ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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1000%社長冗談抜きでウザくなってきました……


MAGIC177『明けの明星(ルシファー)

 

王の間から出た俺達は、用意された部屋まで案内されていた。

 

「…吸血鬼とは思えない異端な男だな」

 

マリウスとのやり取りで不機嫌な調子だった先生がぼそりと呟いた。

リアスもそれに同意するように頷く。

 

「えぇ、誇りや血統よりも己の欲求を満たすために動いている吸血鬼なんてそういないわ」

 

確かに……見た感じだとエルメンヒルデみたいな感じの吸血鬼とはかなり違うタイプだったな。

自分の欲望に忠実な吸血鬼か……まるで人間みたいだ。

 

「だからこそ、あの手合いは厄介だ。種族の定めたルールを全速力で突き破ってくるからな。このクーデターもそこから始まったんだろう。それに乗っかった者達が――――」

『あの貴族共と言う訳か』

「あぁ。マリウスが己の欲求の為に、政治家に協力者が必要だった。アイツに乗った政治家――――お偉い共は聖杯による強化と、現政府への不満解消を同時に叶えた。聖杯によって蘇らせた邪龍がいれば王側の打倒も容易かっただろうからな。……それらを行わせた切っ掛けは『奴』なんだろう……。鎖国されている国だからこそ可能な、腐った貴族とテロリスト共の宴だったわけだ」

 

鎖国してた国内でお家騒動、更にテロリストが加わって更に阿鼻叫喚!……うーん、笑えねぇな。

 

「そう言えば、本来のツェペシュの王様って今は何処に……?」

 

ふと疑問に感じた事を尋ねてみると、それはリアスが答えてくれた。

 

「…瀕死の重傷を負い、現在はこの領土から退避しているそうよ」

 

マジか……いや、あんなバケモンクラスの邪龍がボディーガードなんだ。どうしようもなかったんだろうな。

ツェペシュの王様がどんだけ強いのかは知らないけど、あんなのと相対したらと思うと……寒気が止まらないぜ。

 

「ツェペシュサイドはカーミラ以外に助けを呼んでないんですか?」

 

この問いには、先生が溜息を吐きながら答える。

 

「あぁ、呼んでないだろう。『禍の団』が裏で関わっている以上、他の勢力も介入しようと根強く交渉しているだろうが、今のところそれは叶っていない。特例で俺達は迎え入れられたがな」

『どこまで古臭い価値観に捕らわれる気だ』

 

ドラゴンの毒舌に、今回ばかりは思わず同意してしまう。

下手したら自分達も滅びちまうかもしれないってのに……。

 

「…あの娘、何と話してたの?」

 

黒歌の問いに、先生は目元を厳しくさせる。

 

「……あの世の亡者共だ」

 

亡者……。

 

「死んだ人間の魂……って事ですか?」

「それもあるし、それ以外の異形のものも……混在しすぎて元が何なのか、今がどういう状態なのか、それすらも分からない存在と話してたんだよ」

「随分曖昧にゃ」

「良く分からんモノと話してた、って思っとけば良い。……聖杯を酷使し過ぎたせいで相当な精神汚染が進んでいるな」

 

それは分かる。あの子の表情……まともなものじゃなかった。

 

「えぇ、私も直ぐにわかったわ。――――ヴァレリー・ツェペシュは心、感情を曖昧なものにしている、と」

 

亡者に魅入られたような状態……って事か。恐らく、俺達をちゃんと認識できていたのかも定かじゃない。

彼女は何処か、違うナニカを見つめていたのかもしれない。

 

「…ヴァレリーに一体何が」

 

ギャスパーは表情を曇らせる。……一番ショックを受けているのはこいつだ。

彼女の顔を見た時から、ずっと泣きそうな顔をしている。

 

『――――あれが聖杯の。生命の理に触れた代償か』

「……そうだ。生命の理に触れ、命とは、魂とは、それらがどういうものなのか、神器を使えば使うだけ、その『作り』を強制的に知る事になる。命の情報量ってのは、思っている以上に果てしなく膨大だ。聖杯を使う度に正者、死者、様々な者達の精神、概念、そんなものを取り込んでしまうのさ。自分の心に、魂にな……無数の他者の意識が心に流れ込み、侵食してきてみろ…………壊れて当然だ」

 

……以前までの覇龍と同じ、か。

あの時も心がどうにかなってしまいそうだった、だけどヴァレリーは――――それ以上の強烈なモノに強制的に触れさせられてるって事になる。

 

残留思念、怨念や無念、絶望といった歴代赤龍帝の先輩たちの嘗ての遺産……それ以上のものを溜め込んじまった訳だ。

 

「では、彼女は…」

 

ロスヴァイセさんの問いに、先生はちらりとギャスパーを見て、重くその事実を吐き出した。

 

「――――もう、普通の状態じゃない。亡者が話しかけてくるのもその特性の一端だ。奴等と楽しそうに話してる時点で、精神汚染は致命的なものになっちまってる。マリウスは、ヴァレリーに相当使わせたんだろう。…滅び去った邪龍を現世に蘇らせる程だ。その使い方は大規模で大胆、乱用も極まりない程にな」

「……ねぇ、イッセーは大丈夫なの?」

「え?」

 

先生の説明を旗で聞いてきた俺に、黒歌は心配そうに尋ねてきた。

 

「大丈夫って…」

「…あの陰の気、多分亡者が発する独自の気にゃ。あんたがそれに中てられる寸前で遮断したけど……」

「何……おいイッセーッ!」

 

黒歌がそう言った途端、先生は形相を怖くして俺に詰め寄ってきた。

 

「な、何すか?」

「お前…まさか亡者が見えてたのか?」

「いや、見えてたって言うか……」

 

俺も良く分かってないんすけど……言いあぐねている俺に痺れを切らしたのか、今度は肩を掴んできた!

 

「頼む、見たり、感じた事……何でも良い、ちゃんと話せ!!」

「ちょっと、アザゼル……!」

「え、えっと……見えてはいないんすけど…何か視線を感じた様な、気がし、て……」

 

余りに必死な様子だったので包み隠さずに話すと、先生は肩から手を離した。

 

「……そうか」

「ど、どうしたんすかいきなり?」

「……いや、済まない。俺とした事が、つい、な」

 

どうにも歯切れの悪い返答だ……一体どうしたんだ?

 

「そ、それよりもだ! ヴァレリーの事を何とか助けれる方法、これが最優先だろう」

「っ、助けられるんですか!?」

「……まずは聖杯、神器の活動自体を――――っ」

 

そこまで言うと先生は何故か口を噤んでしまった。

どうやら前方から誰かがやって来たかららしい。

 

やって来たのは銀髪の中年男性――――何故か、俺の脳裏にはヴァーリの顔が思い浮かんだ――――だがその男が来ている衣装、それは……

 

「魔王の、衣装……?」

 

俺がポツリと呟くと、目の前の中年悪魔はにんまりと笑う。――――それだけなのに俺の背筋には何やらうすら寒いものが駆け上がった。

 

先生の方を見ると……両目を見開き、さっき以上に激昂した様子で睨みつけていた。

 

「およよ? こいつぁ、奇遇だな♪」

 

軽い口調で先生に気軽に話しかけてくる……知り合い、か?

 

「……やっぱり、てめぇだったかっ!!」

 

先生は怨嗟に近い声音でそう吐き出すように聞くと、男は嬉々として受け入れた。

 

「んほほっ! おっひさぁじゃないのぉ!! アザゼルのおっちゃん、元気そうで何よりじゃん?」

「……アザゼル、誰なの?」

 

どうやらリアスも知らないらしい。

先生は絞り出すように答える。

 

「――――リゼヴィム。若いお前でも、この名は親から聞いている筈だ。グレモリーであれば知っていて当然の男だからな」

「っ!?………嘘、でしょ……!?」

 

リゼヴィム……? だ、誰だよそれ。聞いた事ねーぞ。

 

「……くそったれなテメェの面は絶対忘れられねぇよ、なぁ――――『リリン』、いや。リゼヴィム・リヴァン・ルシファーッ!!」

 

――――!?

 

る、ルシファー!? このおっさんが、何で魔王の名を…………っ。いや、もう一人いる。サーゼクス様以外にも、この名を名乗る奴は。

 

まさか、このおっさん………!

 

「そーんな怖い顔しなさんなって。老けちゃうぞぉ?」

「……先生。もしかしてこのおっさん、ヴァーリの……」

「……あぁ。正真正銘、前ルシファーと――――悪魔にとって始まりの母たる『リリス』の間に生まれた息子。『リリン』として聖書に刻まれた者――――イッセー、お前の考えている通り、現白龍皇たるヴァーリの、実の祖父だ」

 

やっぱり………! 道理で見覚えがある訳だ。しかも、前ルシファーの息子かよッ!!

 

『成程。悪魔達の中で、ルシファーの名が当別扱いされている理由が分かった』

 

…このおっさんの存在、って事か。

 

『前大戦以降から恐らく消息不明扱いとなっていて、しかもそれが今の悪魔社会のトップに位置するルシファーの真なる血族、おまけに母が『リリス』なんてビッグネームだ。下手に存在を公表しちまえば現政権体勢の悉くがあっという間にひっくり返っちまうほどの劇薬……だからこそ、ルシファーは冥界にとっては腫物でもあるんだろう』

 

…このおっさんも、シャルバ達と同じタイプなのか?

 

『そうは見えんがな』

「…こいつは、今の『禍の団』の首領だ。俺がここに来るまでの間、ずっと言っていた『あの野郎』が、こいつだ」

 

――――ッ!?

 

ちょ、ちょっと待て、この短時間でいろんな情報が出てきてパニックなんだけど!!

 

目の前のおっさんがルシファーでヴァーリの爺さん、しかもそのおっさんが今の『禍の団』を取り仕切ってるリーダー……てんこ盛り過ぎるだろっ!

 

首領だっていうならここにいるのも分かるけど……。

 

「過去、まだ前魔王の血族が冥界を支配していた頃、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーは当時のお兄様――――サーゼクス・グレモリーとアジュカ・アスタロト様と並び『超越者』として数えられていたわ」

 

『超越者』……悪魔という種を超えた力を持つ者達の総称――――今の悪魔社会ではサーゼクス様とアジュカ様がそれに該当する。

 

そしてその三人目は行方を晦ましていたらしいけど――――このおっさんが最後の一人ってか!

 

「おいおいおーい! アザゼルおじちゃん、ちゃんと教えなきゃノーノ―ノーでしょ? 天界にも嘗て、俺達と同じ――――『超越者』がいたじゃなぁい♪」

「……え?」

 

天界にも……『超越者』が?

 

先生はリゼヴィムの言葉に苦虫を嚙み潰した表情になるも、言葉を吐き出す。

 

「……その話はまた今度だ。お前は元々前魔王一派の中心の一角だった。現悪魔を引っ張るサーゼクスの様に種の存続、平和を願うタイプじゃない。だからこそ決裂した」

 

……まぁ、現在進行形でテロ組織の首領やってるしな。

絶対に話は合わないだろう。

 

「悪魔側の旧政府と反政府の内戦時、途中で姿を消した男が今になって……今更、旧魔王派の連中の如く現悪魔政府への怨恨じゃないんだろ…テメェが動く理由は」

「ひゃはははっ、ま、やりたい事が出来たから帰ってきたっつーだけだ。アザゼルおじちゃんも元気してた? なぁんか、全勢力と和平結ぼうとか言っちゃってるらしいじゃん? 俺、マジで応援したいわ~♪」

『ここまで邪気を隠さずにするのはある種爽快だな』

 

そんな事言ってる場合かよ! 確かにこんな言動されたら調子狂うけどさ!

リゼヴィムは今度はリアスへと視線を移した。

 

「よぉ、紅髪のお嬢ちゃん。お兄ちゃんは元気かな?」

「…お兄様に何か含むものでもあるのかしら?」

「まぁない訳じゃねーな。同じルシファー名乗ってんだしぃ。けどね、どうでも良いっちゃーどうでも良いんだけどね。いずれ会いそうだからよろしく言っておいてちょーだいね♪」

「……っ」

 

ふざけた発言にリアスも眉間に皺を寄せていた。

 

……この周りが敵だらけというのに、当のリゼヴィムは戦闘態勢を取る様子も見せなかった。

いや、コイツから発せられるオーラは今までの奴とは別次元のものだってのは分かる……俺達なんて相手にすらならないんだろう。

 

現にこの状況すらケラケラと笑うだけだ。

 

「ま、シャルバ君や他の前魔王の血族みてーに憎悪やら、怨恨やらで動いている訳じゃねぇさ。悪魔の政治なんざ、サーゼクス君たちだけで十分だろうしぃ? 俺は俺で別のやりたい事を、この組織を使って実行したいだけなんだよー?」

 

先生が米神に血管を噴出させながら憎々しげに言う。

 

「…ここでお前をぶん殴ってそれの邪魔をするってのもアリなんだが……ここは俺達の取ってまだ正式に協力関係を結んでいない中立の国だからな。簡単に手を出す訳にもいかないか。どうせこの国での表面上は、VIP扱いなんだろうからな」

 

先生の問いにリゼヴィムは不快な笑みを漏らす。

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃっ、さーすがはアザゼルおじちゃん、大・正・解! 俺はマリウス君の研究と革命の出資者でね。今の暫定政権に取っちゃ国賓扱いなのですよ。ここで俺に手を出すのは得策じゃねーな。ま、負けるつもりもねーけど?」

 

……背後ッ!

 

何者かの気配を察すると、リゼヴィムの背後から小さな人影が現れていた。

 

背が低く、黒いゴスロリ服に身を包んだ――――って!

 

「オーフィス!?」

 

そう、それは今兵藤家にいる筈のオーフィスだったのだ。

いや、正確に言えば、オーフィスと瓜二つの少女だ。

 

『…その娘、まさかオーフィスの』

「そ! 奪ったオーフィスの力を再形成して生み出した我が組織のマスコットガール――――その名もリリスちゃん! 俺のママンの名前を付けてみたのよ、良いでしょ~、キュートでしょ~?」

「……」

 

オーフィス以上に感情を感じられない、初めて会った時のオーフィス以上に……いや、そもそも感情という概念があるのかも分からない。

 

「この子、ちっこいけど、腐ってもオーフィスちゃんだから、めっちゃ強いよ? 僕ちゃんの専属ボディーガードでもあるの~。ユーグリットが留守の間はこの子が僕ちゃんを守ってくれます! おじさん感激ィ! ちっこい子が強いってロマンあるくない?」

 

……確かにリゼヴィムの言う通り、僅かに劣るかもだけど、このオーラは間違いなくオーフィスのそれだ。

さっき出会ったクロウ・クルワッハと同じく、俺達じゃ相手にならないだろう。

 

「んじゃ、俺はマリウス君にお話があるのでここを通らせてもらうよーん。ここでは平和に過ごしましょうねぇ~、ここはヴァンパイア君のお家ですから~。喧嘩はよくありませーん。プライドが高くて、鎖国なお国は最高です♪」

 

……アザゼル先生の言う通り、VIPとしてこの国に招かれてるこいつに手を出せば、かなり不味い事態になってしまう。

 

……かなり悔しいが、俺達は何もせずにただ奴が通るのを見るしかなかった。

 

リゼヴィムが去って行く中で、先生は奴の背中に告げる。

 

「…リゼヴィム、ヴァーリがお前を狙っているぞ」

「あーあー、そういやー、俺っちの孫息子君をグリゴリが育ててくれたんだったな」

 

リゼヴィムは振り返ると、にやけ面を見せる。

 

「ちったぁ強くなったん? 俺んちの愚息――――アイツの父親よりは強かったけどさ」

「いずれお前の首も取れるだろうさ」

 

それを聞くと、リゼヴィムは更に笑みを深くする。

 

「わーお、そりゃおじいちゃんも感激しちまうなァ」

 

そう言うと、リゼヴィムは俺を視線で捕える。

 

「現赤龍帝君かぁ~、ほーほー……良い感じになってんじゃねェかァ? 白い魔法使い君も嬉しいんじゃなぁい?」

「っ、白い魔法使いを知ってるのか!?」

 

何でこいつが白い魔法使いを知ってんだッ!?

 

「ま、繋がりがある訳じゃねーさ。個人的な知りあい、ってヤツ。白い魔法使い君も、ユーグリット君も、君にご執心みたいだからねぇ。特にユーグリット君なんて君に大分執着してんぜ?……いやぁ~、ありゃおじさんでもちょっと引いちゃうぐらいだけどな」

「何……?」

 

男に執着されても嬉しくねぇっての!!……いや違う、何で白い魔法使いといいユーグリットといい俺に執着すんだよ?

 

俺、そんな特別な奴じゃねーぞ?!

 

リゼヴィムはうんうんと頷くと、踵を返して先へと進んでいく。

 

吸血鬼(カーミラ)と結託してクーデター返しをするなら、何時でも良いぜぇ♪ すっげぇ期待してっから」

 

リゼヴィムが去って直ぐに――――盛大な破砕音が響き渡った。

 

見れば、先生が廊下の壁を拳で破壊していた。

 

「……ヴァーリ、お前の気持ちを理解できて仕方ないぜっ」

 

魔境と化しているツェペシュ本城――――。

 

 

俺達は、用意された部屋に移動した後で、地下室にいるというヴラディ家の当主――――ギャスパーの親父さんに会いに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 




バレンタインは悪い文明
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