ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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お久しぶりで御座います

アトランティスを踏破した、私です


………シャルロット


MAGIC174『クーデター撲滅イベント』

 

各々が出発の準備を進める中、俺は一組の男女と挨拶を交わしていた。

 

「ルガールだ……今回の間だけ、宜しく頼む」

《ではあっしも改めて……死神・ベンニーアです。ウィザードラゴンの旦那の元で戦えるたぁ、一生もんの宝ですぜ》

 

今回同行する事になったソーナ先輩の眷属、死神の『騎士』ベンニーアちゃんと――――大柄の男性、ルガールさんだ。

 

ルガールさんはソーナ先輩の新しい眷属の一人で、『戦車』の駒を与えられている。

しかもこの人、駒王学園大学部の人なんだとか。

 

つまり先輩にあたるって訳だ……悪魔としては俺の方が一応先輩にあたる訳だけど、そこはちょっと複雑な関係と言う事で。

 

『ルガール……か』

 

? ドライグ、ルガールさんと知り合いなのか?

 

『いや、何処かで聞いた名だと思ってな。……気のせいだろう』

「ふーん」

『…相棒は『王』となってまだ日は浅い。眷属もロクにいないし、お前達の『主』に比べると頭も足りてない。ぶっちゃけバカだ』

「おい」

 

お前いくらなんでも酷過ぎね?

 

『だがそこは新人故のハンディとして飲み込んでくれると助かる。……相棒をサポートしてやってくれ』

「…出来る限りは、尽くそう」

《あっしもそのつもりですぜ》

 

二人はドライグの頼みにも心強く答えてくれる……有難い。

 

「…改めて、兵藤一誠です。暫く二人の主として、存分に使わせてもらうので、そこんとこは宜しく!」

「あぁ」

《うぃーっす》

 

 

 

と、挨拶を終えて準備に戻った俺の元に、来客がやって来た。

 

「よっす、兵藤」

「匙……見送りに来てくれたのか」

 

匙は「あぁ」と言って、俺の部屋の椅子に腰かける。

 

「…ヴァンパイアがクーデターか。色んな事が起きるな」

「全くな。ホントなら平々凡々と生きてたいもんだぜ」

「……」

「何だよ」

 

俺がそう言うと、匙は酷く微妙そうな顔をしていた。

 

「…いや、俺が言うのもなんだけどさ。ドラゴンなんてもん宿してる時点で、平々凡々とか無理なんじゃないかって」

『『確かに』』

「言うなよ、気にしてんだから」

 

それと同意するなお前らも。半分はお前らが原因だと思ってるんだからな!

 

「ま、それならそれで何とか生きていくよ」

「…ギャスパー君の秘密について、訊きに行こうとしたんだよな?」

「あぁ……それどころじゃなくなったけどな」

 

肝心のヴラディ家との交渉は順調に言っているとの事だけど……。

 

「…そうだ。兵藤から見て、新しい眷属の二人、どうだ?」

「んー、そうだな。……癖の強そうな面子だなってのは、何となく」

 

方や死神、もう片方は良く分からないけど不思議な力を感じた……何となくだけどな。

まぁ、先輩の事だから、もう既に他の眷属とのコンビネーションとか考えてそうだけど。

 

「実はさ、シトリーの方は結構重要な件が本格的に動き出そうとしてんだ」

「?」

「会長が出資した学校の建造だよ。今度、正式に着工する事になってさ」

 

学校……そうか、ソーナ先輩の夢の足掛かりになる学校の事か。

 

「すげぇじゃん! 先輩の夢の足掛かり――――上級も下級も関係なく平等に学べるための学び舎、だよな?」

 

夏休みの折、そう恥じる事なく堂々と宣言したソーナ先輩の姿は、今でもはっきりと覚えている。

 

「あぁ、第一号が漸く、な。サイラオーグの旦那も協力してくれていたから、これでも大分計画は早める事が出来たんだぜ?」

 

サイラオーグさんも……いや、あの人の境遇を考えるなら、協力したっておかしくはないか。

寧ろ、喜んで協力を惜しまないだろう。

 

「次以降の学校の建造はまだまだ先になりそうだけど……。それでも、階級関係なしに広く募集し始めていてよ、魔力に乏しい子供達も受け入れようって話になってる。もう、親御さんたちが子供を連れてきてさ、入学をお願いしてきてるんだってよ」

 

匙はそれを嬉しそうに話すが…何故だか、語気に勢いがなかった。

 

「……俺さ、冥界の学校の教師になるのが夢だって言っただろ? でも、いざ現実味を帯びた話になってくると、怖くなってさ…。もし、その学校が立ったら、将来ちゃんとした教師になれっかなって……。最低でも、中級悪魔にならないとあっちで教員の免許が取得できないって言うんだ。俺、まだ下級だし……さ」

 

その姿は、何時も気合を入れて学園を駆け回っていた生徒会役員の匙元士郎とは思えないほど気弱な独白だった。

……いや、この姿が、本来の匙なのかもしれない。

 

匙は頬杖をついて、息を吐く。

 

「つーか、子供達に何を教えて良いかさえ分かんねぇしさ。サイラオーグの旦那は、魔力の乏しい子供達に体術を教えて張り切ってる。俺……何を教えればいいんだろうな……」

 

匙は悩める眼差しのまま、自分の掌を見つめる。

 

「神滅具所有者との合同訓練でも俺は……禁手に至れないヘタレだしさ」

 

……匙が言った通り、俺達は合同でジョーカー・デュリオや刃狗・幾瀬鳶尾さんと早速トレーニングをしたんだ。

 

使い手であるデュリオと鳶尾さんは噂以上の能力を見せてくれて、俺もかなり苦戦させられた。

っていうか三人とも本気になりかけたせいでストップがかかったほどだ。

 

『あの時のお前は、柄にもなくスイッチ入ってたもんな』

 

ホントにな……だんだんヴァーリに毒されてきてんなァ、俺も。

 

…その中で匙は俺達とのトレーニング(ちゃんと実力は調整して)に付き合ったものの、禁手には至れなかった。

 

「……なぁ匙」

「ん…?」

 

匙は力なく顔を上げ、俺の方へと視線を寄こしてきた。

 

「お前、先の事ばっかり考えすぎ。まだ先生になれるって、完全に決まった訳じゃないんだろ? だったら焦る必要なんてないと思うぜ?」

「…けど」

「未来ってのは、俺達の歩みによって組み上がっていくもんだ」

 

匙は黙って俺を見続ける。

 

「先ずは教師になるために頑張る。それで良いじゃねぇか。何を教えれるか、なんてその時になったら案外浮かんでるかもだぜ? それに――――戦う事だけを教える訳じゃないだろ、先生ってのは」

「…!」

「お前がこれまで、この先の未来で感じた事、大切にしてほしい事、そんな些細な事だって立派な教育になるんじゃないか?…だってさ、俺達だって大人からそう言うのを学んで、ここまで育ってきたんだしさ」

 

俺の言葉に何かを感じたのか、匙の顔から陰りが薄くなった。

 

「確かに、戦う術は大事だし、それを教える事も同じく大切だ。けど、それは人それぞれだ。力が足りないなら、その他の事を教えて行けば良い……誰も同じじゃないんだ。自分が学んできた事、自分がオンリーワンだと思える事、それを後世に伝えていく…それで良いじゃんか。それにっ」

 

俺は立ち上がって匙の傍まで行くと、バシッと背中を叩く。

 

「いっ!?」

「何かを教えたい、教師になりたい――――そんな立派な夢を持ってんだ。だったら、答えは何時か必ずお前の中に芽吹くよ。だから地道に、気合を入れて真っ直ぐ突っ走れ!…何時もみたいに、さ」

「――――」

 

匙は呆気に取られた顔をしていたが、直ぐに頭を下げてきた。

 

「…ありがと、兵藤。そうだよな……今焦っても、仕方ないよな。どうにも、最近焦っててさ」

「匙」

「何だ?」

「俺は俺だ。そして――――お前はお前だ……忘れんなよ」

 

俺は荷造りに戻りつつ、そう言ってやる。

 

……匙。俺に憧れてくれるのは嬉しい。でも、それで自分の事を卑下しないでくれ。

お前にはお前の良さがあるんだから……俺の真似なんかして、折角のお前らしさを、潰したりすんじゃねーぞ。

 

「……今度、学校見に行っても、良いか?」

「っ、あぁ、皆一緒に身に来てくれよ! 兵藤達が訪れる頃には良い感じに工事も進んでるだろうからさ」

「楽しみにしとくよ」

「おう!……だから、必ずリアス先輩を連れて帰って来いよ。ギャスパー君の秘密も探ってさ」

「ったりめーだろ」

 

誰も欠けずに帰る――――大丈夫、俺達はまた笑顔で暮らせるさ。

 

「……そう言えば」

「ん?」

「兵藤の夢って、何なんだ?」

 

……………………。

 

「…今は、ファントムを倒す事……かな?」

「…そっか。でも、それって今後も続くって訳じゃないだろ? 何か無いのか? やりたい事とか」

「……特にねーな。レーティングゲームで勝ちあがる、ぐらいかな?」

 

 

…………俺の夢、か。

 

『まだ引きずってんのか、相棒。――――あの事を』

『…さぁな』

 

 

ーーーー

 

 

さて、身支度も終わったと言う事でルーマニア出発組が地下の巨大魔方陣の中央に集結していた。

 

この魔方陣のジャンプ先は直ぐにカーミラの領土だ。何でも現地までの複雑な経路を行かなくていいように、直接あっちの本拠地の転移魔方陣の展開が出来るよう先方が配慮してくれたんだとか。

 

……だったら最初からやれよって思わなくもないけど、今回は緊急の召喚だ。

吸血鬼側も危機感を持ったからこそ、特例として俺達の本拠地への直接転移を認めたんだろう。

 

「吉報を待っています。ベンニーア、ルガールさん、イッセー君たちのフォローをお願いします」

《合点ですぜ》

「…あぁ」

 

会長の言葉に偉丈夫と死神っ娘が応じる。

 

「黒歌、俺の眷属になって初めての仕事兼社会奉仕だ。頼むぜ」

「了解にゃん」

 

黒歌は不敵に微笑む……うん、大丈夫そうだな。

 

「イッセー様……」

「心配しなさんな、レイヴェル。皆一緒に帰ってくるから――――」

 

俺は心配そうな面持ちのレイヴェルを安心させようと言葉をかけたが――――

 

「ハンカチとティッシュはお持ちになられましたか? あちらで書類や色紙にサインを求められる事もあるやもしれませんから、ペンも常に懐にしまっておいてください。後、ブレスケアと歯ブラシも何時でも使えるようにしておいてください。有名人は歯が命です! 赤龍帝ハードスケジュールなのですから時間は有効にお使いくださいましね。それとですね――――」

「母ちゃんか!!!」

 

事細やか過ぎるって! 遠足に行く前の子供ですか!?

 

「だ、大丈夫だって。心配性だなぁ……」

「それもしょうがないと思うけどねん」

「シャラップ、黒歌」

 

何てやり取りをしていると、レイヴェルは小包を一つ渡してきた。

 

「これは先程お兄様から届いたフェニックスの涙ですわ。中に三つほどあるそうです。イッセー様がルーマニアに行くと知ったら急いで送ってくださいました」

「お、おう……」

 

野郎からの特急宅配便とか、どんな顔して受けとりゃいいんだ……?

っつーかこういうのはリアスに送った方が良いだろ! リアスここにはいないけどな!

 

「んじゃルフェイ。この家は任せたにゃん」

「はい、お任せください。あ、向こうでヴァーリ様や兄に会う事がありましたら、よろしくお伝えくださいませ」

「おう」

 

ルフェイちゃんにそう頷いておくと、今度はオーフィスが俺の裾を引っ張ってきた。

 

「どした、オーフィス」

「イッセー、気を付けて。邪龍はしつこいから」

「……あぁ」

 

…予感だけど、俺達は邪龍と遭遇する気がする。

恐らくはオーフィスもその予感を抱いてるんだろう……外れてほしい事を祈るばかりだ。

 

「よっし――――オカルト研究部、いざルーマニアに向けて……飛ぶぞ!!」

 

朱乃さんが操作する転移魔方陣は一層光を強め、弾ける。

 

 

向かうは吸血鬼たちの根城! 歴史の課外授業だぜ!!

 

 

 




令和ジェネレーションズ、見応えありました。

劇場音響で聞く《Break Down…》が個人的に大好きです……カッコよすぎました。
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