ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
吸血鬼の会談から更に幾日が経過した頃、エルメンヒルデから連絡があり、今日にもリアス達は吸血鬼の領地へと旅立つ。
場所はルーマニアの山奥だそうな……山奥って時点で怪しさ満載だな。
『山奥ってのは古来から碌な事が起きないんだよな』
『獣害しかり、神隠ししかり…か』
神隠しって結局は転落して亡くなったとかそういうケースが多いよな……って関係ないだろ。
とは言うもののまだ準備も整ってはいないし、何より女の子達が準備をしている以上、男の俺じゃ邪魔になっちまうし……何、今更そんなの関係ないぐらい深い仲になってるだって?
親しき中にも礼儀あり、だぜ?
そんな訳で俺は今、ティア監督の下でハティとスコルの二匹とじゃれ合い…もとい、特訓をしている最中です!
『ガルゥ!!』
「っ!」
ハティの飛び付きを横に飛んで回避し、掌に魔力弾を生成――――すぐさま撃ち放つ!
「拡散する龍波動ッ!!」
撃ち放たれた魔力弾は複数の弾丸に拡散されハティへと向かう――――が、魔力を込めた咆哮をスコルが奏でそれら全てを相殺してしまった。
「そーら」
『ギャウッ!!』
スコルはダッシュで駆けながら前進の体毛を鋭く尖らせて肉薄、それをアシストするようにティアお得意の魔法攻撃がスコルを守る様に囲み襲い来る!
「――――オォラッ!!」
『ギャン!?』
俺は全身からオーラを放出して魔法攻撃諸共スコルを吹き飛ばす!
体勢を立て直そうとするスコルを、腕を伸ばして掴むとハティへと投げ飛ばす!
『ガウッ』
スコルは空中で回転して着地すると、どう攻めるか考えているように唸る。
「にゃー、精が出てるわねぇ」
「お邪魔してまーす」
と、ここでトレーニングルームに黒歌とルフェイちゃんが入って来た。
黒歌の両手には……珍しい事に分厚い本が乗っていた。
「おう、ゆっくりしてけぇ」
「ふむ、丁度良い。イッセー、ここいらで休憩としよう」
了解っと。
俺はティアから手渡されたタオルで汗を拭い乍ら、二人へと近づく。
「何の本だ?」
「……ん、生命に関する本にゃ。オーラとか仙術とか闘気の事を纏めた物よん」
黒歌は俺の顔を見て、ちょっと気まずそうにしつつも答える……まぁ、そりゃそうだよな。
……未だに黒歌からの返事はもらっていない。
それを決めるのは黒歌だから、俺も返事を催促したりはしないけど……本人はやっぱり思うところがあるらしい。
こうして付き合ってみると、結構しっかりしたお姉さんだよな、コイツ。
「妹さんにどうやったらよく教えられるか、本を見て研究されているんですよ」
「ほぉ。随分妹想いじゃないか」
俺と黒歌の気まずい空気を何とか払おうとしてか、ルフェイちゃんは俺にそう教えてくれ、ティアはそれを茶化した。
おー、やっぱりちゃんとお姉ちゃん出来るんじゃん。
最近は仲良くゲームとかしてるのを見たりしてるし、最初の頃を考えるとかなり仲が修復されてるみたいで何よりだぜ。
「仙術の基本は己と他者と自然の気の在り方を把握する事。兎にも角にもまずは精神集中、静かに座禅を組んで己の気を緩やかに揺蕩えて、周囲の気も確認する。基礎中の基礎だけど、これが成長するのに一番にゃ。だからまずは座禅させてるんだけどねー」
「そういや座禅させてるの見た事あるけど、そういう意味があったのか」
「そゆこと」と言って黒歌は薄く笑む。
「俺も扱えるようになれるかな?」
「う~ん。仙術はある程度の適正も求められる力だから、ちょい分かんないわねぇ。でも赤龍帝ちんは自分の絶望だって乗り越えれたんでしょ?だったら適正はあるかもねん」
『仙術は使い方を誤れば悪意の気も取り込んでしまいかねんからな。そういう意味では相棒は悪意の気には強いだろうが……適性があるかは正直やってみないと分からんな』
ふーん……ま、機会があったら触れてみようかな。
「そう言えば、魔法使いさん達との交渉はどうですか?」
「んー、まぁボチボチかな。どれもいまいち……なぁ」
『パッとしないらしい』
言い方!!…………確かに、これだ!ってくる魔法使いがいないのは事実だけど。
「ウィザードラゴンさんの技量を考えると、確かに相応以上の使い手の方でないとメリットがないかもしれませんね」
『オマケにメフィスト・フェレスが言うには、相棒は正規の魔法使いの連中から嫌われ気味らしいからな』
そうなんだよな……聞けば「古くからある魔法使いのスタイルを汚している!」と言う事らしい。
それでも俺の力量や魔法に興味を覚えてくれる人達が、俺に履歴書を送ってくれてるんだと。
「ルフェイちゃんだったら結構勉強になるんだけどな」
「ふぇ!?」
「ほら、ルフェイちゃんって結構魔法詳しいじゃん。だったら俺も魔法に関する知識だって深められるし、俺の魔法の技術もルフェイちゃんを介して魔法使いの協会に伝わって技術拡大に繋がるんじゃないか?」
そうすれば俺に対する悪感情もちょっとは和らぐんじゃないかなー…と思って言ったんだけど、ルフェイちゃんは納得したようでちょっと残念そうな顔をしていた。
「???」
「ひゃはは、赤龍帝ちん夜道には気を付けてにゃー」
「こえぇ事言うなよ!?」
何それ俺刺されちゃうの!?
ぎゃーぎゃー騒いでいると、トレーニングルームにアーシアが入って来た。
「イッセーさん」
「お、どしたアーシア」
「リアスお姉様が日本を発つそうです」
あれ、今日の夜じゃなかったけ?随分早いけど……
「天候が回復したので、小型ジェットが飛べるようになったそうです」
「成程な。わりぃ二人共、ちょっと出てくるわ」
黒歌とルフェイちゃんは「「いってらっしゃーい」」と言い、ティアもひらひらと手を振ってくれた。
ーーーー
兵藤家の地下にある巨大な魔方陣。
そこにオカルト研究部のメンバーとソーナ会長が集っていた。
理由は言わずもがな、リアスと木場に吼介、序でにアザゼル先生を見送るためだ。
荷物を持ち、魔方陣の中央に向かうリアス、木場、吼介と序でに先生。
「おいイッセー。お前地の文でなんか失礼な事言ってないだろうな」
「気のせいっすよ」
「…何か納得いかねぇ」
ブツクサ言いながらも準備する先生を尻目に、リアスはギャスパーを抱きしめる。
「…貴方の事は私が守ってあげるから、何も心配しなくていいわ。ヴラディ家との事も私がきちんと話を付けてくるから」
「はい、部長……」
ギャスパーもリアスの抱擁に甘えるようにしていた……ちょっと羨ましいぜ。
って、イカンイカン。自重せねば!
「木場、リアスの事頼むぜ」
「任せて」
「吼介、先生の介護大変だろうけど、頑張れよ」
「皆まで言うなって。下の世話以外はちゃんとするからよ」
「俺はジジイか!?」
まぁ冗談はさておき……序でに先生は会長とロスヴァイセさんに素っ気ない返事をされて不貞腐れていた。
「…例のフェニックス関係者を狙っているって魔法使い共が不気味だ。気を付けろよ」
『はい!』
それも注意しなきゃだしな。
返事をする俺達。
「アーシア、オーフィス」
先生がアーシアとオーフィスを呼ぶ。
「アーシア、例の件だが後はお前次第だ。オーフィスにアドバイスをもらいながら進めてみろ。龍神のお前が側にいればなんとかなるだろう。龍神のありがたい加護ってのを頼むぜ?」
「はい、と、とても恥ずかしいけど、が、頑張ります」
「我、アーシアのこと、きちんと見る」
先生の言葉にアーシアとオーフィスが応じていた……何でアーシアが顔を赤くしてるのかは気になるけど、まぁそれは後でも良いや。
「リアスお嬢様、お気をつけて」
「えぇ。グレイフィア達もね」
グレイフィアにそう言うと、リアスは俺の方を見る。
「大丈夫」――――俺はそう意味を込めてサムズアップする。
リアスも微笑んで、無言で頷いた…どうやら、気持ちはちゃんと届いたらしい。
転移魔方陣の中央に四人が並ぶと、魔方陣の輝きが一層増した。
朱乃さんが魔方陣の術式を最後に確認した後、転移の光が室内に広がり、そして――――。
光が晴れると、そこにリアス達の姿はなかった。
さて……四人が安心して帰ってこられるように、留守番はしっかりしなきゃな!
『例の石の実験、ですか』
ルーマニアの山奥――――の、更に深部になる森の奥地で、二つの影が言葉を交わしていた。
『エネルギーも初期より蓄えられた……本当に機能するのかどうか、その実験だ』
一人は三つの獣の頭部を持つ異形の存在――――ガルム。
もう一人は、黒いローブを被っていて良く分からないが、男である事だけは声で分かる。
『貴様はどうする』
『私も実験があるので』
男は懐から、新緑色の宝玉を取り出す。
まるで生きているかのように鈍く輝くそれを、ガルムは無感情に見つめる。
『……邪龍か』
『えぇ』
『…まぁ良い。実験の邪魔をしないのであれば構わんと、ワイズマンからも仰せつかっている』
『それはどうも。では……お互いに幸運があらん事を』
男は腰を下げてお辞儀をすると、その場から去って行った。
『…己に他者の在り様を投影しようとは…………生命体らしい感情、嫉妬か』
――――下らない
ガルムは感情の籠っていない声音でそう吐き捨てると、風と共に姿を消した。
後の展開の布石も打たなきゃ、ね。実を言うと私は早くあの男を出したいんですよ。
なるべく早く更新していくよう心がけますので、皆さんもごゆるりとお待ちください