ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
イッセー「ここではリントの言葉で話せ」
「『さぁ、ショータイムだッ!!!』」
イッセーはそう力強く言い切ると、スラスターを吹かして曹操へと一直線に迫る。
拳を突き出して突進してくるイッセーを、曹操は聖槍の柄で受け止める。
「随分と性急だね……そんなにガッつかれると、嫌われるよっ!」
「『ッ!』」
曹操はニヤリと笑みを浮かべて、聖槍全体から光のオーラを発する。
イッセーがそれに反応して距離を取ったのを確認すると、曹操は目を瞑り、力強い言霊を紡いだ。
「――――
その瞬間、弾けるように曹操の周囲に光が放出される。……静かな変化、だがそれ以上のプレッシャーが、その場を支配していた。
「…てっきり俺が禁手を使う前に叩くんだと思っていたんだが」
「『そんな味のない真似するかよ。倒すってなりゃ、全力のお前を倒してこそ、だッ!!』」
《Blade!!》
籠手からアスカロンの刃を露出させ、イッセーはすぐさま曹操へと接近する。
曹操はそれに対応しようと七つの球、七宝を動かすが、ここで曹操は目を疑う光景を目にした。
眼前に迫るイッセーへと向けた球体は破壊力重視の球体、それを使いイッセーを迎撃しようとしたが――――当たる寸前、イッセーの姿が消えたのだ。
「ッ!………ぐっ!?」
驚き、そしてすぐさま別の衝撃が自分へと降りかかってきた。
それを寸前、ギリギリで受け止めた曹操がそちらへ眼を向けるが、
『……いない、だと?』
そこには、誰もいなかった。
狐に包まれたような気分になる曹操に、再び幾重もの衝撃が襲い掛かってきた。
「――――
捌ききれない、直ぐにそれを察した曹操は自分の分身を生成し、攻撃を相殺させる。
だがその攻撃が止んだと思えば、直ぐに分身体がかき消されていった。
「どういう………ッ!?」
何が起こっているのか全く分からないでいる曹操の目の端に、キラキラと光る粒子が映った。――――その瞬間、自分の眼前には煌めく鎧が。
「ッ!!」
イッセーの攻撃を弾いて、返す形で槍の穂先を伸ばす曹操。
聖槍の先端は素早く伸縮し、移動しようとしたイッセーの鎧を抉った……筈だった。
確かに手応えを感じた先の一撃、しかも得物は悪魔が食らえば致命的な傷になる聖槍、だが曹操は拭い切れない違和感を感じていた。
「手応えはある……だが刺し貫いたとは思えない………ッ!?」
曹操の顔に焦りが見え始めて来た時、再び曹操の眼前には、自分へと迫るイッセーの姿が。
その鎧からは、煌めく粒子が溢れていた。
「そう言う事、かっ!!」
何かを察した曹操は迫る無数のドラゴンショットの目の前に、大きな渦を発生させる。
それはドラゴンショットを飲み込んだ後、イッセーの周囲へと転移されていった。
「『フッ!』」
だがイッセーは動じることなく背部の翼を展開、赤い発光体が翼の一枚一枚から離れると、それは薄い板のようなものになった。
赤く発光し、先端にはドラゴンの意匠が目を引くその物体はイッセーの周囲を旋回し、レーザーを放つ。
放たれたレーザーはドラゴンショットを撃ち抜き、それでもイッセーへと迫るドラゴンショットは、イッセー自身の機動力で巧みに躱していく。
曹操はその合間に聖槍の波動を飛ばしてイッセーへと攻撃を仕掛けるが、それらは悉くイッセーが生み出す粒子を撃ち抜くだけに終わった。
イッセーがアスカロンから斬撃の波動を振るうと、曹操はテレポートするかのごとくそれを躱し、一瞬の間にイッセーの背後へ。
だがそれを呼んでいたイッセーは攻撃されるより早く背後を振り返り、アスカロンの刃で聖槍を受け止める。
互いの得物が金属音を奏でて交差する中、曹操はイッセーの動きの種明かしを披露した。
「驚いたよ!まさか質量を持った残像とはね……しかもそれを生み出せるだけの高速移動!君自身の魔力とその粒子が作用して、動く度にその残像を発生させていた訳だっ!!」
「『お前にしちゃ、随分と気付くのが遅いんじゃねーの?!』」
そう、先程まで曹操が感じていた違和感の正体、それはイッセーが発生させていた残像だったのだ。
イッセーがこの姿で移動する際、背面の翼からは余剰エネルギーとして光る粒子が排出される。
それがイッセーが高速移動するたびに周囲に散布、更にはイッセー自身の魔力と干渉し合い、質量を持った残像と誤認させてしまうのだ。
曹操が抉ったと思っていたのはその残像を貫いただけで、イッセー本体は無傷である。
「『まだまだ、お楽しみはこれからだっ!』」
イッセーは曹操から弾かれるようにして離れると、空中を宙がえりをする。
その動きに合わせるように、イッセーの翼から分離した発光体は、無数のレーザーを放つ。
「ちぃっ!」
曹操は宙に浮かぶと、的確な槍捌きでそれ等を往なしていく。
その合間を縫うように迫るイッセー、それを察した曹操は自分の攻撃を転移させ、イッセーの背後へと移し替えた。
「『っお!?』」
それに気付いたイッセーは空中で一回転し、それを躱した……が、それでも少し被弾してしまった。
鎧が修復されるのを確認しつつ、迫るイッセー。
「おぉっ!!」
「『あぶねっ!?』」
破壊力重視の球体を躱して、イッセーは曹操の顎下へと拳を潜り込ませる。
曹操はそれを身を引いて躱そうとしたが、イッセーは拳を出す事なく、腕を引っ込めてしまった。
「…っ!?」
素早く拳を引っ込めたイッセーは半身を回転し、今度はキックを繰り出す。
フェイントだと察した曹操は自分を転移させ、その場に分身体を配置してやり過ごした。
イッセーの蹴りが分身を打ち砕いたのを見て、曹操は苦笑いを浮かべる。
「全く、君と言いヴァーリと言い力が出鱈目過ぎる!少しでも当たればアウトだって、再三申告しただろう!?」
「『んなもん俺が知るか!!』」
イッセーのツッコミに合わせるかのように、再びレーザーの雨霰が降り注ぐ。
それを躱し続ける曹操だが、その間にもイッセーは次の準備に入っていた。
「魔龍進化!」
《Wizard Promotion!!Water Dragon!!!!!》
砲門を増設した魔力特化形態を発現、すぐさま攻撃態勢に移る。
「それはマジでシャレにならないなぁっ!!」
曹操は冷や汗を浮かべつつ幾多もの分身を生成し、自分の前方へと配置する。
やがてイッセーの砲門から魔力のフルバーストが放たれ、それは曹操の分身を一瞬で蒸発させた。
《Wizard Promotion!!Hurricane Dragon!!!!!》
イッセーは再び魔龍進化を敢行。鎧がシャープな形状に変わると同時に、周囲を旋回していた発光体は鋭利な刃状の物体に変わった。
「『…行けっ!!』」
イッセーの号令と共に、無数の刃が一斉に曹操へと向かっていく。
地面や瓦礫を切り裂きながら迫るそれを、曹操は武器破壊の球体を差し向け、一群体を破壊する。
だがそれはすぐさまその場で再生成され、曹操の漢服に無数の切り傷を生み出す。
《Infinity Boost Charge up!!》
《B----------------------oost!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!》
《Infinity Raid Acceleration!!!!!》
勇ましい音声が周囲に響くと同時に、イッセーのスラスターから魔力が爆発したかのように放出される。
周囲の瓦礫を砕いて一瞬の間に曹操の懐に飛び込んだイッセーは攻撃に移ろうとする。
だが。
「『ッ……!!!!』」
拳を突き出そうとしたイッセーの腹部に、淡く輝く球体が。
それが爆ぜた瞬間、イッセーの体は後方のビルへと吹っ飛ばされていった。
「『やってくれるじゃねぇか……!』」
「いやいや、これでも結構内心では冷や汗掻きまくってるよ。何せ俺にとっては初見ばかりだからね」
「『…だろうな』」
「?……ッ!!」
イッセーの発言に何か引っかかるものを覚えた曹操。そんな彼の体に、鈍い痛みが走った。
見れば――――四肢に鋭い切り傷が生まれていた。
「『一発には……一発だ…!』」
血を吐きながら立ち上がるイッセーの周囲に浮かぶのは、先程まで消えていた例の刃。
不意に現れたそれらは、瞬く間に曹操の四肢を切り裂いたのだ。
「『こいつは定期的に俺の魔力をチャージしなきゃ分離できなくてな。つい今しがたチャージ完了したんだよ』」
「…何時、発射したんだい?」
「『あぁ、言ってなかったな。これ、俺の意志じゃなくても動かせるんだよ』」
「…赤龍帝、ドライグか」
『「正解」』
曹操に応えたのは、イッセーではなくドライグだった。
曹操は懐からフェニックスの涙を取り出し、傷口へと振りかける。
だが、傷口は完全に塞がらず、出血が少し収まる程度であった。
「……?」
『「そろそろ、相棒の仕掛けた種が効果を発揮したようだな」』
「…何を仕掛けた?」
「『この一撃浴びせたら、教えてやるよ』」
《Wizard Promotion!!Land Dragon!!!!!》
三度の魔龍進化により、籠手が大きく肥大化する。
曹操は痛む手で聖槍を握り締めるが、突如視界が眩むのを感じた。
『…ッ、何だ?これは………』
特に右目にその症状が酷く表れている、そう感じた曹操は目の前の男が仕掛けた罠と言うものに何か薄ら寒いものを感じていた。
だからだろうか、イッセーがすでに攻撃態勢に入っていた事に、気づくのが遅れてしまったのだ。
「――――……ッ!!」
周囲に響く轟音。何とかイッセーの拳を聖槍の柄で受け止めた曹操だったが、その体は衝撃に耐えきれず、大きく後退していた。
腕を振って震えを消すと、曹操は後退しつつ聖なる波動を無数に飛ばした。
「『ハァッ!!』」
イッセーは拳を振るってそれらを全てかき消すと、曹操目掛けて拳を突き出す。
放たれた拳は空気を押し出し、重たい空気砲となって地面を深く抉りながら遅し来る。
「っ!」
「『逃がすかッ!!』」
転移してそれを躱した曹操の体に、鉛のような重圧が掛かり、膝を付く。
「重力操作…か…!!」
抜け出そうと試みる曹操だが、疲労が溜まってきた体では難しく、見る見るうちにイッセーの方へと吸い寄せられていく。
眼前にて構えるイッセーの拳には、赤黒いオーラが集中していた。
『……何だ、この寒気はっ』
それを視界、右目で捕えた曹操は、背筋がぞっと凍えるのを感じた。
理由は分からない。だがあの一撃だけは受けてはいけない、自分の本能が、何より右目がそう訴えていた。
「く、ぅうっ……っ!?」
何とかして抜け出そうとする曹操だったが、イッセーの眼前で重圧が解けたのを感じた。
見れば、イッセーの鎧が通常の赤い鎧に戻っていた。
ここにきて、イッセーの方も限界を迎えていたのだ。
「っ、ぁぁぁあっ!!!」
それをみすみす見逃す曹操ではなく、震える左手で聖槍を突き出す。
イッセーもここまで来て逃げる、という考えは持っていなかったのか、オーラが集中した拳を突き出す。
互いの繰り出した一撃は交差し合い、そして――――
「「……ッ!!」」
曹操の聖槍はイッセーの肩口を、そしてイッセーの拳は――――曹操の右目を捕らえていた。
ザッ、と肩を抑えて蹲るイッセー。
手で押さえた肩口からは、煙が上がっていた。
「フッ、ハハ……どうやら、俺の粘り勝ち………ッ!?」
《Transfer!!》
勝利宣言をしようとした曹操に、イッセーは何と力を譲渡した。
「…何のつもりだ……?」
それを不審に思った曹操だったが、右目から血が流れ出た。
それを触れて感じた曹操の体に、再び変化は起きた。
「…ガフッ!!!」
今度は蹲ると、口から大量の血を吐き出した。
せき込む度に血の塊が吐き出され、その体は震えに震えていた。
「う、ぁ、あぁぁぁぁぁあぁ!!!!」
まるで激痛に耐えかねる様に地面をのた打ち回る曹操を、ふらふらと立ち上がったイッセーは力なく見下ろしていた。
「…お前、俺の動きを捉えるのに時間かかったのに、違和感を覚えなかったのか?」
「な、にィ……!!」
「実は俺の体には、まだ残ってたんだよ――――サマエルの呪いと、血が」
イッセーの発言に、曹操は愕然とした表情でイッセーを見上げていた。
肩を手で押さえながら、イッセーは種明かしをする。
「……次元の狭間で、俺が受けた呪いと血は消えずに、ずっと俺の体内に残留してた。それを何とか出来ないかって思ってな。……オーフィスの案で、組み手をしつつ、その方法を模索してた」
「…オー、フィスと……!?」
「あぁ……お前は気付いてなかったけど、俺の攻撃のオーラに、サマエルの呪いを少しずつ抽出して、上乗せして攻撃していた。……当たらなくても、ドラゴン以外のあらゆる生命体に害を及ぼすサマエルの呪いだ。それは少しずつ、お前の体を蝕んでいった。そして最後の攻撃――――あれには、シャルバの野郎から受けたサマエルの血を含ませた」
曹操は震える手で右目に触れるが、もう右目は殆ど見えない。
サマエルの血に、侵されてしまったのだ。
「サマエルの呪いは、ドラゴンと蛇を憎む神様の憎悪…………そのメデューサの眼、それも蛇。だから、呪いの範囲内って訳だ。そんで、さっきの譲渡でお前に蓄積した呪いを増幅させた……これが今回の仕掛けの種、だ」
「ハァ、ハァ……まさか、異能の力が、ここで足を引っ張るとは………ゴホッ!!」
荒い呼吸になりながら、曹操は血の塊を吐く。
もがき苦しみながらも、その口調は自嘲の念が溢れていた。
「あのヴァーリだってあんな状態になっちまったサマエルの毒だ。聖槍に選ばれて、英雄の子孫のお前は人間だ。だけど…………耐えられる訳は、ねぇよな」
「ふっ、ハハハ……あぁ、もう、体の機能が停止しつつある。……この呪いの前には、フェニックスの涙でさえも意味をなさない………人間が、俺の弱点になるとは………ハハハハ……」
仰向けになりながら、自分を嘲笑う曹操。
もはや戦う力は残されてはいなかった――――だが、曹操は、震える体で立ち上がった。
「――――ならば、『
「!」
思わぬ発言の驚愕したイッセーの目の前で、曹操は槍を構えて唱え始める。
「槍よ、神を射貫く真なる聖槍よ――――。我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ――――。汝よ、遺志を語りて輝きと化せ――――」
曹操の呪文と共に槍の先端が大きく開き、莫大な光が輝いていく。
何かが起こる前に倒す、そう足を踏み出したイッセーの目の前で、光が徐々に弱くなっていった。
大きく開いていた槍も普通の状態に戻る――――その寸前、一つの小さな光の球体が現れ、イッセーの体内へと入り込んでしまった。
一連の光景を見ていた曹操は――――絶句していた。
「な、何だ……もしかして……」
「…発動、しない………?」
曹操が呆然と口にした言葉を受けるように、聖槍のオーラがどんどんと弱まっていく。
「……成程。それが貴方の『意志』か。――――俺の野望よりも、赤龍帝の行く末を、希望を選んだのだな」
何かの意志を感じ取ったのか、曹操は悟った表情となった。
次回は事後処理?です
その後にインフィニティスタイルへと行きますので、幾宜しく