ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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今月は休日出勤が殆どなかったので快適に休めました。来月はどうなるんだろう…



MAGIC167『絶望の魔法使い』

 

連中が通した先にある魔方陣を潜るのは、俺とグレイフィアの赤龍帝眷属とグレモリー眷属とイリナ、シトリー側からは先輩と匙……奴等の要望通りの布陣だ。

 

転移した先に広がる光景は――――

 

 

 

「酷く小ざっぱりしてる……」

 

 

見渡す限り、白、白、白――――という、真っ白な空間だった。

 

特に何かある訳でもない、だけど広さはかなりあるその空間に、俺達の知らない声が響いてきた。

 

「ここは次元の狭間に作った『工場』なのですよ。悪魔がレーティングゲームに使うフィールドの応用です」

「…!」

 

俺達が振り向いた先にいたのは、真っ黒なローブで全身を包んだ誰か。

声からして男なのは間違いないが……

 

『…何だ、この違和感は』

 

俺は目の前の男から、何か途方もない違和感を感じていた。

不気味、と言えばそうなんだけど、何時も身近で感じているようなオーラを、目の前の男が発していたからだろう。

 

だからこそ、俺は気付かなかった。

 

 

俺の後方にいたグレイフィアも、同じような違和感を感じ取っていた事も。

 

 

「…レーティングゲームの技術を知っていると言う事は、貴方は悪魔でしょうか?」

「…えぇ、一応は」

 

…含みのある答えだな。

悪魔って事は、魔法使いの連中とは違うみたいだが…さて。

 

「イッセー様!」

 

どうするべきか思案していると、後方からレイヴェルの声が聞こえて来たので、そちらを見る。

 

俺達から離れた位置に、小猫ちゃんとレイヴェルがいた。

そして小猫ちゃんが背負っているのは……ギャスパー!

 

『手酷くやられたみたいだな』

 

…遠目からでも分かる。ギャスパーは酷くぐったりとしていて、無事ではない状態だと。

 

だが不思議な事に、小猫ちゃんとレイヴェルは拘束されている感じでもなく、見たところ怪我の一つもない感じだ。

服装も制服のままだし、何かされたという感じでもない……ギャスパー以外は、だけど。

 

「彼女達を返しましょう」

 

ローブの男がそう言う。

 

奴の出方を伺いつつも、俺達は小猫ちゃんとレイヴェルに手招きして、掛けてくるように促す。

…俺達の元に三人が合流する間も、ローブの男は何も手出しはしなかった。

 

「レイヴェル、小猫ちゃん、大丈夫か?」

「…イッセー様っ」

 

俺がそう聞くと、レイヴェルは瞳を潤ませて、無言で体を震わせていた。

…肉体的ダメージじゃない、寧ろ精神的なものか?

 

小猫ちゃんがギャスパーを下ろすと、アーシアがすぐさま回復させる。

 

「…私もレイヴェルもギャーくんも、魔方陣で何かを調べられました。体には特に何もされていません……ですが、ギャーくんが……ッ」

 

小猫ちゃんが悔しそうに唇をかむ。

ギャスパーは……顔中が腫れ上がるほどに殴打されていた。

 

「…ギャーくんは、私達を守ろうとして……」

 

今度は小猫ちゃんが、目元を潤ませる。

悔しい、と言った感情を絞り出すかのように。

 

「彼に関しては此方の落ち度です。彼がそこの二人を守ろうと立ち向かってきたため、配下の者が手を出してしまったようでして。それ以外は丁重に扱いましたが」

 

…ギャスパー、お前は二人を助けようとしたんだな。

 

俺はギャスパーの頬をそっと撫でると、ローブの男に向き直る。

その場にいた全員が、オーラの質を怒りで変えていった。

 

「…貴方が今回の黒幕ですか?」

「えぇ、そうです」

 

会長の冷たい問いかけにも、目の前の男は即答した。

 

「貴方は『禍の団』ですか?だとしたら、襲撃の理由はなんです?」

「えぇ、今は『禍の団』をさせてもらってます。今回我々が襲撃した目的は、何点か理由がありまして。魔法使いの彼等が貴方方を襲ったのは、彼等の好奇心です。『禍の団』に元々所属していた者達――――」

「その者達とはぐれ魔法使いの集団は手を組んでいた、でしょう?先程の魔法使い達は、協会を追放された魔法使いと、『禍の団』に入った魔法使いの混成チームです。彼等が使う術式は、以前三大勢力の和平会談を邪魔してきた魔法使いが使ってきたという魔方陣の紋様にそっくりでしたから」

 

男の言葉に続けて言い放った先輩の推察に、男は鷹揚に拍手をした。

 

「中々お詳しい。その通りです、彼等は頻繁に交流をしていたそうですので」

「今回の襲撃はもしかして、協会が出したという若手悪魔の評価に関連しますか?此方の兵藤一誠君を襲った魔法使いがランクについて言及していたそうですし、彼を気に食わない魔法使いも多数存在しました。先程の集団戦でも、私達の力に関して関心を抱いていましたが」

「ふふふ、私が説明をする必要はなさそうですね。えぇ、そうです。彼等は協会が出した若手悪魔の評価が気になったようでして、自分の魔法が通じるかどうか、試したくなったそうですよ。そして、そこにいる赤龍帝の魔法をあわよくば排除しようと、ね」

 

魔法使いの協会が出した俺達の評価、そして俺を気に食わないという理由で襲ってきた…か。

 

全く持って身勝手すぎるだろ、それ。

 

「比較的若い魔法使いが多いのでね、自制が効きにくい所があったのですよ」

「…『禍の団』で最大派閥を誇っていた旧魔王派、その後に台頭した英雄派、この二大派閥が無くなったことで、組織の勢力図が混乱、下の者の意見も通りやすくなったと」

「えぇ。もはや組織内で権威と猛威を振るっていたシャルバ・ベルゼブブと曹操はいませんので。今は私が一部指揮をしているのですが……いやはや、これが中々大変でして。今回の剣は彼等の我儘を少々叶えた形でした。もっとも、上からの「好きにやらせてみろ」と言う意見も多分に含まれてはいますが」

「……うまり、俺達は連中の捌け口に宛がわれたって事か」

「平たく言えば、ね」

 

何が平たくだ、ハッキリそう言ってるようなもんじゃねぇか……って、上?

此奴の更に上の存在がいるのか…そいつが恐らく、『禍の団』の残党を纏め上げてるって事か?

 

「以上が今回の理由の一点。二点目はこれです」

 

男が指を鳴らすと、右手側の壁が作動して、下へと沈んでいった。

 

壁の向こう側が見えてくる、その向こう側にあったのは――――沢山の培養カプセルが並んだ、実験室みたいな光景だ。

 

機器に繋がれた数多くのカプセルの中には、何かが入っている様だった。

 

『…僅かだが生命のオーラを感じる』

 

生命のオーラ……これは、人か?

 

カプセルの中にいたのは、人らしき物体だった。……レイヴェルが目を逸らしているのを見るに、何かショックを受けていた様子は、これに関連しているのか?

 

「フェニックスの涙の製造方法、知っていますか?純血のフェニックス家の者が、特殊な儀式を済ませた魔方陣の中で、同じく特殊儀礼を済ませた杯を用意して、その杯に満ちた水に向けて、自らの涙を落すのです。そうして涙の落ちた杯の水は、フェニックスの涙となるのです。――――その際、心を無にして流す涙でなければ、フェニックスの涙にはならないとされています。感情の籠った涙は、『その者自身の涙だから』だそうです。自らの為に流した涙と、他者の為に流した涙では、効果が生まれない」

 

……待て。って事は、このカプセルの中身はッ!

 

「ここが『工場』だと言ったのは、あれを魔法使い達が量産しているからです。――――上級悪魔フェニックスのクローンを大量に作り出し、このカプセルの中でフェニックスの涙を生み出させる。安心してください、ここの『工場』は既に放棄する予定なので、あの者達の機能は停止させています」

 

 

……こいつ等、何処まで腐ってやがるんだッ!?

 

レイヴェルが精神的ショックを受けていた理由が分かった……あの子は生粋のフェニックス家の生まれだ。

こんな身勝手な理由でクローンを生み出されて、しかも自分達の都合で破棄……こんなもん見せつけられたら、キツいなんてもんじゃないだろ!!

 

ソーナ先輩が目を細めながら、嫌悪の言葉を吐き出す。

 

「ここで生み出したものを闇のマーケットで流して莫大な資金を集める……考え自体が悍ましいものです。貴方方がフェニックス家の者に手を出していたのは、あれを作り出す精度を上げる為ですね?」

「ご理解が早くて助かります、シトリー家次期当主。どうやら魔法使い達の研究でも、フェニックスの特性をコピーするのに限界があったようでして。最終手段として、フェニックスの関係者を攫って直接情報を引き出そうとしたそうです。結局、純血の者から出なければわからない事があったようで、レイヴェル・フェニックスを連れ去る事にしたようです。あぁ、心配しないでください。レイヴェル・フェニックス達の身体には何もしていません。『涙』の精度を上げるために、魔力などの詳細データを取らせてもらっただけですから」

 

こいつ……淡々と語りやがってッ!

 

「…酷い、酷いよ……こんなのって……どうして、クローンなんて作ったの………」

 

カプセルを見るレイヴェルは、ただただ哀しそうに泣いていた。

それを間近で見させられた俺は、ほぼ無意識で目の前の男にドラゴンショットを放っていた。

 

が――――

 

 

《バリア・ナウ》

 

男が手に発生させた銀の魔方陣に阻まれた……いや、阻まれたのはこの際どうでもいい。

 

『今の音声、白い魔法使いのと同じ……!?』

「ギャスパー・ヴラディの情報は、こちらにとっても予想外の収穫でした」

 

俺が密かに驚愕していたのを余所の、男は何もなかったかのように淡々と語り始める。

 

「――――さて、我々が欲する要求の最後です。貴方達のような強者と戦いたいと願う者がいるので、お相手をしていただきたいのです。今回の襲撃の主な目的はそれでして。魔法使い達の要望を叶えたのは、あくまで『ついで』でして。そして――――」

 

男は何やら巨大な陣形を作り出しながら、スッと静かに――――俺を指さした。

 

「赤龍帝、希望の魔法使い、兵藤一誠。貴方を限界まで追い込め、それも主目的なのですよ」

「俺を……?」

「インフィニティーに覚醒した貴方の実力を見てみたいのと、スポンサーからの要求なのです」

 

何で俺が……ってこの魔方陣、どっかで見た事あるぞ。

 

龍門(ドラゴン・ゲート)、だと?』

 

ドライグがそう呟いた。そうだよ、ミドガルズオルムの意識を招き寄せた時に使ったのと同じだ。

 

龍門(ドラゴン・ゲート)は召喚するドラゴンによって色が変わるが……今回は緑色の輝きを発していた。

 

「緑色って事は……玉龍(ウーロン)だっけ?」

『――――いや、違う』

 

俺の答えに、しかしドライグは否と返した。

 

『この色は……いや有り得ん!奴はとうの昔に滅びたはずだ!!』

「な、何だよドライグ!?これ、何のドラゴンが来るんだよ!?」

 

言われてみれば色は確かに緑だけど、色が普通の緑より濃い――――所謂新緑色だ。

 

でもそんな色を司るドラゴンなんていたのか?

まさか、ミドガルズオルムが言ってた幻龍って奴なのか……?

 

『違う、幻龍ではない。この色は――――』

「流石は赤龍帝ドライグ、覚えていたみたいですね。そうです、ここに招かれるドラゴンは――――」

 

瞬間、龍門(ドラゴン・ゲート)の魔方陣が一層深く輝いて――――弾けた。

 

 

「邪龍です」

 

 

グオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!!!!

 

 

この空間そのものを震わせる咆哮が、そいつから発せられた。

 

俺達の前に姿を現したのは、浅黒い鱗をした二本足で圧巨大な怪物だった。

 

太い手足に、鋭い牙と爪、バカでかい両翼を広げ、長く大きな尾をしならせている――――巨人のようなその怪物の頭部は、よく見るドラゴンそのものだった。

 

 

「伝説のドラゴン――――『大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)』グレンデル」

 

そう言った男の方を見た俺は、いや俺達は――――絶句した。

 

 

ドラゴンを召喚した際の風圧で、男の頭を覆っていたローブが剥がれていた。

 

 

 

そして、そこにあったのは――――漆黒の魔宝石が特徴の、

 

 

 

 

 

 

「………ウィザード」

 

 

 

ウィザード・フレイムドラゴンだった。

 

 

 




今回のタイトル、どうつけるかチョイ悩みました。

クローンのフェニックスの解説もあるし、グレンデルを登場させるところまで持っていく予定でしたし、ローブ野郎のローブも剥がす予定でしたので……

悩んだ末にこうなりました
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