ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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まだ主人公の出番はないよ☆


MAGIC142『深淵の魔人』

 

 

黒歌に案内されて訪れたグレモリー邸の一室。

そこには禍の団のヴァーリチームのリーダー、ヴァーリ・ルシファーが秘密裏に匿われていた。

 

最初の和平会談の時や夏休みの時の冥界侵入以外に特に問題になる事はしていないとはいえ、彼等はテロリスト。そんな彼等をここに匿うのは重大問題だ。

 

でも彼等が僕達を助けてくれたのも事実。

それを聞いたグレモリー現当主――――部長のお父様は彼等の一時的な保護を決めた。

 

そして今、ベッドから上半身だけを起こしているヴァーリの体に手を当てている、小柄なご老体のお方……初代孫悟空だ。

 

初代は仙術の気を流して、ヴァーリの体からサマエルの毒を吐き出させた。

それを小さい容器に入れ、上から呪符らしきものを貼ってから、フッと微笑んだ。

 

「身に潜んでおった主な呪いは仙術で取り出せたわい。これで体も楽になるだろうよぃ。全く、大馬鹿もんの美猴が珍しく連絡なぞ寄こしたと思ったら、白い龍の面倒を見ろとはのぉ」

 

初代を呼び寄せたらしい美猴が半眼になっていた。

話では初代に苦手意識を持っていたようだけど……でもそれ以上にヴァーリを救いたい一心、だったのかな。

 

「るせぇ、クソジジイ。……で、ヴァーリは治るんかよ?」

「ま、こやつ自身が規格外の魔力の持ち主だからのぉ。儂が切っ掛けを与えりゃ十分だろうて」

 

…その言葉から察するに、ヴァーリも何とか快調に向かうみたいだ。

 

「…礼を言う、初代殿。これで戦えそうだ」

 

ヴァーリが初代に敬意を払って礼を口にしていた。

あの白龍皇が敬意をもって礼を述べるとは……彼にとっても初代孫悟空の存在は大きいようだ。

 

初代が美猴の頭をポンポン叩きながら言う。

 

「呪いが解けて直ぐに戦いの事とはの、全くどうして、どうしようもない戦闘狂じゃい」

「あんだよジジイ、もうどっか行くのか?」

 

初代は煙管を吹かして口を開いた。

 

「そりゃ儂はこれでも天帝んところの先兵じゃからのぉ。ちょいと冥界にお遣いじゃわい。――――テロリスト駆除ってやつよ。そこのグレモリーのお嬢さん方と同じさね」

 

初代は僕等を見て、目を細めて笑った。

そう、僕達はこの後市街地に出て旧魔王派の残党と戦う事になっている。

 

それはそうと、初代も今回の一件に力を貸してくれると言う事か…これほど心強い申し出もないけど……。

 

僕には一つ引っかかる事があった。

それを読み取った訳ではないけど、僕と同様の疑問をヴァーリが尋ねていた。

 

「…初代殿、天帝は曹操と繋がっているのだろう?京都の一件――――妖怪と帝釈天側の会談を邪魔した曹操と言う図式は天帝の中ではどういう位置づけになっている?」

 

そうだ。天帝は曹操と裏で繋がっていると、僕達はアザゼル先生から聞いている。

 

だけど、京都での一件はその関係と矛盾するものだった。

それが何を意味しているのか――――考えれば考える程に、謎に満ちていた。

 

ヴァーリのその質問に、初代は愉快そうに笑むだけだ。

 

「さーての。儂はあくまで天帝の先兵兼自由なジジイじゃてな。あの坊主頭のが武神どこまで裏で企んでいるかなんて興味もないわい」

 

その言葉に裏はない、そう感じられた。この方は基本的に悪意を持ち合わせていないだろうからね。

 

美猴と同様のイタズラ心に満ちたものは感じられてしまうが、少なくとも僕等への敵意は微塵も感じ取れない。

……それも卓越した仙術の技だと言ってしまえばそれまでだけど。

 

初代は顎に手をやりながら言う。

 

「ただのぅ、天帝は暴れんと思うぜぃ?これから先の事は分からんがねぃ。どちらかと言えば高みの見物だろうよぃ。ま、今回はハーデスがやりすぎたんだろうぜぃ」

 

――――ハーデス。

 

やはり、そこの暴走が今回の一件を操っていたと見て間違いないのか。……正直、天帝まで出てこられたら、冥界の危機は加速してしまう。

四大魔王全員と相対してやっと互角――――そう称されるほどの闘神なのだから。

 

しかも懸念材料はそれだけじゃない、今はこうして沈黙を保っている――――ファントム達の事もある。

今は一時も気の休まる状況じゃない、と言う事を改めて実感した。

 

初代は「さてと」と言い腰を上げた。

 

「じゃあな。表に玉龍(ウーロン)を待たせたまんまなんでねぃ。――――と、美猴はこれからどうすんだぃ?おめえさん達、各勢力からも禍の団からもお尋ねもんなんだろ?」

 

初代に聞かれ、美猴は首を捻りながらも、ハッキリと答えた。

 

「俺ぁヴァーリんとこに残るぜ。何だかんだでこのチームにも愛着湧いてっからよ」

「はい、私も皆様と共に行きますよ!アーサーお兄様は?」

 

相変わらず静かなオーラを漂わせるアーサーは何時もの笑顔のまま口を開く。

 

「英雄派に興味や未練は微塵もありません。今まで通りここにいた方が強者と戦えるでしょうから。少なくとも私は曹操よりもヴァーリの方が付き合いやすいと思いますからね。――――カイト、貴方は?」

 

アーサーが視線を向けた先には、目を瞑りながら壁に寄り掛かる天城カイトの姿が。

 

「…俺も同じだ、このチームにいた方が目的も達しやすいからな。で、お前はどうする気だ――――黒歌」

「っ」

 

片目を開けてカイトは部長の後ろにいた黒歌に質問を投げかける。

 

そうだ、彼女と小猫ちゃんはイッセー君のお陰で少しは仲直りが出来たって……でも彼女は。

 

「…なーに言ってるのにゃ?私は元々あんた達のとこから離れる気はないにゃん。私はお尋ね者だしー正義の味方の立ち位置何てむず痒いだけだしー……でも」

 

へらりと笑ってそう言っていた黒歌だったけど、徐々にその顔からは笑みが消えていった。

 

「…白音と昔のような関係にちょっとだけでも戻れた事は……嬉しい、かな。でもあの子には、今の私なんて」

「…………お前、随分背後に警戒しなくなったんだな」

「へ……!?」

 

全員の視線が黒歌の背後へと向かうとそこには――――小猫ちゃん達が立っていた。

 

「アーシア、小猫……」

「…姉様」

「…」

 

小猫ちゃんに問いかけられても、黒歌は黙ったきりだ。

だけど、小猫ちゃんに手を握られ、その体が小さく跳ねた。

 

「今の私は、まだまだです。でも、もうあの時の、守られるだけの私じゃありません」

「白音…」

「私は、待ってます。今よりもっと強くなって……先輩の様に姉様の弱さを受け止められるようになります」

「…白音、強くなったね」

 

黒歌は小猫ちゃんを抱きしめる。

蟠りも確執も、今の二人からは全く感じられなかった――――これが、本当の姉妹の姿なんだろう。

 

「…白音。あんたの惚れた男は、こんな事じゃ絶対に死なないわ。だから信じて、赤龍帝ちんを…待ってあげなさい。あんたの友達にも、そう伝えてあげな」

「…語弊があります」

「?」

「私“達”、じゃないんですか?……姉様も、イッセー先輩の事が、好きなんですよね」

「――――っ」

 

黒歌は小猫ちゃんの問いに顔を真っ赤にするが、やがて観念したかのようにこくりと頷いた。

 

「ならば猶更、残って待っていても良いのではないですか?」

「ヴァーリならその程度、とやかく言わんだろうからな」

「…あぁ」

「勝手に決めるなし、童貞戦闘狂ども!!」

 

珍しく顔を真っ赤にした黒歌は、ヴァーリ達男性陣に声を荒げて突っ込む……ホント、テロリストの一派だとは思えないや。

 

「ヴァーリ、君はどうするんだい?」

「兵藤一誠の仇を打つ…と言ったらどうする?」

「イッセー君は死んじゃいないよ。それに君らしくもない、そう吐き捨てただろうね」

 

それもそうだ、そう言ってヴァーリは小さく噴き出した。

 

「俺は出し切れなかった全力を振るって戦いたい、今は特に不完全燃焼でね。これをぶつける相手が欲しい所かな。まぁ、俺の狙いは豊富だからな」

「君らしいや。…でも、だからこそイッセー君が信頼してるんだろうね」

「……俺には、もったいないものだよ」

 

そうらしくない事を呟いた。

 

 

ーーーー

 

 

グレモリー邸を出発した僕達は、市街地で暴れていた旧魔王派の構成員と戦った。

手練れらしい者はおらず、僕達の敵ではない――――が如何せん数が多い。

 

だけど文句を言ったって数が減るわけじゃない、そう思い剣を振るっていると、見知った白髪の男が現れた。

 

「やぁ、暫くぶりだね。グレモリー眷属の諸君」

「…ジークフリート!」

 

英雄派の剣士、ジークフリート!

 

「何故ここに僕がいるか?と言う顔だね。なに、仕事の帰り道だからだよ」

「どうせロクな仕事じゃないんだろう?」

 

僕が迫りくる構成員を斬り伏せると、彼は肩を竦めて笑った。

 

「まぁ、君達からすればロクな仕事じゃないな。実は魔王――――アジュカ・ベルゼブブ様に同盟を持ち掛けたんだよ。まぁ断られちゃったけどね」

「何だって…!?」

 

現魔王相手に同盟を……しかもこの状況で持ち掛けたのか!?

 

「彼は同じ魔王であるサーゼクス・ルシファーとは違う思想を持っていて、しかも独自の権利だってある。何よりその異能に関する研究、技術は他を圧倒し、超越の域にあると聞いているからね。一度声を掛ければサーゼクス派の議員数に匹敵する協力者を得られると思ったのさ」

 

確かに、現魔王の派閥は大きく分けて四つある。

そしてその中で一番支持者が多いのはサーゼクス様、そしてアジュカ様の派閥だ。

 

現政府の維持と言う点では、両派閥は一応協力関係にあるけど、その下の細かい政治面では対立意見も多いと聞いている。

僕も知っているところだと、技術体系での意見の食い違いが目立っていた筈だ。

 

そして何より――――アジュカ様はサーゼクス様に唯一対抗できる悪魔である事、だろう。

あのお二方は前魔王の血筋から酷く疎まれ、そして畏れられるほどのイレギュラーな悪魔なんだ。

 

それに着目して恐らくは手を伸ばしたんだろうけど…………

 

「僕達の有している情報と研究の資料も提出すると言ったんだけどね、彼にとっては否定しなければならないものだそうだ」

「普通に考えればそうだろうけど……貴方の口調からはもっと違う理由があると感じるよ」

「目敏いね。彼にとってのサーゼクス・ルシファーとは『友』であるかららしい。彼が魔王を務めているから、自分も魔王を務めている、との事だ」

 

僕には分らない世界だけどね、とジークフリートは嘆息した。

…あのお二方には、二人だけにしか分からないものがあるのだろう。

 

「で、結局おめおめと帰って来たって事かい?」

「あぁ。ただ僕に同伴した旧魔王派の幹部クラスの構成員達が殺気立っていたからね。相手をしてもらっている……まぁ、直ぐに片は付いただろうけど」

 

それはそうだろう。あの方の全ての現象を数式、方程式で操ってしまう絶技に拮抗するのであれば、サーゼクス様クラスの実力者を引っ張ってこなければならない。

旧魔王派の幹部と言えど、相手にすらならないだろう。

 

「とは言え仕事に失敗してとぼとぼ返ってきたようじゃ、僕も部下達に示しがつかないのも事実。そう思っていたら、偶然君達のパーティにホイホイつられてきたと言う事さ」

「僕達になら勝てると?」

「…いいや。君は少し勘違いしているかもしれないけど、僕は君達の実力を軽んじちゃいない。いずれ放っておけば僕をも超える才能を有している。特に木場祐斗、君はね」

 

ジークフリートはそう言うと、僕に剣の切っ先を向ける。

 

「ここで全力を持って排させてもらおう。……けど、この魔剣グラムの全力は出したくても出し切れない。その理由は分かるだろう?」

 

僕は答えはしないけど、内心では首を縦に振る。

 

以前京都で斬りあった際にもその凄まじい力は犇々と感じていた――――けど、彼ではその力の全ては発揮できない。

 

伝承通りならば魔帝剣グラムは凄まじい切れ味を持った魔剣。攻撃的なオーラを纏い、いかなるものをも断つ鋭利さを持っている。

 

加えてグラムは龍殺しの特性がある……かの五大龍王『黄金龍君』ファーブニルを一度滅ぼすほどの力だ。

 

いわばこの魔剣はデュランダルとアスカロンの良い所だけを合体させたものなのだ。

 

だけど彼に宿った神器は龍種のもの――――つまり、グラムの全力を発揮すれば、自らをも傷つけ、最悪の場合滅ぼしてしまう。

 

「禁手状態で、こうやって攻撃的なオーラを完全に抑えて使用する分には切れ味があって強固な魔剣なんだけどね。それではこの剣の真の特性を解き放つことは出来ない。かといって力を解放すれば……禁手状態の僕は自分の魔剣でダメージを受けてしまう。こいつは主の体を気遣うなんて殊勝なことはしてくれないさ」

 

ジークフリートはグラムをくるくる回しながら、懐に手を入れた。

 

「グラムの力を使いたかったら禁手を解けばいい、だけどそれだけでは君達には対抗できない。ならば、禁手を解かずともグラムを使えるようにすれば良い。――――それが、これさ」

 

懐から手を出したジークフリートは――――ピストル型の注射器が握られていた。

あれは、あの時の……。

 

「あの時は使えずじまいだったけどね。これは旧魔王シャルバ・ベルゼブブの協力を受けて完成した、ドーピング剤だよ。神器のね」

「神器能力を強化すると言う事か」

 

「あぁ」と彼は頷く。

 

かの無限の龍神、オーフィスが生み出した『蛇』を神器に絡ませる事で所有者の様々な特性を無理矢理に引き出す実験をしているのは知っていたけど……そんな事まで研究していたのか。

 

「聖書に記されし神が生み出した神器。それに宿敵である魔王の血を加えたらどのような結果を生み出すかがこの研究テーマだった。かなりの犠牲を払ってしまったが、その結果、神聖なアイテムと深淵の魔性は融合を果たしたのさ」

「魔王の血を……!?」

「そう。――――そして今回は、僕自身にもドーピングを加えさせてもらっていてね。ではお見せしよう。これが……」

 

ジークフリートは注射器を首もとに近づけ――――挿入させていく。

 

僅かな静寂の後……ジークフリートの体に異変が起きる。

 

僅かな脈動が徐々に大きくなり、体が紫色の魔力に包まれ、異様に膨れ上がっていく。

ミチミチと、嫌な音を立てて背に生えていた四本の腕が太く肥大化していく。

 

五指も崩れ去り、手にしていた魔剣が手に同化していく……ジークフリートの顔も別の生物――――いや、怪物のような形相に変異していく。

 

そしてその顔は既に人のものではなくなり、鈍く鋭い眼光が光る。

 

 

そこにいたのは人間の剣士ではなく――――異形の怪物であった。

 

 

 

その胸には紫色の宝石が、妖しく輝きを放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジークフリートがファントムになった!!
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