ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
ホントはこの章、原作だとサイドストーリー的な感じなのですが、次の章と合併して進めていきたいと思っております。
思い付きでサイドストーリーとか入れるかもしれませんが、そこはご容赦くださいませ。
ではノシ
MAGIC170『平凡なようで、平凡でない』
魔法使いの集団に襲撃されて数日が経過した頃、俺――――兵藤一誠は自宅の自室にて、ルーマニアに発ったリアスからの吉報を待ちつつ契約相手の魔法使いの選抜を進めていた。
「――――というふうに、この方はですね……」
隣でレイヴェルが書類を見ながら俺に説明をしてくれるが……
『心ここに在らず、だな』
ドライグの言う通り、今の俺はただボーっとしているように書類を眺めていた。
リアスの方はヴラディ家との会談が進んでいるとの知らせが入って来たので特に心配はしてない。
問題は――――ユーグリット・ルキフグス。
ずっと行方知れずだった、グレイフィアの弟の再出現。しかも、今回の事件の主犯格ときた。
先の大戦で滅んだはずのグレイフィアの身内の登場に、冥界の悪魔側上層部は騒然となった。
……ルキフグスと言うのは、前ルシファー直属の配下でもあった番外の悪魔だ。
その滅んだはずの、旧魔王に関する悪魔の登場と言う事があり、身内のグレイフィアは審問にかけられている。
――――ユーグリットの生死を偽っていたのではないか、という疑いをかけられたからだ。
勿論グレイフィアがそんな事するはずもないし、本人と再会した時の反応を見るにそれは明らかだ。
俺もグレイフィアへの審問に、主として何度か同行したけど、審問は平行線を辿る一方だった。
……この話に関しては政が絡む複雑なものなので、最終的には前主であるサーゼクス様に任せる形となった。
歯痒くはあるけど、政治事に対して碌に絡んでもいない若造が如何こうできる話でもないし、俺自身やる事だってある。
それをサーゼクス様、ひいては面談したグレイフィア本人にそう説得させられたので、今はこうして自分に出来る事をやっている。
…やってるんだけどなぁ。
『しかし分からんな。何故上役の連中は旧魔王に関してそこまで過剰に反応する?』
それだけデリケートな問題なんだとさ。…そして『ルシファー』に関連したものは新旧問わず、冥界でも別格の扱いらしいぜ。
『…ひょっとして生きてるんじゃねーか』
誰が?
『ルシファーだよ』
『生きてるって…前ルシファーならヴァーリの親父さんだろ? もう生きてないって聞くけど……』
『違う違う。――――もっと前の、とかな』
っ、前任者の、更に前……?
『あぁ。ま、これは完全な憶測だが……そこまで『ルシファー』に関して過敏な様子を見るに、『ルシファー』は冥界にとっては腫れものみたいなものなのだろう。そこから考えるに……何かとんでもない事をやらかしたか、若しくは生存説がある、とか』
…所謂、都市伝説みたいなもんか?
『そう言う事だ。ま、深く気にする事でもないだろう。今のお前にはなんも関係ないんだからな』
『そうだな……一応覚えとくけど』
『…だったらいい加減現実に戻ってやれ』
『え?』
ドラゴンに言われて意識をアンダーワールドから浮上させると、
「……イッセー様?」
怪訝な様子のレイヴェルが、俺の顔を覗き込んでいた。
やべっ、完全に忘れてた…!
「ど、どしたんだレイヴェル?」
「…グレイフィア様の事、でしょうか? 先程から上の空だったので」
「…分かっちゃう?」
「マネージャーですもの」
レイヴェルは胸を張ってそう言ってのける……スゲェや。
『お前が分かりやすいだけじゃないのか』
…くそっ、否定できねぇ。
「…心配するお気持ちは分かりますが、私達では同行できないのが実情ですわ。イッセー様も、そこは理解している筈です」
「…うん。気持ちは、分かってるつもりなんだけどね」
「……眷属への信頼も、主としての大事なファクターですわよ?」
…そうだな。
「……うん、レイヴェルの言う通りだな。――――よしっ、気持ちも切り替えて頑張ろう!」
「はい!…と、言いたいのですが」
おろ? どうしたのかな?
レイヴェルは渋面を作って、手にした書類を机の上に置く。
「正直に申し上げますと……次回に持ち越していいのではないか、とわたくしは考えております」
「…お眼鏡に適う魔法使いがいない、って事か?」
「はい。イッセー様を選ばれた魔法使いの方々の大半が私からの太鼓判を押せない者ばかりなのです。……書類選考後の試験などで詳しく調べてみないと分からない部分もありますが、書面で記された経歴や習得技術から見ますと、『天龍』『赤龍帝』『ウィザード』のパートナーとして相応しい人物は見当たりませんわね」
つぶさに書類を見て来たレイヴェルが言うのだから、その評価は大体合ってるんだろう。
…まぁ、俺もざっと書類を見た限りではあんまりパッとしないというか。
それならそれで短期間での契約になるんだけど……こっちもパッとしないのが実情だ。
それでも契約して良いかなぁと思える相手はそこそこいる。
「こうなったら短期で取っちゃうか? 契約」
俺はレイヴェルにそう訊くが、レイヴェルは可愛い顔を難しくさせていた。
「……短期で結んで、新人故のうっかりミスで変な評価を抱かれてしまい、あちらの業界にいらぬ噂を流されるとそれはそれで厄介極まりないと言いますか……。ただでさえ、イッセー様は魔法使いの業界ではあまり好かれてはいないようですし……そのミスを盾にここぞとばかりに悪評が広まって、最悪契約相手がゼロになるという悲劇も考えられますので……」
そこまでのケースを考えてくれてるんだね、レイヴェルちゃん……。
『お前の場合、好みの良しあしで喧嘩しそうだしな』
うるへぇ! 否定の出来ない事で攻めるのは止めろよな!
魔法の血色が違い過ぎる!とかで喧嘩しそうだもんなホント……文句に関しては白い魔法使いに言っていただきたい。
「悩みどころだな……」
「ですわね…」
とまぁ、契約に関してはかなり難航中なのです。
と、そんな俺達の元に、来客が現れた。
「あらあら、お話は進んでいるのかしら?」
「朱乃さん。それに――――」
「お邪魔しています」
朱乃さんに――――ソーナ先輩が訪れていた!
こりゃ珍しいお客さんだ!
「珍しいっすね、会長さんが来るなんて」
「えぇ。今後について朱乃達とお話ししようと思っているのですよ。後で椿姫もここに来ます。お邪魔かもしれませんが、少しの間だけお話をさせてくださいね」
「いえいえ、そんな! ゆっくりしていってくださいよ。……それよりソーナ会長」
「何でしょうか?」
「天井から気配感じるんですけど、会長のお知合いですか?」
俺が訊くと、、会長は目を丸くする。
「…この会話の最中に気付いたのですか?」
「えぇ、まぁ」
「丁度新しい眷属の紹介と…この子自身がどうしても来たいと言っていたので。……降りてきなさい、ベンニーア」
会長が天井に向かってそう呼びかけると、音もなく天井に魔方陣が展開し、そこから蝙蝠みたいに逆さになった髑髏仮面が出てきた!
「うわっ、ガシャドクロ?!」
『…この感じ、死神か』
「…え、死神?」
死神って、あのハーデス配下の死神か?
若干狼狽する俺を余所に、目の前の髑髏仮面はその面を外す。
そこにいたのは――――若干眠たそうな眼をした、小柄な女の子だった。
《お初にお目にかかります、ウィザードラゴンの旦那。あっしはベンニーアと申します。死神と人間のハーフであります……まぁ、ハーデス様についていけなくなって、こっち側に寝返る事にしたので、元死神と言ったとこでしょうかね?》
「こ、これはご丁寧に……もしかして、この子が新しい眷属?」
「えぇ。私の新しい『騎士』です。本当は『戦車』もつれてこようと思いましたが、生憎用事が重なっていたので、またの機会にと」
な、成程……でもまさか死神が眷属とは!
「ビックリしましたよ。…でも何で死神を選んだんです?」
「…実は、『騎士』の当ては他の方だったのですが、その方と都合がつかなくなってしまいまして。そこに現れたのが、この子だったんです」
『自分を売ったんかい』
「言い方」
相手女の子だぞ、しかも中学生ぐらいの!
「最初はハーデス側のスパイかと思いましたが……こんな大胆なコンタクトを取るだろうかと疑問にも感じたのですが、ある一点から信頼する事にしました」
「ある一点?」
何だと首を捻るより早く、ベンニーアは俺に――――色紙を突き出してきた。
《あっし、実はウィザードラゴンの旦那の大ファンでさぁ。ほら、マントの裏はウィザードラゴンの刺繍って具合です。って事で、サイン一つお願いできやせんかね?》
あ、ホントだ。鎧纏った俺と変身した俺が刺繍されてる。
「俺、死神にもファンが出来ちゃったか……」
取り合えずサインを書いてあげると、ベンニーアは眠そうな顔を輝かせた。
《ありがとうございやす…! 一生の家宝にしますぜ!》
「お、おう。ありがとな」
「最上級死神の一角、オルクスの娘なので転生できるかと思いましたが……駒一つで足りて幸いでした」
お、オルクス……また分かんない名前が出て来たな。
『大分有名な死神の一角だ』
《ただの娘バカの親父ですぜ。それに、あっしは母方の人間の血が濃いんで。そこまで大したことではないでさぁ。……ここがウィザードラゴンの自宅。あっしにとっては桃源郷に等しいですぜ》
いや、そんな大層なもんでもないと思うけどね。
と、随分個性的な新しい眷属の子と知り合いになったのであった。
「この分だと『戦車』の人も個性的なんじゃ……」
『楽しみだな』
「何が?」
ぐ、グレイフィアの出番が無くなっちゃう……!