ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
次の日、俺達グレモリー眷属は広い庭の一角に集まっていた。
服装は皆ジャージ。アザゼル先生もジャージ姿……とは珍しい。
庭に置かれているテーブルと椅子に皆揃って早速修行開始前のミーティングって訳だ。
いやぁ、ワクワクするなぁ!
「最初に言っておく。今から俺が言うのは将来的な物を見据えてのトレーニングメニューだ。直ぐに効果が出る者もいるが、長期的に見なければならない者もいる。ただ…お前らは成長中の若手だ。方向性を見誤らなければ良い成長をするはずだ。先ずはリアス」
アザゼル先生に呼ばれた部長はスッと立ち上がる。
「お前は最初から高スペックの悪魔だ。このまま普通に暮らしていてもそれらは高まり、大人になる頃には最上級悪魔の一角になってるだろう。だが、将来よりも今強くなりたい…それがお前の望みだな?」
「えぇ。もう二度と負けたくないもの」
多分、ライザーとの戦いの事だよな……ま、非公式でも俺ももう負けたくないからな。
「なら、この紙に記してある通りのトレーニングをこなせ」
先生が紙を手渡すも、部長は首を傾げる。
「これって、特別凄いトレーニングではないと思うのだけれど……」
「そりゃあな。そこに書かれてるのは基本的なトレーニングだ。お前はそれで良い。総合的に高い水準だからな。問題は『
「……?」
『要するに、甘さを捨てろって事だろう?アザゼル』
「……っ」
ドライグの発した一言に部長の顔は強張る。
だがアザゼル先生は「その通り」と頷いた。
「『
「冷徹さ……?」
部長はピンと来てない様子だが、俺には何となくアザゼル先生が言いたい事が分かる。
「お前のその優しさは最大の美点であると同時に弱点でもある。下僕がやられただけで取り乱す様じゃ『
「で、でも…………一人でも欠けての勝利なんてっ!」
「それが“甘い”んだ。そんな綺麗事を達成できる程、レーティングゲームの上位君臨者は甘くねぇ。そう言った意味では、お前はライザー・フェニックスよりも未熟だ。仲間がやられても動じるな。頭のお前が動じれば、手足の眷属達にも伝染する。何事にも動じない心ーーーーそれが今のお前に足りない物だ」
「…………」
部長はぐうの音も出ずに引き下がるが、やはりその顔はまだ納得出来ない、と言った感じだ。
でも部長には悪いけど、そこは直さなきゃいけない事には俺も賛成だ。恐らく、皆も。
部長は優しいーーーーいや、優しすぎる。
だからこそ、それを直さなきゃいけない。
仲間がやられて動揺するのは百歩譲って良いけど、それを心配するないし或いは激昂して身を滅ぼす様じゃ駄目って事だ。
俺達下僕は基本『
その仲間に対して一々心配の声を上げるんじゃ、俺達が必死こいて動いた意味も無くなっちまう。
だからこそ、部長には俺達を使い捨てにする程の冷徹さを身につけてほしいとは、常々思ってた所だ。
『情愛の深いリアス・グレモリーに対して情愛を捨てろとは難題だが、そうでもしなければ強くなれん。この特訓でそれを身につける他あるまい』
だよな。
「次に朱乃」
「……はい」
おおう、何時になく不機嫌な御様子だ。
多分、お父さん絡みだろうなぁ。
「お前は、自分の中の血を受け入れろ」
「っ!」
朱乃さんもストレートに言われた為か、顔をしかめる。
が、アザゼル先生は容赦なく続ける。
「フェニックス家との一戦、見させてもらったけどよ……何だあの様は?本来のお前のスペックなら敵の『
そっか。朱乃さん堕天使の力も使えるから光の力も使える訳か。
けど朱乃さんは複雑きわまりない様子で言葉を紡ぐ。
「……私は、あの様な力に頼らずとも」
「そんなんで強くなれるほど、現実は甘くねぇ。否定は、己を弱くする。良いか?お前は自分を全て受け入れろ。でないと、お前は後の戦闘で邪魔になる」
「…………」
朱乃さんは何も言わずに引き下がったけど、やらなきゃいけない事だけは分かるだろう。
「次は木場だ」
「はい」
「お前は
「え……?」
アザゼル先生はにんまりと笑い、俺を指差した。
「イッセー。ドライグから聞いたぜ?お前、中学時代に一日
「ドライグ、何時話したんだよ……」
『昨日お前が風呂で倒れた時だ』
「……イッセー君は、どういう風にして特訓したんだい?」
「ん~……風呂と飯と寝る時以外はずっと
イヤー、大変だったな。
箸とか何本折ったか。
「コツは……そうだな。あんまり力むなって事ぐらいかな?力むと余計に力が入って却って長持ちしないからな。呼吸をするようにそれを当たり前の様に少しずつ馴染ませる。そんぐらいかな?」
「力むな、か……有り難う、参考にさせてもらうよ」
まぁ、全部ドライグからの受け売りだけどね。
「剣系
「はい。一から指導してもらうつもりです」
へぇ、コイツにも師匠とかいたんだな。
「次にゼノヴィア。お前はデュランダルを今以上に使いこなせる様になることと……もう一本の聖剣に慣れて貰う」
「もう一本の、聖剣?」
「あぁ、ちょいと特別な剣だ。ま、楽しみにしとけ」
アザゼルは次にギャスパーを振り向く。
「うーし、ギャスパー」
「は、はぃぃぃぃ!!」
朝っぱらからビビってどうするよ、ギャスパー……。
「そうビビんな。お前はその恐怖心を克服させる」
恐怖心……
「先生、もずく風呂ですか?」
「イッセー、ボケるならもうちょい場を弁えてくれ。コイツ、ちょっと信じかけてるから」
「も、もずく風呂に浸かるんですか……?」
「ちゃうちゃう。お前には専用の『堕天使特性!引きこもり脱出計画!これで気になるあの子も開放的!?』を組んだから、そこで先ずは真っ当な心構えを身に付けてこい。それが全部出来なくても、最低限人前に出てもビビらないようにしろ」
最後の気になるあの子も開放的!?とかはいるのかねぇ…………?
『昔のやっすいエロゲでありそうでない感じだな』
まぁ、有りそうだな。
「はぃぃぃぃ!!当たって砕けろの精神で望みますぅぅぅぅ!!」
『本当に砕けそうだな……』
止めろよドラゴン……俺もおんなじ事思ったけどさ。
「よし、続いてはアーシアだ」
「はい!」
おー、気合い入ってるなぁ。
前に一度、自分が役に立ってないかもしれないと告白された事があったけど……そんな事はないぜ。
アーシアの回復力がなきゃ、危ない場面もあったし。
「お前も基本的なトレーニングだな。基礎はイッセーと一緒にやってるらしいから問題はない。メインは
「強化…ですか?」
アーシアは可愛らしく首を傾げる。
もう、可愛いなぁ。
「あぁ。回復能力はすげぇスピードだと思うが、問題もある。『触れなきゃ』出来ないって点だ。仲間が怪我してんのに、態々走らなきゃ回復できない」
そう言うことか…………。
「もしかして、アーシアの
部長の言葉は、今正に俺が確信したのと同じ答えだ。
先生はそれを肯定する。
「ご名答だ、リアス。ま、裏技みたいなもんだがな」
つまり……回復範囲を広げれる事だ。
これなら動かなくても瞬時に回復出来るし、アーシアが余計に動いて敵にそこを突かれるリスクもない……アーシア、ちゃんと役立てるぜ!
けど、そこにも問題はある。
「だが、問題もある。敵味方の判別が出来ずに回復させてしまうかもしれない所だ」
「……優しさ、ですか?」
俺の問いにアザゼル先生は真剣な面持ちで頷く。
「アーシアは戦場で敵の怪我を視認したとき、ソイツの回復もしてやりたいと思ってしまうだろうな。それが敵味方判別の
アーシアの範囲拡大は、敵のダメージもなかった事にしかねない……それほど、アーシアの神器は凄まじい回復能力だからな。
「だから、もう一つの可能性を見出だす。ーーーー回復のオーラを飛ばす力だ」
「飛ばす……宇宙のチリになれーーーーっ!!って感じですか?」
アーシアは叫びながら飛ばすジェスチャーをする。
可愛いけど…………何で台詞チョイスがべジータ?
『ご丁寧にギャリック砲の構えだしな』
「そうそう、直接飛ばす感じだ。今の台詞はいらないからな」
「アーシア、大活躍待ったなしだぜ!」
アーシアは驚きながらも嬉しそうな様子だ!
「直接触れるよりは力は落ちるだろうが、それでも十分に戦略性が幅広くなる。前線に一人二人飛び込ませて、後方で回復のアーシアとアーシアを護衛する誰かを配置すりゃあ、理想的なフォーメーションが組めるだろうさ」
それを聞いてアーシアは拳を作り、特訓に意気込んでいた。
うむ、頑張れよアーシア!
「うし、基礎トレーニング、サボるなよ?」
「はい!頑張ります!」
「よーし、その意気だ!……っと、次は小猫だ」
「…はい」
お、小猫ちゃん妙に張り切ってるな。
そういやここんとこ元気ない感じだったけど、大丈夫なのかな?
「お前はオフェンス、ディフェンス、『
「…………分かっています」
小猫ちゃんは悔しそうな表情を浮かべていた。
「リアスの眷属でトップのオフェンスはイッセーだ。次点で木場とゼノヴィア。『
「…………」
小猫ちゃんは黙りになりながら話を聞いていた。
「小猫、お前も他の連中同様に基礎の向上だ。その上で、お前が封じてる物をさらけ出せ。自分を受け入れなきゃ、成長出来やしねぇのさ」
「………………」
小猫ちゃんはーーーー何も答えなかった。
さっきまでの気合いも、「さらけ出せ」ーーーーこの一言で消え去った。
力って……小猫ちゃん、何を抱えてるんだ?
「さて、最後はイッセー。お前だが……………そろそろなんだがなぁ」
空を見上げて呟く先生……何が降ってくるんだ?
眷属や俺も空を見上げるとーーーーどデカい影が差した!!
ドォォォォォォンッ!!!!
うおお!?
驚く間もなくそれは轟音を轟かせ着地した!
砂埃が晴れてそこにいたのはーーーー
「ドラゴン!!」
「そうだイッセー。コイツはドラゴンだ」
うぉぉ、カッケー!!
「アザゼル、よくもまぁ悪魔の領土に堂々と入れたものだな」
すげぇ、喋れるんだ!
しかもダンディー!
「ハッ!ちゃんと魔王様の許可は取ってるよ、文句あるか?ーーーータンニーン」
「ふん、まぁ良い。サーゼクスの頼みと言うから来てやったんだ。そこは忘れるなよ、総督殿」
「わーってるよ。てな訳だ、イッセー。コイツがお前の先生だ」
え、
「えぇぇぇぇ!?このドラゴンが!?」
「ん?このオーラは…………久しいな、ドライグよ」
ドラゴンは俺の方ーーーーいや、恐らくは俺の中に語りかける様に話しかけてきた。
すると、俺の左手が赤く輝き、
『よぉ、懐かしいな。タンニーン』
「ドライグ、知り合いか?」
俺が聞くと、ドライグは肯定する。
『あぁ。コイツは元龍王の一角だ。前に『五大龍王』の事を話したろ?タンニーンは『六大龍王』だった頃の龍王の一匹だ。聖書に記された龍をタンニーンと言うのだが、コイツを指している』
へぇ、そういやティアも龍王だったな。
「タンニーンが悪魔になって、『六大龍王』から『五大龍王』になったっけな。今じゃ、転生悪魔の中でも最強クラス。最上級悪魔だ」
ドラゴンからも悪魔になれるんだな!
それに、転生悪魔でも上を目指せる…………うん、良いねぇ!
「『
えぇ…………さ、流石にヤバくねぇか?
「見たところドラゴンのオーラは申し分ない。恐らく、
「それじゃあ今回の目標には到達できん。それに、ドラゴンの修行と言えばーーーー」
「元来から実践方式。成る程、俺にこの少年をもっと苛めぬけと言うのだな」
「そゆこと。後もう一人いるんだ」
「何?」
「変わってないな、タンニーン」
と、俺の後ろから女性の声が聞こえたーーーーって、
「ティア!?」
「……ティアマット。お前、冥界にいたのか?」
「いや、今はこの男の使い魔だ」
「…………ハッハッハ!ドライグを嫌っていたお前が、赤龍帝の使い魔か!」
「笑うな。それに私はドライグに使えるんじゃない。イッセーに使えるんだ」
そう言ってティアは俺を背後から抱き締めるが……おっぱいが当たってる!当たってる!!
「ほぅ、お前がそこまで入れ込むのか。益々興味が沸いたぞ、少年」
「せ、先生……流石に二人相手は
龍王だろ!?死ぬって!
「あぁ、イッセー。お前の特訓に一つ制約を課す」
「な、なんすか」
「お前、
…………………………は?
「や、ちょ、言ってる意味が理解できないんすけど…………」
「お前の新しい力を目覚めさせるには、オーラが分散される
「まるで意味が分からんぞ!!」
俺が叫ぶも、二人は既にノリノリだ。
「安心しろイッセー。ちゃんと手加減はしてやる」
「クックック。ドライグを宿す者を鍛えるのは初めてだな……だが、面白そうだ!」
止めて!俺死んじゃう!!童貞卒業する前にあの世行きだよ!!
が、俺は首根っこをタンニーンのおっちゃんに掴まれる!
「リアス嬢。あそこに見える山を貸してもらえるか?そこで特訓を始める」
「えぇ、沢山鍛えてあげて」
「任せろ」
え、何?あれが俺の死に場所!?
冗談じゃねぇーーーー!!!
「イッセー、気張りなさい!」
「そりゃないっすよ部長ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
拝啓、天国の父さん、母さん。
俺、もしかしたらそっちに逝くかもしれません…………皆の希望になりきれなかった、非力な私を許してください
『『許してやるよぉ!!』』
揃ってベクターの物真似するんじゃねぇ!!!
山を己の死に場所と定めた少年は、己の身を焦がす程の焔を喰らいながら、二体のドラゴンに立ち向かう!
そして少年は、魔王を目指す一人の青年と出会う!
そして少年は聞くーーーー悲しき猫娘の真実を。
MAGIC44『薄幸の白猫』
イッセー「いたいけな少女の過去に咽び泣く男!スパイダーマッ!!」