じるんだけどね。了解だ」

「これが終わったら風俗にでも出かけよう」

「何でそうなる!?…それは兎も角、さっき入ってきた情報なんだが…」

 

ゲオルクが差し出した紙切れを受け取った曹操の眼が細まった。

 

「…なるほど、助けた恩はこうやって返すのが旧魔王のやり方か。いや、わかってはいたさ。まあ、十分に協力はしてもらった」

 

…何だ、何かあったのか?

そう訝しむ俺達の眼前で、ゲオルクは魔方陣で転移していった。

 

「ゲオルクはホテルの外に出た。俺とジークの入れ替え転移の準備中だ」

「『…?』」

「まぁどうでもいいか。……もうすぐここにハーデスの命令を受けて、そこのオーフィスを回収しに死神の団体様が到着する。そこに俺の所のジークフリートを参加させよう。君達がここから脱出できるか、言わばゲームだ」

「『ゲーム、だと……?!』」

「あぁ。オーフィスを死守しながらここから抜け出せるか、ぜひ挑戦してみてくれ。俺は君達に生き残ってほしいが、それを仲間や死神に強制はしない。まぁ精々気を付けてくれたまえ」

 

そう言うと、曹操は悠然と去って行った。

 

「『曹操…何時か後悔させてやるからな』」

「そうか――――楽しみだ」

 

そう言って笑うと、曹操は今度こそ止まらなかった。

 

 




予想以上に長くなっちゃった
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