ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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平ジェネ、見てきました…………多くは語りません。

仮面ライダーが好きな人、見なさい!
僕から言えるのは、それだけです



*感想コメントに平ジェネに関してのネタバレになりそうなコメントをなるべく書かないよう、皆様のご協力をお願い致します。まだ観ていない方への配慮のため……まぁもう広告されちゃってるけども

イッセー「フレイムの癖に水操るとか俺の立場ないじゃんか」
ドライグ『ウィザード(笑)』

あ、今回の話はイッセーが戻ってくる直前の木場君サイドの話です



MAGIC148『徹底抗戦』

 

 

木場side

 

 

「首都で暴れまわっていた旧魔王派の残党を一通り屠ったところでな、遠目に黒いドラゴン――――匙元士郎の姿が見えたのでな。助太刀させてもらったと言う訳だ」

 

そう言って、サイラオーグ・バアルはヘラクレスに視線を向ける。

ヘラクレスも彼からの戦意を受けて、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「バアル家の次期当主か。知ってるぜ?滅びの魔力が特色の大王バアル家で、滅びを持たずに生まれた無能な次期当主。悪魔の癖に肉弾戦しか出来ないっていうじゃねぇか。ハハハ、そんな訳の分からねぇ悪魔なんざ初めて聞いたぜ!」

 

ヘラクレスがそう煽るも、サイラオーグ・バアルは微塵も表情を変えなかった。

 

この程度の戯言は、彼の半生から察するに幾重にも浴びた罵詈雑言の小さな一つに過ぎないのだろう。

 

「…英雄ヘラクレスの魂を引き継ぎし者」

「あぁ、そうだぜバアルさん」

 

ヘラクレスの方にゆっくりと歩を進めながら、サイラオーグ・バアルは断ずる。

 

「――――どうやら、俺は勘違いをしていたらしい。貴様のような弱小な輩が英雄の筈がない」

 

それを聞いて、ヘラクレスの額に青筋が浮かぶ。…今の一言で彼のプライドが沸き立ったのだろう。

 

「へっ、赤龍帝との殴打戦を繰り広げたらしいじゃねぇか。だっせぇな。悪魔っていや、魔力だろ。魔力での超常現象こそが悪魔だと言って良い。赤龍帝は魔力を持ってるってのに、泥臭い殴り合いを演じやがってよ」

「……」

 

ヘラクレスの煽りが続く中でも、サイラオーグ氏の眉は一つも動かない。

 

「元祖ヘラクレスが倒したっていうネメアの獅子の神器を手に入れてるっていうじゃねぇか。――――皮肉だな、俺と会うなんてよ。それを使わなきゃ俺には勝てないぜ?」

「使わん」

「は?」

 

そう断じたサイラオーグ氏の発言に、更に青筋を浮かび上がらせるヘラクレス。

 

「貴様如きに獅子の衣は使わん、そう言っている。贔屓目に見ずとも、貴様が赤龍帝よりも強いとは思えないからな」

 

サイラオーグ氏の発言に、ヘラクレスは哄笑を上げる。

 

「ハハハハ!俺の神器で爆破できないものはねぇよ!!例え、あんたが闘気に包まれていたってなァ!!俺の神器にかかれば造作もねぇッ!!」

 

ヘラクレスが飛び出し、手に危険なオーラを纏わせると、サイラオーグ氏の両腕を掴んで――――神器による爆破攻撃を始めた!

 

爆音と共にサイラオーグ氏の両腕が爆ぜる!

体の表面だけだけど、サイラオーグ氏にダメージを与えた!やはりヘラクレスの攻撃は侮りがたい!

 

「成程――――こんなものか」

 

肉が爆ぜ、血が噴き出る程のダメージを負っても、彼は一切表情を変えなかった。

 

「へへへ、言ってくれるじゃねぇか。じゃあ、これならどうよっ!?」

 

そのまま路面に向けて拳の連打を繰り出した瞬間、路面ごと大規模な爆破が起こり、サイラオーグ氏を包み込む!

 

二人が相対している路面はその一撃により完全に崩壊し、瓦礫の山となってしまった。

瓦礫の上でヘラクレスは再び哄笑を上げる。

 

「ハハハハハハッ!!ほら見たか!何も出来ずに散りやがった!これだから魔力もねぇ悪魔は出来損ないってんだよ!たかが体術しか出来ねぇ奴が――――」

 

そう笑い声をあげていたヘラクレスの表情は、徐々に驚愕に染まっていき、やがて笑い声すらも出なくなった。

 

煙が晴れた車道の中央で、その男は――――何事もないように立っていた。

 

「――――こんなものか?」

 

一切表情を変えず、微塵も揺るがない闘気を目の当たりにしたヘラクレスの表情には、軽い戦慄が走っていた。

 

「…舐めんじゃねぇ、クソ悪魔がッ!!」

 

毒づいてはいるが、先程までの余裕にはどこか陰りが見える。そのヘラクレスへ、サイラオーグ氏はとうとう進撃を始める。

 

「英雄ヘラクレスの魂を引継ぎし人間と言うから、少しは期待したのだが……どうやら、俺の期待はことごとく裏切られたようだ」

 

ヘラクレスが再び両手を構えるが――――サイラオーグ氏の姿が瞬時に消えた!

 

その一瞬の間に、サイラオーグ氏の姿は、ヘラクレスの正面にあった。

あくまで正面から……!

 

「俺の番だ」

 

 

ドズンッ!!!

 

 

重く、低く、鋭い大王次期当主の拳打がヘラクレスの腹部に深々と突き刺さった。

その一撃から生じた衝撃は、ヘラクレスの体を通り抜けて後方のビルの壁を難なく破壊する。

 

「――――ッ!!」

 

予想以上の破壊力だったのか、ヘラクレスは当惑した表情を浮かべて、苦悶に包まれていった。

 

膝を付いて、腹部を抑えるヘラクレス。その口からは血反吐が吐き出された。

 

…あの一撃を食らった事のある僕だから分かる。あれを生身で受けて無事な者はそういない。

 

たったの一撃で、形勢が逆転した……ロスヴァイセさんの絶大な魔法攻撃ですら、彼に致命傷を与えられなかったと言うのに、この男の一撃はそれを容易に破壊していく。

 

「どうした。今の一撃はただの拳打だ。お前が馬鹿にした赤龍帝はこれを食らっても一切怯む事無く、立ち向かってきたが?」

 

それを聞いたヘラクレスは、くぐもった声音で不気味な笑い声を発した――――と同時に、激情に駆られた憤怒の形相で立ち上がった。

 

「……ふざけるな……ッ!ふざけるなよクソ悪魔如きがよォォォッ!!!魔力もねぇ!神器も使えねぇ!ただの打撃でこの俺が――――」

 

激昂するヘラクレスと共に、全身を光が覆っていき、次々とミサイルのような突起物が形成されていく!

 

「やられる訳ねぇだろうがよォォォォォォォッ!!!!!」

 

怒号を上げながら、ヘラクレスは全身のミサイルを縦横無尽に射出していく!

 

自前の魔方陣で防御する僕等の目の前で、サイラオーグ氏は怯む事無く真っ直ぐに飛んでいく!

 

「ふんっ!!」

 

サイラオーグ氏は神器で生み出されたミサイルを、あろうことか拳だけで弾いて吹き飛ばしていく!

彼に向かっていくミサイルは、あらぬ方向へと飛んで行っては空しく散っていく。

 

だが、撃ち出されたミサイルの一つが、避難を始めていた子供達の元に飛来していく!不味い、あれが当たったら――――!

 

 

だけど、その心配は杞憂に終わった。

 

ミサイルが迫る寸前に、ロスヴァイセさんが割って入ったのだ。

ロスヴァイセさんは前方に強力な防御魔方陣を展開させて、ミサイルの爆撃を完全に防ぎ切った!

 

京都では押されていたロスヴァイセさんの防御力が、増している!

 

「――――新しい防御魔法です。私は『戦車』ですので、それならば特性…防御力を高めようと思いまして。故郷で強力な防御魔法はあらかた覚えてきました。特性を生かしつつ魔法を使えば禁手化して破壊力に特化した神器の攻撃でも余裕で耐えられるようです。これは大きな成果ね。――――ヘラクレス、貴方の攻撃はもう私には効きませんよ。この十倍の威力でも防ぎ切ってみせましょう!!」

 

あのヘラクレスの一撃を簡単に制したのならば、相当な向上があったのだろう……イッセー君、君がいない間に、グレモリー眷属はどんどんパワーアップして言ってるよ!

 

「…くっそがぁッ!!」

 

怒りと屈辱で全身を震えさせるヘラクレスは、懐からピストル型の注射器を取り出した!

『魔人化』をする気か……!

 

「……ッ!」

 

注射器の先端を首元に持っていくヘラクレスだが、その手つきには迷いが見受けられた。

 

 

――――そんな時だった。

 

 

『……』

 

ヘラクレスの背後から、三つの獣の頭部を持つ怪物が姿を現した。

あれは…

 

「ガルム!」

「む?…奴がファントムと言う魔物か」

 

僕は無言で頷く。ヘラクレスも、自分に歩み寄るガルムに気付いたようだ。

 

「てめぇ、何の用だ…!?」

『…奴らに勝ちたいのであろう?ならば何故、己を強化しない?』

「っ……るせぇ!テメェは引っ込んで――――」

 

そう食って掛かったヘラクレスにガルムは手を翳す。

すると、ヘラクレスの胸部から怪しい光が溢れてくる!

 

「ぐ、がぁぁぁぁあああああああああーーーーー!!!!!!」

 

胸部から溢れる、人間である彼にある筈がない魔力が体を覆っていく。

魔力が全身に行き渡っていくにつれ、人らしい面影は見る見るうちに消え去って行き、魔力による浸食が終えた時――――

 

 

 

『ォォォォォオッ……!!』

 

暗い緑色が特徴の、屈強な魔人がそこに立っていた。

 

「人間が、魔力を得たのか……?」

 

サイラオーグ氏も、目の前で起きた光景に目を疑っている様子だった。

 

その気持ちは分かる、僕も初めて目にした時は驚きに包まれたからね……。ガルムは特に何も言わず、ただ一言……命じた。

 

『…行け』

 

その言葉に従うかのように、ファントムとなったヘラクレスは突起の生えた棍棒を振りかざして此方へと駆け出してくる!

 

『ウォォオッ!!』

 

ヘラクレスが棍棒を振りかぶった瞬間、僕等目掛けて爆風が襲い掛かった!

 

「ぬっ!」

『オォッ!!』

「サイラオーグさん!!」

 

爆風を気にも留めずサイラオーグ氏に突っ込んで殴りかかるのを見て、僕はすかさず魔方陣でヘラクレスを拘束……したが、ヘラクレスは強引に拘束を引き千切った!

 

「っ…ハァァッ!!」

『ゴアアっ!!』

 

ヘラクレスの攻撃が決まるより早く、サイラオーグ氏の拳がヘラクレスを吹き飛ばした――――

 

 

『ッ!!』

「!」

 

っ、押し留まった!?

さっきとは耐久力が全然違う!!

 

「先程とはまるで違う……これが異形になったが故の力か!」

『オォォォォーーーーッ!!!』

「「!」」

 

ヘラクレスは咆哮を上げ、全身から棘のようなミサイルを撃ち放った!

直ぐにそれを聖魔剣で撃ち落としていく中――――何処からか飛んできた魔力の弾丸がミサイルの半数を破壊した!

 

『!』

「一体誰が……」

 

魔力弾が飛んできた方角を見るとそこには……

 

 

 

「よぉ、大食い野郎」

「立神君!」

 

イッセー君のライバルこと、立神君がそこに立っていた。

 

『…アーキタイプか。何の用だ』

「何の用……知ってるだろ?テメェ等を喰いに来たんだよ」

《ドライバーオン!》

 

立神君は怒りを感じさせる声音でそう呟くと、ベルトを展開、指輪を嵌めた手を天に掲げる。

 

「変、身っ!!」

《セット!オープン!L・I・O・N!ライオーン!》

『グガァッ!!』

 

迫りくるヘラクレスを魔方陣が弾き、立神君はビーストに変身!

ベルトから細身のサーベルを引き抜くと、果敢にヘラクレスへと斬りかかる!

 

「はっ、おりゃ!」

『オォォーーー!!』

「うおっと!」

「ッ!」

 

立神君が後ろへと飛んだ瞬間に、ヘラクレスが飛び込んだ位置に聖魔剣を咲かせ、ヘラクレスを突き刺す!

ヘラクレスは一瞬怯むが、それすら構わずに此方へと突っ込んでくる!

 

「ぬんっ…!!」

『――――ッ!!!』

 

ヘラクレスの懐に現れたサイラオーグ氏の拳がヘラクレスを吹き飛ばした!

 

「木場!」

「あぁ!」

 

あれほど暴走した状態だ、これだけで終わる筈はない!

 

立ち上がったヘラクレスの頭上に聖魔剣を大量に生成、容赦なく降らせる!

 

『ウゥ……ガァァァァッ!!!』

 

対するヘラクレスはミサイルを全身から射出、全てを撃ち落とした!……けど、全てを撃ち落とす事は出来なかったようだ

ヘラクレスの体には幾重もの切り傷が生まれていた。

 

『オォアァーーーー……ッ!!!』

「どんだけタフなんだよ!?終わりが見えねぇぞ!!」

 

立神君がそう評した通り、ヘラクレスはどれだけダメージを負おうとも全く倒れる気配がない!

まるで神話に登場する狂戦士の様だ……!

 

『ソイツを止めるには中央部の魔法石を砕くしかない。若しくは…私を倒すか。ソイツを制御してるのは私だからな』

「…?止める方法を教えるのか?」

 

何で此奴がそれを僕達に……けど、このままヘラクレスを暴れさせるわけにはいかない!

 

「落とさせてもらおうッ!!」

『ゴアアッ!!』

 

サイラオーグ氏の拳のラッシュを受けても尚、ヘラクレスは倒れる気配がない!

ヘラクレスは受け身を取りつつ立ち上がり……その視線を、子供達へと向けた。

 

『ヴゥゥ……ァアッ!!!!』

 

そしてヘラクレスはあろう事か、子供達の方へと走っていく!

 

「やらせるかっ!?」

『……』

 

ヘラクレスを止めようとした僕の四肢が、一瞬の間に石化した……ガルムか!

僕が視線を向けた先には、サイラオーグ氏に爪を突き立てつつ瞳を妖しく輝かせるガルムの姿が……!

 

「やらせるかっての!」

 

立神君が寸での所で間に合い、ヘラクレスを蹴り飛ばす!

そして時を同じくして、サイラオーグ氏の拳がガルムを後退させたところだった!

 

「大丈夫ですか!」

「あぁ、問題ない……む?」

 

一息ついたサイラオーグ氏のや僕の耳に、とある歓声が届いてきた。

 

「ライオンさーん!頑張ってー!!」

「負けるなー、ダークネス・ナイトシュガー!!」

「マヨライオーン!!」

 

……僕達を応援する、子供達の声だ。

 

「「「………」」」

 

思わずキョトンとする僕達……でも、不思議と体に活力が漲ってくるのを感じた。

 

「…フハハハハ!成程、これが子供達の応援と言うものか!これは……良いものだな!」

「はい!」

「あのー…マヨライオンって、俺の事か?いや、まぁ良いけどよ………けど、不思議と負ける気がしねぇぜ!!」

 

マヨライオン……雑誌に載っていた新しいウィザードラゴンの仲間の事だ。

マヨネーズ好きの立神君としては願ってもない名前だね……本人は微妙そうだけど。

 

「よっしゃ行くぜぇ!!」

《ハイパー・ゴー!ハイッ・ハイッ・ハイッ・ハイパー!》

 

立神君も威勢よく吠えたて、パワーアップする!

それを見ていたガルムは、目を妖しく輝かせる……ヘラクレスを操るつもりか!

 

だが………

 

 

『……ッ!』

 

ヘラクレスは、動かなかった。

いや、これは……

 

「奴の支配に抗っているのか……」

 

そう、サイラオーグ氏の言う通り、ヘラクレスはガルムの命令に抵抗している様子だった。

……この瞬間に、自分の意志を取り戻したと言うのか?

 

『チッ、まだ制御に関しては甘い部分があるか。……まぁ良い』

 

ガルムはそう吐き捨てると、虚空へと姿を消した……今なら、ヘラクレスを倒せるかもしれない!

 

「サイラオーグさん、立神君!」

「あぁ!!」

「皆まで言うなって!!」

《ハイパー!》

 

立神君は銃に指輪を嵌めて、銃身に魔力を集中させ、サイラオーグ氏は拳に闘気を集中させる!

そして僕も、赤紫の魔力を右足に集約させる!

 

「――――これでっ!」

《マグナムストライク!》

 

魔力で形作られた獣がヘラクレスを貫き、間を置かず僕の飛び蹴りが命中――――そして、

 

「フィニッシュエンドだッ!!!!」

 

闘気の獅子が、暴走する狂戦士を食らい、飲み込んだのだった――――。

 

 

「「「子供達の声援すら貰えない奴等が、英雄を名乗るな……!!」」」

 

既に彼の耳には、届いていないのかもしてないけど……僕達はそう言い放つのだった。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「後は……そこの眼鏡野郎だけか」

 

僕達がヘラクレスを倒し、朱乃さん達がジャンヌを戦っているので――――立神君の言う通り、残る相手はゲオルクだけだ。

 

「…強い、これが現若手悪魔か。バアルのサイラオーグ、古の魔法使い、立神吼介。そしてリアス・グレモリー率いるグレモリー眷属。まさか、先日越しだと言うのに力を更に増してくるとは……。この調子では、そちらの猫又やヴァンパイア燃えている情報通りにはいかないな」

 

グリゴリに言っていたギャスパー君は兎も角、小猫ちゃんに関してはこれからだろう。

話を聞く限りでは、お姉さんの黒歌から仙術と妖術を習うそうだ。…イッセー君のお陰で、少しではあるが歩み寄る事が出来た実の姉から教わるのだ、得られるものは大きいだろう。

 

ゲオルクに視線を向けられていたギャスパー君は……何故か顔を青ざめさせていた。

 

「…ギャスパー、どうしたの?」

 

ギャスパー君の変化に気付いた部長は怪訝そうにしていたが、ギャスパー君は次第に表情を崩していき……そしてぽろぽろと涙を流し始めた。

 

どうしたんだ、ギャスパー君……?

 

「…すみません、皆さん!…僕……僕っ!グリゴリの研究施設に行っても……強くなれなかったんです!」

 

 

――――っ!

 

ギャスパー君のその告白に、この場にいる全員が驚いた!

 

「皆さんのお役に立ちたかったから……強くなりたかったのに!……今のままではこれ以上、強くなれないってグリゴリの方に言われて……っ!」

 

……今のままでは?僕はその言葉に、違和感を覚えた。

 

その言葉を信じるなら、何か他に別の要因が必要なのか……?

そう思っていた僕の眼前で、ゲオルクはつまらなさそうに息を吐いた。

 

「亡き赤龍帝もこの後輩の情けない姿を見たら浮かばれないだろうな」

 

その一言を聞いたギャスパー君は――――顔だけをあげた。

 

「…亡き…赤龍帝……?」

 

ギャスパー君は周囲を見渡す……そうだった、ギャスパー君だけイッセー君がいない理由を知らないんだ。

 

「…部長、イッセー先輩は?……先輩は、あの大きな怪物を止めに言ってるからじゃないんですか……?」

「ギャスパー、イッセーはね――――」

 

言いかけた部長は、サイラオーグ氏の視線を受けて口を噤んだ。

お二人は、一体何を……?

 

「そうか。君は知らなかったのか。赤龍帝は現在、行方不明になっているんだよ。この数日、彼の気配を感じとることが出来ない上に彼の姿を誰も確認していない。話に聞けば赤龍帝が最後に戦った旧魔王シャルバはサマエルの血を所持していたという。そうなれば赤龍帝がどうなったのか、何となくの予想はつくだろう?彼はサマエルの呪いを受けて死んだ……如何にサマエルの呪いを一度は耐えた彼でも、二度目はなかったと言う事だ」

 

…英雄派の中では、どうやらイッセー君は死んだと言う事らしい。

 

僕達はイッセー君の生存を信じている……だけど、確固たる証拠はない。

白い魔法使いの言う通り、希望的観測は持たない方が良いのかもしれない…でも、例えわずかな可能性でも、僕達は信じ続ける。

 

それをギャスパー君に伝えないと言う事は……

 

「おい…もしかして」

 

立神君も、どうやらサイラオーグ氏が目論んでいる事を察したようだ。

そして当のギャスパー君は、見る見るうちに顔を絶望に覆わせていく。

 

「……イッセー先輩が、死んだ………?」

 

呆然とするギャスパー君の頬を、一筋の涙が伝い、全身を震わせて顔を伏せる。

 

だけどギャスパー君は、徐々に体を上げ、伏せた顔をも上げた。

 

 

「……ッ」

 

僕は思わず、息を呑んだ……ギャスパー君の表情には、感情が籠っていなかった。

その瞬間、ぞくりと僕の背を悪寒が走った。

 

《―――死ね》

 

ギャスパー君の口から発せられたのは、彼のものとは思えないほど低く、呪詛に満ちた声だった。

 

 

その瞬間―――――全てが黒く染まった。

 

 

 

いや、黒ではない。それを遥かに通り越した暗黒と言える空間。

暗く、冷たく、光すら消滅してしまうほどの闇。

 

闇がこの区域全てを包み込んだのだ。

 

ギャスパー君の体から暗黒が滲み出ていき、周囲を黒く染めていく―――――

 

「何だこれは……!?暴走ッ…禁手……いや違う!これは、ヴァンパイアの力なのか……!?だがこれは、あまりにも異常すぎるッ!!」

 

この現象を目の当たりにしたゲオルクは、ただただ驚くばかりであった……それは僕達も同じだ。

禁手や、極手とも違う……何なんだ、この空間はッ!

 

暗黒の領域と化した中央でより一層闇に包まれた人型が異様な動きを見せる。

首をあらぬ方向に折り曲げ、肩を痙攣させ、足を引きずりながらゲオルクとの間合いを詰めていく。

 

その双眸は赤く赤く、闇の中でも不気味に輝いていた……。

 

《コロシテヤル……!オマエラ全員、僕がコロシツクシテヤル……!》

 

発せられる声は既にギャスパー君とは別物。呪詛、怨念、あらゆる負の感情が込められた、聞くだけで力を持つ危険な系統の声。

 

それを見たサイラオーグ氏も、予想外だったのか眼を見開いていた。

 

「…赤龍帝の死と言うきっかけを与えれば化けると踏んではいたが……どうやらギャスパー・ヴラディの中に秘められていたものは、俺達の想像を遥かに超えていた。……これは、バケモノの類だ。……リアス、お前は一体何を眷属にした……?」

「…ヴァンパイアの名門ヴラディ家がギャスパーを蔑ろにしていたのは……停止の邪眼ではなく、これを知っていたから……?恐怖から……白と離れさせた……?」

 

部長が声を震わせながらそう漏らしていた。

僕達の眼前で黒い化身となったギャスパー君が手を……いや、手らしきものを突き出した。

 

ゲオルクがすぐに反応して魔法陣を展開するが――――その魔法陣は発動する前に闇に食われていった。

 

「ッ!? 魔法でも神器の力でもない! なんだ、この力は!? どうやって我が魔法を打ち消した!?」

 

思わぬ行動に驚愕するゲオルクを尻目に、ギャスパー君の赤い眼が煌めくと同時に、部長の懐が輝いた。

 

「…イッセーの、指輪……?」

 

部長が取り出したのは、イッセー君の指輪だった。

ギャスパー君の力と共鳴している?……いや、これはっ

 

「っ!?」

 

ゲオルクの足元から、黒い炎が放出され、彼の両足を焼き尽くす!

痛みから膝を付くゲオルクは、それでも反撃しようと無数の魔方陣を展開するが――――その魔方陣は闇に食われてしまった。

 

「ッ!?魔法でも神器の力でもない!なんだ、この力は!?どうやって我が魔法を打ち消した!?」

 

ゲオルクはそう叫びながら距離を取ると、無数の攻撃魔法陣を展開した!

そこからありとあらゆる属性の魔法フルバーストがギャスパー君に放たれる!

 

 

が――――

 

「…ッ!?」

 

それらは全て、黒い旋風に飲まれて消え去った。

闇の旋風が蠢く中、それでもゲオルクは霧を発生させ抗おうとするが――――だが、その霧さえも闇に食われていった。

 

《喰う……喰ってヤッタ……オマエの霧も魔法も……全て喰ってヤッタぞ…》

 

そうけたけたと笑うギャスパー君は、僕達の知っているギャスパー君とは全く違っていた。

 

これが…ギャスパー君の秘められた力だと言うのか?!

 

戦慄するゲオルクの周囲に変化が訪れる。闇が蠢き、獣のようなものが形作られていく。

 

それは狼、巨鳥、ドラゴンと様々であるが……眼が一つであったり、足が十本以上あったりとどれもまともな形をしていない。

 

闇の獣……そして、一際巨大な闇のドラゴンがゲオルクを囲う。

 

「チッ、一旦引くしかないか……ッ!?」

 

ゲオルクは形勢を不利だと判断し、転移用の魔方陣を足元に出現させた……その瞬間、黒い炎が彼に絡み付いた。

 

「っ、これは…!」

「…逃がすかよ……。ここまで好き勝手しておいて、おめおめと逃げれると思ってんじゃねぇ…ッ!!」

 

……匙君!

 

「ヴリトラの、呪いか……ッ!!」

 

黒い龍王の炎に縛られた彼を、闇の獣が飲み込んでいった――――

 

 

 




何とか大みそかに投稿出来ました……!

皆さん、今年もこの駄文を読んでいただいて有難うございました。


また来年も、投稿スピードが一定ではないこの作品を読んでいただければ嬉しいです。



では、よいお年を!
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