スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第63話 戦・闘・準・備

 ロッククリムゾンとレディゴールドはジャマンガ本部へ戻って来ていた。

 オーストラリアから来たロッククリムゾンは戻る、という言葉が適切ではないが。

 そんな岩石巨人ロッククリムゾンの元へ、Dr.ウォームは心底嬉しそうな顔で駆け寄った。

 

 

「嬉しいぞ! 我等の手助けに、来てくれたのだな?」

 

「…………」

 

 

 無言で頷くロッククリムゾン。

 薄い反応だがウォームは気を悪くする事も無く、親しげに彼に接し続けた。

 ジャマンガの幹部同士は折り合いが悪い。

 お互いに戦いあうほど険悪ではないが、お世辞にも仲が良いとは言えない。

 レディゴールドとウォームがお互いを邪険に扱いあうように。

 だが、ウォームにとって例外が1人。それがロッククリムゾンなのだ。

 ウォームとロッククリムゾンは盟友とも言える関係。それはロッククリムゾン自身も思っている。

 だからこそ、彼は『ウォームの手助け』という明確な目的を持って日本にやって来ているのだ。

 

 

「相変わらず無口な。じゃが、おしゃべりな奴よりも、その方が信用できる」

 

「それは誰の事かしら?」

 

 

 ロッククリムゾンと同じ方向からやって来たのはレディゴールド。

 ウォームの言う「おしゃべりな奴」という言葉が当てつけのように聞こえたのだろう。

 心底不機嫌そうな顔を見せるレディゴールドに押し黙るウォーム。

 

 

「フン、まあいいわ」

 

「ヌゥ……。それよりレディゴールド、先の戦いを見ておったが、何じゃ『アイツ』は」

 

「アイツ? ……ああ、『アイツ』ね。ヨーロッパで戦った、魔弾戦士よ」

 

「それは分かっておる、マダンキーを使っておったからの。奴はお前とどんな関係かと聞いておるんじゃ」

 

 

 ジャマンガ本部からは人間世界の様子を見る事ができる。

 ウォームが見ていた中で一番気になったのは、謎の魔弾戦士の存在だった。

 最初は自分達の目下最大の邪魔者である魔弾戦士の増員に驚いたものだが、どうも純粋にリュウケンドー達の味方というわけでもない。

 ジャマンガにとっても敵のようだが、目的が分からないのだ。

 レディゴールドは1つ溜息を付くと、ウォームの質問に答えた。

 

 

「アイツよ、ヨーロッパのパワースポットを暴走させた張本人」

 

「な、なんじゃと!?」

 

「厄介な奴よ。ああ、此処まで追ってきたのかしら、メンドくさい」

 

 

 苦々しい表情のまま、苛立ちを募らせるレディゴールド。

 一方でウォームは焦り、不機嫌なのにも構わずレディゴールドへ言葉をぶつけた。

 

 

「ぬぅ……! もしも奴がパワースポットの暴走に躊躇が無いのなら、本当にマズイのではないのか!」

 

 

 何度も言うようだが、ジャマンガが求めるマイナスエネルギーは生きた人間からしか手に入らない。

 故に、ジャマンガはあまり殺しをしない組織だ。

 もしもあけぼの町のパワースポットを暴走でもさせられたら、ジャマンガの大魔王を復活させるという計画は一気に頓挫する。

 それだけはマズイ。何としてでも阻止しなくてはならない事なのだ。

 そんな事はレディゴールドだって知っている。

 だが、それに答えたのは、レディゴールドではない人物だった。

 

 

「ノンノン、発想を転換させましょう、Dr.ウォーム」

 

 

 声の後、データの粒子が集まり、何もなかったはずの空間に突然現れる青年。

 いつものようにノートパソコンを携え、ヴァグラスのエンターがやって来たのだ。

 彼はウォームへ一歩一歩歩み寄りながら、その発想の転換について語りだした。

 

 

「確かに、パワースポットの暴走を起こされるのは厄介です。

 私としても、エネトロンタンクまで巻き込まれそうなその事態は回避したい」

 

「そうじゃろう。じゃが、奴はどうも、強いようじゃぞ?」

 

「ええ。ですがそれは、見方によっては好都合です」

 

 

 どういう事じゃ、と疑問符を浮かべるウォームに、エンターは怪しく笑う。

 

 

「パワースポットの暴走は、ゴーバスターズやリュウケンドー達にとっても好ましくない事態の筈……。彼等は人間を守る為に戦うわけですからね」

 

「うむ……確かに」

 

「つまり場合によっては、彼等と潰し合いをしてくれるという事ですよ。

 あの妙な魔弾戦士が強いのなら、ゴーバスターズ達と共倒れしてくれるかもしれません」

 

「ふぅむ……」

 

 

 エンターの言う事は一理ある。

 実際、謎の魔弾戦士はリュウケンドー達に攻撃を仕掛けていたし、手助けをする様子もなかった。

 さらにヨーロッパのパワースポットの暴走を引き起こした事から、被害が出る事に躊躇は無く、リュウケンドー達とは戦う目的が違うのではないかと推察できる。

 ならば、謎の魔弾戦士とリュウケンドー達が潰し合いを演じてくれれば、それはジャマンガやヴァグラスにとってラッキーだ。

 勿論、推察混じりの考えなので楽観は禁物だ。しかしエンターもそこは分かっている。

 

 

「ま、一応対策を講じておいた方が賢明ではあるでしょうが……。そこは何とかなるでしょう?」

 

 

 エンターはちらりと、黄金女王と岩石巨人を一瞥する。

 そして再び怪しげに口角を上げると、まるで何かを演じているかのような大袈裟な動きで、2人の方へ振り返った。

 

 

「何せ、魔弾戦士を寄せ付けないトレビアンな幹部が2人、此処にいるのですからね。

 そうですよね、マドモアゼル・レディゴールドに、ムッシュ・ロッククリムゾン?」

 

「当然よ。あんな奴に後れを取る私じゃないわ」

 

「フン……」

 

 

 レディゴールドはおだてられた事で少し機嫌を良くしているが、ロッククリムゾンは変わらず無口に徹していた。

 事実、謎の魔弾戦士はレディゴールドと対等だ。

 そう、圧倒ではなく、対等なのである。

 さらに言えばロッククリムゾンというリュウケンドーやリュウガンオーに深手を負わせられる幹部の登場。

 しかも謎の魔弾戦士はリュウケンドー達の仲間ではないので、単純に敵の戦力が増えた、というわけではない。

 場合によってはエンターが言ったように、潰し合いをしてくれるのかもしれないのだから。

 

 さて、軽く幹部をおだてて場の流れを作ったエンターは、ウォームへ再び顔を向けた。

 

 

「ところでDr.ウォーム。例の宝石の件ですが……」

 

「おお、そうじゃったな。まあ、やや危険じゃが、何とか使えそうじゃわい」

 

 

 エンターが亜空間で手に入れた、謎の宝石。

 その使い道を色々と考えたのだが、エンターは今回の作戦の『保険』に利用しようとしていた。

 

 

「むしろ、『やや危険』な方がよいです。脅しをかけられますからね」

 

「成程のぉ、お主もよく考える奴よ」

 

「一応聞いておきたいのですが、あの宝石をゴーバスターズ達が律する可能性は?」

 

「ない。下手に大きな衝撃を与えれば、ドカン、という恐れもあるからの。

 奴等がそれを知れば、迂闊な事はしてこないじゃろう」

 

「メルシィ、Dr.ウォーム」

 

 

 エンターが手に入れ、Dr.ウォームの協力の下で使用可能となった『謎の宝石』。

 彼等はそれを如何にして利用するつもりなのか。

 ただ、エンターは薄い笑いを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

 一方、町のとある一角にあるビルの屋上にゴーバスターズの3人と翔太郎は来ていた。

 ビルの屋上からは、微弱な転送エネルギーが出ているという東京エネタワーが見えている。

 今回は戦闘ではなくただの調査のため、彼等4人だけの行動となった。

 他の士、響、翼は慎次の車で秘密裏にS.H.O.T基地に赴いている。

 剣二達の見舞いと、今後どうするかの話を進めている頃だろう。

 

 ゴーバスターズの3人はイチガンバスターのカメラモードで、東京エネタワーを撮った。

 カメラのディスプレイには、撮影した範囲内にヴァグラスの反応があるかどうか、というのが表示されるのだが、3人とも結果は同じだった。

 

 

「ヴァグラス反応は……無し」

 

「でも、転送エネルギーが出てるなんて普通じゃない」

 

 

 ヒロムの確認の言葉の後に、リュウジが周囲の3人へ言葉をかける。

 ヒロムとヨーコはそれに頷くが、1人、翔太郎だけは分厚いゴーグルのような特殊な機械を離さずにエネタワーを見つめ続けていた。

 彼が持っているのは『デンデンセンサー』という、メモリガジェットの1つ。

 肉眼では目視不可能な、それこそ透明人間すら見つけられる代物である。

 そして翔太郎はそのデンデンセンサーを用いて、何かの異変に気付いていた。

 

 

「……なぁ、アレってエネタワーに元からある装置なのか?」

 

 

 エネタワーから目を離さずにヒロム達へ問いかける翔太郎。

 クエスチョンマークを浮かべるヒロム達は、今度はソウガンブレードを双眼鏡の形にして、エネタワーを再び見やった。

 

 

「ほら、展望台と展望台の間、何か、妙な機械がある。

 おまけに、そこにエネトロンが集まってるみたいだぜ……」

 

 

 東京エネタワーには2つの展望台が存在し、片方は低く、片方は高い。

 低いと言っても、100m以上の高さにあるのだが。

 そんな展望台と展望台の境に確かにあった。

 巨大で四角い妙な装置が。

 

 そして、これまた翔太郎の言う通りだった。

 ソウガンブレードは双眼鏡として使うと、エネロトンの流れを見る事ができる。

 目視不可能なものまで見通せるデンデンセンサーも同様だ。

 最大まで拡大したソウガンブレードとデンデンセンサーには、その装置へと流れ込んでいくエネトロンがはっきりと写っていた。

 まるで東京エネタワーが周辺からエネトロンを吸い上げ、その装置へ送っているかのように。

 

 

「あれが、転送エネルギーの正体……?」

 

 

 ヨーコの呟きは恐らく正しい。

 転送に必要なエネルギーとは、即ちエネロトン。

 そしてエネロトンが溜まっているエネタワー、微弱な転送エネルギー反応。

 繋がったといってもいいだろう。

 だが、問題はその目的。何処に転送し、何を目的に転送しようとしているのか。

 それを4人が思考するよりも前に、意気揚々とした声が飛び込んできた。

 

 

「こんにちは! 陣マサトの、よく分かるヴァグラス講座の時間です!」

 

 

 折り畳まれたモーフィンブラスターをマイクのように持ち、突然現れたマサト。

 無駄に眩しいその笑顔だが、マサトはすぐにそれを引っ込めて、困ったような表情を作った。

 

 

「……つっても、殆ど答えには行き着いてるみたいだねぇ。

 かぁー、探偵がいると解説しがいがないぜ」

 

「おいおい、文句言われる筋合いはないぜ? 捜査協力してんだから」

 

「分かってるよ。冗談冗談、悪かったって」

 

 

 自分が得意気に解説しようと思ったのだが、翔太郎という探偵がエネタワーの異変に気付いてしまったから解説の機会を奪われたとブーたれるマサト。

 結局、最終的には冗談であると笑い飛ばしてしまったのだが。

 そんなお気楽な会話の後、マサトは明るい雰囲気はそのままに、真面目な会話へと移った。

 

 

「ま、皆さんの想像通り、あの機械は転送装置だ。

 周辺から強制的にエネトロンを吸い上げて溜め込んでるのは、勿論、転送の為。

 で、何を転送するかってーと、周辺にあるエネトロンタンク全部。

 それを一気に亜空間へ転送しちまおうって算段なわけよ」

 

 

 エネトロンタンクは名の通り、エネトロンの貯蔵場所。

 確かにそれを複数基、一気に転送できれば、ヴァグラスは莫大なエネトロンを保有できる。

 しかしその規模はヒロム達の想像を凌駕するものだった。

 

 

「ザッと見積もって、エネトロンタンク10基から12基。言い換えるなら町1つ分だ。

 エネトロンが一定以上まで溜まったらタワー自体がアンテナになって、転送エネルギーを放出。

 当然、大規模な転送が起こって、エネトロンタンクは持ってかれる」

 

 

 町1つの転送が起こるという事を細かく語るマサトは、最後に1つ、付け加えた。

 

 

「────当然、その町に住んでる何万人もの人間も一緒にだ」

 

 

 町1つ分の転送とは、10数基のエネトロンタンクと同時にそこにある全てを亜空間へ転送してしまうという事である。

 生き物であろうがなかろうが、おかまいなしに。

 つまり、人的被害は一切考えていない、とんでもない被害が出る作戦をヴァグラスは展開してきたのだ。

 何より、『人が亜空間へ転送されてしまう』という言葉は、親を亜空間から助け出そうとしているヒロムやヨーコには、とても刺さる事態だった。

 

 グッと拳を握りしめるヒロム。エネタワーに寄生するように取り付けられた装置を睨むヨーコ。2人を見て、深刻そうな、心配そうな顔を向けるリュウジ。

 三者三様な反応と一瞬の静寂の後、翔太郎が口を開いた。

 

 

「転送を止めるには、あの装置をぶっ壊せばいいんだよな?」

 

「ご名答。ま、あれは転送装置ではあるが、転送の為のアンテナにするのはタワーそのもの。

 つまりあの転送装置はエネタワーに取りついてなきゃ何の意味もない。

 破壊できなくても、取り外すなりなんなりしてやれば万事解決ってわけだな」

 

 

 破壊でも外すでもいい。とにかくエネタワーから転送装置をどうにかできればいいのだ。

 だが、言うは易く行うは難し。転送装置は巨大だ。

 エネタワーとの対比で小さく見えているが、実物はバスターマシンよりも少し小さい程度、20mから30m程の大きさはあるだろう。

 

 

「あの大きさの装置は壊すにしても外すにしても、俺達がやるならバスターマシンがなきゃ無理だ」

 

 

 ゴーバスターズは怪人を倒せるだけの火力は持っている。

 だが、問題はその火力をどうやって装置に当てるか、だ。

 超長距離からそれだけの火力を精密射撃なんて芸当はまず不可能だし、接近したとしても、バグラーやスチームロイドの妨害があると考えた方が良いだろう。

 下手をすれば、またロッククリムゾンやレディゴールド等の幹部が一気に襲い掛かってくる可能性もあった。

 しかも装置は300mを超える塔の上部に位置する展望台の近く。

 そこまでいちいち昇っているような時間が残されているとは思えないし、白兵戦では妨害される事必至だ。

 

 そう考えれば、巨大戦力であるバスターマシンを使う事が一番確実だった。

 しかしスチームロイドの影響でバスターマシンは出撃できない。

 

 そこでヨーコは「では、飛行能力があればいいのではないか?」と考え、それを口にした。

 

 

「じゃあ、ヘリで近づくとか……。それが無理なら、弦太郎さん達に頼むとか?」

 

 

 ヘリは無謀だ。下から射撃でもされたら、装甲の厚いヘリでも長くは耐えられない。

 次の提案である弦太郎、つまりフォーゼのように自由自在に飛行できるメンバーに頼むというのは、確かに一番速く、確実な方法だろう。

 破壊するのに十分な火力もあるだろうし、ヘリ以上に小回りも効くので、敵の攻撃も恐れずに済む。

 しかし、マサトがそれに待ったをかけた。

 

 

「ちょい待ち。奴さんもその辺は予想してるかもしれないぜ」

 

「どういう意味ですか、先輩」

 

「敵はヴァグラスだけじゃない。もしかしたらジャマンガなり大ショッカーなりフィーネなりをけしかけて、航空戦力をぶつけてくるかもしれないって事よ」

 

 

 確かに、デュランダル移送の時にタカロイドが弦十郎の乗っていたヘリを襲っていた事例もある。

 他の組織と連携し、上空の守りも厚くしてくる可能性は十分に考えられた。

 そうなれば一筋縄ではいかなくなる。

 と、此処でマサトは別の話題を口にした。

 

 

「ところでさっき黒リンと話したんだが、何でもジェノサイドロンとかウォーロイドがあった軍事施設にエンターが現れたんだってな。

 しかもジェノサイドロンやウォーロイドは根こそぎ無くなってたらしいじゃねぇか」

 

 

 その話は翔太郎も二課で聞いている。

 ヒロム達も先程、もしかしたら今回の敵の作戦と何か関係があるかもしれない、と、簡単な説明程度だが聞き及んでいる話だった。

 違う話題に転換したが、勿論これも今回の事に関係するかもしれない事。

 マサトはそこで、ある事に気付いたのだ。

 

 

「だとすると、ちょいと厄介だぜ。

 ジェノサイドロンやウォーロイドに使われてる金属はメガゾードとは違う金属だ。

 もしもエンターがその兵器達を亜空間かどっかに隠し持っているんだとしたら……。

 ……って言えば、まあ分かるよな?」

 

 

 その言葉で、ヒロム達4人もマサトが何を言わんとしているかは理解できた。

 ジェノサイドロンやウォーロイドはスチームロイドの煙で、錆びない。

 エンターがもしもジェノサイドロンやウォーロイドを何処かに転送してストックしているのだとすれば、それをスチームロイドの煙の中でも自由に使えるという事になる。

 さらにゴーバスターズ側はジェノサイドロンやウォーロイドのような兵器は保有していない。

 巨大戦力との戦いではバスターマシンが要だが、それが使えない。

 結論として、ヴァグラスは一方的に巨大戦力を振るえる、という事になるわけだ。

 

 最悪の事態を考えるなら、デュランダル移送任務の時のように各敵勢力が一気に、しかも今度は前回よりも戦力を増強した上で襲ってくるという事になる。

 マサトは困り顔で肩を竦めながら、話を続けていく。

 

 

「こっからは希望的観測になっちまうが、材質がメガゾードと違うのはダンクーガも一緒だ。

 つまりダンクーガが来て、味方をしてくれるなら、こっちも大分楽になるってわけよ」

 

「でも、それはあまりにも不確定すぎます」

 

「そ、ヒロムの言う通りだ。アテにはできねぇ。

 仮に来てくれる前提で話を進めても、正直今回は、面倒な事のオンパレードだ」

 

 

 加えて、マサトは止めの一言と言わんばかりの言葉を口にした。

 

 

「おまけに、ウチのJもあの煙にやられて錆びちまった」

 

 

 ヒロム達4人が驚きながらマサトを二度見する。

 オイオイ、と言いたげな表情の4人だが、マサト本人も心底困ったような表情だった。

 

 

「流石に前回の戦いはジャマンガの幹部も出てきてヤバかったろ?

 だから、助けに行こうと思ったんだが……」

 

 

 マサトは回想する。

 あの時、多くの敵が現れ、ゴーバスターズが苦戦する中、本気で助けに行こうとした時の事。

 

 

「行くぞ、J」

 

『俺は帰る』

 

「おう……。はぁっ!? お前何言ってんだ!?」

 

『俺の野生の勘が、此処は危険だと訴えている!』

 

「お前野生だった事なんてねぇだろ!?」

 

 

 そしてJはその場から撤退。直後、スチームロイドの煙が発生。

 しかしながらJは走るのが苦手でコケてしまい、見事に煙に飲み込まれてしまった、というわけだ。

 

 

「先輩……」

 

 

 事情を聞き、代表して声を上げるリュウジの声は呆れ100%である。

 助けに来ようとして巻き込まれたのだからマサトに非は無いが、Jの何とも珍妙な言動と行動には製作者であるマサトですら呆れるばかりであった。

 

 

「さっき黒リンと話したって言ったろ?

 あれ、錆びたJを預かってもらうために特命部に行ったからなんだわ。

 んで、Jは転送の時のマーカーの役割も持ってる。

 俺というアバターの転送だったり、スーツの転送だったり、バスターマシンの転送だったりな。

 そのJが動けねぇ以上、俺はバスターマシンが出せないどころか変身もできねぇ」

 

 

 アバターだから死なないのが唯一の救いかな、と冗談めかしく語る。

 予め転送さえしておけば、その後にマーカーがどうなろうと、転送されたものに影響はない。

 だからマサト自体はこの場に残れるが、スーツやバスターマシンは出せないのだ。

 

 

「まあ要するに、この件は俺にもどうしようもできねぇ」

 

 

 とどのつまり、そういう事。

 グレートゴーバスターのようなとっておきがあるわけでもなく、マサトは今回、本当に打つ手が無かった。

 

 

「……つっても、まだ詰んだわけじゃねぇ」

 

 

 不利な状況ばかり目立ち、そこを指摘し続けたマサトだったが、此処で話を変えた。

 確かに脅威と厄介事が多いが、まだ完全に詰みに持って行かれているわけではないのだと。

 

 

「逆に言えば、転送が始まる前に敵を突破して、転送装置を叩けばいいだけの話だ。シンプルだろ?

 煙が消えた上でバディロイドの錆が取れれば、俺達もバスターマシンが出せる。

 さっき聞いたんだがバディロイドが元に戻るのも時間の問題だって言ってたし、まずはメタロイドをぶっ倒すのがいいかもな」

 

 

 バディロイドの錆びが消えてくれればバスターマシンの発進は可能になる。

 問題はスチームロイドの煙。

 どうやら、あれからずっとスチームロイドは煙を発し続けているとの事だ。

 そのせいか、東京エネタワー周辺は『バディロイドやメガゾードを錆び付かせる煙』の濃度がかなり濃いらしいという事が特命部の調査で判明している。

 煙そのものは周囲に霧散していて視界は良好だが、錆び付かせる成分そのものは空気中を浮遊している状態にあるようだ。

 ならばすべきは、スチームロイドを倒す事。

 元凶さえいなくなれば濃度は徐々に下がり、バディロイドが治った時、スムーズにバスターマシンの発進ができる。

 

 

「でも、メタロイドを倒す時間とゴリサキ達が治る時間が、上手く噛み合わないといけないか……」

 

「そっか、ウサダ達が治るよりも前に、メタロイドは倒しておかないといけないから……」

 

 

 リュウジとヨーコが懸念を口にする。

 スチームロイドが発生させている煙は、倒せば一気に消滅するわけではなく、徐々に濃度が下がっていくだけ。

 つまりスチームロイド撃破からしばらくしないとバスターマシンは出せない。

 という事は、できるだけ早くスチームロイドを倒すしかない。

 しかし敵もそれは分かっている筈。スチームロイドを守る筈だ。

 

 逆に言えばスチームロイドを早く倒せたとしても、バディロイド達が元に戻っていなければバスターマシン発進できない。

 そしてそればかりはゴーバスターズの頑張りでどうにかなるような事でもないのだ。

 

 

「使えるバスターマシンがあれば、苦労しないんだが……」

 

 

 ポツリと呟いたヒロム。

 1機でも使えるなら、バディロイドの復帰を待つ必要もなくなるのだが。

 その時、モーフィンブレスに通信が入る。

 ヒロムがそれに応答すると、女の子のような声が響いた。

 

 

『もしもーし! 私の事、忘れてませんか?』

 

 

 この時、彼等は完全に失念していた。

 使えるバスターマシンは、『ある』という事を。

 

 

『こういう無視のされ方、断固抗議します!』

 

 

 声の主はエネたん。

 そう、FS-0Oが、まだ残っている。

 

 

 

 

 

 一方、S.H.O.T基地。

 ゴーバスターズと翔太郎がエネタワーの調査を始めた頃、士、響、翼はこちらの方へやって来ていた。

 3人を車で送迎していた慎次も、こちらでバックアップに努めるという事でS.H.O.T基地に残っている状態だ。

 いちいち車で移動をしている理由の大半は翼だ。

 彼女は有名人。勿論、あけぼの町でもそれは変わらない。

 もしもS.H.O.T基地に向かう途中であけぼの町民に見つかれば、人だかりができかねない。

 それを回避する為の措置であり、慎次のマネージャー業務の一環というわけだ。

 

 基地内部には司令の天地、オペレーターの鈴と瀬戸山の他に、表情こそ普通だが、悔しさが滲み出ている銃四郎が椅子に座っていた。

 机に両肘を置き、何かを考えているような姿勢で。

 上半身は裸の上からジャケットを羽織った状態だが、その実、銃四郎の肌は一切見えていない。

 何せ、白い包帯で胴体や肩が巻かれていたからだ。

 頭にも包帯は巻かれており、それ相応に傷が深い事を感じさせる。

 

 

「……不動さん、すみません。もっと早く助けに入れていれば、こんな……」

 

「いや、響ちゃん達のせいじゃない。それに、剣二の方が、よっぽど重傷だ……」

 

 

 頭を下げた響の謝罪に銃四郎は首を振って答え、S.H.O.T基地奥の通路を見つめた。

 通路の先には医療設備の整った個室があり、1人か2人程度なら受け入れられる小さな病室があるのだが、剣二は今、そこで眠っていた。

 重傷で気絶。意識はあるし、命に別状もないが、傷は銃四郎よりずっと深いだろうという事だ。

 

 サンダーキーの時には自業自得で重傷を負ったが、今回は必死で戦った結果だ。

 例え負けても、剣二を責めるものなど誰もいないし、むしろ誰もが剣二の傷の事を心配していた。

 

 と、銃四郎が見つめていた通路の奥から、2つの人影が出てきた。

 1人は弦太朗。

 トレードマークのリーゼントがいつも通り目立っているが、表情は晴れやかとはいえない。

 いつでも明るく前向きな弦太朗だが、ダチが重傷を負っている中で笑顔を作れはしなかった。

 そして、もう1人。

 世間一般で言うところの『イケメン』に属しそうな、スーツ姿の青年。

 年齢は弦太朗と同じくらいだろうか。

 

 響、翼、士、慎次の4人が知らないその青年は、S.H.O.Tメンバー全体に向けて口を開く。

 

 

「鳴神さん、じきに目を覚ますだろうと」

 

「そうか……。すまんな、流星、弦太朗」

 

「いや、こっちこそスンマセン。もっと早く来れていれば……」

 

「謝るなよ弦太朗。俺はお前に助けられたの、二度目だぞ?」

 

 

 デュランダル移送任務の時にもフォーゼに助けられた銃四郎は、はにかみながら言う。

 あの時も今回と同じように、深手を負っていたところを助けられた。

 年上として、もうちょいしっかりしないとな、と、悔しく思う銃四郎。

 と、此処で1つ、響には質問があった。

 

 

「あのぅ、すみません。貴方は……?」

 

 

 問いかけられた青年、朔田流星が、そう言えば彼女達には名乗っていないな、と、自分の事を紹介する。

 

 

「俺は朔田流星、インターポールの捜査官で、仮面ライダーメテオだ」

 

「ついでに、俺の高校時代のダチだ!」

 

 

 剣二と銃四郎を助けたのが、フォーゼとその仲間のライダーであるとは聞いていた。

 しかしまた、妙な名前が出てきた事に翼が反応する。

 

 

「インターポール……ですか?」

 

「ああ、俺はヨーロッパでジャマンガが起こしたと思われる事件を追っていた。

 だから、ジャマンガの活動が活発化している日本に来たんだ。

 元々、帰国後はS.H.O.Tに接触を図るつもりだったしな」

 

 

 ヨーロッパで起きたパワースポットの爆発。

 そこで知り合った御厨博士からジャマンガの事を聞き、帰国の決意をしたのだ。

 さらに御厨博士は都市安全保安局のメンバーで、S.H.O.Tは都市安全保安局所属の部隊だ。

 そういう縁でS.H.O.Tの天地司令には予め話が通っており、スムーズに流星はS.H.O.Tに来ることができたというわけだ。

 

 また、流星の相棒であるインガはフランスに残る事になった。

 これは日本とヨーロッパ、両面から捜査を行う為である。

 

 

「それに、大ショッカーの件もあった」

 

「大ショッカーだと?」

 

 

 ピクリと反応したのは、大ショッカーへ一番の警戒を示している士。

 士の反応に頷きつつ、流星は答える。

 

 

「大ショッカーを名乗る組織の仮面ライダー連続襲撃事件……。

 そっちの方も追っていてな。弦太朗達が日本で奴等と戦ったと聞いたのも、日本に来た理由の1つだ」

 

 

 翼、響、士、慎次の顔を見渡し、流星は言葉を続ける。

 

 

「聞けば、幾つかの組織と仮面ライダーのような戦士が集まって、1つの組織ができているらしいな」

 

「はい! ……って、それ、知られちゃってていいんですかね?」

 

 

 はて、と首を傾げて、この場で一番偉い人である天地司令の方を向く響。

 天地は頷き、司令の席から全体を見渡した。

 

 

「流星君も我々に協力してくれることになったからな。

 名目上はインターポールからS.H.O.Tへの出向、という事になるが……。

 まあややこしい話は、我々大人の役目だ、任せてくれたまえ」

 

「おお……師匠と同じで、頼りになる大人って感じですッ!」

 

「カッコつけてるだけだから騙されちゃダメよ、響ちゃん」

 

 

 大人の役目という、頼りがいのある大人な雰囲気の天地だったが、オペレーターの鈴がバッサリと切り捨てる。

 ガクリと肩を落としつつ、天地は鈴へ抗議するような目を向けた。

 

 

「左京隊員、私だって司令だ。やる時はやるぞ?」

 

「そうじゃなきゃ困るって……」

 

「君達たまに私が司令だって事、忘れてるよね。絶対」

 

 

 天地は普段抜けている事も多い。

 勿論、鈴も瀬戸山も銃四郎も、剣二だって天地の事は信頼している。

 信頼しているからこそ、普段の抜けている部分を見ておちょくっているのかもしれない。

 

 鈴からの辛辣な対応の後、天地は大きく咳払いをして場を仕切り直した。

 

 

「さて、だ。ゴーバスターズと左翔太郎君が今、敵の目的を探っているそうだ。

 それによって出方も変わるから、我々は報告を待つしかない」

 

「その時間にできる事は……。敵戦力の打開策を練る事、くらいでしょうか」

 

 

 報告待ちの間、敵との戦い方を考えようと翼は提案した。

 ロッククリムゾンやレディゴールド、エスケイプと言った強敵が出てきた以上、確かに対策は急務だ。

 誰もそれに反対する事は無かった。

 

 

「レディゴールド……奴の速さは脅威でした。

 何とか一度動きを止めましたが、緒川さんから影縫いを習っていなかったら危なかったです」

 

 

 レディゴールドの速さはレッドバスターのそれと同等。

 それについていけるものはそうはいない。

 深刻な問題である。

 深刻な問題であるのだが、1つ、何か聞き逃してはいけない事を言われた気がした。

 はて、翼は今何と言ったか。銃四郎は頭に湧いた疑問をぶつけていく。

 

 

「……待った翼ちゃん。今なんか、変な事言わなかったか?」

 

「え? いえ、別に何も言ってないと思いますが……」

 

「影縫いって、動きを止める技だよな? アレを習ったとかなんとか……」

 

「あ、はい。言いましたが」

 

「誰から?」

 

「緒川さんからです」

 

 

 銃四郎が1つ1つ確認していくと、やっぱりおかしな事を言っていた。

 

 影縫い。

 それは影に剣を突き刺して、まるで影ごと地面に縫い付けたように動きを止めてしまう技の事。

 そんな事は百も承知だが、それが『緒川から習った』などというのは初耳。

 ほぼ全員の目線が慎次の方を向いていた。

 本当に教えたの? とでもいうような、奇異の視線。

 視線に気付いた慎次は、にこやかに全員を一瞥した。

 

 

「はい、確かに教えました。3年ほどかけて。……何か?」

 

「じゃあ緒川さん、影縫いできる……って事?」

 

「まあ、できないなら教えられませんから……」

 

 

 驚きというか引き攣った顔をしながら鈴は尋ねるものの、慎次は当然のような返答をしてきた。

 ある程度鍛えた人間が戦闘員を相手にできるとかなら、まだ分かる。

 しかし人の影を縫い付けて動きを止めるなんて、どう考えてもまともな人間がする技じゃない。

 それができるって、おかしいよね? それが今この場のほぼ全員の総意だ。

 そう、『ほぼ』全員の。

 

 

「あー、緒川さんも師匠達と同じで人間離れした特技持ってるんですねぇ」

 

「お前、知らなかったのか? 二課にいるくせに」

 

「うぇ? 士先生、知ってたんですか?」

 

「こいつが忍者か何かってのは、藤尭と友里に聞かされた」

 

 

 響と士、所謂二課のメンバーはなんにも驚いていなかった。

 響は弦十郎というトンデモを生で見ているから。

 士は既に知っていたから。

 しかし、『忍者』という中々なワードが出た気がするのだが。

 

 

「に、忍者!? 緒川さん、忍者何スか!?」

 

「ええっと、まあ、内密に……」

 

「いや待て弦太朗。今の世に忍者が実在するなんて……」

 

「いいえ、間違いなく忍者ですよ、緒川さんは」

 

 

 興奮気味の弦太朗を宥めようとする流星だが、翼がバッサリと言い切った。

 そう、緒川慎次は忍者なのである。

 二課の相手が人間を炭素に転換してしまうノイズだから大きく立ち回れないだけで、慎次は凄まじいスペックを持った人間なのだ。

 忍者だけあってマネージャーなどの裏方仕事も多くこなす。それが緒川慎次なのである。

 

 

「おぉっしッ!! 俺は忍者とも……」

 

「ダチになる男なのは知ってるが、後にしろ弦太朗」

 

 

 言葉を遮りつつ後の言葉を予測しつつ、弦太朗を諌める流星。

 話が脱線してしまったので、流星は再び話題を敵の事へと戻した。

 

 

「忍者どうこうはともかく、今は敵の事だ。

 そのレディゴールド……対抗策は無いのか?」

 

 

 忍者のインパクトは引き摺りつつも、無理矢理まともな話題に。

 実際、その話の方が今は重要なのだが。

 ともかく、流れを変えた流星の言葉に名乗りを上げたのは、門矢士だった。

 

 

「俺ならやれる」

 

「弦太朗から話は聞いてる。仮面ライダーディケイド……。どんな力が?」

 

「簡単だ。アイツと同じかそれ以上のスピードで動いてやればいい。

 俺にはそれができる。というか、それこそヒロムにだってできるだろ」

 

 

 そう、レディゴールドについていく事ができるのはレッドバスターだけではない。

 ファイズのアクセルフォームや『カブト』の『クロックアップ』のように、視認不可能な速度で動く術はあるのだ。

 それだけのスピードがあればレディゴールドのスピードにはついていける。

 勿論単純な戦闘もレディゴールドは強いが、そこは単純に実力で勝つしかない。

 実際、翼の攻撃は効いていたのだ。勝機はある。

 

 そして同じ事はエスケイプにも言えた。

 彼女は特殊な能力などは持たず、二丁の銃で戦ってくる、どちらかと言えばシンプルなスタイル。

 アバター故に何度倒されても再生できるのであろう事は厄介だが、それはヴァグラスがシャットダウンされるまで続く事。

 それにエンターにも同じ事が言えているので、今に始まった事ではない。

 

 どの幹部にも付け入る隙や、ある程度の打開策は見えてきていた。

 という事は、今のところ解決策が見えない敵は1人。

 

 

「……とすると、問題はロッククリムゾンの方だな」

 

「凄く硬くて、攻撃が重たかったです。あれを何度も食らった剣二さんは……」

 

 

 銃四郎の言葉に続いた響は、S.H.O.Tの病室がある通路を見た。

 ロッククリムゾンの攻撃を何発も受けた張本人が、その病室で寝ている。

 変身していても尋常ではないダメージが入る事を如実に表した傷を負った、剣二が。

 

 

「ライダー2号が来てくれて助かったが……。

 今後の事も考えれば、彼に頼り切ってるのはマズイ」

 

 

 銃四郎の呟きには誰もが賛同した。

 2号は確かに強力な助っ人だ。だが、その彼に頼り切るのは些か気が引ける。

 彼は世界で多くの敵と戦う身で、日本に長く居座るわけではない。

 何より、先輩戦士におんぶにだっこでは、先輩にも申し訳ないし、あまりにも情けなさすぎる。

 

 

「俺達だけで何とかできるくらいじゃないと、2号先輩に示しがつかねぇ……って事っスね」

 

「そんなトコだな。

 それにこのまま負けっぱなしなのはお断りだ。俺も……きっと、剣二の奴も」

 

 

 剣二は負けず嫌いだ。

 ジャークムーンとの戦いからもそれは読み取れる。

 ならば、彼がこのまま黙っている筈がない。絶対にロッククリムゾンを倒すと意気込むだろう。

 何より今の彼は、誰かを守る事を最優先にできる男だ。

 ロッククリムゾンが、ジャマンガが誰かを脅かす限り、剣二はリュウケンドーとして立ち上がり続けるだろう。

 勿論それは、銃四郎、リュウガンオーも同じだ。

 

 

「気持ちで何とかなる相手じゃないだろ」

 

 

 雰囲気に水を差すような士の一言だが、誰も反論はできない。

 やる気や意気込みは大事だ。尻込みしていては、100%の結果なんて出せるわけがない。

 だが、やる気だけでひっくり返せる実力差ではない事も確かだ。

 何せ単純に攻撃が効いていなかったのだから。

 ロッククリムゾンに有効打を与えたのは、響の溜め時間を気にしない全力パンチと、2号の攻撃のみ。

 響のパンチは溜めの隙を度外視した隙だらけのものなので、実質2号のみ。

 これでは本当に2号に頼りきりになってしまう。

 

 

「言い方に棘はありますが、士さんの言う通りです。

 何か、もっと強い装備の1つでもあればいいんですが……」

 

「ならデュランダルでも使うか。あの威力なら何とかなるだろ」

 

「外に出すにも使用するにも、認可が下りないと思いますよ。

 万一許可が出ても、周辺ごと吹き飛ばしてしまう恐れもありますし」

 

「チッ、フィーネは完全聖遺物とやらをあれこれ使ってるってのに……」

 

 

 さり気なく士をフォローしつつ、先程忍者カミングアウトをされた慎次が顎に手を当てて考える。

 一応、真面目な提案としてデュランダルを挙げた士だが、二課の事情をよく知る慎次に却下されてしまった。

 デュランダルを外に出す事は、デュランダルが奪われる可能性を引き上げるという事。

 政府としてはそれを避けたいだろうし、聖遺物関係の事に関しては各国から睨まれている現状だ。

 フィーネを引き合いに出して1人毒づく士。

 と、新たな装備という点で1つ、銃四郎は思い出した。

 

 

「装備か……。瀬戸山、確かリュウケンドー用のマダンキーがあったよな?」

 

「え? ええ、パワースポットでしか調整できないキーの事ですよね」

 

「そのキー、強力な力が秘められてる確証があるか?」

 

「パワースポット並の場所でないと調整できない代物ですからね……。

 リュウケンドーに何をもたらすキーなのかはわかりませんが、強力なのは確かです」

 

 

 できる装備強化はしておきたいという話から、ゴーバスターズはFS-0Oを探した。

 ならば、今こそS.H.O.Tもそれをする時なのではないか。

 銃四郎は考える。

 自分は重傷だ。戦っても、ロッククリムゾンやレディゴールドを相手にできる状態ではない。

 しかし動けないわけでも、変身できないわけでもない。

 だったら、できる事はある。

 

 

「……キーをくれ」

 

「待ってください、行く気ですか? 無茶ですよ、そんな体で!」

 

「この状態の俺じゃ、戦いで足手纏いになりかねないからな」

 

「だとしてもです! パワースポットは強力なエネルギーが満ちていて、何が起きるか分からない。戦場に飛び込むのと同じくらい危険なんですよ!?」

 

「それでもだ」

 

 

 パワースポットの危険性は銃四郎だってよく知っている。

 珍しく声を荒げ、オペレーター席から立ち上がった瀬戸山が必死に止めるが、銃四郎は譲らなかった。

 今の自分にできる事をしたいのだと。

 しかし無茶をしようとしている銃四郎を止めようとするのは、瀬戸山だけではない。

 

 

「待ってくれよ不動さん! 俺とかが行けば……!」

 

「いや、弦太朗じゃ、他の誰かじゃダメだ。S.H.O.Tと連携が取れる俺じゃないと」

 

 

 マダンキー調整には特殊な呪文のようなものが必要になる。

 普段ならば瀬戸山が行うそれだが、呪文を教えてもらえれば、別に誰が言っても問題は無い。

 だからパワースポットで通信機を使って、瀬戸山から教えてもらいながら唱えても問題はないのだ。

 例え、仮面ライダーだろうとシンフォギア装者だろうと。

 しかし、ある程度の魔法への知識や耐性、S.H.O.Tとの連携、パワースポットの知識などがある者が行くのが一番なのは事実。

 そして何が起こるか分からない危険地帯な関係上、変身等で身を守れるもの。

 つまり、適任なのは魔弾戦士という事になる。

 そして今、動ける魔弾戦士はリュウガンオーただ1人だ。

 

 

「頼む瀬戸山。キーを出してくれ」

 

「ですが……」

 

 

 銃四郎の体を気遣って出し渋る瀬戸山。

 重傷の仲間を、みすみす危険地帯に行かせたいと思う人間が何処にいるだろうか。

 何より、この場の誰よりも魔法知識が深い瀬戸山だからこそ、パワースポットは危険だとよく知っているのだ。

 

 それでも銃四郎は譲らず、周りは止めようとする膠着状態の中で、動いたものがいた。

 

 

「だったら、私も行きます」

 

 

 名乗りを上げたのは、風鳴翼だった。

 

 

「差し出がましいようで恐縮ですが、私が不動さんに助力します。

 それならば、納得していただけませんか」

 

「翼ちゃん……」

 

 

 思わぬ援護射撃に、意外そうな目で翼を見つめる銃四郎。

 そんな事を口にする翼に、士は興味を持った。

 

 

「どうした風鳴、急に」

 

「戦力の強化は急務です。それは、前線で戦う我々が一番よく分かっている……。

 ならば、その為の手助けをしたいと思うのは当然です」

 

 

 さらに翼は、響へ目を向けて続きを口にした。

 

 

「それに、仮に私がいない間にノイズが現れても、任せられる仲間がいます。

 門矢先生、そして立花が」

 

「えっ……」

 

「立花はまだまだ未熟だが、戦士に相違ないと確信している。

 場を託せる、肩を並べて戦えると」

 

「翼さん……!」

 

 

 認められた事に感動する響。

 対照的に、フン、と鼻を鳴らすだけの士。

 翼は響へ笑みを向けた後、天地と瀬戸山に向き合った。

 

 

「私からもお願いします。不動さんは、必ず連れ帰ると約束します」

 

 

 頭を下げられ、困り果てる瀬戸山は司令である天地を見た。

 天地は普段の抜けている部分は鳴りを潜め、1人の凛とした大人として、決断した。

 

 

「うむ、許可しよう」

 

「天地司令……いいんですか?」

 

「彼女の言う通り、装備強化はしておきたい。

 サンダーキー以上の力が必要とされる日が来る事もあるだろう。

 ならば今の内に、できる事はしておこうじゃないか

 そして、それは今なのだと思うぞ」

 

 

 天地の言葉に対し、目線をキーの置いてある机に向ける瀬戸山。

 上司である司令の言葉であると同時に、現状で力が足りていないという事はロッククリムゾンやレディゴールドが嫌というほど示してくれていた。

 銃四郎の体を気遣って反対したが、瀬戸山にもそれは分かっている。

 そして、銃四郎、翼、天地の3人から説得された瀬戸山は、ついに根負けした。

 

 

「……しょうがないですね」

 

 

 未調整のマダンキーを自分の机から取り出し、銃四郎へ手渡した。

 しっかりと受け取った銃四郎は、キーを握る。

 これが敵を打開する、文字通りの『鍵』になってくれと、願いを込めて。

 

 

「不動隊員。許可はしたが、危険を感じたら必ず離脱するんだ。

 装備強化で優秀な隊員を、命を失うなど、あってはいけない事だからな」

 

「……! 了解ッ」

 

「翼君、不動隊員の事を頼む」

 

「了解しました」

 

 

 やや遠回しではあったが「無理はするな」と隊員を気遣う天地と、その意を汲み取り、心配をかける事を詫びるように頭を下げる銃四郎。

 翼も天地の言葉に強く、確かに頷いて見せた。

 

 

「善は急げだ。翼ちゃん、早速行くぜ」

 

「分かりました」

 

「では、車を出しましょう。不動さんも、その体で移動はお辛いでしょうから」

 

「悪いな、緒川」

 

 

 慎次が翼達の送迎に使った車で、2人をパワースポットの元へ送る事となった。

 銃四郎の体を気遣いつつ、翼は変装無しで不用意に出歩けないのもある。

 しかしながら、慎次はマネージャーモードならばかけている筈の眼鏡は外していた。

 メインはあくまで装備強化の手伝いで、マネージャー業務というわけではないのが理由だろう。

 

 そうして銃四郎と翼、慎次がS.H.O.T基地を後にしてからしばらくすると、ゴーバスターズからの連絡が入った。

 次に何をするべきか、どのように作戦を展開するか。

 パワースポットへ向かった翼達とは別に、こちらでも戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 特命部、二課、S.H.O.Tの司令室と現場近くにいるヒロム達のモーフィンブレスが通信を開始し、作戦会議が始まった。

 とはいっても、殆どの事は決まっている。

 

 

『やる事は1つ、メタロイドを倒してバスターマシンを発進できる状態にする』

 

 

 ヒロムがモーフィンブレス越しに作戦を伝えた。

 メタロイド撃破を第一に考えるという、単純明快な作戦。

 だが、各司令室がメインモニターに映した東京エネタワー周辺の監視カメラが映した状況は、その作戦が一筋縄ではいかないであろう事を示していた。

 

 エネタワー周辺は無数のバグラーが周囲を警戒しており、どうも煙の濃度が一番濃い場所を中心に戦力を展開しているようだった。

 つまり、スチームロイドを守るようにバグラーが展開されているという事である。

 しかもそこに映っていたのはバグラーだけではない。

 あけぼの町で見慣れた紫色の戦闘員が、バグラーに混じって存在していた。

 眼鏡をくいっと上げながら、S.H.O.Tの瀬戸山がそれを指摘する。

 

 

「遣い魔もいますね。微弱な魔的波動がエネタワー周辺にまばらに存在してます。奴等も結構な数がいるみたいだ。

 レディゴールドとロッククリムゾンは……出てきていないようです」

 

 

 瀬戸山が魔的波動の強弱を見れば、それが遣い魔なのか、一般的な魔物なのか、幹部クラスの強敵なのかは大体わかる。

 しかしながら遣い魔がいるという事は、今回の作戦にジャマンガも噛んでいるという事。

 戦闘が始まったら間違いなく幹部クラスも出てくるだろう。

 

 此処でさらにもう1つ、ある事を見つけてしまった者が1人。

 溜息を付きながらそれを口にしたのは、士だった。

 

 

「……ハァ。おい、あの辺り見てみろ」

 

 

 士が指さした場所は、現在映し出されている周辺状況の端の辺り。

 よくよく見れば、どうもバグラーでも遣い魔でもないものが映り込んでいる。

 全員がそれを注視する中で、それが何であるのか、流星は気付いた。

 

 

「……怪人、か。まさか大ショッカーか」

 

「ああ、いちいち怪人の顔なんて覚えちゃいないが、多分そうだろ」

 

 

 翼竜を連想させるような顔と、腕が羽のようになっている怪人の姿がそこにはあった。

 士達がその名を知る由は無いが、この怪人の名は『プラノドン』。

 元はショッカーの怪人であり、流星と士の予想通り、現在は大ショッカー所属の怪人だ。

 

 しかもプラノドンは見た目通り飛べる怪人。

 マサトが先程懸念していた航空戦力を繰り出してくるという可能性。

 それが見事に当たってしまったのだ。

 今回のヴァグラスは他の組織から航空戦力を補充している。

 プラノドンだけが航空戦力という事も無いだろうし、恐らくは監視カメラの外か何処かに空飛ぶ敵がまだまだ存在しているだろう。

 

 

『こうなってくると、デュランダル移送任務の時と同じだな。

 ヴァグラスにジャマンガに大ショッカー。という事は……』

 

『可能性に過ぎないけれど、ノイズも出てくるかもしれないわねぇ』

 

 

 二課司令室の弦十郎が挙げた3組織は既に結託済みである事が確認されている。

 同時にその時、もう1人、敵に協力者がいた事も。

 了子の言葉はノイズを操る者、フィーネの事を指している。

 この4つの敵組織はデュランダル移送任務の時と同じ相手だ。

 

 ところで、実は問題なのはそれだけではない。

 もう1つ問題が、特に二課とS.H.O.Tにとってはとても大きな問題があった。

 今度は二課の副指令とも言える了子が、その問題を述べていく。

 

 

『って言うか、もしも転送を防げないと東京エネタワーどころか東京スカイタワーも巻き込まれちゃうのよ。

 で、それってすっごくマズイの』

 

「え? 何でですか?」

 

『あら、言ってなかったかしら?

 東京スカイタワーには、二課とかS.H.O.Tみたいな秘密の武器を持った組織にとっては重要な機能があるの。

 私達みたいな組織が使う、映像や交信みたいな電波情報を統括制御するっていう機能がね。

 つまり、スカイタワーは私達の通信の要。アレがやられちゃうと、組織として凄く動き辛くなっちゃうのよね』

 

 

 響の疑問の声は全体の疑問であったが、了子は事細かに説明を果たす。

 S.H.O.Tの天地も深刻な顔で頷いている辺り、かなり大事な場所であるようだ。

 

 エネルギー管理局は大衆に知られている組織であり、その中の部署の1つである特命部も『対ヴァグラス組織』として認知されているので、ゴーバスターズは『公の武装』と言っても差し支えは無い。

 しかし『シンフォギア』や『魔弾戦士』と言った、秘匿武装を抱えていたり、正体を隠している組織にとって、東京スカイタワーは重要な拠点の1つである。

 そして東京エネタワーと東京スカイタワーの距離は、今回の転送範囲がマサトの言葉通りの、町1つ分かそれ以上の範囲だとすれば、間違いなく巻き込まれる範囲。

 勿論、打算抜きで人々やみんなの生活拠点を守る事を考えている者も多いが、今回は組織としても防衛に力を入れる理由があるのだ。

 

 

『フィーネの目的が以前と同じでデュランダルだとすれば、未だ二課を狙っている可能性もある。

 とすれば、スカイタワーを消し去り、機能不全に陥ったところに付け入ってくる可能性も考えられるだろう』

 

 

 予想ではあるが、弦十郎の言葉は可能性として有り得る話だ。

 今回の一件は転送を防げないと甚大な被害が出るばかりか、奪われるエネトロンの量によってはメサイアが現実世界に復帰し、一方でフィーネにデュランダルを奪われかねないなど、その後に起こりかねない災厄がある。

 元々、負けられない戦いだ。だが、負けられない理由が増えた。

 

 どんな理由であれ、戦って勝つしかないのは明白だ。

 時間は刻一刻を争う。長々と話している暇もない。

 此処でヒロムは、現れると確定した敵と現れる可能性のある敵の情報を纏めた。

 

 

『ヴァグラスはメタロイドとバグラー、それに多分、エンターとエスケイプ。

 ジャマンガは遣い魔と、ロッククリムゾンとレディゴールド。

 大ショッカーからは怪人。それにフィーネからノイズ、か。』

 

『先輩の予想だと、ジェノサイドロンとウォーロイドも、かな』

 

 

 リュウジの付け足しも入り、うわぁ、と響は声を上げた。

 

 

「盛り沢山ですね……」

 

 

 敵戦力を並べ挙げたヒロムとリュウジに続き、今度は特命部司令室にいるオペレーター、森下が味方の戦力を数え上げていく。

 

 

『こちらはヒロム君達ゴーバスターズが3人。

 使えるバスターマシンはFS-0Oの1機のみ。

 仮面ライダーがディケイド、W、フォーゼ、それに新しく加わってくれたメテオ。

 そして恐らく、2号ライダーも来てくれるでしょう。

 加えて、シンフォギア装者の響ちゃん。

 不動さんと翼ちゃんはパワースポットでキーの調整後、後から合流、ですね」

 

「ですが、不動さんは戦える状態ではありません。

 場合によりますが、パワースポットで大分消耗する事になるでしょうし、戦いには参加できないと思います」

 

 

 森下の言葉に、S.H.O.Tの瀬戸山が付け足した。

 銃四郎の傷の事はS.H.O.Tのメンバーが一番よく知っている。

 本来ならパワースポットに行かせる事すら無謀と言ってもいいくらいなのだ。

 そんな彼をパワースポットから帰還した後に戦場に投入するなど、自殺行為にも等しい。

 それがS.H.O.Tメンバーの見解だった。

 

 合計人員はゴーバスターズ3人と仮面ライダー5人と響で9人。

 フルメンバーで無いにしても、それなりに人数はいる。

 それ以上に敵が多いのが問題なのだが。

 

 

『何にしても、やるしかない。みんな、頼む』

 

 

 ヒロムが頼むまでもなく、誰も今回の戦いから降りようとは思っていない。

 全員、無茶でもやるしかないと決意を新たにしていた。

 この戦いには転送によっておこる町1つという大規模な被害が、そこに住まう人々の命がかかっている。

 長々と対策を練る時間もない以上、すぐにでも動き出すしかないのだ。

 

 こうして戦闘前のミーティングは終わり、それぞれが準備や移動に取り掛かる中、士は1人考えていた。

 

 

(……呼ぶか、アイツ等も)

 

 

 士の脳裏にあったのは、再会した仲間の顔だった。

 

 

 

 

 

 一方、ジャマンガ本部にて。

 エンターは一旦ジャマンガ本部を後にしたが、再び戻って来ていた。

 

 

「お待たせしましたDr.ウォーム。大ショッカー、フィーネ共に協力をしてくれるそうです」

 

「ほう。毎度思うが、何処も都合よく協力するのう」

 

「大ショッカーは仮面ライダーを倒せればいいようで……。

 フィーネは目的が見えませんが、今回の作戦で不都合はないそうです。

 共通しているのは、邪魔者はできる限り排除したいという一点ですね。

 ゴーバスターズ達は転送を阻止しに来るでしょうが、転送が始まるまでこちらが防衛しきれば、奴等ごと亜空間に転送できます」

 

「成程。そうすれば、敵の戦力はまるごと亜空間の中、と」

 

「ウィ。それに止めに来ないとしても、エネトロンを大量に頂戴できます。

 そもそも人間どもを守るという使命がある以上、彼等は来ざるを得ませんよ」

 

 

 ヴァグラスの目的は複数のエネトロンタンクだ。

 今回の作戦ではエネトロンタンク強奪に伴い町1つを丸々転送するわけだが、もしもその瞬間にゴーバスターズや仮面ライダーがその町に居れば、それらも纏めて亜空間に放り込める。

 それは大ショッカーにとってもフィーネにとっても、邪魔者の排除という点において非常に利益となる事だ。

 だからこそヴァグラスからの協力要請を許諾した、というわけだ。

 

 さて、エンターが再びジャマンガ本部に戻ってきたのには理由がある。

 それは、ウォームに頼んでいた『あの宝石』についての事。

 

 

「それからあの宝石の件ですが、メルシィ。こちらで無事に利用できそうです。

 魔力回路……でしたか、アレの設計も貴方がいてくれたお陰で、助かりましたよ」

 

「別に良い。いやはや、魔法と機械なら他に得意としてる奴がいるんじゃがの……。そいつはあまり好かん」

 

 

 ウォームの言う『魔法と機械を得意とする奴』というのは、エンターの予測でしかないが、他のジャマンガ幹部の事であろうか。

 ジャマンガ自体は世界各国に支部を持っており、幾つかに幹部が存在している。

 恐らく、まだ見ぬ幹部もいて、その1人なのだろう。

 少なくともレディゴールドやロッククリムゾンであるならば『他にいる』なんてボカした言い方はしない筈だ。

 しかしエンターはジャマンガの内部事情など毛ほどの興味もないので、「まあ、それはいいでしょう」と胸の内で呟き、それを流した。

 

 

「さて、準備は整いました。後は、盛大なお出迎えをして差し上げましょうか」

 

 

 戦士達を待ち受ける、『お出迎え』。

 エンターは怪しく、ニタリとした笑みをたたえていた。

 

 

 

 

 

 ある場所、大ショッカー本拠地。

 より正確に言うのなら、『この世界』における大ショッカーの支部。

 先程、エンターからの協力要請を承認した直後の事だ。

 

 巨大な鷲のレリーフの前で跪くキバ男爵。

 レリーフ中央のランプが怪しく点滅すると、大首領の声が響いた。

 

 

『キバ男爵。今回の作戦、『アレ』を出してみるか』

 

「アレ、ですか。確かに復元と強化は完了していますが、よいのですか? 万が一という事も」

 

『使っていい。アレで倒せてしまうならそれでも構わないし、ダメなら所詮、アレはその程度だったという事でしかない』

 

「はっ、ではそのように……」

 

 

 キバ男爵と大首領の口にする『アレ』とは、とある怪人の事だ。

 勿論、それ相応に強力な。

 レリーフのランプはただ緑色の点滅を続けるだけとなり、声はもうしない。

 大首領との会話が終わったキバ男爵は立ち上がり、その場を後にした。

 

 

(さて、何処までしてくれるかな、仮面ライダー……)

 

 

 今回出撃させる『アレ』は、幹部であるキバ男爵が認める程に強力だ。

 間違いなく仮面ライダー単騎では勝てないであろうというほどには。

 上手くいけば今回の戦いで、この世界の仮面ライダーや、ディケイドとの因縁も終わる。

 戦いの準備を進める為に、キバ男爵はエンターから必要とされているのに合致している怪人達を招集し始めた。

 

 

 

 戦いの準備は、誰もが整っている。敵も、味方も。

 東京エネタワーを巡る戦いが、始まろうとしていた。




────次回予告────

Super Hero Operation! Next Mission!

「大変よ剣二君。不動君が……」
「初めてできた、後輩なんだ」
「そのメタロイド潰させてもらう」
「来たぜ、士!」

バスターズ、レディ……ゴー!

Mission64、集結・エネタワー
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