ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
『どうだい、驚いただろう?』
くぐもった低い声でそう問いかけるのは、先程まで人間だった剣士、ジークフリート。
先程までとは違う、濃密なプレッシャーを発しながら、彼は眼光を輝かせる。
「それが魔王の血を受け入れた姿……いや、それだけじゃない。ファントムの力まで……!」
『へぇ、やっぱり知っていたのか。…そう、ファントム達と協定を結んだ際に貰ったんだよ。この魔宝石をね』
ジークフリートは胸の真ん中に埋められた魔宝石を指で小突く……その現象は以前にも見ていた。
堕天使コカビエル、悪神ロキ……何れの強敵達も、ジークフリートと同様の変化を遂げていた。
だけど彼の場合、魔王の血をも取り込んでいる。
どうなるのか全く予想がつかない……!
『この現象は「
「自分達の組織名も入れるなんて、随分と洒落ているじゃないか」
『ふふ、だろう?』
こうやって軽口を叩いてはいるが、僕は彼の予想以上の変化に戸惑いを隠せないでいる。
何せ人間であった彼が、魔力を得ている。
魔力は本来であれば、悪魔やファントムが持つ者だ。
なのに何故…そう思っていると、ジークフリートは僕に説明を始めた。
『ファントムの技術も中々馬鹿に出来なくてね。この魔宝石は埋め込まれた人間に強制的に魔力を宿させる事が出来る』
「強制的に…!?」
『この宝石が埋め込まれた人体のあらゆる個所に魔力が流通する特殊な経路が、宝石から張り巡らされる。その張り巡らされた経路を通じて、魔力がこの石から供給され、人間でも魔力を扱う事が出来る。本来であれば極稀に存在する魔力の素養がある人間――――ゲートと言ったかな?その人物を絶望させ、眠っている魔力を暴走させてファントムは産まれる。これは魔力回路を植え付けた影響で起こる副産物に近いものだそうだよ。だから堕天使であるコカビエルのみならず、神であるロキをもファントムへと変貌させれたと言う訳さ』
……強制的にファントムと同質の存在に変化させ、その力を齎すのか。
一体何故、ファントムはそんなものを…?
疑似ファントムとなったジークフリートが一歩足を踏み出す――――それだけでこの周囲の空気が一変し、瘴気が渦巻いていく。
――――来るッ!
そう判断した僕がその場から飛び上がると同時に、僕が立っていた場所から氷の鋭い柱が生まれ、更に地が抉れて次元の裂け目まで生じていた。
…各種魔剣の相乗攻撃か、少しでも反応が遅れていたら即死だったわけか。
前方からの異様な寒気を察した僕は、聖魔剣を複数生み出して前方へ向けて射出する。
だが剣は前方から生じた凄まじいオーラの奔流に飲まれて、塵も残さず消滅していった。
前方に視線を向けると、ジークフリートの手にはグラムが握られていた。
直撃ではないと言うのに、僕の体全体に攻撃的なオーラの余波が突き刺さり、全身が痛みを走り抜けていく……これがグラムの力か!
溜めを必要としない分、デュランダルよりも厄介だね……。
着地した僕は再び聖魔剣を創造し、彼へと詰め寄る。
周囲に滞空させた剣をマーキング代わりに全方位から攻撃を加えるが、ジークフリートはそれ等全てを的確に裁いていく。
『ッ!』
ジークフリートは鬱陶しく感じたのか、体全体から三日月状の魔力を放った!
何とかそれらを弾いていくが、当たらなかった一撃は周囲の建物を切り裂き、各魔剣が起こす現象が発生していた。
『今度は、僕から行こう』
ジークフリートが駆け出すと同時に――――グラムの切っ先を突き出す!
剣先から発された波動は剣呑なオーラと共に、僕が防御の為に召喚した龍騎士団を消滅させ、ジークフリートはそのまま僕へと斬りかかる!
グラムのみならず、彼が持つ他の魔剣は周囲の背景をあっという間に崩壊させていく。
唯一、彼が持つ光の剣は僕の造る光を喰う聖魔剣で無効化出来るけど、他の得物に関しては、躱すか剣で振り払うしかない。
「…それでもっ!」
僕は諦めず、聖魔剣を飛ばす!
『こう何度も同じ芸を見ると、つまらなさよりも鬱陶しさが勝ってくるねぇ』
ジークフリートはそれを振り払おうとするが、それらは全て爆発する!
爆風の煙を利用し、僕は剣戟を掻い潜って懐に聖魔剣を突き立てる!
この聖魔剣の特性は龍殺し!
如何に彼と言えど、それには抗えないだろう――――!
そう思っていた僕の幻想は、聖魔剣が砕ける音と共に砕け散った。
「ッ!?」
『…どうやら、強化された僕の肉体は、君の龍殺しの聖魔剣を越えていたようだ』
「――――ッ!!」
得意げに笑ったジークフリートは――――僕の腹にパンチを叩き込んだ!
「……っが!!!」
思ってもみない攻撃への驚きと、凄まじい衝撃で僕の顔は歪んだ。
そのまま僕の体は勢いよく吹き飛び、建物の壁にクレーターを作った!
『どうだい、ファントムの力は?と言っても、今の君にそれを応えれる余裕はないか』
せせら笑うジークフリートは、手に持った魔剣を僕へと振るう。
何とかその体制から持ち直した僕は、痛む体に鞭打ってそれを躱した――――筈だったが、虚空が歪み、魔剣の光波が僕の体を切り裂いていた。
夥しい鮮血が、宙を舞った。
「……ぐ、ぅ!!!」
ドサッ、っと僕の体は力なく倒れ伏す。
意識すらほとんど朧気になった僕の頭上に、何者かが歩み寄ってきた――――ジークフリートだ。
『呆気ないね。……そう言えば、君がいると言う事は、他のグレモリー眷属もいるのか。――――いや、赤龍帝はいないんだっけ』
「…ッ」
僕が顔を上げると、ジークフリートは僕を見下ろしていた。
表情こそ分からないけど、その眼光は僕を憐れんでいるようにも見えた。
『あぁ、そうか。君は知らないんだっけ。彼が戦ったアレ…シャルバはサマエルの血を受け取っていたんだ。そして赤龍帝はそれを機に姿を見せなくなった。彼はサマエルの力に耐えたと聞いてはいたけど、日に二度も受け続ければ、兵藤一誠と言えど耐えられなかったんだろう』
「――――」
……イッセー君が、死んだ…………?
『希望的観測は捨てる事だ』
不意に、以前白い魔法使いから言われた事が脳裏を過った。
「……そんな、事は…ないっ!」
僕は力なく立ち上がりながら、あらん限りの声で叫ぶ。
イッセー君は、絶対に生きている!
例え残照の希望だったとしても……僕達は、信じるっ!!
『そうか、まぁ確かに彼が生きている可能性だってある。それを信じるのは良い事だ。ならば――――今ここで彼の希望を、消し飛ばしておくとしよう』
ギラリ、と彼は僕へ凶刃を向ける。
『分かりやすく言おうか。君と、グレモリー眷属、そして彼の希望を殺そう……そう言っているのさ』
「――――」
彼は今、何と言った………?
『どうもファントムの力を得た影響なのか、彼の絶望するところも見てみたくなってね。君達や冥界の子供達、そして彼の愛する人が死んだと知った時、彼がどんな顔を見せてくれるのか、興味が湧いてきた。――――君はどうせそのまま放っておいても死ぬ。次はグレモリー眷属だ……赤龍帝がいない今なら、殺しやすいと言うものだ』
そう言うと、ジークフリートは背を向けて去って行く。
「待て……!」
僕は聖魔剣を杖代わりに、立ち上がる。
フラフラの体で、足元も覚束ない……正直、立っているだけでやっとだ。
だけど、彼をこのまま生かす訳にはいかない!!
『…呆れた根性だ。立っているのもやっとだろう?なのに何故立つ?君はどうせこのまま死ぬ……まぁ、早死にしたいのなら話は別だけどね。せめて苦しまずに逝かせてあげよう――――無駄死にしたであろう赤龍帝の様に』
無駄、死に………?
ぎりっと、僕は歯を食いしばった。
僕はあらん限りの声で、激情を吠えた。
「オオオオオオオオオォーーーーーッ!!!!!!」
怒りの感情を吐きだす、だがそれでも僕の中の怒りは消えない!!
『おや、君にしては随分と野蛮な叫び声だ。だけど、事実そうじゃないか。力を殆ど失ったオーフィスを守ろうとするあまり、後先考えずに突っ走って、結局この混迷した状況でも出てこない。無駄死にも良い所だよ』
「――――……イッセー君は、赤龍帝はッ!!!貴方が貶していい男じゃないッ!!!!僕の親友を――――馬鹿にするなァァァァッ!!!!!!!!」
そう叫んだ僕の体から、莫大なオーラが溢れ出た。
聖と魔のオーラが迸り、ジークフリートは僅かに後退する。
『何だ、この波動は……ッ』
「――――僕は、イッセー君が守りたい希望は本当に、眩しいものであると教えられたっ!!彼がいないのなら、僕がその希望を守る刃となると約束した!!」
――――なぁ木場。もし俺が何かあって立てなくなって、希望を守れなくなったときはさ。お前が俺の代わりに戦ってくれるか?
「僕はイッセー君の代わりにはなれないよ」
とある日の鍛錬の終わり、僕はイッセー君とある会話をしていた。
「俺の分まで、って事だよ。俺の方法なんて真似なくても良い……でも俺達はグレモリーの少ない男だからな。何があるか分かんねぇ。だから託すんだ」
そう言ったイッセー君は、僕に自分が守りたい希望を語ってくれた。
「先ずは身近にある希望――――グレイフィアやリアス達、おっちゃん。そして冥界の子供達。お前だって今はいない人達の想いを背負ってここまで歩んできてるんだ。だから、俺がいなくなったら、頼むぜ」
「…僕にも、出来るのかな」
僕はずっと、復讐の為に生きてきた……そんな僕が、希望なんて眩しいものを守れるなんて。
そう零した僕の背中を、イッセー君はバシッと叩いた。
「いっ!?」
「なぁーに言ってんだよ!お前のその刃だって、希望を守れるよ。だってお前……すげぇ優しいじゃんか。そんなお前だから、俺の後を任せるって言ってんだよ!」
「…立神君じゃないんだ」
「吼介は俺に頼まれなくたって多分派手にやってくれるからなー。お前だって俺の後を任せたいって思ってる一人だって事だ……頼んだぜ、ダチ公」
その時の彼の眩しい笑顔に、僕もつられて笑った。
――――そうだ。
「貴方が希望を汚そうとする絶望になると言うのならッ!!僕はそれを切り払う希望の刃になるッ!!!僕にだって希望は守れる――――そう僕の親友は、僕に教えてくれた!!!ならば応えるしかないじゃないか、そうだろう!?魔剣創造よッ、僕の想いに応えろォーーーーッ!!!!!」
僕の呼び声に応えるように、聖と魔のオーラが僕の体を包み込んでいく。
オーラが霧散していくと同時に、僕の体に鎧が装着されていく。
やがてそれは全身にも及び、顔もマスクのようなものに覆われていく。
やがてオーラの嵐が止むとそこには――――
『…何だ、その姿は………!?』
ジークフリートが驚愕の声を上げる。
全身を覆う禍々しい赤紫を基調とした鎧、風に靡く漆黒のマント、悪鬼の如きマスクに、そのマスクから生える湾曲した角。
まるで魔王のような姿をした僕が、そこにいるのだから。
『力が大きく増している……あの瀕死の状態で、どうやって!?』
「――――そうか」
この波動は……イッセー君のものと同じだ。
――――ありがとう、魔剣創造。
「今名付けよう。――――極手、『
『…兵藤一誠と同じ領域に至ったと言う事か!!』
そうだ、でも練度で言えばイッセー君以下。
だけど伸びしろはいくらでもある――――今この瞬間に扱える、それが重要だ。
僕は狼狽するジークフリートに向けて手を翳す。
すると、彼の体に黒い霧のようなものが纏わりつき、彼を縛り上げた!
『ぐぅ!?な、んだ、これは……!――――うぉっ!!』
翳した手を上に向けると、それに合わせるようにジークフリートの体も宙に浮かび上がる!
僕は左右に手を振れば、ジークフリートも縛られたような格好で周囲の瓦礫軍に叩きつけられる!
『ぐぉぉぉっ!!!』
「…ふっ!」
『ガハッ!!!』
最後に手を振り下ろし、ジークフリートを地面に叩きつける!
大きなクレーターを作りながらも、ジークフリートは立ち上がる。
『…凄まじいパワーアップだ。もはや騎士と言うよりは魔王…いや、魔王の力を身につけた騎士と言うべきか?だがっ!!』
ジークフリートは目を輝かせながら僕へと駆け出す!
『身重の状態でそんな鎧を纏えば、まともに動けまいッ!!』
「――――」
僕は手元に聖魔剣を一本創り、彼へと向かう。
そよ風の様にジークフリートの横を駆け抜けた――――刹那、彼の肉体に切り傷が生まれていた。
『――――馬鹿な。動きが、見えない……ッ!!』
「確かに身重にも見えるだろうね。…でも、違うんだよ」
この鎧に重さは殆どない、寧ろ僕の速度を普段の何倍にも高めてくれる。
それでいて素の状態よりも防御が厚い……防御の薄かった僕としては、丁度良い塩梅の強化だ。
再び僕が手を翳すと、ジークフリートの背後にグレモリーの魔方陣が現れる。
彼が気付いた時には、既に魔方陣に拘束されてた!
『ぐっ、ガァァァーーーっ!!!』
魔方陣から発せられる電撃が、ジークフリートの身を焼き焦がす!
全身から煙を上げる彼の周囲に、幾重もの聖魔剣の包囲網が生まれる。無論、僕が発生させたものだ。
君は彼の――――僕達の希望を潰すと言った。
ならば――――
「容赦はしない。――――
僕は開いていた手を握ると、ジークフリートの周囲を滞空していた聖魔剣が一斉に彼の体を突き刺す!
逃げようとしても、魔方陣の拘束が彼の逃走を防ぐ……だが、ジークフリートは魔宝石を中心に魔力を全方位に展開、魔方陣の拘束ごと、聖魔剣を消し飛ばした。
『ハァ、ハァ……ッ!!ここまで力が上がると、言うのか…!?出鱈目過ぎる!!ならば…』
「っ!」
グラムで来る気か…!
身構えた僕の目の前で、グラムが輝きを放つ!
だけど、その輝きの中に先程まで相対してた時の攻撃的な感じはない。
寧ろこれは――――
「僕を、迎え入れてくれるのか……?」
『――――っ、グラムが!魔帝剣が呼応している!?
仰天している様子のジークフリート。
彼がここまで焦りを見せるとは……この土壇場で最強の魔剣は、持ち主を再び選定し始めたと言うのか。
僕はグラムの輝きを見据え、言の葉を紡いだ。
「――――グラムよ。君が僕を選定に含んでくれたのなら、僕を選ぶと言うのなら、僕は君を振るう剣士になろう、来いっ!!」
その言葉に反応したグラムは、持ち主のジークフリートを拒絶するかのように輝きを増し、彼の握っている手を焼き焦がしていく!
『ぐぅっ!!!』
その痛みに耐えかねたジークフリートは、グラムを手放してしまう。
そうして放り投げられたグラムは、僕の手元に吸い寄せられるように収まった。
…握っただけでも、凄まじい力だと伝わる。これが、魔剣の帝王。
『…まだだ。例えグラムがなくとも、僕は英雄の子孫として――――』
アオーン!!!!
言いかけたジークフリートの言葉を遮るように、この場に獣の遠吠えが響き渡った。
この感じは……
『ワンワン!!(木場の兄ちゃん!!)』
「ハティ!」
この子はイッセー君の使い魔のフェンリル、ハティ!
どうしてこの子が…そう思っていると、ハティの全身が輝き、僕の左手に収まる。
光が晴れると、ハティは以前見た事のある、細い日本刀に姿を変えていた。
『グレイフィアのねーちゃんに言われたんだ!リアスねーちゃん達を助けて来いって!グレイフィアねーちゃんの所は少し落ち着いたから、スコルと一緒に来たんだー!』
「そうなんだ…」
『そしたら木場の兄ちゃんの様子を見てきてくれってリアスねーちゃんに言われたから、来た!そしたら兄ちゃん、なんかクライマックスっぽいじゃん!だったら俺もビューン!と力を貸しに来たって訳!』
「そっか…ありがとう」
僕はグラムを一旦宙に浮かせ、剣の鍔部分を撫でる。
するとグラムがちょっとちくっと刺さる程度のオーラを向けてきた。……嫉妬している、のかな?
「ごめんごめん。じゃあ、グラムとハティ…一緒に行こうか!」
『うん!』
ハティの声に合わせて、グラムの光は強くなった。
僕はダッと駆け出すと、残る魔剣を振るおうとしたジークフリートの四本の腕を斬り落とす!
グラムによって斬り落とされた龍の腕は地に落ちる事無く崩壊し、ハティの変化した刃に落とされた腕も、斬られた端から消滅していった。
…以前と違って、ハティの刃の力を抑えられてる。
この状態であれば、君の力も存分に振るえる!
『ッ!!』
「これで終わらせる。ジークフリート……ッ!!」
僕はマントを翻しながらその場で回転する。
回転が終わると、赤紫の竜巻が巻き起こり、ジークフリートに襲い掛かる!
『ッ、ァァァアッ!!!』
満身創痍であったジークフリートは、成す術なく竜巻に捕らわれる!
僕はグラムとハティの刃をクロスさせると、両方の剣から発せられるオーラが僕の右足に集中する!
渦と共に宙に舞い上がるジークフリートの体を見据えて、跳躍!
「これで――――フィナーレだっ!!」
竜巻から解放されたジークフリートの肉体に、右足が突き刺さった。
『――――ッ!!!!!』
声にならない悲鳴を上げながら、ジークフリートは地に落ちる寸前、嘗ての自分の件であったグラムへと手を伸ばした。
が、グラムはその手を拒絶するかのように光を放った。
着地した僕の背後に、ジークフリートの体は墜落した。
振り向くと、彼の肉体は元に戻っていた――――見れば、体の中央に埋め込まれていた魔宝石に、皹が入っていた。
「…そう言えば、何故フェニックスの涙を使わなかったんだ?君達英雄派は独自のルートで入手していたんじゃ……」
彼等は京都での一銭でフェニックスの涙を使用していた。
でも今回の戦い、ジークフリートは全く涙を使う様子を見せなかった。
ジークフリートは僕の質問に対し、首を横に振る。
「…この状態になると、フェニックスの涙での回復を受け付けなくなってしまう……。…理由は、未だに不明だけどね………」
…この強化状態にそんなデメリットがあったのか。
つまり彼等は極度のパワーアップと引き換えに回復の手段を捨てると言う事だ。
この情報は、決して小さくはないと思う。
「…やっぱり、あの戦士育成機関で育った教会の戦士は……まともな生き方も、出来ないのさ……」
ジークフリートはそう言うと、静かに目を閉じた。
「……傷が」
英雄派、ジークフリートとの激戦を制した僕は、ふと自分の傷が癒えていた事に気付いた。
……もしかして、あの鎧が?
「………回復したのなら、それはそれで良いか」
今は気にする事じゃない、そう結論付けると僕はその場を去ろうと背を向ける。
すると、背中越しにほんのりと温かい光を感じた。
「…これは」
振り返ると、そこにはジークフリートが所有していた四本の魔剣が僕に向けて光を放っていた。
そのどれもが、僕を迎え入れるかのように――――
「――――行こう」
僕はそれぞれの魔剣を手に取ると、部長と合流するため走り出した。
ーーーー
「……フフ、全ての魔剣に愛想を尽かされた、か。………異形に手を出したが故の、咎…かな………」
木場祐斗が立ち去って暫くの後、ジークフリートは目を覚ました。
だが彼は、己の死期を悟っていた。
もう自分は、助からない――――
その間際に彼は、ぼんやりとする意識で、木場祐斗が自分の魔剣に選ばれた瞬間を見ていた。
悔しくもあった、だが当然だろうと、同時にそう思っていた。
人間のままであれば、魔剣達も見限りはしなかったのではないか、冷静になって、そう感じていた。
だが過ぎた事を悔やんでも仕方がない。
「…死ぬ間際に悟るとは、本当に……救えない、なぁ………」
自嘲気にそう呟くジークフリートだったが、突然首を掴まれ、持ち上げられた。
「ぅっ………ハハッ、やはり、そう来るか………」
『…』
初めから分かっていたかのように笑うジークフリートをファントム――――ガルムは無感情に見上げる。
『…これは必然だ。所詮貴様等人間は、あのお方の筋書きでは唯のカンフル剤に過ぎん。ウィザードのな』
「…!」
そう低い声で呟くガルムは、両肩の獣の口を開く。
「………曹、操……ッ!」
自分達のリーダーであり、友とも呼べる、そんな存在の男の名を呟いたのを最後に、ジークフリートの意識は――――消えた。
後に残ったのは、口元を血で濡らしたガルムだけであった。
『
禁手、双覇の聖魔剣が覚醒した極手。
全身を守る鎧として発現する。色は赤紫。色に関しては魔剣創造の禁手の覚醒状態なので、少し邪悪っぽい色になった。
鎧を纏っている事で重鈍になっていると思われるが、この鎧は木場の持ち味である速度を更に活性化させる機能を持つ。
その為最低限度の厚さではあるが、決して脆弱ではなく、基本状態から防御力が飛躍的に向上した。
聖魔剣の創造の他にも、魔法攻撃や魔術を扱えるようにもなっており、それらを絡めた変幻自在の剣術で戦う。
魔方陣で相手を拘束、マントをドリル状にしての攻撃、聖魔剣に瞬間的に魔法無効化能力を宿したり、竜巻を発生させ操ったり……種類を問わない搦手を使う
現状では消耗は大きく、聖剣創造に切り替えると、消耗を突かれる危険性アリ。
元ネタはファンタジーゲーマー。
鎧の形状は赤龍帝の鎧をベースにファンタジーゲーマーを被せた様な感じ。
故に正義の味方とは程遠い魔王チックな姿が目を引く。
と言うか一部の戦い方が正に魔王。
次回、多分主人公が出ます。
結局こんな異形の力(魔人化、メデューサの眼とか)に手を伸ばす時点で人間のまま、と言う至上目的から思いっきり脱線してるのに何も思わないんですかね、英雄派って。
でも終盤で気づけていた辺りはまだ、救いはあるのかなと。