ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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もう盆休みも折り返しですね。

終わるまでに頑張って投稿します


MAGIC57『怒りの進撃・後編』

神殿の入り口に入るなり、皆はオーディンの爺さんから受け取った通信機器を取り付ける。

 

『無事か?こちらアザゼルだ。オーディンの爺さんから渡されたみたいだな』

 

聞こえた声はアザゼル先生だ。

 

『言いたいこともあるだろうが、まずは聞いてくれ。このレーティングゲームは『禍の団』旧魔王派の襲撃を受けている。そのフィールドも、近くのVIPルーム付近も旧魔王派の悪魔どもがうじゃうじゃしている。だが、これは事前にこちらも予想していたことだ。現在、各勢力が協力して旧魔王派の連中を撃退している』

「予想していた?どういう事だ?」

 

先生の言葉にゼノヴィアが怪訝な表情で問う。

 

『リアスの耳には入っているだろうが、最近、現魔王に関与する者たちが不審死するのが多発していた。裏で動いていたのは『禍の団』旧魔王派。グラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしたのも実際は旧魔王派の連中が手にかけてたってわけだ』

 

グラシャラボラスの次期当主候補は『禍の団』に殺害されたのか……。

恐らく、現魔王の血筋だから狙われたのだろうな。

 

だが、どうしてディオドラの糞野郎が『禍の団』に?

 

『首謀者として挙がっているのは旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫。俺が倒したカテレア・レヴィアタンといい、旧魔王派の連中が抱く現魔王政府への憎悪は大きい。このゲームにテロを仕掛けることで世界転覆の前哨戦として、現魔王の関係者を血祭りにあげるつもりだったんだろう。ここにはちょうど、現魔王や各勢力の幹部クラスも来ている。テロリストどもにとって襲撃するのにこれほど好都合なものもない』

 

つまり、俺達の試合は最初から旧魔王派に狙われていたって訳か。

 

敵のターゲットは現魔王と現魔王の血縁者―――部長。そして、観戦しに来ていた各勢力の頭であるオーディンの爺さんもターゲットの一人だったのだろう。

 

「では、あのディオドラの魔力が以前よりも上がったのは?」

 

部長が先生に問いかける。

 

『『禍の団』に協力する代わりにオーフィスの『蛇』を受け取ったんだろう。『蛇』をもらったやつは三流のやつでも一流並みの力量を得ることが出来る。・・・・・まぁ、ディオドラがそれをゲームで使ったことは奴らも計算外だっただろうがな。そのおかげで今回のことを予見できたわけだが』

 

………オーフィスの奴。

でも、アイツはこの混乱だってどうでもいいってスタンスなんだろう。

 

 

――――自分の故郷に帰る為に。

 

 

 

『成程。あの異常なパワーアップはその為か』

 

ドライグの納得した声が響く中、先生からの通信は続く。

 

『あっちにしてみればこちらを始末できればどちらでもいいんだろうが、俺たちとしてもまたとない機会だ。今後の世界に悪影響を出しそうな旧魔王派を潰すにはちょうどいい。現魔王、天界のセラフたち、オーディンのジジイ、ギリシャの神、帝釈天とこの仏どもも出張ってテロリストどもを一網打尽にする寸法だ。事前にテロの可能性を各勢力のボスに極秘裏に示唆して、この作戦に参加するかどうか聞いたんだがな。どうつもこいつも応じやがった。どこの勢力も勝ち気だよ。いま全員、旧魔王の悪魔相手に暴れているぜ』

 

どの勢力もテロには屈しない姿勢というわけだ。

ま、そりゃそうだな。

 

「……このゲームはご破算ってわけね」

『悪かったな、リアス。戦争なんてそう起こらないと言っておいて、こんなことになっちまっている。今回、お前たちを危険な目に遭わせた。一応、ゲームが開始する寸前までは事を進めておきたかったんだ』

「もし、私たちが万が一にも死んでしまったらどうするつもりだったんだ?」

 

ゼノヴィアが何気なく聞くと先生は真剣な声音で言った

 

『もしそうなった場合は俺もそれ相応の責任を取るつもりだった。俺の首でことが済むならそうした』

 

―――先生は死ぬつもりだったんだ。

そこまで覚悟して、旧魔王派の連中をおびき寄せたのだろう。

 

俺は先頭を走りながら先生に通信を入れる。

 

「先生。アーシアがディオドラの野郎に連れ去られました。取り敢えず俺達はアーシアを助けに行きます!」

『―――っ。そうか、一足遅かったか……。止めろって言っても聞かんのは分かってる……だが、くれぐれも気をつけてくれ。このフィールドは『禍の団』所属の神滅具所有者が作った結界に覆われているために、入るのはなんとかできるが、出るのは不可能に近いんだよ。―――神滅具『絶霧(ディメンジョン・ロスト)』。結界、空間に関する神器のなかでも抜きんでているためか、術に長けたオーディンのクソジジイでも破壊できない代物だ』

「了解です!」

 

まっさかテロリスト勢に神滅具使いがいるとはな………けど、引くつもりはないっ!

 

『最後にこれだけは聞いていけ。奴等はこちらに予見されている可能性も視野に入れておきながら事を起こした。つまり、多少敵に勘づかれても問題ない作戦があると言うことだ』

「つまり、相手は隠し玉を持っている可能性があるということですか?」

 

木場がそう問いかけると、先生は肯定の意を返した。

 

『そういうことだ。それが何なのかはまだ分からないが、このフィールドが危険なことには変わりはない。ゲームは停止しているため、リタイヤ転送は無い。だから、十分に気をつけてくれ』

 

そこで先生との通信は終わった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

ステージの神殿を抜けると前方に新たな神殿が現れ、俺達はそを目指す。

それを何度か繰り返していくうち、とある神殿の中に入ったときーーー気配を感じた。

 

 

俺達はそこで足を止める。

 

前方から現れたのは――――フードを深く被ったローブ姿の小柄な人影か十名ほど。

ディオドラの眷属だ。

 

『やー、リアス・グレモリーとその眷属の皆』

 

ディオドラの声が神殿に響く。

 

ドライグ、あの野郎は動いてないか?

 

『あぁ、恐らくは魔力による通信だろう。あの糞野郎は微動だにしてない』

 

ドライグの声音には僅かだが怒りが混じっている。

ドライグもアーシアの事は気に入っている。だからこそアイツが気に食わないんだろう。

 

その気持ちは十分に理解できるぜ、相棒。

 

『じゃあ、役者も揃ったことだし、ゲームをしよう。中止になったレーティングゲームの代わりだ』

 

ゲーム、ねぇ………アーシアを手元に置いてるからか、ちょっと調子に乗ってるな?

まったく人をムカつかせるのが得意な野郎だぜ。

 

『お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。一度使った駒は僕のところへ来るまで二度と使えないのがルール。あとは好きにしていいんじゃないかな。第一試合、僕は『兵士』八名と『戦車』二名を出す。ちなみにその『兵士』たちは皆すでに『女王』に昇格しているよ。ハハハ、いきなり『女王』八名だけれど、それでもいいよね? 何せ、リアス・グレモリーは強力な眷属を持っていることで有名な若手なのだから』

「……いいわ。あなたの戯言に付き合ってあげる。私の眷属がどれほどのものか、刻み込んであげるわ」

 

まぁ、向こうはアーシアっていう人質を持ってる。

下手に刺激したらアーシアに何仕出かすかわからんからな。

 

とは言え、いきなり半数ブッコムとか……アイツ、ホントにそんな戦術で戦う気かよ?

 

バカじゃん。

 

部長は息を吐くと小猫ちゃん達に視線を向ける。

 

「イッセーを出すまでもないわ。私達は小猫、ギャスパー、ゼノヴィアを出すわ。今名前を呼んだメンバーは集まってちょうだい」

 

小猫ちゃん、ギャスパー、ゼノヴィアは部長のもとに集まる。

 

「ゼノヴィア。あなたには『戦車』の殲滅を頼むわ。思いっきりやっていいから。全部ぶつけてちょうだい」

 

「了解だ。いいね、そういうのは得意だ」

 

部長がそう言うと、ゼノヴィアは不敵な笑みを浮かべる。

まぁ、制限なしのこいつなら『戦車』の二人くらい余裕だろ。

 

「『兵士』は小猫とギャスパーに任せるわ。オフェンスは小猫。仙術で練り込んだ気を相手に叩き込んで根本から断つ。ギャスパーはイッセーの血を飲んでサポートに回ってちょうだい」

「……了解」

「了解ですぅ!」

 

二人はそれぞれ頷いた。

俺は親指を歯で噛んで血を出すと、ギャスパーに差し出した。

 

ドクンッ!

 

よーし、これでOK………の前に、

 

「ゼノヴィア、使え」

 

俺は籠手からアスカロンを取り出すと、ゼノヴィアに向けて投げ飛ばした。

アスカロンはゼノヴィアの目の前に突き刺さった。

 

「……有り難く使わせてもらうよ」

『じゃあ、始めようか』

 

ディオドラの声と共に奴の眷属が一斉に構えだした。

 

それと同時に、ゼノヴィアはデュランダルを解放すると、アスカロンと二刀流の構えをして、『戦車』二名の方へ歩み出した。

 

「アーシアは返してもらう」

 

ゼノヴィアの全身からかつてないほどのプレッシャーが放たれていた。

歩みはゆっくりだが、身を覆うオーラは力強く、その眼光は鋭い。

 

「……私は友と呼べる者を持っていなかった。そんなものがなくとも、神の愛さえあれば生きていける、と」

 

『戦車』二名がゼノヴィア目掛けて走り出す。

しかし、ゼノヴィアは動じずに独白を続ける。

 

「そんな私にも分け隔てなく接してくれる者達ができた。特にアーシアはいつも私に微笑んでくれた。出会った時に酷いことを言ったのにも関わらずだ。アーシアは何事もなかったかのように話しかけてくれた。それでも『友達』だと言ってくれたんだ!」

 

ゼノヴィア……。

 

「だから、助ける! 私の親友を! アーシアを!」

 

 

ドンッ!

 

ゼノヴィアの想いに答えるかのようにデュランダルとアスカロンから絶大なオーラが発せられる!

その波動はゼノヴィアに攻撃を仕掛けようとした『戦車』の二人を弾き飛ばした。

 

ゼノヴィアは二本の剣を振り上げると涙まじりに叫んだ!

 

「だから、だから頼む!デュランダル!アスカロン!私の親友を助けるために!私に力を貸してくれ……いや、私に力を貸せぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

二本の聖剣から迸るオーラは、留まる事を知らずに溢れ続ける!

ゼノヴィアはそのオーラを御すると、極太の光波を放った!!

 

「聖牙天衝・双覇斬ッ!!!」

 

ザバァァァアアアアアアアアアアアッッ!!

 

二つの大浪とも言える聖なる波動は、『戦車』二名を悲鳴ごと飲み込んでいった!

 

 

 

 

ドオオオオオオンッ!!

 

 

神殿が大きく揺れ、砂誇りが舞う。

 

揺れが収まったとき、俺の視界に映ったのは、ゼノヴィアの前方に伸びる二本の大きな波動の爪痕。

その先にあった柱や壁は全て消失している。

 

これがセーブ無しのゼノヴィアの攻撃か……。

木場が言っていた光波による攻撃……とは言え予想以上の一撃だ。

 

ただ、ゼノヴィアは肩で息をしている。

流石に連発は無理か。

 

……昨日言ってた才能の話だけど、そのパワーは木場には出せない。

それはお前の魅力的な才能だと思うぜ、ゼノヴィア?

 

 

 

残る小猫ちゃんとギャスパーの方は……二人の方に視線を移すと、ギャスパーは複数のコウモリに分身して、小猫ちゃんは猫耳を出した状態で体の表面を青白く輝かせていた。

仙術による気を纏っている。

 

八人の『兵士』は一斉に小猫ちゃんに襲いかかるが、だけど小猫ちゃんは特にその無表情を崩すことなく、相手の気配を読んで全ての攻撃を捌いていた。

 

小猫ちゃんは自分の力を扱いきれるように日々努力している。

それに最近は多人数との戦闘を想定して俺のドラゴタイマーの分身と戦闘してることも影響してるな。

 

今回はその成果が見られる。

多分、ここにいる全員、このぐらいの力量相手なら無双ゲーだな。

 

攻撃が掠りもしないので、相手の『兵士』達は徐々に焦りを見せ始めている。

すると、数人の『兵士』の動きが止まった。

 

『小猫ちゃん、停止している間に相手を無力化するですぅぅぅ!!』

 

ギャスパーが邪眼の力を活用して相手の動きを止めたんだ。

他の『兵士』も停止させられ、小猫ちゃんは次々に停止した『兵士』を掌底で殴り飛ばしていく。

 

ギャスパーが停止させている間に小猫ちゃんが気を纏った攻撃を撃ち込む……理想的なコンビネーションだな。

こりゃ、近接戦では最強のコンボだな。

 

若しくは俺の龍牙雷光で一網打尽とかな。

 

小猫ちゃんに気を乱された相手は魔力を練ることも、立ち上がることも出来なくなる……つまり、小猫ちゃんの攻撃をくらった『兵士』八名は崩れ去り、その場に倒れて動かなくなった。

死んではいない。

 

ただ、起き上がれないだけだ。

 

数ではこちらが完全に不利だったはずが、結果はこちらは無傷。

それも相手を瞬殺している。

 

圧倒的じゃないか。

 

戦闘を終えた三人が帰ってくる。

 

「……終わりました」

「修行の成果が出せていたわね。流石よ、三人とも」

 

部長が誉めると三人は嬉しそうに微笑みを浮かべた。

 

 

さて、とりあえずは一勝だ。

俺達は次のステージに進んだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

次に俺達を待っていたのは――――敵三名の姿。

全員、ローブを纏っている。

 

なんで敵はローブ羽織るのが好きなのかねぇ……?

 

「待っていました、リアス・グレモリー様」

 

三名のうちの一人がローブを取り払う。

あの人は確か、ディオドラの『女王』。

 

おー、美人さんだな。

とは言え、あの『女王』の人はかなり強かったのは覚えてる。

後の二人は、『僧侶』の女の子だ。

 

「あらあら、では、私が出ましょうか」

 

そう言って一歩前に出たのは朱乃さん。

 

「あとの『騎士』二人は祐斗がいれば十分ね。私も出るわ」

 

と、部長も前に出た。

おぉ、ここで二大お姉さまのタッグか!

 

「あら、部長。私だけでも十分ですわ」

「何言っているの。いくら雷光を覚えても、無茶は禁物よ。ここは堅実にいくのが一番だわ」

 

雷光と滅びの力。

どちらも強力な性質を持つ。

更にはそれを扱う二人も強くなっているから、威力は絶大だ。

 

それが共闘する。

この勝負も余裕で勝てそうだ。

 

すると、小猫ちゃんが俺をちょんちょんと小突く。

 

ん?

どうした小猫ちゃん?

 

小猫ちゃんは俺にしゃがむように促し、耳元に小さな声で耳打ちしていく。

………ふむふむ、なるほど。

 

「……それでいいの?」

 

とは言え、俺の精神状態でそれを言うのはちょっと躊躇われるんですけど……。

 

「…はい。これなら朱乃さんがパワーアップします」

 

別にパワーアップいらないと思うんだけど……まぁ、良いか。

少しでも無傷で勝てるならそれに越したことはないしな。

 

「朱乃さーん」

 

俺が呼ぶと朱乃さんが振り向く。

 

「えっと、その人達に完勝したら、今度の日曜デートしましょう!……これでいいの小猫ちゃん?」

 

俺が小猫ちゃんに尋ねるとコクコクと頷く。

いや、俺なんかのデートなんて逆に怒っちゃうんじゃ………

 

 

バチッ!!バチチチチチチッ!!!

 

 

……気のせいか、何かすんごく激しい音が聞こえたなー。

 

『相棒、あれあれ』

 

………はぅあっ!!

そこにはやっぱりというか、凄まじいほどの雷光を纏った朱乃さんがいました……。

 

「……うふふ。うふふふふふふふ!イッセー君とデート!」

 

え、えぇぇぇぇぇぇぇ………?

マジでパワーアップしちゃったよ、オイ!

 

だって普段以上だもん、このオーラ!

 

「酷いわ、イッセー!朱乃だけにそんなこと言うなんて!」

 

ちょ、今度は部長が涙目で俺に訴えてきた!

何、俺が悪いのか?教えてー偉い人ー!!

 

「うふふ、リアス。これは私の愛がイッセー君に通じた証拠よ。さっきだって、『俺の朱乃お姉さま』って言ってくれたわ。これはもう確定なのではないかしら?」

「な、な、なななな、何を言っているの!デ、デート一回くらいの権利で雷を迸らせる卑しい朱乃になんか言われたくないわ!」

 

おいぃぃぃぃぃい!なんだか、部長と朱乃さんが口論し出したんだけど!

 

小猫ちゃん、これ本当に大丈夫なの!?

事態が悪化した風にしか見えないんだけど!?

 

すると、部長の一言に朱乃さんが片眉を吊り上げた!

 

「なんですって? いまだ抱かれる様子もないあなたに言われたくないわ。その体、魅力がないのではなくて?」

「そ、そんなことはないわ!」

「あら?何をしたというのかしら?」

「……ベッドの上で胸を触ってくれたわ」

 

や、それに関しては触らせてくれたといったほうが正しいんじゃ………まぁ、こんな事言っても火に油を注ぐみたいなもんだからな。

 

「……それ、イッセー君の寝相が悪くてそうなっただけではなくて?」

「キ、キスしたもん……」

 

あ、今の部長、スゲー可愛かった。

完璧に普通の女の子だった。

 

まぁ、俺からじゃないんですけどね。

 

と、何だかんだ言ってると二大お姉さまの口論はさらにヒートアップしていく!

それに乗じて神殿も揺れていく!!

 

「だったら私も今すぐにイッセー君と唇を重ねてきますわ!リアスのキスなんか忘れるくらいに!」

「ダメよ!あなたのことだから、舌も入れるつもりでしょう!」

「当然よ!彼を私色に染め上げて見せますわ!」

「絶対にダメよ!イッセーが獣になってしまうわ!」

 

なんつー会話してんすか!?

ほら、相手の方々も困ってますよ!

 

と、ここで相手の『女王』が痺れを切らしたのか、魔力を纏った!

 

「あなた方!いい加減になさい!私達を無視して男の取り合いなどと――――」

「「うるさいっ!」」

 

ドッゴォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

部長と朱乃さんが特大の一撃を相手目掛けて撃ち放つ!

その威力は見ているだけで寒気がするほどだった!

 

滅びの魔力と雷光が敵を容赦なく包み込んでいき、周囲の風景もろとも消し飛ばしていった!

 

相手は今ので完全に戦闘不能。

そりゃそうだわ!!

 

だがしかし!この二人の口論は!止まらないんだよねぇ!!

 

「だいたい朱乃はイッセーのことを知っているの!?私は細部まで知っているわ!」

 

ちょぉいっ!?今のは聞き捨てなりませんよ!

知ってるんなら今すぐ記憶から消去してください!!

 

「知っているだけで、触れたことや受け入れたことはないのでしょう?私なら今すぐにでも受け入れる準備は整ってますわ!」

「うぬぬぬぬ!……まぁ、いいわ。それはアーシアを救ってからゆっくりの話し合いましょう。まずはアーシアの救出よ」

「ええ、わかっていますわ。私にとってもアーシアちゃんは妹のような存在ですもの」

 

ホッ……二人ともやっと意見が一致したか。

どうなる事かと思ったよ。

 

兎にも角にも、俺達は再び歩を進めた。

 

 

 

 

俺達はディオドラの『騎士』が待っているだろう神殿に足を踏入れたとき、俺達の視界に見覚えのある者が映り込む。

 

「や、おひさ~」

 

現れたのは白髪の神父。

それは――――

 

「フリード……!」

 

そう、俺達の目の前に現れたのはフリード・セルゼン。

あのクソ神父だった。

 

エクスカリバー事件の時以来か。

懐かしいもんだ。

確かヴァーリが回収する前に逃げていたけど………それに、この感じ。

 

「実はあん時命からがら逃げだしたのさ~。そんな時に俺ちゃんを拾ったのがテロ組織!『禍の団』って訳よ!どうどう?外道神父の俺ちゃんと外道過ぎる組織のスンバラシィィコラボレーションッ!!素敵だと思わないでござんすか~?」

「素敵過ぎて気味が悪いな。それに、お前自身も」

 

俺のこの一言に皆は訝しげになる。

が、小猫ちゃんは察したのか、鼻を抑えて忌々しげに呟いた。

 

「……その人、人間を辞めてます」

 

それに続くようにフリードは何かを吐き出した。

――――人間の指だ。恐らく、ディオドラの『騎士』のだろう。

 

以前よりオーラの質が違うからもしかしたらと思ったが…………そう思っていた俺の目の前でフリードの体が膨れ上がっていく。

 

「行き場無くした俺を拾ったのが『禍の団』の奴らがよぉ!俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよォォォォオオっ!ぎゃははははは!合成獣だとよっ!?ふははははははっははははっ!」

 

ドラゴンやコウモリ、そのほかにもいろんなものを混ぜたような、異形の形になるフリード。

そしてその胸の中心には――――紫の魔法石。

 

「人造ファントム…………」

『いや、おれは以前戦った堕天使より性質が悪い。純度の低い魔法石を使い、人体改造を施した奴に埋め込んだのだろう。その結果、奴は合成獣とやらにも、ファントムにもなり切れていない……中途半端な存在だ』

 

俺の中のドラゴンがそう漏らした。

 

「ヒャハハハハハハッ!ところで知っていたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!」

 

フリードが突然ディオドラの話しを始める。

 

「ディオドラの女の趣味さ。あのお坊ちゃん、大した好みでさー、教会に通じた女が好みなんだって!そ、シスターとかそういうのさ!」

 

女の趣味?シスター……………ッ!?

 

俺の中で、ある考えが直結した。

 

 

 

フリードは大きな口の端を上げながら続ける。

 

「ある日。とある悪魔のお坊っちゃんはチョー好みの美少女聖女様を見つけましたとさ。でも、聖女様は教会にとても大切にされていて、連れ出すことは出来ません。そこでケガした自分を治療するところを他の聖職者に見つかれば、聖女様は教会から追放されるかも、と考えたのでしたぁ」

 

……どうやら、俺の考えは当たっていたらしい。

 

道理でおかしいはずだ。

現魔王の血縁者で上級悪魔であるディオドラが教会の近くで眷属も引き連れず、怪我をし、たまたま悪魔も治せるアーシアに助けられる。

考えれば考えるほど、あまりにも話しができすぎている。

 

 

 

アーシアの優しさを……いや、アーシアだけじゃない。シスター達の敬虔な精神を……あの糞野郎はッ!!!!

 

俺の怒りに呼応するかのように、体中から赤いオーラが漏れ出す。

見れば他の皆も怒りに顔をゆがめている。

 

だがフリードはそれに構わず、醜い濁声を上げ続ける。

 

「信じていた教会から追放され、最底辺まで堕ちたところを救い上げて犯す!心身共に犯す!それが坊っちゃんの最高最大のお楽しみでありますぅぅうう!!」

「ッ!!」

 

我慢の限界に達した俺は攻撃の態勢に入るが、それを腕で遮るものが現れた――――木場だ。

 

「イッセー君が手を下すまでもない。君はその怒りを、ディオドラ・アスタロトにぶつけるんだ。…………あの煩い口は、僕が閉じよう」

「木場………任せたぜ」

 

頭が冷えた俺はその場を木場に任せた。

木場は静かに頷くと、そのまま歩んでいく。

その身に殺意を含んだ攻撃的なオーラを纏わせながら。

 

「やあやあやあ!てめぇはあのとき俺をぶった斬りやがった腐れナイトさんじゃあーりませんかぁぁぁぁ!イッセー君を殺る前にてめぇに仕返しするといきましょーかぁぁぁ!色男さんよぉぉぉっ!」

 

木場は聖魔剣をかまえると、しかし冷淡な声で一言だけ一蹴するように告げた。

 

「君はもういない方がいい」

「調子くれてんじゃねぇぇぇぇぞぉぉぉぉっ!」

 

全身から生物的なフォルムの刃を幾重にも生やして木場へと突っ込んでいくフリード。

対して木場は力まずに駆け出す。

 

 

 

一瞬の交差の後―――――鮮血が迸った。

 

 

 

そう、フリードの血が、だ。

コンマ単位の世界で、木場はフリードの目で追いきれないほどの高速の斬撃を見舞った。

 

「……んだ、それ……強すぎんだろ………」

 

辺りにフリードの肉片と血液が散らばる中、フリードの頭部が床に転がり、大きな目をひくつかせていた。

 

「……ひひひ。ま、おまえらじゃ、この計画の裏にいる奴らは倒せねぇよ……」

 

が、その言葉が続くことはなかった。

フリードの頭部の内側から、無数の剣が咲き誇っていたからだ。

 

「続きは冥府の死神相手に吠えてるといい」

 

………カッコいいキメ台詞挟みやがって!

ま、此奴の事なんざ今はどうでもいい。

 

「行こう、皆」

 

俺達は頷きあい、ディオドラの待つ最後の神殿へと走り出した。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

最深部の神殿。

ここにアーシアとディオドラがいる。

 

内部に入っていくと、前方に巨大な装置らしきものが姿を現す。

そして、その中心にアーシアが張り付けにされていた。

 

見た感じ、外傷は無いし服も破れている様子はない。

 

 

 

「やっと来たんだね」

 

装置の横から姿を現したのはディオドラ・アスタロトだった。

 

「……イッセー、さん?」

 

アーシアが顔を上げる。

 

目元が腫れ上がり、涙の跡が見えた。

腫れ上がり方からして、かなりの量の涙を流したのだろう。

 

「……ディオドラ。テメェ、アーシアに話したのか?」

 

先程、フリードから聞かされたこと。

あれは絶対にアーシアに聞かせてはならないものだ。

 

だが、ディオドラはニンマリと微笑む。

 

「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない!!」

 

アーシアがすすり泣き始めている。

この野郎は…………何処までッ。

 

「……そうか」

 

――――いや、もう我慢する必要はないな。

もう十分、我慢したよな?

 

 

「アハハハ、凄い殺気だね!これが赤龍帝!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった『蛇』でね!キミなんて瞬殺―――」

 

 

 

ズガァァァァァァァァァンッ!!!!!!!

 

 

 

もう、此奴の言葉に耳を傾ける必要はない。

俺は奴が何かを言う前に殴り飛ばした。

 

 

「あっ………なっ…………!?」

 

ディオドラは何が起きたか分からず、茫然としていた。

 

「おい、立てよ。瞬殺、なんだろ?こんなもんじゃないよなぁ?―――—上級悪魔さんよぉ」

 

 

《Welsh Dragon Absolution Breaker!!!!!》

 

 

 

俺は禁手を介さずに極手を発動する。

最初はこれすら使うのも癪だったが…………どうせならもっと派手に地獄を味わわせてやる事にした。

 

 

 

「ッ!!!!」

 

俺の殺気に怖気づいたのか、奴は僅かに後ずさりする。

………情けない様だな。

 

『相棒、構わん。存分に俺の力を振るえ』

 

……当たり前だろ。

 

《Limit Boost!!》

 

力が一気に俺の限界地まで強化される。

俺が一歩歩むたびに、奴が一歩下がる。

 

「き、消えろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

「―――爆炎の龍波動(ブレイジング・ドラゴンショット)

 

奴の放った魔力弾と同時に、俺はドラゴンショットに火種(ドラゴンブレス)を吹きかけ、奴に放つ。

 

俺のドラゴンショットが奴の魔力弾を飲み込み、そのまま奴に命中――――更に追い打ちで奴は爆炎に包まれた。

 

「が、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?熱い、熱いよ!!」

 

その情けない悲鳴に俺の怒りはさらに大きくなる。

お前はその悲鳴を、悲しみを――――

 

俺は言葉にするよりも行動で示した。

 

赤龍帝の聖剣(ウェルシュ・エクスカリバー)ッ!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁっ!!!」

 

痛みにのたうち回る奴に構わず俺は奴の足を掴み、何度も地面に叩き付ける!!

一頻り叩き付けた後、空中に投げ飛ばし、無防備な奴を空中で袋叩きに殴る!

 

空中から地面に落ちた奴は何度も地面をバウンドし転がる。

が、奴はフラフラになりながらも立ち上がろうとした。

 

 

お前に、立ち上がる権利は、ないっ!!!

 

《Limit Boost!!》

 

再び限界まで倍加された俺は高速で接近すると、奴の顔面を鷲掴みにして地面に再び叩き付ける!

何やらもがいていたが、俺はそれを無視して右手にドラゴンショットを生成し、掴む。

 

そして――――

 

大撃砕の龍波動(ギガンティック・ドラゴンショット)ォッ!!!!!」

「――――ッ!!!?」

 

直接奴のどてっ腹に叩き込むッ!!

その一撃は奴の悲鳴を飲み込んで、奴を中心にクレーターが出来上がった!

 

 

が、奴はまだ生きてる。

って当然だな。何せ、威力は抑えてるからな。

 

俺は蹲るソイツをサッカーボールの様に蹴っ飛ばした!

勢いよく飛んだディオドラは神殿の壁に叩き付けられ、俺はそんな奴に起き上がる暇すら与えずタックルを繰り出す。

 

更に、急所を態と外す様にしながら鎧を針のように伸ばし、奴を串刺しにするっ!!

 

「がはっ!?……………な、んでっ!?僕は……上級悪魔だ、現ベルゼブブの、血筋だッ!」

 

離れた俺にそう言いながらにらみつけてくるディオドラ。

 

「上級悪魔?お前みたいに他人の力を借りてのし上がった奴はな、小物って言うんだよ。三下」

 

こんな奴が、ソーナ会長やサイラオーグさん、アガレスの大公、部長と同じ上級悪魔だと?

そんな訳がないだろ?

 

いや、断じて認めやしない。

あの焼き鳥ライザーの方がマシだ。

アイツだって他人の力を借りたりはしなかった。

 

「っ!!」

 

ディオドラはゼロ距離で俺に魔力弾を放った。

前段命中した事に気分を良くしたのか、奴は途端に饒舌になる。

 

「ふっ……あははははははっ!!あれだけ大口をたたいてもやっぱりその程度なんだよっ!!誇りある上級悪魔に所詮転生悪魔が勝てる訳――――」

 

 

グワシッ!!

 

が、ディオドラの言葉が続くことはなかった。

それは、煙の中から突き出た俺の手が奴の顔面を掴んでいたからだ。

 

「誇りある…………?馬鹿も休み休み言えよ」

 

対する俺は――――無傷だ。

 

「何時までもふざけた寝言ほざいてんじゃねぇっ!!」

 

俺はそのままディオドラを地面に再び叩き付けると、そのまま投げ飛ばした!

奴は力なく再び壁に激突する。

 

 

――――ドライグ、いっちょここで実験するか。

 

『残酷だなぁ。まぁ、丁度良いい実験台だからな。派手にやれ』

《Blade!》

 

俺はゼノヴィアから返却されたアスカロンの刃だけ出現させる。

 

「さぁ………振り切るぜっ!!」

《Engine!》

 

宝玉から響くのは、今までとは違う音声。

夏休みに開発して以来使うタイミングがなかったからな………いい実験台になるぜ。

 

《Jet!》

「はぁっ!!」

 

俺が左手を振るうと同時に――――ディオドラの。右腕が宙を舞った!

と同時に、右腕があった場所から鮮血が溢れ出す。

 

「………ぎぃやぁあぁぁぁあぁあああああああああっ!!!!!」

 

ディオドラは声にならない悲鳴を上げる。

 

「痛い……痛いよっ!」

「痛い?そうだろ………だがなぁ!!」

《Electric!》

 

俺はディオドラを今度は電撃を纏わせたアスカロンで一閃する!!

 

「アーシアはもっと痛かった!辛かった!友達だって、テメェの身勝手な欲望のせいで出来なかった!!アーシアだけじゃない!お前に落とされたシスター達もだ!!―――人の痛みも感じず!!!人の絶望する様を嘲笑い!!!痛みを理解せず、自分がされたら身勝手に喚き散らすテメェを!!!!俺は絶対に許さねぇ!!!!!」

「ひっ!?く、来るなぁ!消えろぉぉっ!」

「消えるのはテメェだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」

 

俺はドラゴンの翼を羽搏かせ、奴に接近する!

奴は最後の足掻きなのか、防御魔法陣を展開するが――――

 

「そんな薄っぺらい壁ごときで……俺を止めれると思うなぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

俺が力を籠めると、奴の魔法陣に亀裂が走っていく!

そして、呆気なく砕け散った!

 

こいつで最後だ!!

 

「受け取れっ!!消滅の龍波動(デリート・ドラゴンショット)ッ!!!!」

 

振りかぶった拳から高濃度に圧縮したドラゴンショットを放つ!!

 

 

その一撃は逃げようとしたディオドラの左足に命中し、消し飛ばした!

 

「―――――――――ッ!!!」

 

奴はあまりの痛みに失心するかのように倒れこんだ。

だが、その目から光は完全に消えていた。

 

「死んだのか?」

 

ゼノヴィアが俺に近づきながら尋ねてきた。

その手にはデュランダルが。

 

「いや、辛うじて生きてる。けど、殺しはしない」

「…何故だ?」

「此奴に死は生温過ぎる。此奴にはこれから、とことん絶望しながら生きてもらうさ。なーに、サーゼクス様達も相応の罰を与えるだろうぜ」

「……そうか。だが」

「分かってる。此奴がまた俺達、アーシアの前に姿を見せたら」

 

 

「「その時はまた、容赦なく叩きのめす」」

 

そう気絶しているディオドラに吐き捨てると、俺達はアーシアのもとに向かった。

 

「イッセーさん……」

「ごめんな、アーシア……助けるのが遅れた」

「いいえ、イッセーさん達が助けに来るって、信じてましたから」

「そっか」

 

安堵したのか、アーシアは嬉し泣きをしていた。

…………俺も、少しは成長したん、だよな?

 

『あぁ。アーシア嬢はお前を信じていた。そしてお前はその信頼に応えた。これを成長してないで何と言う』

 

サンキュー、ドライグ。

 

一方、アーシアを装置から外そうと木場達が手探りに作業をし始めていた。

 

 

が、直ぐに木場の顔色が変わった。

 

「………手足の枷が、外れない」

 

…何!?

試しに俺が腕で引き裂こうとするも、装置はびくともしなかった。

 

極手でもダメなのか!?

一体どうなって…………!

 

俺は気絶したディオドラのもとへ向かうと、奴を殴って強引に目を覚まさせた。

 

「せ、赤龍帝………!?」

「無駄口叩くな!あの装置はなんだ?どうやったら外せる?」

 

俺が尋ねるとディオドラは言葉少なく呟いた。

 

「……あの装置は機能上、一度しか使いえない。が、逆に一度使わないと停止できないようになっているんだ。―――あれはアーシアの能力が発動しない限り停止しない」

「続きを言え」

 

俺ががそう言うと苦しそうにしながらもディオドラは答える。

 

「その装置は神器所有者が作り出した固有結界のひとつ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。『絶霧』結界系神器の最強。所有者を中心に無限に展開する霧。そのなかに入ったすべての物体を封じることも、異次元に送ることすらできる。それが禁手に至ったとき、所有者のすきな結界装置を霧から創りだせる能力に変化した。―――『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』、創りだした結界は一度正式に発動しないと止めることはできない」

 

木場が厳しい表情ディオドラに問いただす。

 

「発動条件と、この結界の能力は?」

「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は―――枷に繋いだ者、つまりはアーシアの神器能力を増幅させて反転させること」

 

―――っ!

 

つまり回復の能力を反転させる。

 

 

それはつまり―――。

 

木場はさらに問いだす。

 

「効果範囲は?」

「……このフィールドと、観戦室にいる者たちだよ」

 

その答えに全員が驚愕した。

アーシアの回復の応力は凄まじい。

それが増幅されて反転させられたら……っ!

 

「各勢力のトップ陣がすべて根こそぎやられるかもしれない……ッ!!」

 

マズいな……。

そんなことになれば、人間界も天界も冥界にも、世界中に影響が出る。

 

それを此奴等は、分かってて………!

 

他の皆も装置に対して攻撃するも、それらは全く聞いていなかった。

どうすりゃ……このままじゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――そうだ。

 

 

 

 

 

俺は徐にアスカロンを取り出す。

他の皆は怪訝な顔だ。

 

「………アーシア。防御のために魔力で体を覆っておいて」

「…え?」

「良いから」

「は、はい!」

 

アーシアの体を、薄い緑色の魔力が覆っていく。

よし、これなら大丈夫だろう。

 

「アーシア。……俺に命を、預けてくれるか?」

 

俺の一言と行動に、全員驚いたかのように目を見開いた。

何せ俺は今、アーシアに向けてアスカロンを振りかぶっているからだ。

 

「……はい。信じています!」

 

アーシアは迷う素振りを見せず、そう俺に返した。

 

「……ドライグ、行くぞ」

『了解』

《Electric!》

 

籠手から音声が流れると同時に、アスカロンの刀身に電撃が纏わる。

それを見た部長達は慌てて俺を止めようとする。

 

「イッセー!何をっ」

「―――っ!!」

 

 

 

 

 

俺はアーシアに向けてアスカロンを――――振り下ろした。

 

『――――――――っ!!!?』

 

刀身は当たっていないものの電撃はアーシアの体に纏わり、一瞬強く震えたかと思うと、アーシアは力なく倒れた。

 

「………アーシア?」

 

ゼノヴィアが呟いたと同時に、装置は音を立てずに消滅した。

 

『相棒急げ!』

「あぁ、分かってる!」

 

俺は素早く手元にいつもより小さ目なドラゴンショットを作り出す。

 

放電する龍波動(スパーク・ドラゴンショット)……!」

 

俺は動かなくなったアーシアの体に傷をつけぬよう、慎重にドラゴンショットを押し当てる。

 

「イッセー!お前は何をしてるんだッ!?」

「ゼノヴィア、説明は後だ!小猫ちゃん、手伝ってくれ!」

 

小猫ちゃんは茫然としていたものの、俺の意図を察したのか、猫耳を出してくると、アーシアの手を握った。

それと同時に、白色のオーラ――――仙術が発動した。

 

「……まさか」

 

俺の目論見に気付いたのか、木場がハッとなった。

そして――――

 

 

「……………う、うぅん」

 

 

アーシアが、ゆっくりと起きた。

それを見た俺は、安堵の息を吐いた。

 

「おはよう、アーシア」

「イッセーさん……」

 

ゼノヴィアは何が起こっているのか分からない様で、ポカーンとしていた。

 

「ゼノヴィア。イッセー君はアーシアさんを仮死状態にしたんだ。……そうだろう?」

「あぁ」

 

まぁ、一か八かの賭けだったけどな。

 

「つまりな、あの装置の対象となっているアーシアの状態を死んでいるって誤認させれば解けるんじゃねーかなって思ってよ」

「……根拠がないのによく実践できましたね」

 

ははは、手厳しいな……。

すると、ゼノヴィアはアーシアに抱き着いた。

 

「アーシア!アーシア!!………アーシア!!!」

「ぜ、ゼノヴィアさん……苦しいですよ~」

 

と言いつつも、アーシアも頬を緩ませている。

 

「びえぇぇぇぇぇん!!よがっだですぅぅぅ~!!!」

「泣き過ぎだってギャー助……」

「ギャー君は、泣き虫……」

 

小猫ちゃん、君も眼が潤んでるぜ?

 

「部長さん、皆さん。ご迷惑をかけてすみませんでした」

「気にしないでよ、アーシアさん」

「そうですわ、アーシアちゃん。私達が助けたくて助けたんですから」

「そうよ。だからアーシアは何も気負わなくていいの。それと……」

 

部長がアーシアを抱きしめる。

 

「部長さん?」

「アーシア。そろそろ部長と呼ばなくても良いのよ?私にとって貴女は妹のような存在なのだから」

「―――はいっ、リアスお姉様!」

 

部長とアーシアが抱き合っている。

感動のシーンだな!

 

『ま、一件落着だな』

 

そうだな。

 

「帰ろうか、アーシア。俺達の家に」

「はい!と、その前にお祈りを」

 

アーシアは天になにかを祈っている様子だった。

 

「何を祈ったんだ?」

 

尋ねるとアーシアは恥ずかしそうに言った。

 

「内緒です」

 

笑顔で俺のもとへ走り寄るアーシア。

う~ん、気になるな………。

 

 

 

―――――が、アーシアが俺の元に来る事はなかった。

 

 

 

 

突如現れた光の柱に、飲み込まれたのだ。

 

 

 

 

 

「…………………………アー、シア?」

 

 

 

 

 

 

イッセーside out

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

木場side

 

 

 

一体何が起こったのか、分からなかった。

 

 

ディオドラ・アスタロトをイッセー君が打倒し、アーシアさんの救出が無事に終わり、この場から退避するはずだった。

 

でも――――アーシアさんが消えていた事だけは、確かだった。

 

「霧使いめ、手を抜いたな。まさか赤龍帝ごときに破れる結界を創るとは……計画の再構築が必要だな」

「その通りだな」

 

 

…………聞き覚えのない声だ。

 

 

 

すると、僕達の前に現れたのは、二人の悪魔だ。

底冷えするかのようなオーラを身に纏っている…………彼等は一体?

 

 

 

「……誰なの?」

「お初にお目にかかる、忌々しき偽りの魔王の妹よ。私は偉大なる真の魔王ベルゼブブの血を引く、正当なる後継者、シャルバ・ベルゼブブ」

「同じく、真の魔王アスモデウスの正当なる後継者、クルゼレイ・アスモデウスだ」

 

――――旧ベルゼブブと旧アスモデウス!

ここに来て、まさかこの騒動の黒幕が出てくるなんて!

 

と、ディオドラ・アスタロトはシャルバ・ベルゼブブを見ると懇願しながら口を開いた。

 

「シ、シャルバ……助けておくれ……キミと一緒なら、こいつらを殺せる…旧魔王と現魔王が力を合わせれば―――」

 

 

 

が、その言葉は続くことなく、シャルバの手から放射した一撃がディオドラの胸を容赦なく貫いた。

 

「愚か者め。あの娘の神器の力まで教えてやったのに、モノにできずじまい。オーフィスの『蛇』を使ったにもかかわらずあの無様な戦い方……たかが知れているというもの」

 

嘲笑い、吐き捨てるようにシャルバは言う。

 

ディオドラは床に突っ伏すことなく、チリと化して消えていった。

 

あれは――――光の力か?

 

『禍の団』は三大勢力の不穏分子が集まっていると聞く。

光を扱う天使や堕天使の協力者から何か提供があったと見るべきだろう…。

 

「さて、サーゼクスの妹君。突然で悪いが、貴公には死んでもらう。理由は言わずとも分かるであろう?」

「サーゼクス様の妹、だから?」

 

シャルバが冷淡な声でそう語る。

 

 

よほど現魔王に恨みがあるのだろう。

主張と家柄、魔王の座を取り上げられたことを深く恨んでいるようだ。

 

シャルバは目を細めながら口を開いた。

 

「その通りだ。不愉快極まりないのだよ。我ら真の血統が、貴公ら現魔王の血族に『旧』などと言われるのは耐えがたいことなのだ。故に我らは現魔王の血族を滅ぼすことにしたのだ。―――サーゼクスの妹よ、死んでくれたまえ」

「………その前に聞かせてちょうだい。アーシアをどうしたの?」

 

ゴウッと部長の周りを紅い魔力が覆っていく。

声も冷徹さを醸し出すものだ。

 

クルゼレイはそんな部長の様子を意に返さず、言葉を紡いだ。

 

「ああ、あの堕ちた聖女か。あの者は私が次元の彼方に送った。―――死んだ、ということだ」

「そう。なら――――」

 

部長はカッと目を見開いた!

その瞳に彩られた感情は――――怒りだ。

 

「貴方達を消し飛ばすのに、十分な理由だわ。………私の可愛い下僕に手を出したこと、万死に値するッ!!!」

 

部長の言葉に――――僕達も戦闘態勢に入る!

 

そうさ………アーシアさんは漸く自分の過去とケリをつけれたんだ!

僕達や、イッセー君と、改めて歩んでいこうとした矢先なんだっ!

 

 

 

それを、テロだなんて身勝手な理由で、此奴等は…………っ!!!

 

「……殺してやるっ、斬り殺してやるっ!!!」

 

ゼノヴィアは涙を流しながら、今にも旧魔王派へと斬りかかろうとする。

 

 

 

けど、僕等は何か違和感を感じた。

 

 

 

イッセー君だ。

何時もの彼なら、いの一番に飛び出すはずだけど……と思い、イッセー君を振り返ると……

 

 

 

「…………………」

 

 

―――――イッセー君は、ピクリとも動いていなかった。

放心したかのように、微動だにしていなかった。

 

 

が、それも束の間だった。

イッセー君は顔を上げると、シャルバ達に向かって覚束ない足取りで一人で歩いて行った。

 

 

 

『リアス・グレモリーよ』

 

その時、イッセー君の赤龍帝の籠手の宝玉が点滅し、声が響いた。

――――ドライグだ。

 

 

「ドライグ?」

『今すぐ眷属共々、ここから離れることを進める。でなければ、見たくないものを見てしまうぞ』

「どう言う………」

『そこの悪魔よ』

 

ドライグは部長の質問を無視して、今度はシャルバにその声を向けた。

 

『お前が何者かはどうでも良い。だがひとつ言っておく。―――お前は選択を、誤った』

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

 

 

 

な、何だ!?

この殺意と絶望に満ちたオーラは!?

 

イッセー君を中心に赤い、否、赤黒いオーラが渦巻いていた!

それを見ていたシャルバは顔を歪める。

 

 

「―――ッ!?」

「イッセー!どうしたと言うの!?」

 

部長が必死に呼びかけるも、イッセー君には届いていないのか、此方を一切振り向かない。

やがてイッセー君が口を開いたのと同時に、鎧が纏われた。

 

 

 

 

が、その声音は、イッセー君のものとは思えないほど低く、絶望に満ちたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我、目覚めるは―――」

 

〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉

 

 

イッセー君だけじゃない、老若男女入り混じった声が聞こえた。

 

 

「覇の理を神より奪いし二天龍なり――――」

 

〈何時だってそうだった〉〈何時だってそうじゃった〉

 

 

言葉が紡がれていく度に、鎧の形状も変わっていった。

 

 

「無限を嗤い、夢幻を憂う――――」

 

〈世界が求めるのは〉〈世界が否定するのは〉

 

 

鎧は極手の時以上に鋭く、生物的になり、腕や脚が肥大化していく。

 

 

「我、赤き龍の覇王となりて――――」

 

〈何時だって力でした〉〈何時だって愛でした〉

 

 

更に、全身に薄暗い銀色が差し込み、手足の装甲、兜に金色の装飾が出現する。

 

 

 

 

 

 

 

『相棒。俺は…お前にだけはこの力に到達してほしくなかった。だが、お前が望むなら俺は見守るだけだ…………ふぁが、何でかな。こんなに悲しいのはよ』

 

 

 

そう呟いたドライグの声はかき消された。

 

 

 

 

〈何度でもお前たちは滅びを選択するのだなっ!!!〉

 

 

 

「汝を紅蓮の煉獄と()()()()()()へと鎮めよう――――」

 

 

 

 

 

そしてその瞳は、何処までも薄暗い――――赤色だった。

 

 

 

 

 

 

幻覇龍(ジャガーノート・ファントム・ドライブ)

 

 

 

《Juggernaut Phantom Drive!!!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは――――ファントムのような、一体のドラゴンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、一気に覇龍まで持っていきました


次回はそんな覇龍攻略会です。ですが、聡明な読者の皆さんはもうお分かりになってると思いますが、この覇龍……かなり魔改造を加えてます

まぁそれは次回のお楽しみということで………あばよ!
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